高齢者の口内炎・口の中の痛み|原因と家庭でできるケア・治らないときの受診の目安
ご家族・ご利用者向け

高齢者の口内炎・口の中の痛み|原因と家庭でできるケア・治らないときの受診の目安

高齢のご家族の口内炎や口の中の痛みが心配な方へ。義歯・乾燥・栄養・カンジダ・薬の副作用など主な原因、家庭でできる口腔ケアと食事の工夫、2週間治らないときの受診の目安と何科に行くかを、家族目線でやさしく解説します。

お近くの介護施設を探す

地域ごとの施設数や施設タイプを確認しながら、候補を絞り込めます。

施設を探す
ポイント

この記事のポイント

高齢の方の口内炎や口の中の痛みは、合わない入れ歯の当たり、口の乾燥(ドライマウス)、栄養不足、口腔カンジダ症、薬の副作用、免疫の低下などが重なって起こりやすく、治りにくいのが特徴です。多くは口の中を清潔に保ち、保湿し、刺激の少ない食事に変えることで和らぎます。一方で、2週間以上治らない潰瘍やしこり、白い斑点が広がる、発熱を伴うといった場合は、口腔がんや口腔カンジダ症などが隠れていることがあるため、歯科または歯科口腔外科への受診の目安になります。この記事では、ご家族が原因を見分け、家庭でできるケアと受診のタイミングを判断できるよう、家族目線でやさしく整理します。

目次

「食事のたびに痛がる」「口の中に白いものができている」「入れ歯を嫌がるようになった」。高齢のご家族の口の中の変化に気づいて、心配になっていませんか。口内炎や口の中の痛みは、若い人なら数日から2週間ほどで自然に治ることがほとんどです。ところが高齢の方では、加齢や持病、薬の影響、口の乾きなどが重なって治りにくくなり、食事量の低下や体力の消耗につながることがあります。

本人は痛みをうまく言葉にできなかったり、我慢してしまったりすることも少なくありません。だからこそ、まわりにいるご家族が「いつもと違う」に早く気づき、家庭でできるケアをしながら、受診が必要なサインを見逃さないことが大切になります。

この記事では、高齢者の口内炎の特徴と主な原因、家庭でできる口腔ケアや食事の工夫、そして「これは受診したほうがよい」という目安と何科にかかればよいかを、家族の視点で具体的にまとめました。医療的な診断は歯科や医師が行うものですが、ご家庭での観察と早めの相談が、本人の負担を大きく減らします。

高齢者の口内炎・口の中の痛みの特徴

口内炎とは、口の中の粘膜(頬の内側、歯ぐき、舌、唇の裏など)に起こる炎症の総称です。粘膜が赤く腫れたり、白っぽい潰瘍ができたり、しみるような痛みが出たりします。一口に口内炎といっても、できる場所や見た目、原因はさまざまで、高齢の方の場合は若い人とは違った特徴があります。

高齢者の口内炎が「治りにくい」理由

高齢の方の口内炎が長引きやすいのには、いくつかの背景があります。公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットでも、加齢や持病、薬の影響、免疫力の低下によって、高齢者では一般的に口内炎が治りにくくなると説明されています。具体的には次のような事情が重なります。

  • 口の中が乾きやすい。加齢や薬の影響で唾液が減ると、粘膜が傷つきやすく、細菌も増えやすくなります。
  • 入れ歯(義歯)を使っている。合わなくなった入れ歯が粘膜に当たり続けると、同じ場所が繰り返し傷つきます。
  • 食事量が減り、栄養が不足しがち。粘膜の修復に必要なビタミンやたんぱく質が足りないと、治りが遅くなります。
  • 免疫力が下がっている。持病や加齢で抵抗力が落ちると、ふだんは無害な常在菌が悪さをすることがあります。

痛みのサインに気づきにくいことも

認知症があったり、言葉での表現が難しかったりする場合、本人が「痛い」とはっきり伝えられないことがあります。食事の途中で止まってしまう、特定のものを食べなくなった、入れ歯を入れたがらない、よだれが増えた、口元を触る、不機嫌になるといった様子も、口の中の痛みのサインかもしれません。ご家族が「食べ方」や「機嫌」の変化から気づくことが、早期発見の入口になります。

