親の呼び寄せか実家に残すか|一人暮らし高齢親の判断基準と引っ越し後の介護体制設計
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親の呼び寄せか実家に残すか|一人暮らし高齢親の判断基準と引っ越し後の介護体制設計

一人暮らしの高齢親を呼び寄せるか実家に残すか判断する基準を、要介護度・認知機能・本人意思・住環境・家族関係の5軸で整理。リロケーションダメージや介護保険の住所変更手続きまで網羅。

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親を呼び寄せるか実家に残すかの判断は、要介護度・認知機能・本人意思・住環境・家族関係の5軸で行います。要介護2以上で認知症の中核症状が進んでいる場合、引っ越し自体が「リロケーションダメージ」を招き症状を悪化させる恐れがあるため、実家継続+介護保険サービスの集中投入が第一選択になることが多い一方、要支援〜要介護1で本人が同居を希望し住環境が整っているなら呼び寄せでも比較的安全に移行できます。判断は段階的に、近居→同居の順で進めるのが基本です。

目次

一人暮らしの親が80代を超え、転倒や物忘れの兆候が見え始めると、家族の頭をよぎるのが「呼び寄せるべきか、実家に残すべきか」という重い問いです。住み慣れた家を離れたくない親と、距離が遠くて緊急時に駆けつけられない子。どちらの選択にも一長一短があり、片方を選んだ後で「やはり違った」と方針転換するケースも少なくありません。

本記事では、内閣府「令和7年版高齢社会白書」や厚生労働省「国民生活基礎調査」などの公的データをもとに、判断を5つの軸で整理します。リロケーションダメージ(環境変化による心身への悪影響)、介護保険被保険者証の住所変更、新ケアマネジャー選びまで、呼び寄せ後・実家継続後それぞれの介護体制の組み立て方も実務レベルで解説します。判断を急がず、まずは中間策(短期帰省・ショートステイ)で様子を見るという選択肢にも触れます。

呼び寄せの実態:内閣府高齢社会白書から見る一人暮らし高齢者

呼び寄せを検討する前に、まず日本全体で「一人暮らしの高齢親」がどれほど一般的な存在になっているかを把握しておくと、判断の視野が広がります。「うちだけの問題」ではなく、社会全体が直面している構造的課題であることが分かるためです。

一人暮らし高齢者は2人に1人女性で5人に1人男性

内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は、令和2年時点で男性15.0%・女性22.1%。昭和55年(男性4.3%・女性11.2%)からおよそ2倍に膨らみました。令和32年(2050年)には男性26.1%・女性29.3%に達すると推計されており、3〜4人に1人の高齢者が一人で暮らす時代が間近に迫っています。

つまり「親が一人暮らしになった」という状況自体は、もはや例外ではなく標準的なライフステージのひとつです。だからこそ、感情だけで「すぐ呼び寄せなければ」と判断する前に、本人の状態と社会資源を冷静に見立てる必要があります。

同居率は40年で7割から4割へ低下

厚生労働省「国民生活基礎調査」をもとにした内閣府データでは、65歳以上の高齢者が子と同居する割合は、昭和55年(1980年)の約7割から平成27年(2015年)には39.0%まで低下しました。この間、夫婦のみ世帯と単独世帯は大幅に増加し、令和5年時点ではそれぞれおよそ3割を占めるまでになっています。

同居率の低下は、子世代の就業地や住宅事情、価値観の変化が背景にあります。呼び寄せを選ぶか否かは、こうした社会的な趨勢の中で「自分の家族にとっての最適解」を考える問題であり、世間の標準解はもう存在しません。

主な介護者の45.9%が同居、子はそのうち16.2%

同じく厚労省「2022年国民生活基礎調査」によれば、要介護者等と主な介護者の続柄では「同居」が45.9%。同居の主な介護者のうち、配偶者が22.9%、子が16.2%、子の配偶者が5.4%と続きます。一方で「別居の家族等」が13.3%、「事業者」が15.7%と、別居や外部委託のかたちも一定の存在感を持っています。

呼び寄せて同居するか、別居のまま事業者を頼るか、両者の中間に立つ近居か。判断の余地はかなり広く、必ずしも「呼び寄せて同居」が唯一の正解ではないことが、このデータからも読み取れます。

