高齢者の吐き気・嘔吐|原因と家庭での対応・脱水/誤嚥の注意・受診の目安
ご家族・ご利用者向け

高齢者の吐き気・嘔吐|原因と家庭での対応・脱水/誤嚥の注意・受診の目安

高齢者の吐き気・嘔吐の原因(胃腸炎・薬の副作用・便秘やイレウス・めまい・心筋梗塞や脳卒中など危険なもの・脱水)を、症状ごとにやさしく整理。嘔吐時の誤嚥・窒息を防ぐ横向きの姿勢と口腔ケア、脱水のサインの見分け方、家庭での水分補給の進め方、かかりつけ医・消化器内科への受診や#7119・119番が必要な危険サインの目安まで、ご家族が今日からできる対応を公的資料に基づき解説します。

ポイント

この記事のポイント

高齢者の吐き気・嘔吐は、胃腸炎や食べ過ぎといった一時的なものから、薬の副作用、便秘やイレウス(腸閉塞)、めまい、そして心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気まで、原因がさまざまです。まずは吐いたものがのどに詰まらないよう、横向きに寝かせて口の中をきれいにし、落ち着いてから少量ずつ水分をとります。水分がほとんどとれない、ぐったりしている、強い頭痛・胸痛・激しい腹痛・血を吐く・意識がぼんやりするといったサインがあるときは、ためらわず受診や119番を考えてください。判断に迷うときは、かかりつけ医や消化器内科、救急相談窓口(#7119)に相談しましょう。

目次

年をとった家族が急に「気持ちが悪い」と言い出したり、食べたものを吐いてしまったりすると、ご家族はとても不安になります。「ただの胃腸炎だろうか」「このまま様子を見ていいのか」「すぐ病院に連れて行くべきか」。判断に迷う場面は少なくありません。

高齢の方の吐き気・嘔吐は、若い人と同じように考えてはいけない理由がいくつかあります。一つは、原因が幅広いこと。胃腸の不調だけでなく、飲んでいる薬の影響や、便秘、さらには心臓や脳の病気が「吐き気」という形であらわれることもあります。もう一つは、嘔吐そのものが高齢者にとって危険を伴うこと。吐いたものがのどや気管に入る「誤嚥(ごえん)」や「窒息」、そして急速に進む「脱水」は、高齢者で重くなりやすいトラブルです。

この記事では、ご家族や介護をする方が落ち着いて行動できるように、考えられる原因の整理、家庭でできる安全な対応、誤嚥・脱水を防ぐコツ、そして「いつ・どこに相談すればよいか」の目安を、公的機関や専門学会の情報をもとにやさしくまとめました。なお、ここで紹介するのはあくまで一般的な目安です。診断は医師にしかできませんので、迷ったら早めに相談してください。

吐き気・嘔吐とは|「悪心・嘔吐」の仕組みと2つのタイプ

「吐き気」と「嘔吐」は、医学では「悪心(おしん)・嘔吐(おうと)」と呼ばれます。悪心とは、吐く前に起こる「むかつき」「気持ち悪さ」のこと。嘔吐は、胃の中のものを実際に口から吐き出すことをいいます。両方が同時に起こることもあれば、むかつきだけ、あるいは前ぶれなく突然吐く、ということもあります。

吐き気・嘔吐は、脳の中にある「嘔吐中枢」という場所が刺激されて起こります。健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)によると、この刺激の伝わり方によって、嘔吐は大きく二つに分けられます。

脳から起こる「中枢性の嘔吐」

脳の嘔吐中枢が直接刺激されて起こるタイプです。くも膜下出血・脳出血・脳腫瘍などで脳の圧が高くなったとき、メニエール病や乗り物酔いなど耳(内耳)の異常、抗がん剤やアルコールなどの薬の影響、ホルモンや電解質の異常、腎臓病などで起こります。むかつきを伴わずに、突然「噴水のように」激しく吐く場合は、脳の病気が隠れていることがあり、特に注意が必要です。