高齢者の口内炎・口の中の痛みの主な原因

高齢の方の口内炎や口の中の痛みは、ひとつの原因だけでなく、複数の要因が重なって起こることがよくあります。ここでは代表的な原因を、ご家庭で思い当たるかどうか確認しながら見ていきましょう。原因によって家庭でできるケアも、受診すべき科も変わってきます。

1. 入れ歯(義歯)の当たり・かみ傷

健康長寿ネットによると、高齢者の口内炎は義歯(入れ歯)を原因とするものが多くを占めるとされています。長く使ううちに歯ぐきがやせたり入れ歯がすり減ったりすると、入れ歯が合わなくなり、特定の場所を圧迫し続けます。その結果、同じところに潰瘍(義歯性口内炎)ができます。頬や舌を誤って噛んでできる傷も同じ仲間です。入れ歯を入れている方で、いつも同じ場所が痛む・赤くなる場合は、まず入れ歯の当たりを疑います。

2. 口の乾燥(ドライマウス)

唾液には、口の中を洗い流し、傷を守り、細菌の増殖を抑える働きがあります。加齢や水分不足、後で述べる薬の影響で唾液が減ると、粘膜が乾いて傷つきやすくなり、口内炎ができやすく、治りにくくなります。口の渇きが気になる方の口腔ケアについては、関連記事の高齢者の口臭・口の乾き(ドライマウス)もあわせてご覧ください。

3. 栄養不足(ビタミン・鉄・亜鉛など)

粘膜は新しく作り替えられ続けている組織です。その材料となるたんぱく質や、ビタミンB群(B2・B6など)、鉄、亜鉛などが不足すると、粘膜が弱くなって口内炎ができやすくなります。食が細くなった、同じものばかり食べている、肉や魚をあまり食べなくなった高齢の方では、知らないうちに栄養が偏っていることがあります。

4. 口腔カンジダ症(カンジダ性口内炎)

カンジダは、もともと口の中にいるカビ(真菌)の一種です。ふだんは悪さをしませんが、免疫力が下がったり、口が乾いたり、後述する抗菌薬やステロイド吸入薬を使ったりすると異常に増えて、口腔カンジダ症を起こします。健康長寿ネットでも、カンジダ性口内炎は高齢者によくみられると説明されています。特徴は、頬の内側や舌、上あごなどにできる白い苔のような膜で、こすると取れることがあり、その下が赤くただれて痛みやヒリヒリ感、味覚の変化が出ることもあります。白い部分が広がる場合は自己判断せず、歯科や医師への相談が必要です。

5. 薬の副作用

高齢の方は複数の薬を飲んでいることが多く、薬の影響で口内炎や口の痛みが出ることがあります。たとえば、唾液を減らして口を乾かす薬(一部の血圧の薬、抗不安薬、睡眠薬、頻尿の薬など)、ぜんそくなどで使う吸入ステロイド(口の中に残るとカンジダの原因になります)、抗菌薬の長期使用などです。国立がん研究センターも、薬の副作用による免疫力の低下が口内炎の原因のひとつになると説明しています。自己判断で薬をやめるのは危険なので、気になるときは処方した医師・薬剤師に相談しましょう。

6. 免疫力の低下・持病

糖尿病などの持病があると、感染への抵抗力が落ち、口内炎やカンジダ症ができやすく、治りにくくなります。体調を崩したあとや、がんの治療を受けている方でも、口内炎は起こりやすくなります。

7. やけど・刺激

熱いお茶や汁物、熱々の食べ物による軽いやけど、辛いものや酸っぱいもの、硬いものによる刺激も、粘膜を傷つけて口内炎の引き金になります。感覚が鈍くなっている高齢の方では、熱さに気づきにくく、やけどをしていることもあります。

このように原因は多彩ですが、「入れ歯が当たっていないか」「口が乾いていないか」「ちゃんと食べられているか」「最近薬が変わっていないか」という4つの視点で見直すと、ご家庭でも見当をつけやすくなります。

