
施設で利用者が腹痛を訴えたときの対応|介護職の観察・危険な腹痛の見極め・報告
施設で利用者が腹痛を訴えたときの介護職の初動を、観察(部位・持続・随伴症状・認知症の非言語サイン)、危険な腹痛(腸閉塞・穿孔・虫垂炎など)の見極め、便秘/宿便との切り分け、看護師・救急への報告、温める/下剤/鎮痛を自己判断しない医行為の線引きまで公的資料をもとに整理しました。
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この記事のポイント
施設で利用者が腹痛を訴えたときは、介護職はまず「いつから・どこが・どのくらい強く痛むか」と、嘔吐・下痢・便秘・発熱・血便・腹部の張りや硬さといった随伴症状を観察します。急に始まった激しい痛みが続く、お腹が板のように硬い、冷や汗や顔色不良(ショック兆候)がある、便もガスも出ないといったサインは、腸閉塞・消化管穿孔・虫垂炎などの危険な腹痛を疑い、様子を見ずに看護師へ報告し救急要請につなげます。介護職の判断で温める・下剤や市販の痛み止めを使うことはせず、観察した事実を記録して結論から報告することが役割です。
目次
高齢者施設では、利用者が「お腹が痛い」と訴える場面は珍しくありません。多くは便秘や軽い胃腸炎で経過しますが、その中に腸閉塞や消化管穿孔のように放置すれば命に関わる腹痛が紛れています。やっかいなのは、高齢者は重い病気でも痛みや発熱がはっきり出にくく、認知症があれば「痛い」と言葉で伝えられないことです。だからこそ、利用者の一番近くにいて、普段の食欲や表情、排便リズムを知っている介護職が、その小さな変化に気づき、看護師や医療につなぐ最初の入口になります。
この記事では、施設で利用者が腹痛を訴えた、あるいは腹部の不調が疑われたときに、介護職が何を観察し、どこからを危険と見て報告・救急につなげ、どこまでが自分たちの役割なのか(医行為の線引き)を、急性腹症の医学資料や厚生労働省の通知をもとに、初動の順番に沿って整理します。夜勤帯で介護職だけのときにも使えるよう、判断に迷ったときの連絡の考え方までまとめています。
腹痛を訴えたときの初動フロー|最初の3ステップ
腹痛の訴えや腹部の不調に気づいたら、あわてて何かをする前に、次の順番で動くと抜けがありません。夜勤帯など介護職だけの時間帯でも、この流れは変わりません。
ステップ1:安全と姿勢を確保し、そばを離れない
まず利用者を楽な姿勢にします。多くの人は膝を軽く曲げて横になると腹壁の緊張がゆるみ痛みが和らぎます。無理に歩かせたり、腹部を押して痛みを確かめようとしたりしないこと。嘔吐を伴う場合は誤嚥を防ぐため顔を横に向けます。ベッドから転落しそうな不穏がある場合は、まず安全を確保します。急変の可能性があるため、その場を離れず、ナースコールや近くの職員を呼んで応援を確保します。
ステップ2:バイタルと全身状態を確認する
可能な範囲で体温・脈拍・血圧・呼吸・意識・顔色を確認します。とくに顔色が悪い、冷や汗をかいている、脈が速い、ぐったりしているといった全身のサインは、腹部の所見以上に緊急度を教えてくれます。高齢者は腹膜炎などの重症でも腹部所見が乏しいことがあり、全身状態の変化を軽く見ないことが大切です。数値で残せるものはメモを取り、後の報告に備えます。
ステップ3:観察した事実を看護師に報告する
次の章で挙げる観察項目を確認し、看護師(夜間はオンコール)へ「いつから・どこが・どのくらい・随伴症状・バイタル・普段との違い」を伝えます。診断名を推測して伝えるのではなく、見えた事実をそのまま報告するのが介護職の役割です。危険サインがあれば、報告と並行して救急要請の準備を進めます。判断に迷うときは「様子を見る」ではなく「相談する」を選ぶほうが、高齢者の腹痛では安全です。
腹痛の観察項目|部位・持続・強さと随伴症状を言葉にする
腹痛は原因によって痛み方が違います。次の項目を意識して観察し、報告できる言葉にしておくと、看護師や医師が緊急度を判断しやすくなります。介護職が診断する必要はなく、事実を正確に拾うことが目的です。
いつから・どんな始まり方か
