スキンテア(皮膚裂傷)の予防とケア|介護職が現場でできる対策と発生時の対応
介護職向け

スキンテア(皮膚裂傷)の予防とケア|介護職が現場でできる対策と発生時の対応

高齢者に多いスキンテア(皮膚裂傷)。介護職が移乗・更衣・入浴の場面でできる予防、保湿・栄養、発生時の応急対応と看護師連携、STAR分類の見方までを実践的に解説します。

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スキンテア(皮膚裂傷)とは、摩擦やずれによって皮膚が裂けて生じる、真皮深層までの損傷です。高齢者の脆弱な皮膚に起こりやすく、移乗・更衣・入浴・テープ剥離などの日常介助が主な発生場面です。介護職の役割は「予防(介助技術・保湿・栄養・環境整備)」と「発生時の保護・即時報告」で、創の評価や処置は看護師・医師が担います。下から大きな面で支える、引きずらない、1日2回以上の保湿が基本です。

目次

「絆創膏を剥がしたら、テープと一緒に皮膚がめくれてしまった」「車いすへ移乗するとき、前腕がフレームに擦れて皮膚が裂けた」——介護の現場で、こうした皮膚の裂傷に出会ったことのある人は少なくないはずです。これがスキンテア(皮膚裂傷)です。

高齢者の皮膚は加齢とともに薄く、乾燥し、表皮と真皮の結合がゆるくなります。そのため、健康な成人なら何でもない程度の摩擦やずれでも、皮膚が紙のように裂けてしまいます。スキンテアの多くは介助の場面で起こるため、「ケアによって生じた傷」と誤解され、現場のスタッフが自分を責めてしまうことも珍しくありません。

しかし、スキンテアは正しい知識と介助技術で「予防できる」損傷です。そして、発生してしまっても、介護職が冒頭で適切に保護し、すぐに看護師へつなぐことで、悪化や感染を防げます。この記事では、介護職が現場で実際にできる予防策と発生時の対応を、日本創傷・オストミー・失禁管理学会のベストプラクティスなど一次情報をもとに整理します。創の評価や治療は看護師・医師の領域ですが、その手前で最も重要な「予防」と「発見・報告」を担うのは、毎日利用者の身体に触れる介護職です。

スキンテア(皮膚裂傷)とは|定義と高齢者に多い理由

スキンテア(皮膚裂傷、skin tear)は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会によって「摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)」と定義されています。圧迫ではなく、こすれる力(摩擦)と引っ張られてずれる力(ずれ)が主な原因である点が特徴です。

なぜ高齢者に多いのか

加齢により、高齢者の皮膚には次のような変化が起こります。これらが重なることで、わずかな外力でも皮膚が裂けやすくなります。

  • 表皮と真皮の結合がゆるむ:皮膚の層どうしが剥がれやすくなる
  • 皮脂・天然保湿因子の減少:乾燥(ドライスキン)が進み、バリア機能が低下する
  • 表皮の萎縮・菲薄化:皮膚が薄くなり、衝撃を受け止めにくくなる
  • 血管の脆弱化:軽い打撲でも内出血(老人性紫斑)を起こしやすい

こうした「皮膚が局所的または全身的に脆弱・菲薄化した状態」はスキンフレイルと呼ばれ、スキンテアの前段階と位置づけられています。ティッシュペーパーのように白くカサカサして薄い皮膚や、痛みやかゆみのない紫色のアザ(老人性紫斑)が繰り返しできる皮膚は、スキンテアのハイリスクサインです。

好発部位は「四肢、特に上肢」

日本創傷・オストミー・失禁管理学会の実態調査では、スキンテアは四肢に発生しやすく、特に上肢(前腕・上腕・手の甲)に集中することが報告されています。具体的には右上肢32.6%、左上肢32.5%と、上肢だけで全体の約3分の2を占めます。これは、移乗や更衣のときに腕をつかんだり支えたりする機会が多く、ベッド柵や車いすのフレームに擦れやすい部位だからです。

