
在宅介護の感染対策|インフルエンザ・ノロ・コロナ・疥癬・MRSAから家族と高齢者を守る
在宅介護中のご家族向け、感染症から高齢者を守る実践ガイド。インフルエンザ・ノロウイルス・新型コロナ・疥癬・MRSA・結核・帯状疱疹の家庭内対策、嘔吐物処理の手順、定期接種、家族介護者が感染した時の代替体制、受診のサインまで、厚生労働省・国立感染症研究所の公的情報を在宅の文脈で解説します。
この記事のポイント
在宅介護での感染対策の基本は、(1)高齢者は免疫機能の低下とフレイル・複数の慢性疾患が重なり感染症で重症化しやすいこと、(2)家庭内では「介護者の手洗いと標準予防策」「個室隔離」「嘔吐物の0.1%次亜塩素酸ナトリウムによる処理」「インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナ・帯状疱疹の定期接種」が4つの柱になることを押さえることです。発熱・呼吸困難・強い倦怠感・意識障害があれば主治医か救急(#7119/119)に相談し、自己判断で様子を見ない判断が命を守ります。
目次
同居しているお父さま・お母さまがインフルエンザの流行期に咳をしている、デイサービスの利用者さんが感染性胃腸炎で休みが続いている、ヘルパーさんから「施設で疥癬が出た」と聞いた——在宅介護をしていると、感染症のニュースは介護を受ける本人だけでなく、看病する家族の生活そのものを揺るがします。
高齢者の感染症は、若い人が同じウイルスや菌にかかったときよりも重症化しやすく、回復にも時間がかかります。「ただの風邪」と思って様子を見ているうちに肺炎になり入院、退院後はADL(日常生活動作)が大きく低下する——というケースは決して珍しくありません。介護者である家族自身が感染した時の代替体制も含めて、平時から備えておく必要があります。
本記事では、厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」第3版、国立感染症研究所、日本皮膚科学会「疥癬診療ガイドライン」、日本在宅医学会「在宅医療における新型コロナウイルス感染症対応Q&A」などの公的・専門学会資料をベースに、在宅介護の文脈に絞って感染対策の実践を整理しました。判断に迷うときは必ず主治医・訪問看護師・地域包括支援センター・保健所に相談してください。記事内の手順はあくまで一般的な目安であり、最終的な医学的判断に代わるものではありません。
高齢者が感染症で重症化しやすい理由
同じインフルエンザでも、20代と80代では治り方がまったく違います。高齢の親を介護していると、「なんでこんなに長引くのだろう」「すぐに肺炎になってしまう」と感じる場面が多いはずです。背景には、加齢に伴う身体の変化が複数重なっています。
1. 免疫機能(免疫老化)の低下
加齢により、ウイルスや細菌と戦うT細胞の働きや抗体産生能力が落ちます。これを「免疫老化(immunosenescence)」と呼びます。同じ量のウイルスが侵入しても、若い人なら発症前に抑え込めるものが、高齢者では発症・重症化につながりやすくなります。ワクチンを接種しても若年者より抗体価が上がりにくいのも同じ理由です。
2. フレイル・サルコペニアによる予備能の低下
フレイル(加齢に伴う心身機能の低下)が進むと、感染症のような急性ストレスがかかった時に「踏ん張る力」が不足します。数日寝込んだだけで一気に歩けなくなる、食事量が落ちて回復に必要な栄養が取れなくなる、といった悪循環に入りやすくなります。
3. 基礎疾患の併存
糖尿病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全、脳血管疾患——65歳以上の方の多くは複数の慢性疾患を抱えています。基礎疾患があると感染症の重症化リスクが上がり、入院や治療薬の選択肢も狭まります。新型コロナウイルス感染症診療の手引きでも、65歳以上は重症化リスク因子の筆頭に挙げられています。
4. 嚥下機能の低下・誤嚥性肺炎
感染症そのものが直接の死因にならなくても、寝込んでいる間に嚥下機能が落ち、誤嚥性肺炎を併発して亡くなるケースが少なくありません。インフルエンザや新型コロナでも、実際の死因は誤嚥性肺炎であることが多いと専門家が指摘しています。
5. 症状の出方が「典型的」でない
高齢者は発熱しないまま重症化することがあります。「いつもと様子が違う」「ぐったりしている」「食べない」「ボーッとしている」だけが唯一のサインのこともあります。「熱がないから大丈夫」と判断せず、普段との違いに気づくことが家族の最大の役割です。
6. 認知機能低下による自己防衛の難しさ
認知症がある方は、マスクをすぐ外す、手洗いを嫌がる、隔離している部屋から出てしまう、症状を訴えられない、といった理由で感染対策が難しくなります。本人を責めず、環境を整える(手指消毒液の置き場所を変える、トイレ動線をシンプルにする、本人の前で家族が手本を見せる)方向で工夫します。