「突然」始まった激しい痛みは、破れる・詰まる・裂ける・ねじれる病気(消化管穿孔、腸閉塞、大動脈瘤破裂など)を疑わせます。反対に、じわじわ強くなる痛みや、周期的に強くなって和らぐ痛み(間欠痛)は腸の動きに関わる痛みで、腸閉塞の初期にもみられます。発症の様子は診断の大きな手がかりです。訴えがあった正確な時刻を記録に残しましょう。
どこが・どのくらい強く・どう続くか
みぞおち、右上腹部、右下腹部、へその周り、下腹部など、痛む場所を確認します。強さは「食事が食べられない」「じっとしていられない」「顔をゆがめて動けない」など日常動作で表すと伝わりやすくなります。数分でおさまる痛みより、6時間以上続く強い痛みのほうが危険とされます。痛みが同じ場所に留まるのか、移動するのかも重要な情報です。
随伴症状(いっしょに起きていること)
嘔吐、吐いたものの色(コーヒーのかす様は上部消化管出血のサイン)、下痢、便秘、便やガスが出ているか、血便・黒い便、発熱、腹部の張り(膨満)や硬さ、冷や汗などを確認します。とくに「お腹が張って、便もガスも出ない」「お腹全体が板のように硬い」は重要な危険サインです。触るときは、痛がる場所を最後にし、そっと手を当てて硬さや張りを確かめる程度にとどめ、強く押し込まないようにします。
食事・排便との関係と普段との違い
最後の食事・排便・排ガスがいつだったか、いつもの排便リズムと比べてどうか、痛みが食後か空腹時かも観察します。介護記録の排便チェックが、便秘や宿便の判断材料になります。普段の食欲・活気・表情と比べて「どう違うか」を言葉にできると、危険度の判断に役立ちます。
危険な腹痛の早見表|様子を見ず、すぐ報告・救急する基準
次のサインが一つでもあれば、施設内で様子を見続けず、看護師へ即報告し救急要請につなげる腹痛と考えます。急性腹症(発症おおむね1週間以内で緊急の対応を要する腹部の病気)を疑う目安です。
| 危険サイン | 疑われる状態 |
|---|---|
| 突然の激しい腹痛が続く、冷や汗・顔面蒼白・血圧低下・脈が速い(ショック兆候) | 消化管穿孔、腹腔内出血、大動脈瘤破裂、絞扼性腸閉塞など |
| お腹全体が板のように硬い(板状硬)、そっと触れただけで強く痛がる | 腹膜炎(穿孔などによる) |
| お腹が張って、便もガスも出ない+嘔吐(吐物が便臭) | 腸閉塞・イレウス |
| みぞおち付近からへそ、右下腹部へと痛みが移動する | 虫垂炎(いわゆる盲腸) |
| 右上腹部の痛み+発熱・黄疸 | 胆石発作・胆のう炎・胆管炎 |
| 血便・黒い便(タール便)、コーヒーかす様の嘔吐 | 消化管出血 |
| 6時間以上続く強い腹痛、繰り返す嘔吐、意識がもうろうとする | 外科的処置が必要な急性腹症の可能性 |
高齢者は重い病気でも「痛みが弱い」「熱が出ない」「反応が鈍い」ことがあり、サインがそろうのを待つと手遅れになります。判断に迷うときほど、早めに看護師へ相談するのが安全です。
見逃したくない危険な腹痛の代表例|どんな痛み方をするか
介護職が病名を診断する必要はありませんが、代表的な危険な腹痛の「痛み方の特徴」を知っておくと、危険サインに早く気づけます。
腸閉塞・イレウス
腸の内容物が先に進めなくなる状態です。腹痛・嘔吐・お腹の張り(腹部膨満)とともに、便やガスが止まるのが特徴です。吐いたものが便のようなにおいがすれば進行のサインです。とくに腸の血流が止まる絞扼性のイレウスは、強い痛みが持続し、放置すると腸が壊死して命に関わります。過去に開腹手術を受けた利用者は、癒着による腸閉塞を起こしやすいことも知っておきましょう。
消化管穿孔・腹膜炎
胃や腸に穴があく状態で、突然の激しい腹痛から始まり、お腹全体が板のように硬くなる(板状硬)、そっと触れただけでも強く痛がる、といった腹膜刺激症状が現れます。ショックに陥ることもあり、緊急手術が必要です。
虫垂炎(いわゆる盲腸)
初めはみぞおちやへその周りが痛み、時間とともに右下腹部へ痛みが移動するのが典型的です。高齢者では症状がはっきりせず、進行して穿孔してから見つかることもあります。
胆石発作・胆のう炎・胆管炎
右上腹部やみぞおちの痛みで、脂っこい食事のあとに起きやすく、発熱や黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を伴うと胆管炎など重い状態が疑われます。高齢者に多い腹痛の原因のひとつです。
