医療・介護の施設整備、2027年度から集中化|厚労省「需要を踏まえて建て替え・改修」
介護職向け

医療・介護の施設整備、2027年度から集中化|厚労省「需要を踏まえて建て替え・改修」

厚労省は2026年5月22日の経済財政諮問会議で、将来需要を踏まえた医療機関・介護施設の建て替え・改修を含む施設整備を2027年度から集中的に推進する方針を提示。文科省と連携し配置・機能・規模を見直す。特養の4割が建替・大規模修繕の時期を迎える中、現場職員のキャリアと施設選びへの影響を解説。

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厚生労働省は2026年5月22日の経済財政諮問会議で、将来の需要を踏まえて医療機関や介護施設の建て替え・改修を含む施設・設備を計画的に整備する方針を示し、文部科学省などと連携して2027年度から「集中的に取り組む」と表明した。地域医療介護総合確保基金の活用や2027年度の介護報酬・診療報酬同時改定の議論と連動し、特養の4割が建替・大規模修繕の時期を迎える中、施設の配置・機能・規模が見直される。現場の介護職・看護職にとっては、勤務先の建替計画・経営姿勢が今後のキャリアと職場環境を大きく左右する局面に入る。

目次

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「うちの施設はいつ建て替えになるのか」「老朽化した建物のまま、あと何年働けるのか」——介護現場で働く人なら、一度は気にしたことがあるテーマだ。1990年代のゴールドプラン期に整備された特別養護老人ホームの多くが築30年を超え、給排水管・空調・耐震基準・ユニット化対応・感染症対策など、建物に求められる水準は当時とは比べものにならないほど変わっている。

こうした中、厚生労働省は2026年5月22日、首相官邸で開かれた令和8年第7回経済財政諮問会議に上野賢一郎厚生労働相が臨時議員として出席し、医療機関や介護施設の建て替え・改修を含む施設・設備を将来需要を踏まえて計画的に整備し、2027年度から「集中的に取り組む」方針を表明した。文部科学省などと連携し、施設・設備の配置・機能・規模を見直すとしている。

この記事では、なぜ2027年度なのか、何が「集中的」になるのか、そして特養・老健・有料老人ホームといった介護施設はどう動くのかを整理し、現場で働く介護職・看護職が自分のキャリアを考える上で押さえておくべき視点を解説する。建替や改修は単なる建物の問題ではなく、勤務環境・職場の存続・待遇のすべてに直結する経営判断だからだ。

経済財政諮問会議で示された方針|2027年度から「集中的に」の意味

厚労相が示した「建て替え・改修を含む計画的整備」

2026年5月22日に首相官邸で開かれた令和8年第7回経済財政諮問会議は、「成長力強化」と「経済財政一体改革(社会保障)」を議題とした。出席者には議長の高市早苗首相のほか、片山さつき財務相、城内実経済財政政策担当相、上野賢一郎厚生労働相(臨時議員)、文部科学相らが名を連ねた。会議に上野厚労相が提出した資料「持続可能な社会保障制度の構築に向けて」では、医療・介護の提供体制について「将来の需要を踏まえて医療機関や介護施設の建て替え・改修を含め地域に必要な施設・設備を計画的に整備する」と明記され、文科省などと連携して2027年度から「集中的に取り組む」と説明された。

厚労省はあわせて、施設・設備の配置・機能・規模を見直す方針を提示。地方では人口減少と高齢者の減少を見据えた集約・転換が、大都市部では2040年に向けて増加する高齢者の医療・介護需要に対応する整備が、それぞれ求められる。同じ「施設整備」でも地域類型ごとに方向性が異なることを政府として明確に位置づけた点が、今回の方針の特徴だ。

会議後、高市首相は議論のまとめとして「物価・賃金上昇を適切に反映し、必要なサービスを確保しつつ、持続可能な提供体制へ転換すべき」「労働供給制約が強まる中でも必要な医療・介護サービスを確保するための提供体制の構築」を強調した。施設整備はその物理的な土台として位置づけられている。

なぜ2027年度なのか|地域医療構想・介護報酬改定と同期

2027年度は、医療・介護政策にとっていくつもの節目が重なる年度だ。第一に、現行の地域医療構想は2025年度(令和7年度)を目標年次としており、2026年度を経て2027年度から「新たな地域医療構想」が順次スタートする。新地域医療構想は2040年頃を見据え、85歳以上人口の急増・生産年齢人口の急減・地域差の拡大を前提に、医療機関の機能再編・連携を進める枠組みだ。