おなかから起こる「末梢性(反射性)の嘔吐」

胃腸や肝臓・胆のう、腎臓、おなかの臓器からの刺激が反射的に伝わって起こるタイプです。急性胃腸炎、胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞(イレウス)、胆のう炎・胆石、急性膵炎、腎盂腎炎などが原因になります。実は、心筋梗塞のときにみられる吐き気・嘔吐も、この反射性のなかまです。「胸ではなくみぞおちが気持ち悪い」という形で心臓の病気があらわれることがあるのは、このためです。

このように、吐き気・嘔吐は「胃の問題」とは限りません。だからこそ、ほかにどんな症状を伴っているか(頭痛・胸痛・腹痛・発熱・下痢・意識のもうろうなど)を観察することが、原因を見分けるうえでとても大切になります。

高齢者の吐き気・嘔吐で考えられる主な原因

高齢者の吐き気・嘔吐には、よくある身近な原因と、見逃すと危険な原因の両方があります。ここでは代表的なものを整理します。どれにあたるかを家庭で正確に診断することはできませんが、「どんな可能性があるか」を知っておくと、観察や受診の判断に役立ちます。

1. 胃腸炎・食あたり(最も多い原因)

ノロウイルスやロタウイルス、細菌などによる感染性胃腸炎、いたんだ食べ物による食あたりは、吐き気・嘔吐の原因として最も多いものです。下痢や発熱を伴うことが多く、同居している家族や施設の人に同じ症状の人がいる場合は、感染性が強く疑われます。多くは数日で自然に治まりますが、高齢者は脱水が急に進むため油断はできません。家庭での具体的な乗り切り方は、高齢者の感染性胃腸炎を家庭で乗り切る記事もあわせて参考にしてください。

2. 薬の副作用

高齢者で意外に多いのが、薬の影響による吐き気です。痛み止め(NSAIDs)、抗生物質、鉄剤、一部の認知症治療薬、ジギタリスなどの心臓の薬、抗がん剤などは、吐き気・嘔吐を起こすことがあります。東京都健康長寿医療センターの調査では、75歳以上の約8割が2つ以上の慢性疾患をもち、その分だけ服用する薬も多くなりがちです。新しい薬を飲み始めた後や、薬の量が変わった後に吐き気が出たときは、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。

3. 便秘・イレウス(腸閉塞)

高齢者は腸の動きが弱くなり、便秘になりやすくなります。便がたまって腸が動かなくなると、吐き気や嘔吐が起こることがあります。さらに進んで腸の通り道がふさがる「イレウス(腸閉塞)」になると、おなかが張る、ガスや便が出ない、吐いたものから便のようなにおいがする、といった症状が出ます。これは早急な治療が必要な状態です。おなかの手術を受けたことがある方は、その傷あと(癒着)が原因で腸閉塞を起こすことがあります。

4. めまい・耳の異常

耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官は、嘔吐中枢とつながっています。良性発作性頭位めまい症やメニエール病など、ぐるぐる回るようなめまいに吐き気が伴うことはよくあります。立ち上がったときのふらつき(起立性低血圧)も、吐き気の引き金になります。

5. 逆流性食道炎・食事のとり方

加齢で食道や胃の働きが弱まると、胃酸が逆流して吐き気・胸やけが起こりやすくなります。食べてすぐ横になる、前かがみの姿勢が続く、食べ過ぎ、といった生活習慣も影響します。食事に関連した吐き気は、姿勢や食べる量・スピードの工夫で和らぐことがあります。

6. 命にかかわる危険な原因(見逃してはいけないもの)

頻度は高くありませんが、吐き気・嘔吐が重い病気のサインであることがあります。MSDマニュアル家庭版や日本の医療機関の情報をもとに整理すると、特に注意したいのは次のような病気です。