家庭でできる標準予防策(家族介護者バージョン)
医療・介護の世界では「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」という考え方が基本になっています。「すべての人の血液・体液・分泌物・粘膜・損傷した皮膚は感染リスクがあるものとして扱う」というルールで、施設だけでなく在宅介護でも応用できます。
1. 手指衛生は1ケアごとに
厚生労働省の手引きでは「1ケア1手洗い」を基本としています。在宅では「おむつ交換のあと」「食事介助の前後」「口腔ケアの前後」「トイレ介助のあと」「外出から戻ったとき」「料理の前」など、ケアや行為の区切りごとに、液体石けんと流水で30秒以上かけて洗います。手指の洗い残しが多いのは親指の付け根・指の間・手首・爪のまわりです。
水道が遠い・夜間で水を出すと音が響くなどの場合は、消毒用エタノール(濃度60〜80%)を約3mL(ワンプッシュ)使い、手のひら・手の甲・指の間・親指・指先・手首までこすり込みます。ノロウイルスにはアルコールが効きにくいため、嘔吐や下痢があるときは必ず石けんと流水を優先してください。
2. 個人防護具(PPE)は「必要なときだけ」でOK
家庭で常時PPEを着る必要はありませんが、以下の場面では使い捨て手袋・マスク・エプロンを使うと安心です。
- おむつ交換、便失禁・尿失禁の処理
- 嘔吐物・血液・喀痰の処理
- 本人に咳・発熱・下痢があるときのケア全般
- 本人や同居家族に皮膚病変・かゆみがあるときの入浴介助
使い捨て手袋はドラッグストアの100枚入り箱で買うと1回あたり10円程度。マスクは不織布のサージカルマスクで十分です。使い捨てエプロンが手に入らない時は、大きめのゴミ袋に頭と腕を通す穴を開けて代用できます。
3. 環境整備(高頻度接触面の消毒)
家族や本人の手がよく触れる場所(ドアノブ、トイレレバー、手すり、リモコン、スマホ、テーブル、ベッド柵)は1日1回、消毒用エタノールまたは0.05%次亜塩素酸ナトリウム液で拭きます。スプレーで噴霧せず、布やペーパーに含ませて「ふき取り」が原則です(噴霧は吸い込むと有害で、効果も不確実)。次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させるので、ドアノブなど金属部分は10分後に水拭きします。
4. リネン・洗濯
普段の衣類・シーツは通常の洗濯でOK。ただし、嘔吐物・下痢便・血液で汚染された場合は、まず汚れを落としてから0.1%次亜塩素酸ナトリウム液に30分以上浸け置きしてから他のものと分けて洗濯し、しっかり乾燥させます。色落ちが心配な衣類は、85℃以上の熱湯に1分以上浸す方法も使えます。
5. 食器・調理
感染症の症状がない時は通常通り洗剤で洗えば問題ありません。胃腸炎症状があるときは、感染者の食器を分け、洗浄後に0.02%次亜塩素酸ナトリウムに30分浸すか、85℃で1分以上の熱湯消毒を加えます。調理介助をする家族は、生もの(特に二枚貝)の調理に注意し、加熱が必要な食品は中心部85〜90℃で90秒以上加熱します。
6. 換気
居室は1〜2時間に1回、5〜10分の換気を行います。冬場で寒い時は対角線の2か所を10cmずつ開けるだけでも空気は動きます。在宅酸素や人工呼吸器を使っている方の部屋でも、機器の取扱説明書に従って換気できる方法を主治医・訪問看護師と相談しておきましょう。
主な感染症ごとの家庭内対策(インフルエンザ・新型コロナ・ノロウイルス)
インフルエンザ
潜伏期は1〜4日、発熱の1日前から発熱後3〜7日目まで感染力があります。日本では例年12月〜3月が流行期で、保育園・学校・職場での流行があると家庭内に持ち込まれます。介護を受ける高齢者は重症化リスクが高く、肺炎を併発したり、もともとの心不全・糖尿病が悪化したりして入院に至ることがあります。
家庭での対策
- ワクチン:65歳以上は予防接種法B類疾病の定期接種対象。自治体ごとに自己負担額(多くは1,000〜2,500円)と接種期間(毎年10月〜翌1月末頃)が定められています。介護する家族も同時期に接種すると家庭内持ち込みを減らせます。
- 早期受診と抗ウイルス薬:発熱から48時間以内にオセルタミビル(タミフル)やバロキサビル(ゾフルーザ)などの治療を始めると重症化を抑えられます。「発熱したら様子を見る」ではなく、流行期は早めに主治医・かかりつけクリニックに電話で相談。
- 家庭内隔離:可能なら個室。難しければベッドや布団の位置を2m以上離す。介護者と本人ともに不織布マスク。タオル・食器は分ける。
- 外出の目安:学校保健安全法は「発症後5日かつ解熱後2日」を出席停止の目安としています。社会人もこの期間は家族以外との接触を控えるのが安全。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2023年5月から5類感染症となり、行政による外出自粛要請はなくなりました。ただし、高齢者の重症化リスクは依然として高く、家庭内対応の重要性は変わっていません。
