
2026年度介護従事者処遇状況等調査が訪問看護・訪問リハにも拡大|厚労省が実施案提示
2026年4月8日、厚労省が介護事業経営調査委員会に令和8年度処遇状況等調査の実施案を提示。訪問看護・訪問リハが初の調査対象に追加。6月施行の処遇改善加算拡充の効果検証が目的。調査概要・スケジュール・現場への影響を解説。
この記事のポイント
2026年4月8日、厚生労働省は社会保障審議会の介護事業経営調査委員会(第44回)に「令和8年度介護従事者処遇状況等調査」の実施案を提示し了承された。最大の変更点は、訪問看護事業所と訪問リハビリテーション事業所が初めて調査対象に追加されたこと。2026年6月施行の臨時介護報酬改定で処遇改善加算の対象が拡大されたことを受け、PT・OT・ST等の給与実態を初めて把握する。調査は7月実施、結果は11月頃公表予定で、令和9年度介護報酬改定の基礎資料となる。
2026年度処遇状況等調査の概要と背景
厚生労働省は毎年度、介護従事者の賃金水準や処遇改善加算の算定状況を把握するため「介護従事者処遇状況等調査」を実施しています。この調査は、介護報酬改定の効果を検証し、次回改定に向けた基礎資料を得ることが目的です。
2026年4月8日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会「介護事業経営調査委員会」(第44回)で、令和8年度(2026年度)調査の実施案が厚生労働省から提示され、委員会で了承されました。岩村正彦委員長(東京大学名誉教授)のもと、委員からは調査内容の妥当性を認める意見が出された一方、小規模事業所への配慮や回答率向上策についても議論が行われました。
今回の調査で最も注目すべき変更点は、訪問看護事業所と訪問リハビリテーション事業所が調査対象に初めて加わることです。2026年6月に施行される臨時介護報酬改定(令和8年度改定)で、処遇改善加算の対象サービスが大幅に拡大されたことを受けた対応であり、この改定効果を早期に検証する狙いがあります。
本記事では、今回の調査の具体的な変更点、調査設計の全体像、臨時改定との関連、今後のスケジュール、そして介護現場で働く方々への影響について詳しく解説します。
訪問看護・訪問リハが初の調査対象に追加された理由
介護従事者処遇状況等調査は、これまで主に特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、訪問介護、通所介護といった介護保険サービスの中核的な事業所を調査対象としてきました。訪問看護事業所や訪問リハビリテーション事業所は、処遇改善加算の対象外であったため、調査の対象に含まれていませんでした。
令和8年度臨時改定による処遇改善加算の対象拡大
2026年6月施行の令和8年度臨時介護報酬改定では、「強い経済を実現する総合経済対策」の一環として、介護従事者全般への処遇改善が図られることになりました。具体的には、介護職員等処遇改善加算の対象サービスが以下のように拡大されます。
- 訪問看護:加算率1.8%(新規追加)
- 訪問リハビリテーション:加算率1.5%(新規追加)
- 居宅介護支援等:加算率2.1%(新規追加)
これにより、訪問看護ステーションで働く看護師やPT・OT・ST(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、訪問リハビリテーション事業所のリハ専門職も、処遇改善加算の恩恵を受けられるようになります。加算対象となった以上、その効果を検証するために調査対象に加える必要が生じたわけです。
居宅介護支援事業所は従来から対象
なお、居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)については、従来から処遇状況等調査の対象に含まれており、引き続き調査が実施されます。ケアマネジャーの処遇は、近年の人材不足深刻化を背景に特に注目されており、令和8年度改定では加算率2.1%の処遇改善加算が新たに設定されました。
調査対象追加の意義
訪問看護・訪問リハの調査対象追加は、単なる手続きの拡大ではありません。以下の点で大きな意義があります。
- PT・OT・STの処遇実態が初めて公的データとして把握される:これまでリハ専門職の介護分野での給与水準は、体系的に把握されていませんでした
- 訪問看護師の介護保険分野での処遇が明らかになる:医療保険と介護保険の両方で働く訪問看護師の処遇比較が可能に
- 令和9年度改定の議論に不可欠なエビデンスとなる:加算の効果が数値で示されることで、次回改定の方向性が左右される
調査設計の全体像──抽出率・調査項目の詳細
令和8年度調査の設計は、新規追加サービスも含めた綿密な抽出率が設定されています。政府統計の一般統計調査に該当するため、今後、総務大臣の承認審査を経て確定しますが、現時点で提示された調査設計を整理します。
新規追加サービスの抽出率
訪問看護と訪問リハビリテーションについて、以下の抽出率が設定されました。