第二に、2027年度は介護報酬と診療報酬の同時改定が予定されている。提供体制を変える以上、報酬の仕組みも同じタイミングで見直さないと現場が動かないため、施設整備の集中期間を2027年度に合わせるのは政策的に整合的だ。第三に、2027年度は薬価改定も着実に実施することが既に厚労相・財務相間で合意されている。医療・介護を貫く制度改革のフェーズが2027年度に揃うため、提供体制の物理的な土台である施設整備もこの時期に集中させる、というのが厚労省の構想と読める。

第四に、2027年度は介護保険事業計画の第10期(2027〜2029年度)が始まる年度でもある。都道府県・市町村が3年単位で立てる介護保険事業計画は、地域の介護施設整備の根拠となる計画だ。新地域医療構想・第10期介護保険事業計画・2027年度同時改定が同じタイミングで動くことで、ようやく「医療と介護が同じ将来像を共有して整備を進める」体制が整う。これまでバラバラに走っていた医療提供体制改革と介護提供体制改革が、2027年度に一本化された時間軸の上に乗る、これが厚労省が「集中的に」と表現する政策的な意味だ。

地域医療介護総合確保基金の役割が拡張される

施設整備の財源として中心的な役割を担うのが地域医療介護総合確保基金だ。介護施設分の配分基礎単価は、建築費高騰を受けて2026年4月から7.7%引き上げられたばかり。さらに2027年度からは、医療機関の機能確保や、医療機関の連携・再編・統合に向けた施設・設備整備も基金の支援対象に追加される方向で議論が進む。これにより、これまで「介護施設整備」と「医療機関の機能分化」で別建てだった支援が、提供体制全体を見据えた一体的な投資へと組み替えられる。現場の介護職にとっては、勤務先が基金の対象事業のどれを使うかで、改築のスピード・規模・職場の働きやすさが大きく変わってくる。

基金の中で特に動きが大きいのが、地域密着型サービス整備助成事業の「介護離職ゼロ受け皿整備と老朽化した広域型施設の大規模修繕の同時推進」、災害レッドゾーン・イエローゾーンに立地する老朽広域型介護施設の移転建替、移転用地確保が困難な大都市での代替施設整備、地域密着型から広域型施設への転換や集約化・ダウンサイジング、2040年に向けた小規模介護付きホームの対象地域拡大(11箇所)といったメニューだ。基金の使い方を見れば、その地域がどんな整備方針で2027年度以降に動くかが透けて見える。

老朽化と需要変化のダブル圧力|数字で見る整備の必要性

特養の4割強が建替・大規模修繕の対象に

厚労省が「集中的に」と言わざるをえない背景には、施設の老朽化が一気に進む現実がある。全国の特別養護老人ホームは2024年度末で1万675施設に達するが、その多くは1990年代のゴールドプラン期に整備された。一般に特養は築30年以上が建替・大規模修繕の目安とされ、現存施設の4割強がすでに建替・大規模修繕を実施したか今後必要な施設だと推計される。給排水管・電気設備・空調・エレベーターは築20〜25年程度で更新が必要になるため、本体の建替を伴わない大規模修繕も含めれば対象比率はさらに高くなる。

日本総研の2025年度老人保健健康増進等事業の調査でも、1995年以前竣工の施設のほぼすべてが築20年までに少なくとも一度は大規模修繕を実施している。一方で、東京都社会福祉協議会の特養部会が2022年に行った調査では、建替の構想から改築完了まで通常7年程度かかると指摘されており、「いま動かない施設は2030年代半ばに間に合わない」というのが現場の率直な肌感覚だ。建築費の高騰、設計事務所・建設会社の人手不足、近隣住民との合意形成、補助金申請のタイミングなど、論点が多岐にわたるため、経営層が建替プロジェクトに本腰を入れるかどうかで施設の運命が大きく分かれる。

多床室からユニット型へ|「住まい化」が求める投資

もう一つの圧力が、利用者ニーズの変化だ。特養全体の定員約60万人のうち半数強がすでにユニット型個室で、多床室中心の旧来型施設は「住まいとしての特養」という現在のコンセプトと合わなくなりつつある。看取り対応の個室確保、家族の宿泊スペース、感染症対応の動線分離、介護ロボット・ICT導入のための電源・通信インフラなど、求められるハードはどんどん複雑化している。老朽化対応と機能更新を同時に求められる施設では、修繕では追いつかず建替を選ばざるを得ないケースが増えている。