家庭での対策
- ワクチン定期接種:2024年10月から65歳以上は秋冬の定期接種となりました(自己負担は自治体により3,000〜7,000円程度)。60〜64歳でも心臓・腎臓・呼吸器の機能障害や免疫不全がある方は対象。
- 抗原検査と受診:本人が発熱・咳・倦怠感を訴えたら、抗原検査キット(OTC用「第1類医薬品」表示)でセルフチェック。陽性ならかかりつけ医に電話相談。重症化リスクがある高齢者では、抗ウイルス薬(パキロビッドパック、ラゲブリオなど)の処方を相談できます。妊婦や薬剤併用に注意点があるため自己判断で買わない。
- 家庭内隔離(療養期間の目安):発症日を0日として5日間は外出を控え、症状軽快後24時間経過まで様子を見るのが推奨されます。10日間は人にうつす可能性があるため、高齢者と接触するときはマスク。
- 世話をする人を限定:理想は健康で基礎疾患のない1人が担当。重症化リスクの高い家族(高齢者本人、妊婦、免疫不全のある方)は世話を避ける。
- 環境消毒:トイレ・洗面所・ドアノブは0.05%次亜塩素酸ナトリウムまたは消毒用エタノールで1日数回。
- 医療逼迫時の連絡先:受診先に困ったら、自治体の発熱相談窓口、夜間休日は#7119(救急安心センター)。意識障害・呼吸困難・SpO2が下がる場合は119番。
ノロウイルス(感染性胃腸炎)
潜伏期は12〜48時間。冬場(11〜2月)に流行のピーク。少量のウイルスでも感染が成立し、症状がなくなっても1週間〜1か月程度便にウイルスが排出されます。高齢者では脱水・誤嚥性肺炎・電解質異常から重症化することがあります。アルコールが効きにくく、消毒には次亜塩素酸ナトリウムが必要な点が最大の特徴です。
家庭での対策
- 嘔吐物・便の処理:使い捨て手袋・マスク・エプロン・新聞紙・ペーパータオル・ビニール袋・0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液を必ず常備。具体的な手順は次セクション参照。
- 入浴:シャワーまたはかけ湯で済ませ、浴槽は使わない。タオルは本人専用。
- 食器・調理器具:洗浄後に0.02%次亜塩素酸ナトリウムに30分浸ける、または85℃以上で1分以上加熱。
- 食品の加熱:感染者がいる家庭では治るまで、二枚貝を含む食品は中心部85〜90℃で90秒以上の加熱を徹底。
- 調理者は本人とは別の人:感染者は症状が治まってもしばらくウイルスを排出するため、回復後1週間程度は調理を担当しない。
- 受診の目安:6〜8時間以上尿が出ない、口唇が乾いている、皮膚をつまんで戻りが遅い、ぐったりして反応が鈍い——これらは脱水の徴候。点滴が必要なことが多いので主治医に連絡。
嘔吐物・下痢便の処理手順(在宅保存版)
感染性胃腸炎、特にノロウイルスは「正しく処理できるかどうか」で家族内の二次感染が大きく変わります。半径2〜3mに飛び散ると言われるため、慌てずに以下の手順で処理してください。前提として、事前に「嘔吐物処理キット」を作って洗面所やトイレに常備しておくことが何より重要です。
処理キットに入れておくもの
- 使い捨て手袋(2組あると便利)
- 不織布マスク
- 使い捨てエプロン(またはレジ袋・ゴミ袋で代用)
- ペーパータオル・古布・新聞紙
- ビニール袋(45L以上を2〜3枚)
- 0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(家庭用塩素系漂白剤を希釈/後述)
- ペットボトル(500mL、計量に使用)
0.1%(1,000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液の作り方
家庭用の塩素系漂白剤(ハイター・キッチンブリーチ等、原液濃度5%)を使う場合、500mLの水に対して原液10mL(ペットボトルのキャップ2杯分)を入れて作ります。1Lなら原液20mL、3Lなら原液60mL。原液濃度が6%の場合は500mLに対して原液約8mL。作り置きは1日分まで。直射日光を避け、誤飲防止のため必ずラベルを貼ります。
金属を腐食させるので、ドアノブや便座など金属部分は10分後に水拭きすること。酸性の洗剤(トイレ用洗剤など)と絶対に混ぜないこと——有毒な塩素ガスが発生します。
処理の8ステップ
- 周りの人を遠ざける:嘔吐物から半径2m以内にいる人を離れさせ、窓を開けて換気。可能なら別室へ。
- PPEを装着:手袋・マスク・エプロンを身につける。髪の毛が触れないようまとめる。
- 嘔吐物を覆う:飛散を防ぐため、まず新聞紙やペーパータオルで全体を覆う。