| サービス種別 | 事業所ベース抽出率 | 従事者票(看護職員) | 従事者票(リハ職・事務職) |
|---|---|---|---|
| 訪問看護 | 10分の1 | 2分の1 | 全数(1分の1) |
| 訪問リハビリテーション | 5分の1 | ─ | 全数(1分の1) |
特筆すべきは、訪問リハビリテーション事業所ではリハ職・事務職が全数調査(1分の1)となっている点です。訪問リハ事業所は小規模なところが多く、抽出による代表性確保が難しいため、対象事業所に選ばれた場合は該当職種の全職員が回答対象となります。訪問看護においても、リハ職と事務職は全数調査です。
なお、「抽出率」とは、全体の事業所・職員のうちどれだけの割合を調査対象として抜き出すかを示す数値です。例えば「10分の1」であれば、全国の訪問看護事業所のうち10カ所に1カ所が調査対象に選ばれることを意味します。
調査項目の主な変更点
令和8年度調査では、従来の調査項目に加えて以下の変更・追加が行われます。
1. ベースアップ額と定期昇給の分離把握
これまでの調査では「賃金改善額」として一括で把握していましたが、今回からベースアップ(基本給の底上げ)による改善額と定期昇給分を分離して把握する設計になっています。処遇改善加算が「一時金で配布」されたのか「恒常的な基本給引上げ」に充てられたのかを区別できるようになり、加算の質的な効果を測定できます。
2. 生産性向上・協働化上乗せ加算の算定状況
令和8年度改定で新設された上乗せ加算区分(処遇改善加算(I)ロ・(II)ロ)について、算定した理由または算定しなかった理由を把握する設問が新設されます。ケアプランデータ連携システムへの加入や生産性向上推進体制加算の取得が要件となるこの上乗せ加算が、実際にどの程度普及しているかを把握する狙いです。
3. 令和7年度補正予算の補助金使途追跡
2025年12月から2026年5月まで実施された「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」(令和7年度補正予算)について、以下の項目が調査されます。
- 補助金を申請したか否か
- 受給額と、そのうち賃金改善に充てた額・対象人数
- 職場環境改善に使った額
- 申請しなかった理由
補助金を受け取りながら適切に配分していない事業所は、この調査で実態が明らかになる可能性があります。
4. 新規対象サービス向けの専用設問
訪問看護・訪問リハビリテーション事業所に対しては、処遇改善加算を新たに算定したことによる効果や課題を問う設問が設けられる見込みです。加算算定の要件として「介護職員等処遇改善加算(IV)に準ずる要件」または「令和8年度特例要件(生産性向上や協働化の取組)」を満たす必要があり、その充足状況も把握されます。
令和8年度臨時改定の全体像──処遇改善加算拡充のポイント
今回の処遇状況等調査は、2026年6月施行の令和8年度臨時介護報酬改定の効果検証を主目的としています。この臨時改定の内容を押さえておくことで、調査の意味がより明確になります。
改定率と賃上げ目標
令和8年度介護報酬改定の改定率は+2.03%で、内訳は処遇改善分+1.95%、基準費用額(食費)の引上げ分+0.09%です。この改定により、以下の賃上げが実現される設計となっています。
- 介護従事者全般:月1.0万円(約3.3%)の賃上げ
- 上乗せ措置(生産性向上・協働化に取り組む事業所の介護職員):月0.7万円の追加
- 介護職員の最大賃上げ幅:定期昇給分0.2万円を含め、最大月1.9万円(約6.3%)
対象サービスの拡大
従来の処遇改善加算は主に「介護職員」を対象としていましたが、令和8年度改定では「介護従事者」全体に広げられました。新たに加算対象となるサービスと加算率は以下の通りです。
| サービス種別 | 加算率 | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 1.8% | 新規追加。看護師・リハ職等が対象 |
| 訪問リハビリテーション | 1.5% | 新規追加。PT・OT・STが対象 |
| 居宅介護支援 | 2.1% | 新規追加。ケアマネジャーが対象 |
加算取得の要件
新たに対象となる訪問看護・訪問リハ・居宅介護支援等の事業所が処遇改善加算を算定するには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 令和8年度特例要件:生産性向上や他法人との協働化の取組(ア~ウのいずれか)を実施
- 従来の処遇改善加算(IV)に準ずる要件:キャリアパス要件I・IIおよび職場環境等要件を満たすこと
なお、要件2の場合は、令和8年度中に対応することを「誓約」した場合、2026年6月の施行当初から加算の算定が認められます。これは、新たに加算対象となった事業所が準備期間を確保できるようにする配慮措置です。
補正予算による先行的な賃上げ支援
臨時改定に先立ち、令和7年度補正予算(2025年12月~2026年5月)では「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」として3本柱の支援が行われました。