加えて、入所者の重度化も建物への要求水準を押し上げている。介護老人福祉施設の平均要介護度は3.9前後で推移し、寝たきり・認知症重度者の比率も上昇している。リフト浴・特殊浴槽・吸引器対応の電源・酸素配管といった医療機器対応設備が、建替の標準仕様に組み込まれつつある。旧来型の建物では設置場所すら確保できないため、改修ではなく建替が現実解となる施設は今後さらに増える。

地域類型で異なる「整備の方向性」

政府は2027年度からの集中整備で、地域類型ごとに異なる方向性を打ち出す構えだ。三菱総合研究所が2026年5月号のオピニオンで整理しているように、地域は人口減少と医療・介護アクセスの組み合わせで4つに大別される。大都市部のような「高需要・狭域型」では、後期高齢者の急増に備えた病床機能の最適化と高齢者救急の受け皿確保、在宅医療・介護の強化が課題。一方、過疎地に多い「低需要・広域型」では、複数施設の集約・ダウンサイジング、サテライト型事業所への転換、訪問機能の追加が必要になる。同じ「建替」でも、都市部では拡張・機能強化、過疎地では小規模化・多機能化と、向きが正反対だ。現場の介護職にとっては、自分の働く地域がどのタイプに分類されるかを把握することが、職場の将来像を読む第一歩になる。

特養・老健・有料老人ホームはどう動くか|建替戦略の違いを読む

特養|「建替か譲渡か」の経営判断が分かれる

特別養護老人ホームは社会福祉法人が運営する公共性の高い施設で、建替は地域医療介護総合確保基金などの公的補助に大きく依存する。補助対象となるには旧耐震基準(1981年5月31日以前)、原則築30年以上、社会福祉施設老朽度評価基準でC・Dランクのいずれかに該当する必要があり、加えて運営法人の財務状況が審査される。東京都の場合、負債総額が資産総額の半分以下、次期繰越活動増減差額がマイナスでないなど明確な基準が公表されている。財務体力のない法人は建替の判断ができず、合併・譲渡・他法人への運営委託といった選択を迫られるケースが今後増えると見込まれる。現場で働く職員にとっては、勤務先の財務情報(独立行政法人福祉医療機構WAM NETで公開)を確認することが、将来の雇用安定を考える上での最低限のリテラシーになる。

老健|「在宅復帰」と「医療連携」へ機能シフト

介護老人保健施設(老健)は2027年度介護報酬改定で機能強化型・基本型の評価軸が見直される議論が進んでいる。介護医療院についても「医療の必要な要介護者の長期療養・生活施設としてさらなる機能強化」が改定の検討項目だ。老健は元々在宅復帰を支援する中間施設として設計されており、地域医療構想の再編で病床を減らす病院から「在宅復帰前の受け皿」としての役割がいっそう求められる。建替時には、リハビリ室の拡張、24時間体制での看護機能、協力医療機関との連携加算を取れる設備整備など、医療色を強める方向の投資が進むと予想される。看護師・PT・OT・STにとっては、勤務先の建替計画にリハビリ機能・医療連携機能がどう組み込まれているかが、専門性を伸ばせる職場かどうかの判断材料になる。

有料老人ホーム|2027年「登録制」への移行と整備の関係

住宅型有料老人ホームの一部については、2027年介護保険制度改正で「届出制」から「登録制」への移行が議論されている。医療的ケアを中心とする施設や重度者が多い施設には、人員・設備・運営基準の遵守、6年ごとの更新、財務諸表の公表が義務付けられる方向だ。これに伴い、要件を満たせない事業者は廃業や特定施設入居者生活介護への転換を選ぶことになり、結果として有料老人ホーム業界全体で建替・改修・統廃合の動きが加速する。介護付き有料老人ホームに転換した方が経営が安定するという見方も広がっており、サ高住・住宅型から介護付きへの転換を見据えた改修需要が高まる可能性がある。現場の介護職にとっては、勤務先の運営会社が登録制への対応をどう進めるかが、職場の存続・働き方・処遇に直結する。

