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処遇改善加算を割増賃金の算定基礎に含めない違反が続出|神奈川労働局が周知強化へ

処遇改善加算を割増賃金の算定基礎に含めない違反が続出|神奈川労働局が周知強化へ

神奈川労働局が介護事業者の処遇改善加算を割増賃金基礎に含めない労基法違反が目立つと指摘。残業代・深夜手当の不払いに直結する問題の背景と、介護職が自分の給与を守るための確認方法を解説します。

ポイント

この記事のポイント

神奈川労働局は2026年度、介護事業者が処遇改善加算を原資とする手当を割増賃金の算定基礎に含めていない労基法違反が目立つとして、周知を強化する方針を示しました。処遇改善加算由来の手当は労基法第37条の除外賃金に該当せず、残業代・深夜手当・休日手当の計算基礎に必ず算入する必要があります。違反があれば残業代の未払い=賃金不払いとなり、介護職の手取りが月数千円~数万円減る可能性があります。

ニュースの概要|神奈川労働局が介護事業者への監督で処遇改善加算の違反を指摘

2026年4月9日付の労働新聞の報道によると、神奈川労働局(宿里明弘局長)は今年度(令和8年度)、介護事業場における処遇改善加算の取り扱いについて、周知を強化する方針を明らかにしました。

背景にあるのは、昨年度(令和7年度)に管内の労働基準監督署が社会福祉施設に対して実施した監督の結果です。割増賃金に関する是正勧告のうち、処遇改善加算に関連した違反が目立ったというのです。

神奈川労働局監督課は違反の原因について、「国からの加算金で支払っているため、割増賃金の基礎に含める必要がないと勘違いしている可能性がある」と分析しています。今後は自治体が行う説明会に労働局が直接参加し、事業者に注意を促していく方針です。

この問題は、介護職員の残業代・深夜手当・休日手当の金額に直結します。処遇改善加算で月に数万円の手当をもらっていても、それが割増賃金の計算に反映されていなければ、実質的な賃金不払いが発生していることになります。本記事では、この違反の具体的な中身と介護職が自分の給与を守るための知識を詳しく解説します。

そもそも「割増賃金の算定基礎」とは何か|労基法第37条の基本

割増賃金の仕組み

割増賃金とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた場合や、法定休日・深夜(22時~5時)に働いた場合に、通常の賃金に上乗せして支払われる賃金のことです。労働基準法第37条で支払いが義務付けられています。

割増率は以下のとおりです。

  • 時間外労働(残業):25%以上(月60時間超は50%以上)
  • 法定休日労働:35%以上
  • 深夜労働:25%以上
  • 時間外+深夜が重なる場合:50%以上
  • 休日+深夜が重なる場合:60%以上

割増賃金の計算式は次のとおりです。

割増賃金額 = 1時間あたりの賃金額 × 時間外・休日・深夜の労働時間数 × 割増率

「算定基礎」に含まれる賃金と除外される賃金

この計算で重要なのが「1時間あたりの賃金額」の算出方法です。月給制の場合、基本給だけでなく各種手当も含めた金額を、1か月の平均所定労働時間数で割って算出します。

ただし、労基法第37条第5項および労基法施行規則第21条により、以下の7種類の賃金に限り、算定基礎から除外することが認められています。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金(結婚手当、出産手当など)
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

極めて重要な点は、この7種類は「限定列挙」であるということです。つまり、ここに書かれていない賃金は、名称が何であれ、すべて割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。

さらに、上記の手当であっても実態が異なれば除外できません。たとえば「家族手当」という名称でも、扶養家族の人数に関係なく一律に支給されている場合は除外不可です(昭和22年11月5日基発第231号)。

なぜ処遇改善加算の手当は除外できないのか

処遇改善加算を原資とする手当(処遇改善手当など)は、上記7種類のいずれにも該当しません。したがって、毎月支給される場合は、その全額を割増賃金の算定基礎に含めて計算する必要があります。

介護労働安定センターも公式資料で「処遇改善関係加算を原資として毎月支払われる給与は、基本給であろうと処遇改善手当などの手当であろうと『基礎賃金』となり、時間外勤務の場合の割増賃金の計算の基礎となります」と明確に説明しています(出典:介護労働安定センター「新加算の算定内容の検討」)。

なぜ違反が起きるのか|介護業界に広がる「勘違い」の構造

「国のお金だから除外できる」という誤解

神奈川労働局監督課の分析によれば、違反が多い理由は「国からの加算金で支払っているため、割増賃金の基礎に含める必要がないと勘違いしている可能性がある」とのことです。