タイプ別の見分け方とセルフチェック(ご家族向け)

口内炎は見た目が似ていても原因が違い、対応も変わります。ご家庭で見分けの当たりをつけるための早見表を用意しました。あくまで目安であり、診断は歯科や医師が行います。判断に迷うとき、当てはまる項目が多いときは、早めに相談してください。

タイプ別の見分け早見表(ご家庭の目安)

タイプ見た目・場所の特徴家庭で気づくヒント主な対応の方向
アフタ性口内炎小さく丸い浅い潰瘍。中心が白っぽく、周りが赤い。1〜2個疲れ・栄養不足・睡眠不足のあとに。1〜2週間で治ることが多い清潔・保湿・栄養。長引けば受診
義歯性(外傷性)口内炎入れ歯や歯が当たる場所にできる潰瘍。同じ場所が繰り返す入れ歯を入れている。決まった場所が痛む・赤い入れ歯の調整。歯科へ
カンジダ性口内炎白い苔のような膜。こすると取れることも。赤くただれる、ヒリヒリ口の乾き、抗菌薬・吸入薬の使用、免疫低下の心当たり歯科・医師へ。抗真菌薬が必要なことも
やけど・刺激によるもの熱いもの・刺激物のあとに赤み・痛み熱い汁物や辛いもののあとに痛がる刺激を避け、人肌の温度に。様子をみる
注意が必要な病変2週間以上治らない潰瘍、しこり、白い斑点が広がる、出血長引く、形が変わる、硬くなる、しびれる速やかに歯科口腔外科へ

ご家族向けセルフチェック

次の項目に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

  • 同じ場所の痛みや赤みが2週間以上続いている
  • 白い苔のようなものが口の中に広がっている
  • しこり、硬いふくらみ、出血しやすい部分がある
  • 痛みで食事や水分がとれず、食べる量が明らかに減った
  • 発熱や、首のリンパ節の腫れを伴う
  • 口が開けにくい、飲み込みにくい、舌や唇がしびれる
  • 入れ歯が合わず、いつも同じ場所が傷ついている

ひとつでも当てはまる場合は、後半の「受診の目安」も確認したうえで、早めに歯科や医師に相談することをおすすめします。とくに「2週間以上治らない」「しこりがある」「痛みが少なくても形が変わっていく」場合は、放置せず受診してください。

家庭でできる口腔ケアと食事・義歯の工夫

口内炎の多くは、口の中を清潔に保ち、乾燥を防ぎ、刺激を減らすことで和らいでいきます。痛がっているからと口腔ケアを完全にやめてしまうと、かえって細菌が増えて悪化することがあるため、「やさしく、無理のない範囲で続ける」のがコツです。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、口内炎があるときも口腔ケアを続けることの大切さが示されています。ここでは家庭でできる工夫を4つの柱で紹介します。

1. 口の中を清潔に保つ(やさしく)

  • 毛がやわらかく、ヘッドの小さい歯ブラシを使い、力を入れずにみがきます。痛い部分には無理に触れないようにします。
  • 歯ブラシが当たって痛いときは、スポンジブラシやワンタフトブラシ、ポイントブラシなど小さな道具で、痛い部分を避けてケアします。
  • うがいで口の中をすすぎ、清潔とうるおいを保ちます。水や、薄い食塩水(500mlの水に小さじ1杯ほどの塩)を1日数回が目安です。アルコールの強い洗口液は粘膜にしみるため避けます。
  • うがいが難しい方は、スポンジブラシを水やうがい薬で湿らせて、口の中をやさしく拭くだけでも効果があります。

2. 乾燥を防いで保湿する

  • こまめに水分をとり、口の中が乾かないようにします。
  • 市販の口腔保湿ジェルやスプレーで、粘膜を潤します。スプレータイプは、夜間に目が覚めたときや外出時にも使いやすいです。
  • 唇が乾いて切れると痛むため、ワセリンなどで唇や口角も保湿します。