- 外側から内側へふき取る:覆った紙の上から、外側から中央に向かって嘔吐物を集めるようにペーパータオルでふき取る。すぐビニール袋へ。
- 消毒液で湿らせて10〜30分覆う:拭き取った場所に0.1%次亜塩素酸ナトリウム液で湿らせたペーパータオル等を10〜30分置く。靴底にもウイルスが付くので、靴底も消毒。
- 後片付け:消毒後、水拭き。覆っていた紙もビニール袋に入れる。
- ビニール袋を二重に封:使った手袋・エプロンも一緒に入れ、空気を抜いて口をしっかり縛り、さらに別のビニール袋に入れて二重に封。一般ゴミとして出す(自治体ルールに従う)。
- 手洗い・うがい・換気:石けんと流水で手洗い・うがい。部屋は嘔吐物処理後も30分以上換気を続ける。
衣類・寝具に付着した場合
固形物を貯め水で落としてから、0.02〜0.1%次亜塩素酸ナトリウム液に30分浸け置き、その後通常の洗濯機で洗います(漂白作用があるため色物に注意)。色落ちが心配な衣類は85℃以上の熱湯に1分以上浸す方法も使えます。乾燥は完全に行ってください。
処理後、介護者が体調を崩したら
処理の翌日〜2日目に介護者自身が嘔気・下痢になることがあります。無理せず仕事を休み、ケアマネジャーに連絡して訪問介護やショートステイの緊急利用を相談してください。家族介護者が倒れると要介護者本人の生活も止まります。
疥癬・MRSA・結核・帯状疱疹——見落とされがちな感染症への家庭対応
疥癬(かいせん)
ヒゼンダニという小さなダニが皮膚の角質層に寄生する皮膚感染症で、デイサービスやショートステイから家庭に持ち込まれることがあります。「通常疥癬」と「角化型疥癬(旧ノルウェー疥癬)」では対応がまったく異なるため、皮膚科で診断を確定することが第一歩です。
通常疥癬
- 寄生するダニは10〜15匹程度。感染力は弱い。
- 潜伏期は約1〜2か月(4〜6週)。夜間に強くなる激しいかゆみ、手首・指間・腋窩・陰部・臀部の赤いブツブツや疥癬トンネル(線状皮疹)が特徴。
- 個室隔離は原則不要。日常の手洗い・標準予防策で十分。
- 同じ布団に並んで寝ない、長時間の肌と肌の接触を避ける、タオル・寝具の共用を避ける。
- 洗濯・入浴は通常通りで可。
角化型疥癬
- 免疫機能が低下した方に発症。ダニ数が100万〜200万匹と桁違いに多く、感染力が非常に強い。
- 潜伏期は約4〜5日と短い。耳介・肘・膝・手指などに灰白色〜黄白色の厚い角質増殖(カキ殻のような外見)。
- 個室隔離が必要(治療開始後1〜2週間)。在宅では難しいことが多いため、訪問看護師と相談し主治医・皮膚科に早めにつなぐ。
- 衣類・シーツは毎日交換し、50℃以上のお湯に10分以上浸してから洗濯、または乾燥機で熱処理。
- 布団・マットレスはフィルター付き掃除機で表面を吸引、ピレスロイド系殺虫剤を散布。
- 入浴は最後にし、浴槽・床は水で流す。脱衣所に掃除機をかける。
治療
治療はイベルメクチン(ストロメクトール)の内服や、フェノトリンローション(スミスリン)の外用が中心。卵には効かないため1週間隔で2回投与が必要です。家族内で同じ症状が出た場合は、症状のある人だけでなく、濃厚接触のある家族全員が同時に皮膚科を受診すること。「自分のかゆみは加齢のせいかも」と放置すると家庭内で広がり、半年以上収束しないことがあります。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)・耐性菌
長期療養者や褥瘡・尿道カテーテルがある方が「保菌」状態であることは決して珍しくありません。在宅では保菌していても基本的に標準予防策(手洗い・PPE)で対応可能です。健康な家族にうつっても通常は無症状か軽度。ただし、家族に乳児・妊婦・免疫不全のある方がいる場合は、訪問看護師に相談して個別対応を検討します。
褥瘡や創傷からの排膿、カテーテル交換時の処置などは必ず手袋・マスクを着用し、終了後は石けんと流水でしっかり手洗い。汚染されたリネンは0.1%次亜塩素酸ナトリウムに30分浸け置きまたは熱水洗濯します。
結核
「もう結核は昔の病気」と思われがちですが、日本の結核罹患率は欧米先進国と比べて依然高く、特に高齢者では若い頃に感染して潜伏していた菌が免疫低下で再燃するパターンが多く見られます。2週間以上続く咳、微熱、寝汗、体重減少は結核を疑うサインです。介護を受けている家族にこれらが見られたら、必ず主治医に相談して胸部レントゲンと喀痰検査を受けてください。
排菌のある活動性結核と診断された場合は感染症法に基づく入院が必要になります。在宅で過ごす場合は、保健所・主治医の指示に従い、本人はサージカルマスク、介護者はN95マスクを着用、定期的な室内換気を行います。家族の接触者健診も保健所が手配します。
帯状疱疹
子どもの頃にかかった水痘(みずぼうそう)ウイルスが体内に潜伏し、加齢やストレスで免疫が低下した時に神経に沿って再活性化する病気です。50歳以上では発症率が急上昇し、80歳までに約3人に1人が経験すると言われています。痛みが帯状疱疹後神経痛(PHN)として何ヶ月も残ることがあり、これが高齢者のQOLを大きく落とします。