腹部以外が原因のことも
心筋梗塞がみぞおちの痛みとして現れたり、尿路結石が脇腹から下腹部の痛みを起こしたりと、腹痛の原因が消化管以外にあることもあります。「お腹の痛み=胃腸」と決めつけず、全身状態と合わせて看護師に報告することが大切です。
言葉で訴えられない利用者の腹痛サイン|認知症の人の観察
認知症が進んだ利用者や、失語のある利用者は「お腹が痛い」と言葉で伝えられません。痛みは「不穏」や「食欲低下」といった別の形で表れるため、介護職が非言語のサインに気づけるかが早期発見の分かれ目になります。
表情・姿勢・動きのサイン
顔をしかめる、眉間にしわを寄せる、体を丸めてお腹をかばう、お腹に手を当てる、触られるのを嫌がる、じっとせず体をよじる、といった様子は痛みのサインかもしれません。逆に、いつもより動かずぐったりしている場合も注意が必要です。声を出す人では、うめき声や「ううー」といった発声が増えることもあります。
食事・排泄・活気の変化
急に食欲が落ちた、食事を途中でやめる、水分を摂らない、いつもより口数が減った、夜間に落ち着かない(せん妄・不穏)、といった「普段との違い」は、腹部の不調を含む体調悪化のサインとして受け止めます。とくに食欲低下は、高齢者の隠れた腹部疾患で最初に出やすい変化のひとつです。急に怒りっぽくなる、介護に強く抵抗する、といった行動の変化の背景に、痛みや便秘が隠れていることもあります。
「認知症だから」で片づけない
不穏やBPSD(行動・心理症状)として対応する前に、痛みや便秘、発熱、排尿トラブルなど身体的な原因が隠れていないかを疑うのが原則です。BPSDの背景に身体的な不快感があることは少なくなく、その一つひとつを取り除くことが対応の基本になります。普段の様子を知る介護職が「いつもと違う」と感じたら、その違和感を記録し看護師に共有することが、言葉にできない痛みを拾い上げる最善の方法です。
便秘・宿便による腹痛の見方|多いが「安全」と決めつけない
施設での腹痛の原因として便秘は非常に多く、排便があれば軽快することがほとんどです。ただし「どうせ便秘だろう」と決めつけるのは危険で、便秘そのものが重い状態につながることもあります。
便秘・宿便で起きること
直腸に硬い便が詰まる便塞栓(宿便)では、その脇から水様便だけが漏れる溢流性便失禁が起きることがあり、「下痢」と誤解されやすい点に注意します。下剤を足すと悪化することもあるため、下痢に見えても排便状況を丁寧に確認します。まれにですが、硬い便のかたまりが腸を塞ぐ糞便性のイレウス(腸閉塞)や、拡張した腸がねじれる状態につながることもあります。
便秘と危険な腹痛の切り分け
介護記録の排便チェックで「何日出ていないか」を確認しつつ、腹部の張り・嘔吐・排ガスの有無・発熱・全身状態を合わせて見ます。排便・排ガスがあり全身状態が落ち着いていれば軽症のことが多い一方、便もガスも出ず嘔吐や強い張りを伴うなら、単なる便秘ではなく腸閉塞を疑って報告します。日ごろから排便リズムを記録しておくと、この切り分けが早くなります。
「宿便=怖い病気」ではないが自己処置はしない
宿便があること自体は健康な高齢者でもみられ、それだけで重い病気になるわけではありません。便秘への過剰な不安から下剤を使いすぎると、かえって利用者の負担になることもあります。一方で、摘便(指で便をかき出す処置)や浣腸は状態によっては腸を傷つけたり迷走神経反射を起こしたりする事故につながるため、介護職の自己判断で行わず、看護師の指示のもとで対応します。日常的には、水分・食物繊維・活動量・トイレ誘導といった生活面からの便秘予防が、腹痛そのものを減らす一番の対策になります。
看護師に報告するか、救急を呼ぶか|連絡判断の3段階
腹痛への対応で介護職が迷いやすいのが「どのレベルで、誰に連絡するか」です。次の3段階で考えると動きやすくなります。
① すぐ救急要請(119番)を準備するレベル
危険サイン早見表のような、突然の激しい持続痛、板状硬、ショック兆候、便もガスも出ない嘔吐、意識の低下などがあるときです。看護師へ報告しつつ、施設の手順に沿って救急要請の準備を進めます。夜間や看護師が不在でも、生命に関わると判断される場合はためらわず119番につなげます。
② 早めに看護師へ報告し指示を仰ぐレベル