  • 心筋梗塞:胸の痛みだけでなく、みぞおちの不快感・吐き気・冷や汗としてあらわれることがあります。高齢者や糖尿病のある方は、典型的な胸痛が出にくいことも知られています。
  • 脳卒中(脳出血・くも膜下出血など):突然の激しい頭痛、前ぶれのない噴水のような嘔吐、ろれつが回らない、手足のまひ、意識がもうろうとする、などを伴います。
  • 腸閉塞(イレウス)・急性腹症:強い腹痛、おなかの張り、便やガスが出ない状態。虫垂炎・胆のう炎・膵炎なども強い腹痛と吐き気を起こします。
  • 糖尿病の急な悪化(ケトアシドーシスなど)・電解質の異常・腎不全・肝不全:全身の病気の一症状として吐き気が出ることがあります。
  • 髄膜炎・脳炎:発熱と強い頭痛、首が硬くなる(うなずきにくい)などを伴います。

これらは家庭で見分けることが難しいものばかりです。だからこそ、後で説明する「危険なサイン」に当てはまるときは、原因を決めつけずに医療機関へつなぐことが何より大切です。

吐いたときの家庭での対応|誤嚥・窒息を防ぐ5ステップ

吐いてしまったとき、ご家族がまずすべきことは「あわてないこと」と「のどに詰まらせないこと」です。順を追って説明します。

ステップ1:横向きにして、誤嚥・窒息を防ぐ

嘔吐でいちばん怖いのは、吐いたものがのどや気管に入ってしまう誤嚥と、それによる窒息・誤嚥性肺炎です。MSDマニュアルでも、意識がはっきりしないときに吐くと吐物を吸い込む危険があると指摘されています。寝た状態で吐いたときは、すぐに体を横向きにしてください。あおむけのままだと、吐いたものがのどに流れ込みやすく危険です。すわっていられる方は、前かがみの姿勢で吐かせると安全です。

ステップ2:口の中の吐物を取り除き、口腔ケアをする

口の中に残った吐物は、誤嚥や次の吐き気の原因になります。落ち着いたら、口をゆすいでもらうか、自分でできない方の場合は、使い捨て手袋やマスクを着けたうえで、ガーゼやタオルで口の中の吐物をやさしく取り除きます。指を入れるときは、手袋の上からガーゼやハンカチを巻き、歯で直接かまれないように注意します。口の中を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

ステップ3:衣服をゆるめ、しばらく安静にする

おなかを締めつけるベルトやボタンをゆるめ、楽な姿勢で休ませます。吐いた直後の胃はとても敏感なので、すぐに飲んだり食べたりさせず、まずは口をゆすぐ程度にとどめて、30分ほど安静にして様子をみます。吐き気には不安な気持ちも影響します。背中をさすったり、やさしく声をかけたりして、安心させてあげることも大切です。

ステップ4:落ち着いたら、少量ずつ水分をとる

吐き気が少し落ち着いてきたら、脱水を防ぐために水分をとります。ここで大事なのは「一気に飲ませない」こと。一度にたくさん飲むと、再び吐いてしまいます。スプーン1杯から一口程度の少量を、こまめに、時間をかけて与えます。飲むものは、水・白湯・麦茶・経口補水液などが向いています。冷たすぎる飲み物、炭酸飲料、アルコール、脂っこいものや刺激の強いものは、症状が強い間は控えます。

ステップ5:吐物の片づけと家庭内の感染対策

感染性胃腸炎の可能性も考え、吐物の片づけは慎重に行います。使い捨て手袋・マスクを着け、ペーパータオルなどで静かに拭き取り、ビニール袋に密閉して捨てます。汚れた床や周囲は、市販の塩素系漂白剤を薄めた液(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒すると効果的です。アルコール消毒はノロウイルスに効きにくいため、塩素系を使うのがポイントです。処理が終わったら、せっけんでていねいに手を洗います。家族間でタオルを共用しない、体調の悪い人は調理を控える、といった基本も感染拡大を防ぎます。在宅での感染対策全般は、在宅介護の感染対策の記事もあわせてご覧ください。