- 介護従事者への幅広い支援:加算対象・対象外を問わず、職員1人あたり月1万円を交付
- 生産性向上・協働化に取り組む事業者への支援:職員1人あたり月0.5万円を追加交付
- 職場環境改善に取り組む事業者への支援:職員1人あたり月0.4万円の補助金
これらの補助金が実際にどのように使われたかも、今回の処遇状況等調査で検証される重要な項目です。
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委員会での議論──小規模事業所への配慮と回答率向上策
第44回介護事業経営調査委員会では、調査の実施案に対して複数の委員から重要な指摘がなされました。調査の信頼性と実効性に直結する論点を整理します。
小規模事業所の回答負担への懸念
慶應義塾大学の堀田聰子氏は、訪問看護・訪問リハビリテーションの事業所は小規模なところが非常に多く、調査への回答に手が回らないところがかなりあると懸念を表明しました。これまでも膨大だった調査にさらに追加項目が加わることで回答負担が増大するため、小規模事業所が回答しやすい支援の工夫を求めています。
この指摘は重要です。回答が集まりやすい「比較的余裕のある事業所」に偏った場合、調査結果が実態を正確に反映しない恐れがあります。特に、経営が厳しく人手不足が深刻な事業所ほど回答の余裕がなく、こうした事業所の処遇実態が把握できなくなるリスクがあります。
回答率向上のための施策
前回調査の有効回答率は59.3%でした。今回の調査では回答率向上策として、以下の方法が検討されています。
- 法人本部への一括送付:複数事業所を運営する法人に対し、本部経由で配布・回収する方式
- オンライン回答の推進:紙の調査票に加え、オンラインでの回答を可能にすることで回答の手間を軽減
効果検証の時期に関する指摘
EY新日本有限責任監査法人の泉千夏氏は、令和8年度改定は「強い経済を実現する総合経済対策」の一環としての緊急的対応であるため、調査時点(7月)では効果が十分に現れないのは当然だと指摘しました。2026年6月施行からわずか1カ月後の調査では、加算の算定手続き自体がまだ途上の事業所も多いと考えられます。
泉氏はさらに、人材流出の状況がどう変化したかについて、改めて別の時期に検証する必要があるとし、退職率・充足率・勤続年数・採用コストといった指標での追加検証を求めました。
保険者側と事業者側の温度差
委員会では、サービス提供側(事業者側)の委員からは今回の改定への謝意が示される一方、令和9年度改定では加算での対応ではなく基本報酬の引き上げを求める声が上がりました。一方、保険者側の委員からは今回改定の効果検証をしっかり行った上で、次期改定ではメリハリを付けた改定を求める声が出されています。この温度差は、今後の改定議論における重要な論点となります。
調査の4層構造──厚労省が本当に知りたいこと
今回の処遇状況等調査の目的は「介護従事者の処遇の状況及び処遇改善加算の影響等の評価を行うとともに、介護報酬改定のための基礎資料を得ること」と記載されています。一見シンプルな目的ですが、その背景には4つの層にわたる問題意識が重なっています。
第1層:処遇改善加算が実際に賃上げに結びついたかの検証
国は加算を設けるだけでなく、それが「誰に」「どれだけ」「どのような方法で」配分されたかを確認したいと考えています。加算を取得しながら実質的な賃金改善が進んでいない事業所があるとすれば、それが制度設計の問題なのか、事業所側の運用の問題なのかを切り分ける必要があります。
特に今回は、ベースアップ額と定期昇給を分離把握する設計が導入されたことで、「加算を一時金で配布して終わり」という対応と「基本給の恒常的な引上げに充当」した対応を区別して評価できるようになります。
第2層:新設加算区分(生産性向上・協働化上乗せ)の検証
令和8年度改定では、生産性向上推進体制加算の取得やケアプランデータ連携システムへの加入を条件とした上乗せ加算区分が新設されました。ICT導入やロボット活用といった業務効率化と賃金改善が実際にセットで機能しているか、その実態を初めて調査で把握しようとしています。
第3層:補正予算補助金の使途追跡
令和7年度補正予算で措置された賃上げ・職場環境改善支援事業について、補助金を申請したか、いくら受け取ったか、そのうち賃金改善に回した額と対象人数、職場環境改善に使った額、申請しなかった理由まで詳細に把握する設計になっています。この調査は、補助金の「出口管理」として機能します。
第4層:令和9年度改定の根拠資料づくり
最も重要なのがこの層です。2026年11月頃に公表される調査結果は、介護事業経営調査委員会での報告を経て介護給付費分科会に提出され、令和9年度介護報酬改定の議論の土台となります。つまり、今夏の調査回答は、将来の加算要件・補助金設計・基本報酬の水準議論に直接つながっているのです。
事業所にとっては「面倒な調査」と感じるかもしれませんが、正確に回答することが自らの処遇改善につながるという認識が重要です。回答率が低ければ、実態を反映しない政策判断が行われるリスクがあります。