現場職員のキャリアにどう響くか|人材確保との連動を読み解く

建替期は「移転先勤務」と「働き方変化」が必ず起きる

施設の建替は、現場職員にとって日常業務を超えるイベントだ。構想から改築完了まで7年程度かかる中で、必ず発生するのが仮移転と業務フローの再設計である。2016年7月の老健局通知により、建替中に民間施設などの貸与を受けて事業を継続することが可能となったが、貸与先は要件が厳しく、職員にとっては通勤先の変更、シフトの組み直し、利用者層の一時的変化を受け入れることになる。事前に経営側から建替スケジュールと仮移転計画が説明されているかどうかは、職員の負担と離職リスクに直結する。「建替は遠い話」ではなく、5年前から職員の理解と協力が必要な事業だと心得たい。

仮移転中は介護報酬・診療報酬の算定要件にも影響が出る。ユニットケア加算、看護体制加算、夜勤職員配置加算などは設備要件と人員要件の両方を満たして算定されるため、仮移転先のレイアウトと人員体制によっては一時的に加算が取れなくなり、賞与原資が圧縮されるケースもある。経営側がそこまで見越して仮移転先を選定しているか、賃金水準を維持する措置を講じているかは、職員が建替時期に在籍を続けるかどうかの大きな判断材料になる。

建替後の「人員配置・処遇」が職場の魅力を決める

2027年度からの集中整備では、配置基準の柔軟化と人員配置の見直しも重要論点となる。経済財政運営と改革の基本方針2025や、2027年度改定に向けた介護給付費分科会の議論では、人員配置基準の弾力化、テクノロジー活用による業務効率化、夜勤体制の見直しが繰り返し挙げられている。建替を機にICT・介護ロボットを本格導入する施設では、記録業務やナースコール対応が大幅に効率化される一方、新たな機器・システムの操作スキルが現場に求められる。建替を機にユニットケアを本格導入する施設では、ユニットリーダーや個別ケアのスキルが評価軸になる。建替後の人員配置と処遇が、「同じ法人内でもこれまでと全く違う職場」を生む可能性は高い。

同時に、建替を契機に処遇改善加算の取得区分を上げる法人も多い。新建物に職員休憩室・更衣室・育児スペースを整備すれば、キャリアパス要件や職場環境等要件のクリアが進み、より高い加算区分を算定できる。建替は経営にとってコストだけでなく、加算原資の獲得チャンスでもある。職員側は「建替後に処遇改善加算がどの区分まで上がる予定か」を確認すれば、5年後の自分の月給・賞与の見通しが立てやすくなる。

転職を考えるなら「建替計画」を必ず確認する

2027年度以降に介護・看護分野で転職を検討する人にとって、応募先施設の建替計画は確認必須項目になる。具体的には、(1)築年数と老朽度評価、(2)建替・大規模修繕の予定時期と財源(自己資金か補助金か)、(3)建替後の定員・ユニット化計画、(4)地域医療構想・介護保険事業計画上の自施設の位置づけ、(5)協力医療機関連携の状況、の5点を面接で質問する価値がある。法人が答えに窮するようなら、経営判断が建替に追いついていない可能性がある。逆に、新地域医療構想を踏まえた建替・転換計画を具体的に語れる法人は、2030年代以降も生き残る経営力を持つと見て良い。施設の「建物の新しさ」ではなく「経営の建替リテラシー」を見抜くことが、これからの介護・看護キャリアの安全装置になる。

まとめ

厚生労働省は2026年5月22日の経済財政諮問会議で、医療機関と介護施設の建て替え・改修を含む施設整備を2027年度から集中的に推進する方針を提示した。背景には、特養の4割強が建替・大規模修繕の対象となる老朽化、後期高齢者の急増と地域差の拡大、新地域医療構想や2027年度介護・診療報酬同時改定との整合がある。地域医療介護総合確保基金の役割が一層拡張され、これまで別建てだった医療・介護の整備支援が提供体制全体を見据えた一体的な投資へ組み替えられる節目だ。

現場の介護職・看護職にとって、この変化は単なる「建物が新しくなるかどうか」の話ではない。勤務先法人の財務体力、建替計画、地域医療構想・介護保険事業計画上の位置づけ、登録制対応の進捗が、自分の働き方と処遇を5〜10年スパンで決めていく。今こそ「自分の働く施設の将来図」を意識し、必要に応じてキャリアの選択肢を広げておくタイミングだ。

2027年度はまだ少し先に見えるかもしれないが、建替の構想から完成までは7年。逆算すると、いま検討を始めている法人だけが2030年代半ばに新しい施設で運営できる。職場が動いているか動いていないかは、5年後の自分の働く環境に直結する重要なシグナルだ。動かない職場で疲弊して続けるのか、動く職場へ早めにキャリアを移すのか、判断の起点は2027年度の集中整備にある。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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