呼び寄せのメリット・デメリット表

呼び寄せ・近居・実家継続(遠距離介護)の3つの選択肢について、メリットとデメリットを並列に整理します。家族会議の叩き台として、まずこの表を共有しておくと話が早く進みます。

3つの選択肢の比較表

項目呼び寄せ(同居)近居実家継続(遠距離)
緊急時の対応即時対応可能30分〜1時間で到着数時間〜半日
本人のストレス大(環境変化+同居)中(環境変化のみ)小(変化なし)
子の介護負担高(生活全般を担う)中(通い介護)中(事業者依存大)
経済的負担引越し費+住居改修親の家賃発生交通費が継続発生
人間関係嫁姑等のリスク適度な距離既存の友人関係維持
介護サービス家族介護中心バランス型事業者中心
特養申込み優先度下がる傾向影響少一人暮らしで上がる

「呼び寄せて後悔」が起きやすいパターン

家族介護の現場でしばしば指摘されるのは、本人の意思を十分に確認しないまま呼び寄せたケースで「帰りたい」を繰り返し、結局1年以内に施設入居やUターンを検討することになるパターンです。住み慣れた地域の友人関係・通い慣れた病院・季節の行事といった、本人にとって意味のある生活基盤が一度に失われることが背景にあります。

また、子世代の側でも「自分の家庭の生活リズム」「配偶者との関係」「子ども(孫)の受験や生活」に影響が及び、想定以上の負荷がかかります。呼び寄せ=同居がうまくいくのは、本人の主体的な希望と、子側の家族全員の合意の両方が揃った時に限られると考えておくと現実的です。

遠距離介護でも持ちこたえられる時代になっている

一方で、介護保険制度の充実、見守りサービスや遠隔モニタリング技術の進化、地域包括支援センターの整備によって、遠距離介護でも安全性を保てる選択肢が広がっています。要介護度が低く、生活機能が保たれているうちは、無理に住環境を変えず実家継続で介護保険サービスを組み合わせる方が、本人のQOLは保ちやすいと考えるケアマネジャーも多くいます。

判断軸5項目:要介護度・認知機能・本人意思・住環境・家族関係

「呼び寄せか、実家継続か」を直感で決めず、以下の5軸でスコアリングしてみてください。1軸でも「呼び寄せ非推奨」が出れば、いったん中間策で様子を見るのが賢明です。

軸1:要介護度(介護量と緊急性)

要支援1〜要介護1までは、一人暮らしの継続が比較的安全な水準です。日常生活はおおむね自立しており、訪問介護や通所介護を週数回組み合わせれば十分に在宅で支えられます。要介護2〜3は判断の分かれ目で、夜間の見守りや排泄介助の頻度が増えるため、家族のサポート密度と相談しながら呼び寄せ・近居を視野に入れます。要介護4〜5になると、24時間介護が必要になり、家族介護だけでは限界があるため、呼び寄せ同居よりも介護施設や特定施設の選択が現実的になります。

軸2:認知機能(リロケーションへの耐性)

軽度認知障害(MCI)や軽度認知症の段階までは、本人の理解と協力を得て段階的に住環境を変えれば、引っ越しに耐えられることが多いとされます。一方、中等度以上の認知症(HDS-Rで15点以下が目安)では、新しい環境への適応に著しい困難を伴い、引っ越し後にせん妄や周辺症状(BPSD)が悪化するリスクが高まります。認知症がある親を呼び寄せる場合は、専門医・ケアマネと事前に相談し、引っ越し後数週間〜数ヶ月のクライシス期に備える体制を組んでから動くことが必須です。

軸3:本人意思(主体的な決断か)

呼び寄せが成功するかどうかは、本人が「自分で決めた」と感じているかに大きく左右されます。子から強く説得されて渋々従った場合、新生活で何かうまくいかないことが起きるたび「帰りたい」「あの時引き留めていれば」という後悔と他責が表面化します。逆に本人が主体的に決断したケースでは、新環境の不便にも前向きに適応しやすい傾向があります。決断を急がせず、複数回にわたって本人の本音を聞く対話を重ねることが、後の家族関係を守ります。

軸4:住環境(受け入れる家・実家の物理条件)