3. 食事を工夫する

痛みがあるときは、刺激の少ない、やわらかく食べやすいものを選びます。

  • やさしい味・薄味に。塩分・酸味・香辛料の強いもの(カレー、キムチ、酢の物、せんべいなど)は避けます。
  • やわらかく、のどごしよく。おかゆ、茶碗蒸し、豆腐、シチュー、スープ、バナナ、ヨーグルトなどが食べやすい例です。固いもの・乾いたものは刻む、とろみをつけるなどの工夫を。
  • 温度は人肌に。熱いものはやけどや刺激になるため、少し冷ましてから出します。
  • 食べられないときは、栄養補助食品やバランス栄養飲料も活用し、たんぱく質やビタミンが不足しないようにします。

4. 入れ歯(義歯)を見直す

  • 毎食後に入れ歯を外し、流水で食べかすを洗い、入れ歯用ブラシで清掃します。夜は外して洗浄剤で洗い、水を入れた容器に保管します。
  • 入れ歯を外したときに、当たって赤くなっている所や傷がないか観察します。同じ場所が傷ついている場合は、入れ歯が合っていないサインです。
  • 痛みが強いときは、無理に入れ歯を入れず、歯科で調整してもらいます。自分で削ったり曲げたりせず、必ず歯科に相談しましょう。

これらのケアを2週間ほど続けても改善しない、あるいは悪化する場合は、次の「受診の目安」を参考に、歯科や医師への相談を検討してください。

口の痛みを「口の中のSOS」として読み解く

口内炎は「よくあること」と軽く見られがちですが、高齢の方にとっては全身の健康とつながる入口でもあります。ここでは、当サイトがこれまで扱ってきた高齢者の口まわりのトラブル記事と公的資料を横断して、口内炎・口の中の痛みをどう位置づけて見ればよいかを整理します。

「口の痛み」は食事量・体力の低下につながる連鎖の起点

口の中が痛いと、食べる量や水分が減ります。国立がん研究センターのがん情報サービスでは、口内炎の痛みが食事や睡眠を妨げ、体力の低下につながることが指摘されています。食べられない状態が続くと、低栄養や脱水を招き、さらに粘膜が弱くなって口内炎が治りにくくなる、という悪循環に陥りやすくなります。つまり、口内炎への早めの対応は、単に痛みをとるだけでなく、低栄養や体力低下の予防にもつながります。ご家族が「食事量の変化」を観察する意味は、ここにあります。

口の乾き・口腔ケア・誤嚥との地続きの関係

当サイトでは、口の乾き(ドライマウス)、家族で行う口腔ケア、義歯ケア、誤嚥性肺炎の予防などを別々の記事で扱ってきました。これらは実はひとつながりです。口が乾けば口内炎ができやすく、口内炎が痛めば口腔ケアがおろそかになり、口の中が汚れると細菌が増え、誤嚥性肺炎のリスクも上がります。逆に言えば、口内炎をきっかけに口腔ケアと保湿を見直すことは、口の中全体の健康、ひいては肺炎予防にもつながる前向きな機会になります。口内炎を「口の中のSOS」として受け止めると、対応の優先順位が見えてきます。

「痛くないから大丈夫」とは限らない

家庭で見落とされやすいのが、「痛くないからまだ平気」という思い込みです。しかし、口腔がんは初期には痛みが少ないことがあり、痛みの有無だけで安心はできません。健康長寿ネットも、治りの悪いものや原因のはっきりしないものは、重要な粘膜の病気が隠れている場合があるとして、歯科への相談をすすめています。痛みの強さよりも、「2週間という時間」「形・色・硬さの変化」を判断材料にするのが安全です。これは、家庭での観察で十分にチェックできるポイントです。

このように、口内炎・口の中の痛みは、栄養・口腔ケア・全身状態と切り離せません。ご家族が日々の食事と口の中を少し気にかけるだけで、早期発見と重症化の予防に大きく役立ちます。

受診の目安と何科にかかるか

家庭でのケアで様子をみてよい口内炎と、早めに受診したほうがよい口内炎があります。判断の軸は「治るまでの期間」と「見た目・状態の変化」、そして「全身症状」です。次のサインを目安にしてください。

こんなときは受診を(受診の目安)