危険サインは目立たないが、いつもより痛みが強い、嘔吐や発熱がある、食欲が急に落ちた、普段と様子が違う、といったときです。オンコールの看護師に状態を説明し、受診の要否や経過観察の方法について指示を受けます。
③ 記録し経過を観察するレベル
軽い痛みで全身状態が落ち着き、排便・排ガスもあるようなときは、時間・症状・対応を記録し、悪化しないか観察を続けます。ただし「様子見」は放置ではありません。痛みが強まる、嘔吐が始まる、顔色が悪くなるなど変化があれば、ためらわず①②へ切り替えます。
救急要請するときに伝えたい情報
救急要請が決まったら、救急隊や搬送先にスムーズに引き継げるよう、次の情報をまとめておきます。氏名・年齢、いつからどんな腹痛か、これまでの経過とバイタル、既往歴と内服薬(お薬手帳)、かかりつけ医、ふだんのADLや認知症の有無、家族の連絡先です。とくに内服薬とかかりつけ医の情報は、受け入れ判断や治療に直結します。慌てないよう、施設ごとに情報をまとめる様式を決めておくと安心です。
やってはいけない自己判断|温める・下剤・鎮痛と医行為の線引き
良かれと思った対応が、かえって危険になることがあります。腹痛では次の自己判断を避け、医療職の指示のもとで動きます。
- お腹を温めない:虫垂炎や腹膜炎など炎症がある腹痛では、温めることで炎症が悪化するおそれがあります。原因がわからないうちに安易にカイロや温罨法を当てないこと。
- 下剤・浣腸を自己判断で使わない:腸閉塞が隠れている腹部に下剤や浣腸を使うと、腸に強い負担がかかり危険です。便秘に見えても、看護師の判断を経てから対応します。
- 市販の痛み止めを飲ませない:痛み止めで痛みが隠れると、危険な腹痛の発見が遅れます。診断の妨げにもなります。服薬の判断・指示は医療職の役割です。
- 飲食をむやみに勧めない:手術が必要な腹痛では絶食が原則です。看護師の指示があるまで、水分や食事を無理に摂らせないようにします。
- 腹部を強く押して確かめない:痛む場所を強く押すのは、状態を悪化させたり利用者に苦痛を与えたりします。観察は「そっと手を当てる」程度にとどめます。
介護職ができるのは、姿勢を整える、そばで見守る、観察して記録する、医療職へ正確に報告することです。厚生労働省の通知でも、薬の使用や医学的判断は原則として医行為にあたり、介護職が独断で行うものではないと整理されています。「何もしないで報告する」ことが、腹痛では正しい対応になる場面が多いと理解しておきましょう。自分たちの役割の線引きを普段からチームで共有しておくことが、いざというときに迷わず動く力になります。
腹痛の経過観察|見逃してはいけない悪化のサイン
経過観察になった場合も、腹痛は数時間で状況が変わることがあります。次の変化が現れたら、軽症の判断を見直して看護師へ再報告します。
報告レベルを引き上げるサイン
- 痛みが次第に強くなる、痛む範囲が広がる
- 嘔吐が始まった、繰り返す、吐物が便のようなにおいがする
- お腹の張りが強くなる、便もガスも出なくなる
- 発熱してきた、冷や汗をかく、顔色が悪くなる
- 反応が鈍い、ぐったりして活気がない、意識がもうろうとする
脱水にも注意する
嘔吐や下痢を伴う腹痛では、高齢者は短時間で脱水に傾きます。尿量の減少、口の中の乾き、皮膚のはり(ツルゴール)の低下などを合わせて観察し、水分の摂取状況を記録に残します。ただし水分摂取の可否も、腹痛の原因によっては看護師の指示を確認してから行います。
「落ち着いた」でも記録を残す
排便があって痛みが消えた場合でも、いつ・どんな痛みで・どう対応し・どう軽快したかを記録します。同じ利用者が繰り返し腹痛を訴えるとき、記録の積み重ねが原因の発見や受診判断につながります。
記録と報告のコツ|事実を、結論から、SBARで伝える
腹痛の報告は、あわてて状況を並べると要点が伝わりません。医療職への報告でよく使われるSBARの型に沿うと、短時間で正確に伝わります。
- S(状況):「〇号室の△△さんが、30分前から下腹部の痛みを訴えています」
- B(背景):「排便は3日ありません。昼食は半分残しました。既往に〇〇があります」
- A(評価・気づき):「顔をしかめて体を丸めており、いつもより明らかに元気がありません。お腹が張っています」