子の家に呼び寄せる場合、段差・浴室・トイレ・寝室・親の専用スペースの5点を確認します。バリアフリー改修が必要なら見積もりを取り、介護保険の住宅改修費支給(最大20万円・原則1回)も活用します。一方で実家継続を選ぶ場合は、実家側のバリアフリー化、緊急通報装置の設置、福祉用具の導入を同時に進めます。「呼び寄せる物理的余地が子の家にない」だけで決まることも多いため、早めに現実を直視することが大切です。

軸5:家族関係(同居に耐えられる関係性か)

子の配偶者・孫を含めた「受け入れ家族全員」が同居に納得しているかを確認します。とくに嫁姑関係・舅婿関係は、過去の出来事や価値観の違いが介護ストレス下で噴出しやすい領域です。「自分が我慢すれば何とかなる」と1人で背負った結果、配偶者との関係が険悪化し、介護離婚に至るケースも報告されています。家族会議では、各人が「絶対に無理なこと」を1つずつ言語化し、互いの境界線を共有しておくと、後のトラブルを防げます。

リロケーションダメージ:認知症と引っ越しのリスク

呼び寄せ判断で最も慎重になるべきテーマが「リロケーションダメージ」です。施設入居や転居といった環境変化によるストレスで、心身に悪影響が及ぶ現象を指します。とくに高齢者・認知症のある人で深刻化しやすく、引っ越し直後から数週間〜数ヶ月のあいだ要注意期間が続きます。

主な症状:せん妄・認知症進行・うつ

リロケーションダメージの代表的な症状は3つあります。1つ目は「せん妄」で、急性の意識障害として現れ、幻覚・興奮・昼夜逆転・集中力低下などが一時的に出現します。多くは一過性ですが、放置すると長期化して認知機能の永続的な低下に繋がることがあります。2つ目は「認知症の進行」で、もとから軽度認知症があった人は症状が階段状に悪化し、新環境に適応できないまま日付や場所の見当識が失われます。3つ目は「うつ」で、高齢者では頭痛・胃痛・息苦しさといった身体症状として現れることが多く、本人も周囲も「うつ」と気づきにくい点が厄介です。

なぜ高齢者でリスクが高まるのか

高齢者は記憶力・空間認知・新規学習能力が低下しているため、新しい間取り・新しい家電・新しい近隣関係を一度に処理することが難しくなります。さらに、住み慣れた家には「身体が覚えている動線」が無数に存在し、それを失うことで日常生活動作(ADL)そのものが一段階低下することもあります。トイレの場所がとっさに分からなくなった結果、夜間に転倒・骨折に至るケースは介護現場でしばしば報告されています。

リロケーションダメージを和らげる5つの工夫

呼び寄せを決めた場合、以下の工夫でダメージを最小化できます。第一に、引っ越しのタイミングを春・秋など気候の穏やかな時期にする。第二に、本人の愛用家具・寝具・写真・仏壇を新居に持ち込み「自分の場所」を維持する。第三に、引っ越し前にショートステイで段階的に環境変化を体験させる。第四に、引っ越し後最低1ヶ月は、子のどちらかが日中の在宅時間を意識的に確保する。第五に、かかりつけ医・新主治医・新ケアマネの3者と早期に顔合わせし、せん妄や急変時の連絡経路を明確化しておく。

「健康なうちに早期転居」の議論

介護関係者の間では「呼び寄せるなら認知機能が保たれている健康なうちが望ましい」という見解と、「住み慣れた家での自立期間を最大化すべき」という見解が並立しています。前者は新環境への適応力に着目し、後者は本人のQOLに着目した立場です。どちらが正しいというより、本人の性格(変化に強いタイプか保守的か)、子側のキャパシティ、地理的距離などを総合的に踏まえて選ぶ問題と捉えるのが現実的です。

実家継続の場合の介護体制:地域包括・ケアマネ・見守り

呼び寄せを選ばず、親が一人暮らしのまま実家で暮らし続ける場合、子が遠方にいても安全を確保できる介護体制を組む必要があります。鍵になるのは「地域包括支援センター」「ケアマネジャー」「見守りサービス」の3点セットです。