  • 2週間以上治らない。複数の歯科口腔外科が、2週間を超えて治らない口内炎は受診のサインとして挙げています。国立がん研究センターの情報でも、口の中の痛みやしみる・飲み込みにくいなどの症状が続くときは医療者に相談するよう示されています。
  • しこりや硬いふくらみがある。盛り上がる、硬くなる、出血しやすい部分がある。
  • 白い斑点・赤い斑点が広がる。こすっても取れない白い部分や、赤くただれた部分が広がる。
  • 形・色・大きさが変化していく。痛みが弱くても、見た目が変わり続ける場合は要注意です。
  • 痛みで食事・水分がとれない。食べる量・飲む量が明らかに減っている。
  • 発熱や、首のリンパ節の腫れを伴う
  • 口が開けにくい・飲み込みにくい・舌や唇がしびれる
  • 入れ歯が当たって同じ場所が傷つき続ける

とくに、痛みが少なくても2週間以上治らない潰瘍やしこりは、まれに口腔がんが隠れていることがあります。怖がらせるためではなく、早く調べれば対応しやすいという意味で、早めの受診が安心につながります。

何科を受診すればよい?

口内炎・口の中の痛みの相談先は、基本的に次のとおりです。

  • まずは歯科・歯科口腔外科。入れ歯の当たり、口腔カンジダ症、長引く潰瘍やしこりの精密な検査(視診・触診・必要に応じて細胞診や組織検査)まで対応できます。かかりつけの歯科があれば、まずそこに相談してよいでしょう。
  • 通院が難しい場合は訪問歯科。寝たきりや外出が困難な方には、自宅に来てくれる訪問歯科という選択肢があります。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると紹介を受けられます。
  • 薬の影響が疑われるとき。原因が薬の副作用と思われる場合は、その薬を処方した医師・薬剤師にも相談します。自己判断で薬をやめないことが大切です。
  • 全身症状を伴うとき。発熱や強い体調不良を伴う場合は、かかりつけの内科にも相談しましょう。

受診の際は、いつから・どこに・どんな症状が出ているか、食事量の変化、使っている入れ歯や薬の情報をメモして持っていくと、診察がスムーズになります。本人がうまく説明できない場合は、ご家族が気づいた変化を伝えてあげてください。

毎日の生活に取り入れたいちょっとした工夫

毎日の生活の中で、ご家族がちょっと意識するだけで、口内炎の予防や早期発見に役立つことがあります。無理なく続けられるものから取り入れてみてください。

  • 食事のときに口の中をのぞく習慣を。入れ歯を外したタイミングや歯みがきの前に、口の中を明るい場所でさっと見るだけで、変化に早く気づけます。
  • 「食べ方の変化」をサインと捉える。急に食べる量が減った、片側だけで噛む、特定のものを残すようになったら、口の中の痛みを疑ってみましょう。
  • 水分と保湿をセットで。食事の前に少し水分をとり、口を湿らせてから食べると、痛みや乾燥がやわらぎます。
  • 熱いものは少し冷ます。感覚が鈍くなっている方はやけどに気づきにくいので、汁物やお茶は人肌程度にしてから。
  • 入れ歯は定期的に歯科でチェック。痛みが出る前に、半年に一度などの目安で入れ歯の当たりを見てもらうと、義歯性口内炎の予防になります。
  • 栄養はこまめに、バランスよく。ビタミンB群やたんぱく質を含む食品(卵、納豆、魚、乳製品など)を、少量ずつでも毎日とれるよう工夫します。
  • 記録を残す。「いつから・どこに・どんな様子か」をメモや写真で残しておくと、受診時に変化を正確に伝えられます。

すべてを完璧にやろうとすると、ケアする側が疲れてしまいます。できることから、できる範囲で。気になることがあれば、ひとりで抱えずに歯科やケアマネジャーに相談してください。

よくある質問

Q. 高齢の親の口内炎は、何日くらいで治りますか?

A. 一般的なアフタ性口内炎は、おおよそ1〜2週間で自然に治ることが多いとされています。ただし高齢の方は治りが遅くなりやすく、2週間を超えても治らない、しこりがある、形が変わっていくといった場合は、自己判断で様子をみ続けず、歯科や歯科口腔外科に相談してください。