褥瘡・IAD・MDRPU・表皮剥離との違い

スキンテアは、見た目が似ている他の皮膚障害と混同されがちです。原因(力のかかり方)が違うと、予防策も変わります。介護職が「これは何が原因で起きたのか」を正しく見分け、看護師に伝えられると、再発防止につながります。

褥瘡(じょくそう)との違い

褥瘡は、骨の出っ張りなどに体重が長時間かかり続ける「圧迫」と「ずれ」によって、皮膚や深部組織が壊死する慢性の創傷です。仙骨部やかかとなど、寝ている・座っている姿勢で圧がかかる部位に起こります。一方スキンテアは、こすれる・引っ張られるといった瞬間的な外力で皮膚が裂ける急性の損傷で、上肢など圧迫とは関係ない部位に多く発生します。

IAD(失禁関連皮膚炎)との違い

IADは、尿や便が皮膚に触れ続けることで起こる化学的な刺激による皮膚炎です。陰部・臀部・鼠径部など排泄物が触れる範囲に生じます。摩擦・ずれが原因のスキンテアとは発生機序も部位も異なります。

MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)との違い

MDRPUは、医療用機器(弾性ストッキング、酸素マスク、チューブ類など)の圧迫によって生じる創傷です。スキンテアが摩擦・ずれによる「裂け」であるのに対し、MDRPUは機器による持続的な「圧迫」が原因です。

単なる表皮剥離との違い

表皮剥離は皮膚の最も表面の層がめくれた状態で、年齢を問わず起こります。スキンテアは真皮深層までおよぶ部分層損傷で、皮膚が脆弱な高齢者に特有という点が異なります。見た目で判断しづらく、看護師でも「表皮剥離すべてをスキンテアと認識してしまう」など知識のばらつきが報告されているため、迷ったら自己判断せず看護師に評価を依頼するのが安全です。

褥瘡の予防について詳しくは褥瘡(じょくそう)予防とはもあわせてご覧ください。

どんな人がスキンテアになりやすい?|リスクアセスメント

スキンテアは「起こってから対応する」よりも「起こさない」ことが何より重要です。そのためには、どの利用者がハイリスクなのかを事前に把握しておきます。リスクは大きく「皮膚そのものの脆弱性」と「外力が加わる要因」の2つに分けて考えると整理しやすくなります。

皮膚が脆弱になりやすい要因(全身状態)

  • 低栄養状態:尾道市病院医師会の調査でも、スキンテアの発生要因として看護師が最も多く挙げた項目。皮膚の修復に必要なたんぱく質が不足する
  • 加齢・フレイル:心身が衰えた状態は皮膚の脆弱性と直結する
  • ステロイド・抗凝固薬の使用:皮膚を薄くしたり、出血・内出血を起こしやすくする
  • 乾燥(ドライスキン):バリア機能が低下し、ひび割れから損傷しやすくなる
  • 低活動性:動かないことで皮膚への血流や栄養が滞る

外力が加わりやすい要因

「本人の動き」と「ケアによる外力」の両面があります。次のいずれか1項目でも当てはまれば、外力によるリスクがあると考えます。

  • 本人の行動:痙攣・不随意運動、不穏行動、ベッド柵や車いすに身体をぶつける
  • ケアの場面:体位変換・移乗介助、入浴・清拭などの清潔ケア、更衣介助、リハビリテーション、医療用テープの貼付、抑制具・リストバンドの使用

これらに当てはまる利用者は、申し送りやケアプランで「スキンテア注意」と共有し、皮膚状態を毎日のケアで観察する習慣をつけます。皮膚が「白くカサカサして薄い」「つまむと容易に伸びる・離しても戻らない」「紫色のアザが繰り返しできる」場合は、スキンフレイルとして早めに予防を開始します。