処遇改善加算は、国が介護職員の賃金改善を目的として介護報酬に上乗せする仕組みです。事業者にとっては「国から入ってくるお金を職員に配分しているだけ」という感覚があり、自社が負担している賃金とは性質が違うと考えてしまうケースがあるようです。

しかし、労基法上の割増賃金の算定基礎は、その原資がどこから来ているかは一切問いません。毎月決まって支給される手当であれば、自社負担であろうと国の加算金由来であろうと、すべて算定基礎に含める義務があります。

制度変更の頻度が混乱を招く

処遇改善加算の制度は近年、目まぐるしく変更されてきました。2012年の処遇改善加算の創設、2015年の特定処遇改善加算の追加、2022年の介護職員等ベースアップ等支援加算の新設、そして2024年6月からはこれらを一本化した「介護職員等処遇改善加算」に再編されています。さらに2026年度には対象を介護従事者全体に拡大する臨時改定も予定されています。

こうした頻繁な制度変更により、事業所の事務担当者が最新の取り扱いを把握しきれず、「以前は算入不要だった」「一時的な制度だから除外できる」といった誤認が生まれやすい状況にあります。

福井県敦賀でも同様の事態|全国的な問題

この問題は神奈川県だけに限りません。福井県の敦賀労働基準監督署が過去2年間に社会福祉事業所を調査したところ、78%の事業所で法令違反が確認されたという報告もあります。その多くが割増賃金の計算誤り、とりわけ処遇改善手当の算定基礎への不算入だったとされています。

つまり、この問題は特定の地域の問題ではなく、介護業界全体に広がる構造的な課題です。自分の事業所がきちんと計算しているかどうか、介護職員自身も確認する必要があります。

裁判所も「算定基礎に含めるべき」と明確に判断

この問題については裁判所の判断も出ています。松山地方裁判所宇和島支部(令和3年1月22日判決)は、処遇改善加算の取り扱いについて以下のように判示しました。

「介護事業者が本来当然に従業員(介護職員)に支給しなければならない時間外勤務割増賃金の支払原資に上記介護職員処遇改善加算金を充て、他面においてその分だけ時間外勤務割増賃金の負担を実質的に免れるのは、従業員の賃金水準を向上させることにつながらないから、介護職員処遇改善加算の制度の趣旨に反する」

さらに同判決は、「処遇改善加算金を原資にして毎月支給する手当は、時間外勤務割増賃金の算定の基礎に組み込まれるべきもの」と明確に述べています。この判例により、法的にも処遇改善手当を割増賃金の基礎から除外することは許されないことが確認されています。

具体的な影響額を計算してみる|月いくら損している?

処遇改善加算の手当を割増賃金の算定基礎に含めていない場合、実際にどのくらいの金額差が生じるのでしょうか。具体的な数字で計算してみましょう。

計算例1:月給制の常勤介護職員

以下の条件で試算します。

  • 基本給:200,000円
  • 資格手当:10,000円
  • 処遇改善手当:30,000円(月額)
  • 年間所定労働日数:240日(年間休日125日)
  • 1日の所定労働時間:8時間
  • 月平均所定労働時間:160時間
  • 月の時間外労働:20時間、深夜労働:8時間(夜勤2回分)

【正しい計算(処遇改善手当を含む)】

算定基礎額:200,000 + 10,000 + 30,000 = 240,000円
1時間あたりの賃金額:240,000 ÷ 160 = 1,500円
時間外割増賃金:1,500 × 1.25 × 20時間 = 37,500円
深夜割増賃金:1,500 × 0.25 × 8時間 = 3,000円
合計:40,500円

【誤った計算(処遇改善手当を含まない)】

算定基礎額:200,000 + 10,000 = 210,000円
1時間あたりの賃金額:210,000 ÷ 160 = 1,312.5円
時間外割増賃金:1,312.5 × 1.25 × 20時間 = 32,813円
深夜割増賃金:1,312.5 × 0.25 × 8時間 = 2,625円
合計:35,438円

差額:月5,062円の未払いが発生

年間に換算すると約60,750円の損失です。未払い賃金の消滅時効は3年(2020年4月以降の賃金債権)ですので、3年分をさかのぼると約18万円の未払い額になる計算です。

計算例2:時給制のパート介護職員

  • 時給:1,200円
  • 処遇改善手当:15,000円(月額)
  • 月の所定労働時間:120時間(週30時間勤務)
  • 月の時間外労働:10時間

【正しい計算】

処遇改善手当の時給換算:15,000 × 12 ÷ 1,560時間(年間所定労働時間)≒ 115.4円
1時間あたりの賃金額:1,200 + 115.4 = 1,315.4円
時間外割増賃金:1,315.4 × 1.25 × 10時間 = 16,443円