Q. 口の中に白い苔のようなものが見えます。これは何ですか?

A. こすると取れるような白い膜で、その下が赤くただれている場合は、口腔カンジダ症(カンジダ性口内炎)の可能性があります。高齢の方や口が乾いている方、抗菌薬や吸入ステロイドを使っている方に多くみられます。軽ければ口腔ケアで改善することもありますが、広がる・痛みが強い場合は抗真菌薬が必要なこともあるため、歯科や医師に相談しましょう。

Q. 口内炎の薬は市販のものを使ってよいですか?

A. 痛みをやわらげる目的で市販の塗り薬などを使うことはありますが、市販薬は診断や原因の治療の代わりにはなりません。とくに2週間以上治らない場合は、市販薬で様子をみ続けず受診が必要なサインです。持病や飲んでいる薬がある高齢の方は、使う前に薬剤師に相談すると安心です。

Q. 入れ歯が当たって痛むようです。家で削ってもよいですか?

A. 自分で入れ歯を削ったり調整したりするのは避けてください。かみ合わせが崩れて、かえって別の場所を傷つけることがあります。痛むときは無理に入れ歯を入れず、歯科で調整してもらいましょう。外出が難しい場合は訪問歯科という方法もあります。

Q. 痛がっていても口腔ケアは続けたほうがよいですか?

A. はい。痛いからとケアを完全にやめると、口の中が汚れて細菌が増え、かえって悪化することがあります。やわらかい歯ブラシやスポンジブラシで、痛い部分を避けてやさしく行い、うがいや拭き取りで清潔と保湿を保ちましょう。無理のない範囲で続けることが大切です。

Q. 受診はまず何科に行けばよいですか?

A. 基本は歯科・歯科口腔外科です。入れ歯の調整、口腔カンジダ症の治療、長引く潰瘍やしこりの検査まで対応できます。薬の副作用が疑われる場合は処方元の医師・薬剤師に、発熱など全身症状があるときはかかりつけの内科にも相談してください。

参考文献・出典

  • [1]
    高齢者の口内炎- 公益財団法人長寿科学振興財団(健康長寿ネット)

    高齢者の口内炎の分類(義歯性・アフタ性・カンジダ性など)と、治りの悪いものは歯科受診が必要との解説

  • [2]
    口内炎・口内の乾燥- 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス

    口内炎・口腔乾燥の原因(薬の副作用・免疫低下・栄養・入れ歯など)、家庭でできる口腔ケアと食事の工夫、相談の目安

  • [3]
    お口のなんでも相談「痛い」- 公益社団法人日本歯科医師会

    口やお口の痛みの多様な原因と、症状があるときはかかりつけ歯科医師に相談するという受診の考え方

まとめ:気づいたら、ひとりで抱えず相談を

高齢の方の口内炎や口の中の痛みは、入れ歯の当たり、口の乾き、栄養不足、口腔カンジダ症、薬の副作用、免疫の低下など、いくつもの原因が重なって起こりやすく、若い人より治りにくいのが特徴です。家庭では、口の中をやさしく清潔に保ち、しっかり保湿し、刺激の少ない食べやすい食事に変え、入れ歯を見直すことが基本のケアになります。

同時に大切なのが、受診のサインを見逃さないことです。2週間以上治らない潰瘍やしこり、広がる白い斑点、形・色・硬さの変化、痛みで食べられない、発熱を伴うといった場合は、痛みの強さにかかわらず、歯科や歯科口腔外科に相談してください。通院が難しいときは訪問歯科、薬が原因と思われるときは処方元の医師・薬剤師という相談先もあります。

本人は痛みをうまく伝えられないことがあります。食事量や機嫌、口元の様子といった日々の小さな変化に気づけるのは、いちばん近くにいるご家族です。気になることがあれば、ひとりで抱え込まず、歯科やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談してください。早めの一歩が、ご本人の「食べる楽しみ」と元気を守ることにつながります。

監修者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連トピック

介護の現場・介護職の視点

同じテーマを介護の現場で働く方の視点から書いた記事。専門家の見方も知っておきたい時に。