介護職ができるスキンテア予防5つの柱

日本創傷・オストミー・失禁管理学会のベストプラクティスでは、スキンテアの予防方法を「①衣類の工夫」「②環境整備」「③介助方法」「④スキンケア(保湿)」「⑤栄養」の5つの柱で整理しています。これは大きく「保護(外力を減らす)」「保湿」「栄養」の3方向にまとめられます。介護職が日々のケアで実践できる具体策を順に見ていきます。

①衣類の工夫で皮膚を覆う

  • 長袖・長ズボンを基本にし、露出した四肢を布で保護する
  • アームカバー・レッグカバーを使い、特にリスクの高い前腕を覆う
  • ボタンやファスナーなど硬い装飾が皮膚に当たらない衣類を選ぶ
  • きつい衣類は避け、着脱時に擦れにくいゆったりした衣類を選ぶ
  • 靴下はゴムがゆるめのものを選び、脱がせるときの摩擦を減らす

②環境整備で「ぶつける・擦れる」を減らす

  • ベッド柵にカバーやパッドを装着し、四肢が当たっても擦れないようにする
  • 車いすのフレーム・フットレストなど、皮膚が触れる金属部分を緩衝材で覆う
  • ベッド周囲・居室の動線から、ぶつかりやすい家具の角を減らす・保護する
  • リストバンドや抑制具を使う場合は、皮膚に直接食い込まないよう下に保護材を入れる

③介助方法で「引っ張らない・引きずらない」

スキンテアの多くはこの介助場面で発生します。次の原則を全スタッフで徹底します。

  • 下から大きな面で支える:腕や脚を「つかむ」のではなく、手のひら全体(手を閉じた状態の広い面)で下から支える。指先でつまむと一点に力が集中して裂けやすい
  • 引きずらない・引っ張らない:移乗・体位変換でスライディングシートやグローブを使い、皮膚を引きずらない
  • 2人以上で介助する:抱え上げや移乗は無理に1人で行わず、複数人で支える
  • テープは皮膚に直接貼らない:絆創膏や固定テープの剥離はスキンテアの典型的な発生原因。剥がすときは皮膚を押さえながらゆっくり剥離方向に沿って外す。可能なら皮膚被膜剤を使う

④スキンケア(保湿)でバリア機能を保つ

  • 1日2回以上の保湿:低刺激性の保湿ローション・クリームを、入浴後と乾燥が気になるタイミングに塗る。継続することで皮膚の乾燥と弾力性が改善し、スキンテアのリスクが下がる
  • こすらず塗る:保湿剤は皮膚のシワに沿って優しく押さえるように塗布し、こすり込まない
  • 洗浄はやさしく:入浴・清拭では弱酸性の洗浄料を泡で使い、ゴシゴシこすらない。熱すぎる湯は乾燥を招くため避ける

⑤栄養で皮膚をつくる材料を補う

皮膚の修復にはたんぱく質が欠かせません。低栄養はスキンテアの最大級のリスク要因です。食事で摂りにくい場合は、卵・牛乳・納豆・ツナ・きなこなど手軽にたんぱく質を足せる食材を活用します。少量でカロリーを補える油(ごま油など)も、エネルギー確保と皮膚の保護に役立ちます。食事量や水分摂取が落ちている利用者は、管理栄養士・看護師と連携して栄養面から皮膚を支えます。

保湿を中心とした日常のスキンケアの基本は、介護現場のスキンケアとはでも解説しています。

場面別・スキンテアを防ぐ介助のコツ(移乗・更衣・入浴)

「下から支える」「引っ張らない」といった原則は分かっていても、忙しい現場では手が出てしまうものです。学会の実態調査で報告された発生場面(体位変換・移乗・更衣・入浴・テープ剥離)ごとに、具体的にどう手を動かせばよいかを整理します。