【誤った計算】

1時間あたりの賃金額:1,200円
時間外割増賃金:1,200 × 1.25 × 10時間 = 15,000円

差額:月1,443円の未払い。年間で約17,300円の損失となります。

処遇改善手当の額が大きいほど影響も大きい

2024年度の処遇改善加算の一本化以降、加算率は最大で24.5%(介護職員等処遇改善加算Ⅰ)に達しています。事業所によっては処遇改善手当として月額4万円~5万円を支給しているケースもあり、その場合の未払い額はさらに大きくなります。

厚生労働省「令和5年度介護従事者処遇状況等調査」によると、処遇改善加算を取得している事業所における介護職員の平均給与額は月額318,230円で、このうち処遇改善加算由来の手当が相当の割合を占めています。手当額が大きい事業所ほど、算定基礎に含めないことの影響は深刻です。

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介護職が自分の給与を守る5つのチェックポイント

処遇改善加算の手当が正しく割増賃金に反映されているかどうか、介護職員自身が確認できるポイントを5つ紹介します。

チェック1:給与明細で「処遇改善手当」の金額を確認する

まず、毎月の給与明細を見て、処遇改善加算に関連する手当がいくら支給されているかを確認しましょう。「処遇改善手当」「介護職員処遇改善手当」「ベースアップ手当」など名称は事業所によって異なります。この金額が毎月一定額で支給されている場合、必ず割増賃金の算定基礎に含まれなければなりません。

チェック2:時間外手当の「単価」を逆算して確認する

給与明細に記載されている時間外手当の金額と時間外労働の時間数がわかれば、実際の割増賃金単価を逆算できます。

確認方法:時間外手当の金額 ÷ 時間外労働の時間数 ÷ 1.25 = 1時間あたりの基礎賃金

この「1時間あたりの基礎賃金」に月平均所定労働時間を掛けた金額が、基本給+各種手当(除外手当を除く)の合計と一致するはずです。処遇改善手当の額が含まれていなければ、違反の可能性があります。

チェック3:就業規則・賃金規程を確認する

就業規則や賃金規程には、割増賃金の計算方法が記載されています。「割増賃金の算定基礎から除外する手当」が列挙されている場合、その中に処遇改善手当が含まれていないかを確認しましょう。もし処遇改善手当が除外対象として記載されていれば、その規程自体が労基法に違反しています。

チェック4:深夜手当(夜勤手当)の計算も確認する

介護施設では夜勤があるため、深夜労働の割増賃金も重要です。夜勤手当が「一律○○円」と定額で支給されている場合でも、法定の深夜割増賃金を下回っていれば違法です。法定の深夜割増賃金は「1時間あたりの賃金額(処遇改善手当含む)× 0.25 × 深夜労働時間数」で算出されます。

チェック5:おかしいと思ったら相談窓口を利用する

計算が合わない場合や疑問がある場合は、以下の窓口に相談できます。

  • 最寄りの労働基準監督署:割増賃金の未払いに関する相談・申告を受け付けています。匿名での相談も可能です。
  • 総合労働相談コーナー:各都道府県労働局に設置されており、労働問題全般について相談できます。
  • 労働条件相談ほっとライン:0120-811-610(平日17:00~22:00、土日祝9:00~21:00)で電話相談が可能です。
  • 法テラス(日本司法支援センター):弁護士への相談を希望する場合、収入要件を満たせば無料で法律相談を受けられます。

なお、労働基準監督署への申告を理由に事業者が不利益な取り扱い(解雇、配置転換など)をすることは労基法第104条第2項で禁止されています。安心して相談してください。

事業者が知っておくべきリスクと対応策

介護事業者にとっても、この問題は経営上の重大なリスクです。ここでは事業者側の視点から対応策を解説します。

是正勧告と遡及払いのリスク

労働基準監督署の監督で割増賃金の違反が発覚した場合、是正勧告が出されます。是正勧告を受けた事業者は、違反を是正し、未払いの割増賃金を対象の全職員に対して遡及して支払わなければなりません。

未払い賃金の消滅時効は3年(2020年4月以降の賃金債権。改正労基法附則第143条の経過措置により、当面3年。将来的には5年に延長の可能性)です。対象職員が多い事業所では、遡及払いの総額が数百万円に達するケースもあり得ます。

付加金の請求リスク

さらに、従業員が裁判で未払い割増賃金を請求した場合、裁判所は未払い額と同額の「付加金」の支払いを命じることができます(労基法第114条)。つまり、最悪の場合、未払い額の2倍を支払うことになります。