家庭での対応
- ワクチン:2025年4月から65歳と、5年間の経過措置として70・75・80・85・90・95・100歳の方が定期接種対象に。シングリックス(不活化、2回接種、効果90%以上)と弱毒生ワクチン(1回接種、効果は限定的)の2種類。自治体により助成額が異なります。
- 受診:体の片側だけ・帯状にチクチク・ピリピリした痛みや赤い発疹が出たら72時間以内に皮膚科か内科へ。抗ウイルス薬の早期投与で重症化と神経痛のリスクを下げられます。
- 家庭内感染:水痘にかかったことのない乳幼児や、水痘ワクチン未接種・免疫不全の家族には水痘としてうつる可能性があります。直接接触・空気感染を避け、発疹に触れた手で他の家族に触れないよう注意。
在宅介護で感染リスクが高まる場面と具体的対策
家庭内感染のほとんどは、特別な状況ではなく「日々のケア」の中で起こります。以下、リスクの高い場面と対策を整理しました。
1. おむつ交換
排泄物には大量の細菌・ウイルスが含まれます。特にノロウイルス感染期の便は強力な感染源です。
- 必ず使い捨て手袋・マスク・エプロンを着用。本人にもタオルケット等をかけてプライバシーを守る。
- 1回のおむつ交換ごとに手袋を交換。使い終わった手袋は外側を内側にして外し、すぐビニール袋へ。
- 使用済みおむつはビニール袋に入れて口を縛り、できれば二重にして密封。
- 交換後は石けんと流水で30秒以上手洗い。手袋をしていても手洗いは省略しない(ピンホールや脱衣時の汚染あり)。
- 便がベッドや寝衣に付着した場合は、固形物を除去後に0.1%次亜塩素酸ナトリウムで処理。
2. 食事介助
食事介助は本人と介護者の距離が近く、飛沫感染のリスクが高い場面。特に介護者が風邪気味の時は要注意。
- 介助前は石けんと流水で手洗い。マスク着用(自分の咳・くしゃみが食品に飛ばないため)。
- 本人にも口をすすいでもらう、または濡れガーゼで口唇を清拭してから食事。
- スプーンや吸い飲みなど口に直接触れる器具は本人専用にする。
- 食事の準備は短時間で。常温で長時間放置しない(食中毒予防)。
- 介助しながら自分も食べる「ながら介助」は感染リスクを高めるので避ける。
3. 入浴介助
裸の状態で長時間の肌と肌の接触が起こるため、皮膚感染症(疥癬・白癬・MRSA保菌)のリスクが特に高い。
- 本人の皮膚状態を毎回観察。指の間、わき、おしり、足の裏など見落としやすい部位もチェック。
- かゆみ・発疹・浸出液がある場合は使い捨て手袋・エプロン着用。原因が分かるまで他の家族と浴室の使用順を分ける。
- タオル・足ふきマットは本人専用。使用後は熱乾燥または通常洗濯。
- 湿気・体温で疲労しやすいので、介護者自身の体調管理(水分・室温)も重要。
4. 口腔ケア
口腔内には肺炎球菌をはじめとする多くの細菌が常在し、誤嚥性肺炎の原因にもなります。同時に介護者の手指への接触感染リスクも高い場面。
- 必ず使い捨て手袋着用。終了後の手洗い・手指消毒を徹底。
- 歯ブラシ・スポンジブラシ・ガーゼは本人専用、毎回交換。
- 使用済みの口腔ケア用品は流水で洗い、消毒用エタノールで清拭してから乾燥。
- 定期的な訪問歯科の利用を検討(要介護高齢者の専門口腔ケアは肺炎予防に有効)。
5. 痰の吸引
医療的ケアに該当する場面ですが、家族が研修を受けて実施している場合も増えています。
- 必ず手袋・マスク・ゴーグルまたはフェイスシールド着用。
- 吸引チューブは使用後ただちに洗浄・消毒。手順は訪問看護師の指導に従う。
- 処置の前後は石けんと流水で手洗い。
6. 訪問サービス利用時の感染症対応
訪問介護・訪問看護・訪問入浴のスタッフが家庭に入ることで、外から感染症が持ち込まれる可能性はゼロではありません。逆に、家族や本人の感染を事業所に伝えることで、二次感染を防ぐことができます。
- 事業所には「家族が発熱した」「本人が下痢している」「皮膚にかゆみがある」など、わかった時点で速やかに伝える。
- 事業所側も感染症対応の手引きに沿って対応します(PPE強化、時間の短縮、訪問順序の変更など)。
- 事業所が新型コロナ等で訪問を制限する場合は、ケアマネジャーと相談し代替サービスを確保。
高齢者の定期接種ワクチン早見表(2026年度版)
感染症対策の「攻めの一手」がワクチン接種です。免疫力が落ちている高齢者でも、ワクチンで重症化を抑える効果は確認されています。2025年4月から帯状疱疹ワクチンも定期接種化され、2026年度時点で65歳以上の方が定期接種で受けられる主なワクチンは以下のとおりです。
定期接種(B類疾病)に位置づけられているもの
- 季節性インフルエンザワクチン:65歳以上、毎年1回(10月〜翌1月末頃)。60〜64歳でも心臓・腎臓・呼吸器機能障害や免疫不全がある方は対象。自己負担額の目安は1,000〜2,500円。