移乗・移動介助のとき

  • 腕を引いて起こさない。脇の下や背中・腰を手のひら全体で支えて起き上がりを介助する
  • 車いすへ移るときは、前腕がアームレストやフレームに擦れない位置に誘導する。フレームに緩衝材を巻いておく
  • ベッド上の移動はスライディングシートを使い、皮膚を引きずらない。直接シーツの上を引きずると摩擦で裂ける
  • 1人で抱え上げず、リフトや2人介助を選ぶ

更衣介助のとき

  • 袖を通すときは介助者の手を先に袖に入れ、利用者の手を「迎えにいって」優しく導く。袖口で前腕を擦らない
  • 麻痺や拘縮がある場合は脱健着患(脱ぐときは健側から、着るときは患側から)を守り、無理に引っ張らない
  • かぶり服より前開きの衣類を選ぶと、頭・顔・腕の擦れを減らせる

入浴・清拭のとき

  • 洗うときはタオルでこすらず、泡で包むように洗う。ナイロンタオルは避ける
  • 身体を支えるときは手を閉じて広い面で支え、つかまない
  • 浴室の手すり・浴槽の縁に四肢が擦れないよう、移動の動線に気を配る
  • 入浴後はすぐに保湿剤を塗り、乾燥を防ぐ

テープ・絆創膏を扱うとき

  • 固定が必要な場面では、可能な限り皮膚に直接テープを貼らず、包帯・ネット包帯・筒状包帯(ストッキネット)で固定する
  • どうしてもテープを使う場合は、貼る前に皮膚被膜剤を塗ってバリアをつくる
  • 剥がすときは、もう一方の手で皮膚を押さえながら、ゆっくり水平方向に折り返すように剥離する。垂直に引き上げない

STAR分類の見方|介護職が看護師に伝える観察ポイント

スキンテアが発生したとき、創の評価や治療方針の決定は看護師・医師の役割です。ただし、介護職が発見者になることが多いため、「どんな状態かを正しく観察して伝える」ことが連携の質を左右します。そのとき共通言語になるのがSTAR分類(STARスキンテア分類システム)です。STARは皮弁(裂けてめくれた皮膚の部分)の残り具合と色調で5段階に分ける、国際的にも日本でも使われている評価ツールです。

STAR分類の5カテゴリー

数字は皮弁がどれだけ元に戻せるか、アルファベット(a/b)は皮弁の色調を表します。日本創傷・オストミー・失禁管理学会の日本語版STAR分類では次のように定義されています。

  • カテゴリー1a:創縁を過度に伸展させずに正常な位置に戻すことができ、皮膚や皮弁の色が蒼白・薄黒い・黒ずんでいない
  • カテゴリー1b:創縁を正常な位置に戻すことができるが、皮膚や皮弁の色が蒼白・薄黒い・黒ずんでいる
  • カテゴリー2a:創縁を正常な位置に戻すことができず(皮弁が一部欠損・固着)、色調は変化していない
  • カテゴリー2b:創縁を正常な位置に戻すことができず、皮膚や皮弁の色が蒼白・薄黒い・黒ずんでいる
  • カテゴリー3:皮弁が完全に欠損している

名古屋掖済会病院の資料によれば、実際の現場では皮弁が完全に欠損したカテゴリー3が全体の半数以上を占めると報告されており、発見が遅れると皮弁が乾いて戻せなくなることが背景にあります。だからこそ、早期発見・早期保護が重要です。

介護職が看護師に伝えるべき観察ポイント

STAR分類そのものを介護職が確定する必要はありませんが、次の点をメモして報告できると、看護師の評価がスムーズになります。

  • いつ・どの場面で起きたか(移乗中、更衣中、テープ剥離時など)
  • 部位(右前腕、左手の甲 など)と大きさのおおよそ
  • めくれた皮膚(皮弁)がまだ残っているか、元に戻りそうか
  • 皮弁や周囲の皮膚の色(赤い/紫っぽい/黒ずんでいる/白っぽい)
  • 出血の有無・程度、痛みの訴え