処遇改善加算の返還リスク

処遇改善加算は、介護職員の賃金改善に充てることが要件です。加算金を原資とした手当を割増賃金の計算基礎に含めないことは、松山地裁宇和島支部判決が指摘するとおり「従業員の賃金水準を向上させることにつながらない」ため、処遇改善加算の制度趣旨に反するとみなされる可能性があります。最悪の場合、加算金の返還を求められるリスクもゼロではありません。

今すぐ事業者が取るべき3つのアクション

  1. 賃金規程の確認:割増賃金の算定基礎から除外する手当のリストに、処遇改善手当が含まれていないか確認する。含まれていれば直ちに規程を改正する。
  2. 給与計算ソフトの設定確認:給与計算ソフトの割増賃金算定基礎の設定に、処遇改善手当が含まれているか確認する。多くの給与ソフトでは手当ごとに「算定基礎に含む/含まない」の設定が可能です。
  3. 遡及計算と差額支払い:過去分に不足があれば、速やかに差額を計算し支払う。監督署の調査前に自主的に是正すれば、悪質とは判断されにくくなります。

処遇改善加算のベースアップ時にも注意

介護労働安定センターも指摘しているとおり、処遇改善加算を原資としたベースアップを行う際には、「これまでの各職員の時間外勤務・深夜勤務・法定休日勤務の実績や見込みに基づいて、時間外手当・深夜勤務手当・休日勤務手当にどのくらい響くかをシミュレーションして、賃金の総額を考える必要がある」とされています(出典:介護労働安定センター「新加算の算定内容の検討」)。

つまり、処遇改善手当を月3万円アップしたら、割増賃金もその分増えることを見込んで総額を設計する必要があるのです。この点を見落とすと、加算額をすべて手当に回した結果、割増賃金の増加分で事業所の持ち出しが増えるという事態になりかねません。

2026年度の処遇改善加算の最新動向と今後の注意点

令和8年度臨時改定で対象が拡大

2026年度(令和8年度)は介護報酬の臨時改定が予定されており、処遇改善加算の対象がこれまでの「介護職員」から「介護従事者全体」に拡大される見通しです。これまで対象外だった訪問看護や居宅介護支援(ケアマネジャー事業所)なども加算の対象に加わる可能性があります(出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」)。

対象の拡大に伴い、処遇改善手当を新たに支給し始める事業所が増えることが予想されます。その際、割増賃金の算定基礎に正しく含めることの重要性がさらに高まります。

月額賃金改善要件の厳格化

現行の処遇改善加算では、加算額の2分の1以上を「基本給または決まって毎月支払われる手当」で賃金改善に充てることが要件とされています。つまり、処遇改善加算の原資のうち半分以上は必ず毎月の手当として支給されることになり、割増賃金の算定基礎に含める必要がある部分が大きいのです。

一時金(賞与)で支給する分については、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」として算定基礎から除外されますが、毎月の手当として支給される分は除外不可です。この支給方法による違いを正しく理解することが重要です。

独自分析:処遇改善加算の取得率と違反リスクの関係

厚生労働省「令和5年度介護従事者処遇状況等調査」によると、介護職員等処遇改善加算の取得率は全介護サービス事業所の約94.5%に達しています。つまり、ほぼすべての介護事業所がこの加算を取得し、何らかの形で処遇改善手当を支給しています。

一方で、神奈川労働局の監督結果や敦賀の調査結果を踏まえると、かなりの割合の事業所で割増賃金の計算に誤りがある可能性が示唆されます。94.5%の事業所が加算を取得しているにもかかわらず、割増賃金への正しい反映が徹底されていない現状は、制度の周知が追いついていないことの証左と言えるでしょう。

特に、中小規模の介護事業所では社会保険労務士などの専門家に委託せず、事務職員や管理者が独自に給与計算を行っているケースも多く、知識不足による違反が起きやすい構造があります。

よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

Q1. 処遇改善手当を一時金(賞与)で支給している場合も算定基礎に含めるのですか?

いいえ。一時金(賞与)として支給される場合は、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当するため、割増賃金の算定基礎から除外できます。ただし、毎月支給される手当と一時金を併用している場合、毎月支給される分は算定基礎に含めなければなりません。

Q2. 処遇改善手当の金額が月によって変動する場合はどうなりますか?

変動する場合でも、毎月支給されているのであれば算定基礎に含める必要があります。金額が変動する手当の場合、その月の実際の支給額を算定基礎に含めて割増賃金を計算します。「金額が変動するから一時的な賃金であり除外できる」という考えは誤りです。

Q3. 処遇改善手当を基本給に組み込んでいる場合はどうなりますか?