- 高齢者用肺炎球菌ワクチン:65歳の方が対象(2024年度から65歳のみに変更)。1回接種で生涯有効。23価ワクチン(ニューモバックスNP)または15価結合型ワクチン(バクニュバンス・キャップバックス)等。自己負担額は2,500〜4,000円程度。
- 新型コロナワクチン:65歳以上は秋冬の定期接種(毎年9月〜翌3月)。60〜64歳でも基礎疾患のある方は対象。自己負担額は自治体により3,000〜7,000円程度。
- 帯状疱疹ワクチン:2025年4月から定期接種化。65歳の方、および経過措置として2025〜2029年度内に70・75・80・85・90・95・100歳になる方が対象。100歳以上は2025年度のみ全員対象。シングリックス(2回接種)または弱毒生ワクチンから選択。自治体により助成額が異なる。
任意接種(自費)で検討するもの
- RSウイルスワクチン(アレックスビー、アブリスボなど):60歳以上で接種可能(任意接種、1回約27,000円)。COPD・喘息・心不全のある方は重症化リスクが高いため検討の価値あり。
- 水痘ワクチン:50歳以上の帯状疱疹予防にも使えるが、効果はシングリックスより限定的。
- 髄膜炎菌ワクチン、B型肝炎ワクチン:基礎疾患や渡航予定に応じて検討。
接種の優先順位の考え方
「全部一気には打てない・予算もきつい」というご家族向けに、一般的な優先順位の目安を示します(最終的にはかかりつけ医と相談してください)。
- インフルエンザ(毎年10月〜11月)
- 新型コロナ(インフルエンザと同時接種可能)
- 帯状疱疹(対象年齢のうちに)
- 肺炎球菌(65歳の年に)
- RSウイルス(基礎疾患があるなら早めに)
家族(介護者)のワクチンも忘れずに
介護する家族自身がインフルエンザ・新型コロナのワクチンを接種することで、家庭内への持ち込みを大きく減らせます。これは「家族介護者向けワクチン」が制度として存在するわけではなく、健康な大人自身として受けるものですが、間接的に高齢者を守る最も費用対効果の高い対策の一つです。同居家族はもちろん、定期的に介護に通う子・きょうだいも検討の価値があります。
介護者が感染した時——代替体制のつくり方
家族介護者が倒れると、要介護高齢者の生活はその日から止まります。「自分が感染したら誰が見てくれるのか」を、平時から決めておく必要があります。実際にあったケースを参考に、緊急時の段取りを整理しました。
1. ケアマネジャーへの第一報
体調不良が出た時点(検査前でも)でケアマネジャーに連絡。「介護者が38度の発熱、抗原検査陽性、自宅療養を5日間予定」など、状況がわかる範囲で共有します。ケアマネジャーは事業所への連絡、代替サービスの手配、必要なら緊急のサービス担当者会議を開きます。
2. 訪問介護の臨時利用・追加
すでに訪問介護を利用している場合は、回数・時間の増加を相談。これまで使っていない場合も、緊急対応として「区分支給限度基準額の範囲内」で臨時にケアプランを変更することが可能です。新規でヘルパーを増やすには通常はサービス担当者会議が必要ですが、緊急時は事業所判断で先行対応してくれることもあります。
3. ショートステイの緊急利用
「緊急短期入所受入加算」という制度があり、家族の急病や災害時には7日以内(要件によりさらに延長可)のショートステイ受け入れが可能です。普段使っていない施設でも、ケアマネジャー経由で空きを探してもらいましょう。介護保険証・お薬手帳・健康保険証・着替え・常用薬を用意。
4. 訪問看護の医療的バックアップ
医療依存度が高い方(経管栄養、在宅酸素、人工呼吸器、痰の吸引など)は、訪問看護ステーションに状況を伝え、訪問頻度を増やしてもらうことを相談。主治医の指示書の変更が必要な場合もあります。
5. 親族・地域への協力依頼
同居していないきょうだいや子、近隣に住む親族にあらかじめ「もし自分が倒れたらこういう状況」と説明しておくと、いざという時の動きが早くなります。市町村の「在宅介護を応援する支援員」「家族会」など、地域の社会資源も平時から把握しておきましょう。
6. 認知症がある方の場合の特別な配慮
認知症の親を在宅で介護している場合、ショートステイへの突然の環境変化は混乱を招きやすく、せん妄や転倒のリスクが高まります。可能なら、平時から「お試しショートステイ」を体験させておき、施設・スタッフ・部屋に慣れさせておくと、緊急時にも比較的スムーズに利用できます。
7. 「緊急時連絡シート」を冷蔵庫に貼る
下記の情報を1枚にまとめて冷蔵庫など見える場所に貼っておくと、救急隊・親族・代理介護者が迷わず対応できます。
- 要介護者の氏名・生年月日・要介護度
- 主治医・かかりつけ医・訪問看護ステーション・薬局の連絡先
- ケアマネジャーの氏名・事業所・携帯番号