スキンテアが発生したときの対応|介護職の役割と看護師連携

スキンテアを発見したら、慌てず、しかし速やかに動きます。ここで大切なのは「介護職がしてよいこと(応急的な保護)」と「看護師・医師に任せること(評価・処置の判断)」の線引きです。施設の手順やマニュアルがある場合は必ずそれに従い、判断に迷ったらすぐ看護師に連絡します。

発見時に介護職ができること

  1. 出血があれば清潔なガーゼで圧迫止血する:強くこすらず、上から押さえる
  2. すぐ看護師に報告・連絡する:施設の体制に応じて、まず看護師に連絡し指示を仰ぐ。在宅では訪問看護師・主治医に連絡する
  3. めくれた皮膚(皮弁)を捨てない・無理に剥がさない:皮弁は元に戻せれば創を覆うふたになる。乾燥させないことが重要
  4. 汚れがある場合はやさしく流水・生理食塩水で洗い流す(看護師の指示・施設手順に従う)

学会のベストプラクティスでも、予防策を講じても発生してしまった場合の応急処置として「①圧迫して止血する→②汚れや血の塊は流水でやさしく洗い流す→③ワセリンを塗布した非固着性のガーゼで保護する(テープは直接皮膚に貼らない)」という流れが示されています。そのうえで早めに看護師・医師に診てもらいます。

介護職がやってはいけないこと

  • 消毒液をむやみに使う/こすって洗う:自己判断での消毒や強い洗浄は避け、看護師の指示に従う
  • 皮弁をハサミで切り取る:皮弁の処理は医療職の判断
  • 普通の絆創膏やテープを皮膚に直接貼る:剥がすときに再び裂ける。固定は包帯・ネット包帯で
  • 「たいしたことない」と報告を後回しにする:放置すると皮弁が乾いて戻せなくなり、感染・難治化のリスクが上がる

看護師が行う処置(介護職は流れを知っておく)

看護師・医師は、止血と創洗浄ののち、可能であれば皮弁を元の位置に戻し、STAR分類で評価します。皮弁は湿らせた綿棒・手袋をした指・無鉤鑷子でゆっくり戻し、難しいときは生理食塩水で湿らせたガーゼを5〜10分貼ってから再度試みます。被覆材はシリコーンゲルメッシュドレッシングなど非固着性のものを選び、テープではなく包帯やネット包帯で固定します。被覆材には皮弁がずれない「剥がす方向」を矢印で記載します。介護職はこの流れを理解しておくことで、ドレッシング交換時の介助や、剥離方向を守ったケアに協力できます。

スキンテアは「個人のミス」ではなくチームで防ぐ|現場視点の分析

スキンテアを「個人の介助ミス」として捉えると、現場のスタッフは萎縮し、かえって報告が遅れます。当サイトが複数の一次資料を読み解いて強調したいのは、スキンテアはチームと仕組みで防ぐものだという視点です。

尾道市の調査では、看護師でさえスキンテアを正しく説明できた割合は約2割にとどまり、予防の知識はあっても実践(被膜剤の使用やストッキネット固定など)に結びついていないケースが多いと報告されています。これは「個人の努力不足」ではなく、知識を行動に変える仕組みが現場に足りていないことを示しています。介護現場ではさらに、医療職より皮膚への専門教育の機会が少ないという構造的な課題があります。

だからこそ介護職にできる最大の予防は、個人技ではなくチームの標準化です。具体的には、(1) ハイリスク利用者を申し送り・ケアプランで明示する、(2) ベッド柵カバー・アームカバー・保湿剤を「使いたい人が使う」ではなく標準装備にする、(3) 発生時の報告ルートと応急手順を全員が同じ手順で行えるようにする、という3点です。学会のベストプラクティスが予防の柱に「医療・介護メンバー教育」「患者・家族教育」を含めているのも、これがチーム課題であることの裏返しです。