- R(依頼):「一度みていただけますか。救急要請すべきか判断をお願いします」
ポイントは、診断名を言おうとしないこと(「たぶん腸閉塞です」ではなく、見えた事実を伝える)と、結論・依頼を先に述べることです。数値で言える情報(バイタル、最後の排便日、食事量、痛みの持続時間)はできるだけそのまま伝えます。
記録には、時刻・訴えの内容・観察した所見(部位・強さ・随伴症状・バイタル)・とった対応・報告先と指示内容を残します。「腹痛の訴えあり」だけでは次の勤務者に何も伝わりません。いつ・どこが・どのように痛み、どう対応したかまで書くことで、経過観察の判断や受診時の情報として生きてきます。同じ利用者が繰り返し腹痛を訴えるときは、記録の積み重ねが原因の発見や受診のきっかけになります。事実を淡々と、しかし具体的に残すことが、チーム全体の観察力を底上げします。
よくある質問(FAQ)
Q. 利用者が「お腹が痛い」と言ったら、まず何をすればよいですか?
楽な姿勢(膝を軽く曲げて横になる姿勢など)にしてそばを離れず、バイタルと顔色・冷や汗などの全身状態を確認します。そのうえで、いつから・どこが・どのくらい痛むか、嘔吐や便秘などの随伴症状を観察し、看護師へ報告します。腹部を強く押したり、歩かせたりはしないでください。
Q. お腹を温めてあげたほうが楽になりますか?
原因がわからないうちは温めないでください。虫垂炎や腹膜炎など炎症のある腹痛では、温めると悪化するおそれがあります。温めるかどうかは看護師の判断に従います。
Q. 便秘が続いていて腹痛があります。下剤や浣腸を使ってよいですか?
介護職の自己判断では使いません。腸閉塞が隠れている場合、下剤や浣腸が腸に負担をかけ危険です。排便日数や腹部の張り、排ガスの有無を看護師に報告し、指示を受けてから対応します。
Q. 認知症で「痛い」と言えない利用者の腹痛は、どう気づけばよいですか?
顔をしかめる、体を丸める、お腹をかばう、触られるのを嫌がる、急に食欲が落ちる、不穏になる、といった非言語のサインに注目します。「いつもと違う」という違和感を記録し、看護師に共有してください。
Q. 夜勤で看護師がいません。腹痛の利用者にどう対応しますか?
危険サイン(激しい持続痛、板状硬、ショック兆候、便もガスも出ない嘔吐、意識低下など)があれば、オンコール看護師へ報告しつつ救急要請の準備を進めます。生命に関わると判断される場合は、施設の手順に沿ってためらわず119番につなげます。
参考文献・出典
- [1]急性腹症診療ガイドライン2015(急性腹症の定義・腸閉塞とイレウスの区別)- 日本腹部救急医学会ほか(日本救急医学会サーバ掲載)
急性腹症=発症1週間以内で手術等の迅速な対応が必要な腹部疾患。機械性腸閉塞と麻痺性イレウスの区別、ショック・激痛を伴う急性腹症で考える疾患。
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
まとめ|腹痛対応は観察・見極め・報告で決まる
施設で利用者が腹痛を訴えたとき、介護職に求められるのは診断でも処置でもなく、正確な観察と、危険サインを見逃さない目、そして医療につなぐ報告です。いつから・どこが・どのくらい痛み、嘔吐・便秘・発熱・血便・腹部の張りや硬さといった随伴症状を確認し、突然の激しい持続痛・板状硬・ショック兆候・便もガスも出ない嘔吐があれば、様子を見ずに看護師へ報告し救急につなげます。
高齢者は重い病気でも痛みや発熱が出にくく、認知症があれば言葉で訴えられません。だからこそ、顔をしかめる・体を丸める・食欲が落ちるといった非言語のサインと「いつもと違う」という違和感が、大切な入口になります。温める・下剤や浣腸・痛み止めの自己判断は避け、観察した事実を結論から報告する。この基本を積み重ねることが、利用者の命と、チームの信頼を守ります。判断に迷ったときは「様子を見る」ではなく「相談する」を選ぶ。その一歩が、危険な腹痛の早期発見につながります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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