基本給に組み込まれている場合は、当然ながら基本給全体が割増賃金の算定基礎に含まれるため、問題は生じません。むしろ最もシンプルで間違いが起きにくい方法と言えます。ただし、処遇改善加算の計画書提出にあたっては、どの部分が加算由来の賃金改善であるかを明確に区分しておく必要があります。

Q4. 過去の未払い分を請求することはできますか?

はい。未払い賃金の消滅時効は3年です(2020年4月以降の賃金債権。労基法第115条、改正法附則第143条)。2020年3月以前の賃金債権については旧法の2年が適用されます。時効が完成する前に、労働基準監督署への申告や、事業者への直接請求を行うことで、遡って支払いを受けることが可能です。

Q5. 固定残業代制度の場合はどうなりますか?

固定残業代(みなし残業代)を採用している事業所でも、固定残業代の計算の基礎に処遇改善手当が含まれていなければ違法です。固定残業代は「一定時間分の割増賃金を定額で支払う」制度ですので、その定額が法定の割増賃金(処遇改善手当を含む算定基礎で計算した額)を下回っていれば、差額の支払いが必要です。

Q6. 夜勤手当と深夜割増賃金は別のものですか?

はい、別のものです。夜勤手当は事業所が独自に設定する手当であり、法的な義務はありません。深夜割増賃金は労基法第37条で義務付けられた割増賃金(25%以上)です。夜勤手当を支給していても、それが法定の深夜割増賃金を満たしていなければ別途支払いが必要です。なお、夜勤手当自体も処遇改善手当と同様、割増賃金の算定基礎に含めなければなりません。

参考文献・出典

  • [1]
    介護事業者・処遇改善加算 割増賃金基礎に含めず 監督で違反めだつ 神奈川労働局- 労働新聞社

    2026年4月9日付報道。神奈川労働局が処遇改善加算に関する割増賃金違反の是正を強化する方針を報じた元記事。

  • [2]
    新加算の算定内容の検討(処遇改善加算と割増賃金の関係を解説)- 公益財団法人 介護労働安定センター

    処遇改善加算を原資とする手当が割増賃金の算定基礎となることを明記した公式資料。

  • [3]
    看護職員等処遇改善事業補助金にかかる賃金の取り扱いについて- 厚生労働省 新潟労働局

    処遇改善関連手当の割増賃金への算入義務を解説した労働局リーフレット。

  • [4]
    割増賃金の計算方法- 神奈川労働局(川崎北労働基準監督署)

    割増賃金の算定基礎に含める手当・除外できる手当の詳細説明。

  • [5]
    令和8年度介護報酬改定について- 厚生労働省

    2026年度の処遇改善加算の対象拡大に関する最新の介護報酬改定情報。

  • [6]
    介護職員の処遇改善:制度概要- 厚生労働省

    介護職員等処遇改善加算の制度概要・最新の加算率等を掲載。

まとめ|処遇改善加算と割増賃金、正しい知識で自分の給与を守ろう

本記事のポイントを整理します。

  • 神奈川労働局が2026年度、介護事業者が処遇改善加算由来の手当を割増賃金の算定基礎に含めていない労基法違反が目立つとして周知強化を表明
  • 違反の主な原因は「国からの加算金だから割増賃金の基礎に含めなくてよい」という事業者の勘違い
  • 労基法第37条第5項で算定基礎から除外できるのは家族手当・通勤手当・住宅手当など7種類のみ(限定列挙)。処遇改善手当はこれに該当しないため、必ず算入が必要
  • 松山地裁宇和島支部判決(令和3年)でも、処遇改善加算金を原資とする手当は割増賃金の算定基礎に含めるべきと判示
  • 処遇改善手当月3万円の場合、年間約6万円の未払いが生じ得る(月20時間残業・夜勤2回の場合の試算)
  • 介護職員は給与明細の確認と割増賃金単価の逆算で自分の給与をチェックできる
  • 疑問がある場合は労働基準監督署や労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)に相談を

処遇改善加算は介護職員の待遇を改善するための制度ですが、割増賃金に正しく反映されなければ、その恩恵は十分に届きません。2026年度は加算の対象がさらに拡大される見通しであり、正しい取り扱いの重要性はこれまで以上に高まっています。

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介護事業者の処遇改善加算を割増賃金基礎に含めず|神奈川労働局の監督で違反目立つ【2026年4月】
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公開日: 2026年4月12日最終更新: 2026年4月12日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。