もう一つの独自の視点は、スキンテアは「ケアの質を映す鏡」だということです。発生件数が多い職場は、人手不足で1人介助を強いられている、保湿剤や緩衝材といった物品が整っていない、教育機会がない、といった労働環境の問題を抱えていることが少なくありません。逆に、移乗リフトやスライディングシートが整い、2人介助が当たり前にできる職場では、スキンテアも腰痛も減ります。転職先を選ぶときに「スキンテアや褥瘡の予防に組織として取り組んでいるか」を確認することは、利用者にとっても働く自分にとっても安全な職場を見極める一つの指標になります。

スキンテアに関するよくある質問(FAQ)

Q. スキンテアと褥瘡はどう違うのですか?

褥瘡は骨の出っ張りに体重が長時間かかる「圧迫・ずれ」で皮膚や深部組織が壊死する慢性の創傷で、仙骨部やかかとに多く起こります。スキンテアは摩擦やずれによる瞬間的な外力で皮膚が裂ける急性の損傷で、上肢など圧迫と関係ない部位に多いのが特徴です。原因が違うため予防策も異なります。

Q. スキンテアを見つけたら、まず何をすればいいですか?

出血があれば清潔なガーゼで圧迫止血し、めくれた皮膚(皮弁)を捨てずに、すぐ看護師へ報告します。消毒や皮弁の切り取りは自己判断で行わず、看護師・医師の指示を待ちます。施設のマニュアルがあればそれに従ってください。

Q. 保湿はどのくらいの頻度で行えばいいですか?

1日2回以上が目安です。特に入浴・清拭の後は乾燥しやすいため、低刺激性の保湿剤をこすらず優しく塗ります。継続することで皮膚の乾燥と弾力性が改善し、スキンテアのリスクが下がると報告されています。

Q. テープを剥がすときに皮膚が裂けないコツは?

そもそも皮膚に直接テープを貼らず、包帯やネット包帯で固定するのが最善です。貼る場合は事前に皮膚被膜剤を使い、剥がすときはもう一方の手で皮膚を押さえながら、ゆっくり水平に折り返すように剥離します。垂直に引き上げると裂けやすくなります。

Q. スキンテアの評価や処置は介護職がしてもいいですか?

創の評価(STAR分類)や皮弁の処理、被覆材の選択といった医療的判断は看護師・医師の役割です。介護職の役割は、予防(介助技術・保湿・栄養・環境整備)と、発生時の応急的な保護・即時報告です。役割を分けて連携することで、安全で質の高いケアにつながります。

Q. 栄養はスキンテア予防に関係ありますか?

大きく関係します。低栄養は皮膚を脆弱にし、スキンテアの主要なリスク要因です。皮膚の修復に必要なたんぱく質を、卵・牛乳・納豆・ツナなどで補い、食事量が落ちている場合は管理栄養士・看護師と連携して対応します。

参考文献・出典

まとめ|スキンテアは予防と早期報告で防げる

スキンテア(皮膚裂傷)は、高齢者の脆弱な皮膚に、摩擦やずれによって起こる急性の損傷です。移乗・更衣・入浴・テープ剥離といった、介護職が毎日行う介助の場面で発生しやすい一方、正しい知識と介助技術があれば予防できる損傷でもあります。

介護職の役割は明確です。予防の面では「下から大きな面で支える」「引きずらない・引っ張らない」「1日2回以上の保湿」「たんぱく質を中心とした栄養」「ベッド柵・車いすの環境整備」を、個人技ではなくチームの標準として実践すること。発生時には、慌てず止血して皮弁を守り、すぐ看護師に報告すること。創の評価(STAR分類)や処置の判断は看護師・医師に委ねつつ、観察した情報を正確に伝えることが、質の高い連携につながります。

スキンテアの発生は、その職場の介助体制・物品・教育の充実度を映す鏡でもあります。利用者の皮膚を守る取り組みは、そのまま働く自分の負担軽減と安全にもつながります。あなたの介助技術や働く環境への思いを、これからのキャリアにどう活かせるか——働き方診断で、自分に合った職場の見つけ方を整理してみてください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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