今後のスケジュールと令和9年度改定への展望
調査スケジュール
今回の処遇状況等調査は、以下のスケジュールで進められます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4月8日 | 介護事業経営調査委員会で実施案了承 |
| 2026年4~6月頃 | 介護給付費分科会への報告、総務大臣の承認審査、調査票確定 |
| 2026年6月 | 臨時介護報酬改定施行(処遇改善加算拡充開始) |
| 2026年7月 | 調査実施 |
| 2026年11月頃 | 調査結果公表(速報値) |
| 2027年度 | 令和9年度介護報酬改定の議論に活用 |
注意すべきは、調査が臨時改定施行のわずか1カ月後に実施されるという点です。先述の通り、この短い期間では効果が十分に現れない可能性があります。ただし、厚労省としては「改定直後のベースライン」を押さえておくことに意義があると考えています。
総務大臣の承認審査による変更の可能性
本調査は政府統計の一般統計調査に該当するため、総務大臣の承認審査を経る必要があります。この過程で抽出率等に変更が生じる可能性があることに留意が必要です。特に訪問看護・訪問リハビリテーションの抽出率については、事業所数や調査負担を考慮した調整が行われる可能性があります。
令和9年度改定への影響
令和9年度(2027年度)は、3年に1度の定期改定の年に当たります。今回の処遇状況等調査の結果は、定期改定の議論に以下のような形で影響を与えると考えられます。
- 加算率の見直し:処遇改善が不十分と判明した場合、加算率の引上げが議論される
- 基本報酬への移行:加算ではなく基本報酬に組み込むべきとの議論が加速する可能性
- 要件の見直し:生産性向上・協働化の上乗せ要件が過度に厳しい場合、要件緩和の検討
- 新規対象サービスの加算率調整:訪問看護・訪問リハの加算効果が不十分であれば、加算率の引上げ
介護人材確保政策全体への波及
処遇改善は介護人材確保の最重要施策の一つです。2023年度から2024年度にかけて、要介護認定者等が2.1%増加する一方で介護職員数は増加していないという厚労省のデータがあります(GemMed報道)。処遇改善の効果が十分でなければ、他産業への人材流出が加速し、介護サービスの提供体制に深刻な影響を及ぼしかねません。
今回の調査は、「処遇改善に投じた公費が、人材確保という政策目標にどの程度貢献したか」を測る重要な指標となります。
介護現場で働く方への影響──転職・キャリア判断のポイント
今回の処遇状況等調査と臨時改定は、介護現場で働く方々のキャリア判断にも影響を与えます。サービス種別ごとにポイントを整理します。
訪問看護ステーションで働く方
訪問看護ステーションは、2026年6月から処遇改善加算(加算率1.8%)を算定できるようになります。看護師だけでなく、訪問看護ステーションに所属するPT・OT・STも対象です。
ただし、全ての事業所が加算を算定するとは限りません。加算取得には一定の要件充足が必要であり、小規模事業所では対応が難しいケースもあります。転職を検討している方は、応募先の事業所が処遇改善加算を算定しているか(または算定予定か)を確認することが重要です。
訪問リハビリテーション事業所で働くPT・OT・ST
訪問リハビリテーション事業所のリハ専門職にとって、今回の改定は大きな転換点です。これまで処遇改善加算の恩恵を受けられなかったPT・OT・STが、初めて加算対象となります(加算率1.5%)。
また、今回の調査で処遇実態が初めて公的データとして把握されることも重要です。リハ専門職の介護分野での給与水準が「見える化」されることで、適正な処遇に向けた議論が進むことが期待されます。
居宅介護支援事業所のケアマネジャー
ケアマネジャーの処遇改善は長年の課題でした。居宅介護支援事業所は加算率2.1%と、新規追加サービスの中では最も高い加算率が設定されています。これは、ケアマネジャーの人材不足が特に深刻であることを反映しています。
従来から加算対象だった施設・事業所で働く方
特養、老健、訪問介護、通所介護等の従来から加算対象だったサービスでも、令和8年度改定で加算率が引き上げられています。特に訪問介護では最大28.7%の処遇改善加算率が設定されるなど、大幅な拡充が図られています。
これらの事業所で働く方にとっては、自身の給与明細で処遇改善加算分がどのように反映されているかを確認し、不明点があれば事業所に問い合わせることが大切です。
転職を検討中の方へ
処遇改善の流れは今後も続くと見込まれます。転職先を選ぶ際には以下の点を確認しましょう。
- 処遇改善加算の算定区分(I~IVのどれか。上位区分ほど手厚い)
- 加算分の配分方法(基本給に反映か、一時金か)
- 生産性向上・協働化の上乗せ加算を算定しているか
- ICT・介護ロボットの導入状況(業務負担軽減の指標にもなる)
よくある質問(FAQ)
よくある質問(FAQ)