- 常用薬一覧(お薬手帳のコピー)と既往歴・アレルギー
- 同意のとれている延命処置の方針(DNAR、ACPの内容)
- 緊急時に連絡してほしい親族とその関係・電話番号
- 介護保険証・医療保険証の保管場所
普段は使うことのない情報ですが、「家族が突然倒れた」場面で命綱になります。
季節別の注意点と受診の判断基準(救急車を呼ぶサイン)
季節別の感染症カレンダー
冬(11月〜3月)
- インフルエンザ・新型コロナ:流行ピーク。10月までにワクチンを終わらせる。
- ノロウイルス:12〜1月に集団発生。デイサービスや家族で胃腸炎が出たら警戒。
- RSウイルス:高齢者では呼吸器症状で受診を要するケースあり。
- 結核:寒さで活動が落ちる時期、長引く咳に注意。
春(4月〜5月)
- 花粉症と感染症の鑑別が難しい時期。発熱を伴うなら感染症を疑う。
- 新型コロナの定期接種の合間でワクチン効果が落ちやすい時期でもある。
夏(6月〜9月)
- 食中毒(細菌性):カンピロバクター、サルモネラ、O157など。鶏肉・卵の生食、肉の加熱不足に注意。
- 熱中症と感染症の混在:高齢者は発熱・脱水・意識障害が重なりやすく、判別困難。
- 新型コロナの夏ピーク:エアコンによる換気不足で家庭内感染が広がりやすい。
梅雨〜初夏
- 疥癬:ヒゼンダニは高温多湿(25℃・湿度60%以上)で繁殖しやすく、施設・家庭内集団発生のリスクが上がる時期。
救急車(119)を呼ぶべきサイン
以下のいずれかがあれば、迷わず119番。
- 呼びかけに反応しない、ぐったりして起きない
- 呼吸が苦しそうで、肩で息をしている。胸がへこむような呼吸
- 唇や指先が紫色(チアノーゼ)
- SpO2(パルスオキシメーター)が93%以下に下がっている、または普段より明らかに低い
- けいれんしている、けいれん後に意識が戻らない
- 大量の血便・吐血
- 突然の片麻痺・ろれつが回らない(感染症ではなく脳卒中を疑う症状だが、迷わず119)
救急安心センター事業(#7119)を活用するサイン
「救急車を呼ぶほどではないかもしれないけれど、判断に迷う」時には#7119(救急安心センター)を利用できます。看護師や医師が24時間対応で、救急車を呼ぶべきか・夜間救急に行くべきか・翌朝まで様子を見てよいか、を相談できます。
- 38度以上の発熱が出たが他の症状は軽い
- 下痢が続いているが水分は取れている
- 強い倦怠感がある
- 夜間で主治医に連絡が取れない
※#7119が運用されていない地域もあります。お住まいの自治体の救急医療相談窓口の電話番号を事前に確認しておきましょう。
主治医・訪問看護師に連絡すべき変化
救急ではないが、普段と違うことがあったら早めに連絡を。
- 食事量がいつもの半分以下になった日が2日以上続く
- 水分摂取量が500mL/日以下、または6〜8時間以上排尿がない
- 体温が37.5℃以上、または逆に普段より明らかに低い(35℃台前半など)
- 新しく出た咳・痰、痰の色が黄色〜緑色になった
- 新しく出た発疹、強いかゆみ、皮膚の変色
- 「いつもと様子が違う」「ぼーっとしている時間が増えた」
高齢者は症状の出方が非典型なため、「家族の直感」が重要なサインになります。「気のせいかも」と思わず、必ず医療職に伝えてください。
在宅介護の感染対策・よくある質問
Q. 認知症の親がマスクを嫌がります。どうすれば?
A. 無理に着けると本人のストレス・脱水・誤嚥のリスクが上がるため、強制は避けます。代わりに、介護者がマスク着用、本人と家族の距離を1〜2m以上保つ、本人の居室の換気を強化する、訪問者を最小限にする、などの環境調整で対応します。「マスクを着けない=感染対策が無理」ではありません。
Q. 訪問介護員さんから「うちの利用者で疥癬が出た」と聞きました。家族として何ができますか?
A. まず本人と同居家族全員の皮膚を観察。指の間、わきの下、陰部、お腹に強いかゆみを伴う発疹がないかを毎日チェック。潜伏期が1〜2か月と長いので、当面は注意を続けます。少しでも疑わしい症状があれば皮膚科を受診し、「家族・施設で疥癬が出たので疑っている」と必ず医師に伝えてください。寝具やタオルは本人専用にし、同じ布団で寝るのを避けます。
Q. 同居家族が新型コロナに感染しました。要介護の母(85歳)にうつさないために、家の中をどう分ければいいですか?
A. 理想は、感染した家族を個室隔離し、専用トイレ・専用洗面所が使えるとベスト。難しい場合は、(1)感染した家族はマスク着用、(2)母の世話は感染していない別の家族が担当、(3)母の部屋にできるだけ入らない、(4)共有部分(トイレ・洗面所)は使うたびにドアノブ・便座・蛇口を消毒、(5)食器・タオルは分け、洗濯は感染者の分を最後にまとめる、(6)1〜2時間に1回換気、を組み合わせます。母自身の重症化リスクが高ければ、抗ウイルス薬の予防的投与の可否を主治医に相談してください。