まず地域包括支援センターへ相談

地域包括支援センターは、各市区町村が設置する高齢者支援の窓口で、対象地域に住む65歳以上の高齢者と家族が無料で利用できます。要介護認定の申請代行、ケアマネジャーの紹介、介護予防プランの作成、虐待や消費者被害の相談など、初期相談の窓口として機能します。実家継続を選ぶ家族は、親の住所地を担当する地域包括にまず連絡し、子の連絡先を登録しておくことが第一歩です。緊急時の連絡経路ができるだけで、遠距離介護の不安が大幅に軽減します。

ケアマネジャーとサービスの組み立て

要介護認定が下りたら、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)と契約し、ケアプランを作成してもらいます。一人暮らしの場合、訪問介護(生活援助・身体介護)、通所介護(デイサービス)、訪問看護、ショートステイの4種を主軸に組み立てるのが標準です。ヘルパーが入る曜日を分散させることで、毎日誰かが安否を確認する状態をつくれます。ケアマネとの月1回のモニタリング時に、子が同席または電話会議で参加すると、認識のずれを防げます。

見守りサービス・福祉用具・住宅改修の活用

緊急通報装置(自治体補助あり)、人感センサーによる安否確認サービス、電気・水道使用量から異常を検知するサービス、訪問員型の見守りなど、選択肢は多様化しています。介護保険の福祉用具貸与(手すり・歩行器・特殊寝台等)と住宅改修費支給(段差解消・手すり設置等、最大20万円)も合わせて活用すると、転倒リスクを下げられます。子側は週1回程度の電話、月1回程度の帰省、季節ごとの集中滞在を組み合わせ、長期戦に耐えるリズムを作ります。

「特養の入所優先度」という観点

一人暮らしの高齢者は、家族と同居している人に比べて特別養護老人ホームへの入所申込時の優先度が上がる傾向があります。これは介護の必要度評価で「介護者の状況」が考慮されるためです。将来的に施設入所を視野に入れる場合、現時点で一人暮らしを継続している方が、結果として希望する施設に入りやすくなる場合もあります。呼び寄せの判断にあたっては、こうした制度面での影響も含めて検討すると視野が広がります。

呼び寄せ後の介護体制:住所変更・受給者証・新ケアマネ

呼び寄せを決断したら、引っ越しから2週間以内にやるべき手続きが集中します。介護保険の住所変更、新地域でのケアマネ選び、医療機関の引き継ぎなど、抜け漏れがあると要介護度のリセットや給付の中断につながるため、チェックリスト化して進めます。

介護保険:転出時に「受給資格証明書」を必ず受け取る

市区町村をまたぐ転居の場合、転出元の介護保険窓口で「介護保険被保険者証」を返納し、要介護認定を受けている人は「介護保険受給資格証明書」を発行してもらいます。これは現在の要介護度を引き継ぐための重要書類です。転入先では14日以内に、転入届と一緒にこの証明書を提出してください。14日を超えると新たに要介護認定の申請が必要になり、認定結果が出るまでの約30日間、暫定ケアプランで進めることになる上、結果として要介護度が下がる可能性もあります。同一市区町村内の転居でも、被保険者証の住所書換は必要です。

住所地特例:施設入居の場合は別ルール

呼び寄せ先が「住所地特例対象施設」(特養・老健・有料老人ホーム等)の場合、住所だけ移しても保険者は元の市区町村のままになる「住所地特例」が適用されます。転出元の市区町村に「住所地特例適用届」を提出する必要があり、提出を忘れると新住所地の市区町村に介護給付費が請求されてしまい、後日精算で混乱します。子の家への呼び寄せ(一般住宅)の場合はこの特例は適用されず、新住所地の市区町村が新たな保険者になります。

新地域のケアマネジャーをどう選ぶか

転入先の地域包括支援センターに連絡し、エリア内の居宅介護支援事業所をいくつか紹介してもらいます。事業所には複数のケアマネが在籍しているので、相性・対応可能エリア・経験分野(認知症対応、医療連携など)を確認し、契約します。引き継ぎ時には、転出元のケアマネからケアプランや申し送り事項をもらい、新ケアマネに渡すと連続性が保たれます。本人の生活歴・好み・トラブル時の対応方法など、書面化されていない情報も口頭で伝えることが重要です。