Q. 介護従事者処遇状況等調査とは何ですか?
A. 厚生労働省が毎年度実施する調査で、介護事業所で働く従事者の賃金水準、処遇改善加算の算定状況、加算分の配分方法などを把握するためのものです。調査結果は介護報酬改定の基礎資料として活用されます。2026年度調査では、訪問看護・訪問リハビリテーション事業所が初めて対象に加わりました。
Q. 訪問看護・訪問リハの処遇改善加算はいつから始まりますか?
A. 2026年6月施行の臨時介護報酬改定から開始されます。訪問看護の加算率は1.8%、訪問リハビリテーションは1.5%です。ただし、加算の算定には一定の要件を満たす必要があり、全ての事業所が自動的に対象となるわけではありません。
Q. 調査対象に選ばれた事業所は必ず回答しなければなりませんか?
A. 本調査は政府統計の「一般統計調査」に該当し、法的な回答義務(統計法に基づく報告義務)があります。ただし、罰則は設けられておらず、実質的には任意回答に近い形で運用されています。前回調査の有効回答率は59.3%でした。なお、正確な調査結果は介護報酬の適正な改定につながるため、対象事業所にはできる限り回答することが推奨されます。
Q. 調査結果はいつ、どこで公表されますか?
A. 2026年11月頃に介護事業経営調査委員会で速報値が報告され、その後介護給付費分科会に提出される予定です。結果は厚生労働省のホームページおよびe-Stat(政府統計の総合窓口)で公開されます。
Q. 処遇改善加算の月1万円は全員がもらえるのですか?
A. 「職員1人あたり月1万円」は事業所に交付される加算額の目安であり、個々の職員への配分額は事業所の裁量に委ねられます。管理者が配分方法を決定するため、職員によって増加額は異なります。事業所には加算分の使途を職員に周知する義務があり、不明な点は事業所に確認してください。
Q. この調査結果は自分の給料に影響しますか?
A. 直接的に給料を変えるものではありませんが、調査結果は令和9年度(2027年度)介護報酬改定の基礎資料となります。調査で処遇改善が不十分と判明すれば、さらなる加算の拡充や基本報酬の引上げが議論される可能性があり、間接的に将来の給与水準に影響します。
参考文献・出典
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まとめ
2026年4月8日、厚生労働省が介護事業経営調査委員会に提示した令和8年度介護従事者処遇状況等調査の実施案は、介護従事者の処遇改善政策における重要な一歩です。
今回の調査のポイントを整理します。
- 訪問看護・訪問リハビリテーション事業所が初めて調査対象に追加:PT・OT・STの介護分野での処遇実態が、初の公的データとして把握される
- 2026年6月施行の臨時改定の効果検証が主目的:処遇改善加算の対象拡大(訪問看護1.8%、訪問リハ1.5%、居宅介護支援2.1%)の効果を早期に検証
- ベースアップと定期昇給の分離把握:加算が恒常的な賃金改善に結びついているかを初めて区別して測定
- 補正予算補助金の使途追跡:令和7年度補正予算の賃上げ支援事業がどのように使われたかを詳細に把握
- 調査は7月実施、結果は11月頃公表:令和9年度介護報酬改定の基礎資料として活用される
委員会では、小規模事業所の回答負担への配慮、改定直後の調査時期の妥当性、人材流出指標での追加検証の必要性など、実質的な議論が行われました。
介護現場で働く方々にとって、この調査は「自分の処遇改善に直結する制度の入り口」として認識すべきものです。処遇改善加算を算定している事業所で働いているか、加算分が適切に配分されているかを確認し、今後の改定動向にも注目していくことが大切です。
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