Q. 嘔吐物処理キットはどこで買えますか?
A. ドラッグストアやホームセンターで市販されています(1セット1,000〜2,000円程度)。手作りも可能で、100均で買える材料(手袋・マスク・ペーパータオル・ビニール袋)と家庭用塩素系漂白剤を一つの蓋付き容器にまとめておけば十分です。次亜塩素酸ナトリウムは原液で長期保存できるので、500mLの漂白剤を1本トイレ下に常備しておくのがおすすめ。
Q. 介護中、自分が風邪をひいたら誰に頼めばいいですか?
A. 第一に担当ケアマネジャーへ連絡。ケアマネジャーは訪問介護の追加、ショートステイの緊急利用、訪問看護の調整など複数の選択肢を提示してくれます。連絡が取れない時間帯(夜間・休日)は、契約している事業所の緊急連絡先に直接電話を。地域包括支援センターも在宅介護の総合相談窓口として24時間体制の自治体が増えています。
Q. ノロウイルスは「症状がなくなったら治った」ですか?
A. いいえ。症状が落ち着いた後も、便には1週間〜1か月程度ウイルスが排出され続けます。回復しても、(1)石けんと流水での手洗いを徹底、(2)おむつやトイレの始末は引き続き手袋着用、(3)調理担当はしばらく避ける、を続けてください。家族内で次々と感染するパターンの多くは、この「治ったつもり」期間の見落としが原因です。
Q. 「肺炎球菌ワクチンは前に打ったから大丈夫」と言われました。本当ですか?
A. 高齢者用肺炎球菌ワクチン(23価のニューモバックスNP)は5年で効果が落ちるとされ、過去には5年ごとの再接種が推奨されていましたが、2024年度から定期接種の対象は「65歳の1回のみ」になりました。新しい15価ワクチン(バクニュバンス)や20価ワクチン(プレベナー20、キャップバックス)も登場しており、再接種を検討する場合は1年以上の間隔を空けてかかりつけ医と相談を。
Q. ヘルパーさんが自分の感染症(コロナ・インフル等)について家に来る前に教えてくれません。どうすれば?
A. まず事業所の管理者に「家族・利用者の安全のため、職員に発熱や体調不良があった時の対応方針を教えてほしい」と相談を。介護保険事業所には感染対策委員会の設置が義務化されており(2024年度から)、対応方針があるはずです。納得できない場合は、ケアマネジャーまたは市町村の介護保険課・運営指導課に相談する選択肢もあります。
Q. インフルエンザワクチンを毎年打っているのに、なぜインフルにかかるのですか?
A. インフルエンザワクチンの発症予防効果は40〜60%程度で、100%ではありません。ただし、接種で「重症化を防ぐ」効果は高齢者でも確認されており、入院や死亡のリスクを下げます。家庭内では本人と介護家族の同時接種、流行期の早期受診(48時間以内の抗ウイルス薬)と組み合わせることで、最終的な発症・重症化リスクを大きく減らせます。
参考文献・出典
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まとめ:完璧でなくていい、慌てずに備える
在宅介護の感染対策と聞くと、医療現場のように完璧な手順を踏まなければと身構えてしまいがちです。しかし、本当に大切なのは「全部完璧にやる」ことではなく、基本となる手洗い・換気・標準予防策・ワクチンを習慣化し、いざというときの段取り(連絡先・処理キット・代替体制)を平時から準備しておくことです。
本記事の要点
- 高齢者は免疫低下・基礎疾患・嚥下機能低下が重なり、感染症で重症化しやすい。「いつもと違う」が唯一のサインのことも。
- 家庭でも標準予防策(1ケア1手洗い、PPE、環境消毒、換気)が基本。完璧でなくてもよいので、ケアの区切りごとに手洗いを徹底する。
- 嘔吐物処理キットを平時から作っておく。0.1%次亜塩素酸ナトリウムの作り方を覚えておくと、夜中のノロでも慌てない。
- 感染症ごとに対応は異なる。インフル・コロナはワクチンと早期受診、ノロは次亜塩素酸ナトリウム、疥癬は皮膚科診断と通常/角化型の区別、結核は2週間以上の咳、帯状疱疹は72時間以内の受診とワクチンがカギ。
- 定期接種(インフル・肺炎球菌・コロナ・帯状疱疹)を計画的に活用。家族介護者自身のワクチンも家庭内持ち込み予防に重要。
- 介護者が感染した時の代替体制(ケアマネ即連絡、緊急ショート、訪問介護増、親族連携)を平時から決め、緊急時連絡シートを冷蔵庫に貼る。
- 受診の判断は、呼吸困難・意識障害・チアノーゼ・SpO2低下・けいれんなら119、迷ったら#7119、それ以外の変化は主治医・訪問看護師に早めに相談。
相談できる窓口
- 主治医・かかりつけ医
- 訪問看護ステーション
- 担当ケアマネジャー
- 地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)
- 保健所(感染症・結核・集団発生)
- 救急安心センター事業(#7119、対応地域のみ)
- 119(救急)
本記事はあくまで一般的な情報をまとめたものです。個別の医学的判断は必ず主治医や訪問看護師、薬剤師、皮膚科医、保健所など医療専門職に確認してください。介護する人もされる人も、無理せず、専門職と地域の力を借りながら、感染症の季節を乗り越えていきましょう。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。
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