医療機関の引き継ぎと薬の継続

かかりつけ医からの紹介状(診療情報提供書)を必ず取得し、新住所地のかかりつけ医(できれば在宅医療に対応している診療所)を早めに決めます。お薬手帳と直近数ヶ月分の処方箋を持参し、初診時にすべて見せて継続処方や代替薬の判断を仰ぎます。慢性疾患(高血圧・糖尿病・心疾患等)がある親の場合、引っ越し直後のストレスで血圧が乱高下することがあるため、転居後1〜2週間で必ず1回受診するスケジュールを組んでおきます。

判断保留中の中間策:短期帰省・ショートステイ活用

呼び寄せか実家継続か、即座に決められないときは中間策を取りましょう。判断を保留している期間も、本人と家族の安全を保つ手立てがあります。むしろ、いきなり結論を出さずに「お試し期間」を設けることで、結果的に正しい選択にたどり着きやすくなります。

短期帰省で生活を共有する

子が1〜2週間程度、まとまった休暇を取って実家に滞在する「短期帰省」は、本人の生活実態を肌で把握する最良の方法です。日中の様子、夜間の睡眠、食事の準備能力、服薬管理、入浴頻度、近隣関係などを観察すると、電話やビデオ通話だけでは見えなかった課題が次々と浮かび上がります。逆に「思っていたより自立している」「友人が頻繁に訪ねてくる」といったポジティブな発見も多く、呼び寄せの必要性を冷静に評価できるようになります。

本人をショートステイに送って試す

本人をショートステイ(短期入所生活介護)に1〜2週間預けてみることで、複数の効果が得られます。第一に、本人にとって「家以外の場所で過ごす」経験となり、将来の施設入居やリロケーションへの慣熟訓練になります。第二に、家族が一時的に介護から離れ、冷静に判断する時間と気力を取り戻せます。第三に、ショートステイ中の本人の様子(夜間の様子、認知症の症状、ADLの実際)について、職員から専門的なフィードバックを得られます。介護保険を使えば1日あたり数千円程度で利用でき、家族会議のための時間確保策としても有効です。

子が交代で帰省する「ローテーション介護」

兄弟姉妹がいる場合、月単位で交代で帰省する「ローテーション介護」も有効な中間策です。1人に負担が集中せず、兄弟間で情報共有しながら本人の状態を多角的に観察できます。LINEグループや共有メモアプリで滞在記録を残し、毎月の電話会議で介護方針を再確認すると、後で「言った言わない」のトラブルを避けられます。「あの時こうしてくれていれば」という相続時の遺恨を予防する意味でも、見える化された介護分担は重要です。

近居からはじめる「段階的呼び寄せ」

いきなり同居せず、まずは子の住む地域の賃貸住宅やサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に親が引っ越す「近居」も、有力な中間策です。本人の自立を尊重しつつ、徒歩圏内・自転車圏内に居住することで緊急対応の即時性も確保できます。半年〜1年ほど近居で過ごし、互いの生活リズムを確認した上で、同居へ移行するか、近居のまま続けるかを判断すると、後悔のない選択がしやすくなります。

参考資料

まとめ

親の呼び寄せか実家継続かは、要介護度・認知機能・本人意思・住環境・家族関係の5軸で判断します。要介護度が低く本人が住み慣れた地域に愛着を持っているなら、無理に呼び寄せず地域包括支援センターとケアマネを軸に在宅サービスを組み立てる方が、本人のQOLを保ちやすい場合が多くあります。逆に、要介護度が中等度以上で本人も同居を希望しており、子側の住環境と家族の合意が整っているなら、呼び寄せの選択も有力です。

判断に迷うときは、即決せず短期帰省・ショートステイ・近居といった中間策で試行錯誤する余地を残しましょう。呼び寄せを選んだ場合は、転出から14日以内の介護保険受給資格証明書の提出、新ケアマネ選び、医療機関の引き継ぎを抜け漏れなく進めます。リロケーションダメージのリスクを最小化するため、引っ越し時期・愛用品の持ち込み・初期1ヶ月の集中フォローを意識してください。

もっとも避けたいのは、選択肢を1つに絞り込んだまま方針転換できない状態に陥ることです。介護方針はその時々の状態に応じて柔軟に見直す前提で組み立てる方が、長期的に家族関係を保ちながら本人の尊厳ある暮らしを支えられます。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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