脱水のサインの見分け方と水分補給のコツ

嘔吐や下痢が続くと、体から水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が失われ、脱水になります。健康長寿ネットも、高齢者はもともと脱水気味の方が多く、激しく嘔吐すると気づいたときには血圧低下など命にかかわる状態になることがある、と注意を促しています。高齢者の脱水が進みやすい理由と、家庭で気づくためのサインを知っておきましょう。

なぜ高齢者は脱水になりやすいのか

  • 加齢で筋肉量が減り、体にためておける水分そのものが少ない
  • のどの渇きを感じにくくなり、水分補給が遅れがち
  • トイレを気にして、自分から水分を控えてしまうことがある
  • 利尿薬や降圧薬など、水分が失われやすくなる薬を飲んでいることが多い
  • 嚥下(飲み込み)に不安があり、水分摂取量が少なくなりやすい

家庭で気づける脱水のサイン

次のようなサインがないか、こまめに観察してください。MSDマニュアル家庭版でも、脱水の徴候は受診を急ぐべき「警戒すべき徴候」の一つとされています。

  • 口の中や舌、わきの下が乾いている
  • 尿の回数・量が減っている、尿の色が濃い
  • 皮膚をつまむと、戻りが遅い(皮膚のハリの低下)
  • ぼんやりして元気がない、反応が鈍い、うとうとしている
  • 立ちくらみ、ふらつき、脈が速い
  • 水分を飲んでもすぐ吐いてしまう

経口補水液の使い方

軽い脱水であれば、経口補水液(OS-1などのORS)が役立ちます。水やお茶だけでは電解質を補えず、スポーツドリンクは糖分が多く吐き気が強いときには向かないことがあります。経口補水液を、少量ずつ・時間をかけて与えるのが基本です。ただし、水分を飲んでもすべて吐いてしまう、尿がほとんど出ない、ぐったりしている、といった場合は、家庭での補水では追いつきません。点滴が必要なこともあるため、早めに受診してください。心臓・腎臓の病気で水分や塩分の制限がある方は、経口補水液の使用について、あらかじめ主治医に確認しておくと安心です。脱水のより詳しい見極め方は、高齢者の脱水症の記事でも解説しています。

危険なサインの早見表|「ただの胃腸炎」と見分けるために

「ただの胃腸炎」と「すぐ受診すべき危険な吐き気」をどう見分けるか。ここでは、これまで紹介した公的・専門情報をもとに、ご家族が観察しやすいように「吐き気・嘔吐に伴うサイン」と「疑われる状態」「家庭での目安」を一覧に整理しました。家庭で病名を確定するためのものではなく、あくまで「どのくらい急ぐべきか」を考えるための早見表としてお使いください。

伴っているサイン疑われる状態家庭での目安
下痢・発熱があり、家族にも同じ症状の人がいる感染性胃腸炎・食あたり多くは数日で軽快。脱水に注意し、水分がとれなければ受診
新しい薬を始めた・量が変わった後の吐き気薬の副作用自己判断で中止せず、医師・薬剤師に相談
数日便が出ず、おなかが張る/吐物が便くさい便秘・イレウス(腸閉塞)イレウスが疑われれば早急に受診
ぐるぐる回るめまい・耳鳴り・ふらつきめまい・耳の異常転倒に注意。症状が強い・続くなら受診
みぞおちの不快感・胸の圧迫感・冷や汗心筋梗塞など心臓の病気すぐに受診・119番を検討
突然の激しい頭痛・噴水のような嘔吐・まひ・ろれつが回らない脳卒中など脳の病気ただちに119番
強い腹痛・腹部の張り・触ると激しく痛む急性腹症(腸閉塞・胆のう炎・膵炎・虫垂炎など)すぐに受診・119番を検討
血を吐く・黒い便が出る消化管出血すぐに受診・119番を検討
水分がとれない・尿が出ない・ぐったり脱水の進行早めに受診(点滴が必要なことも)
意識がもうろう・呼びかけへの反応が鈍い重い全身・脳の異常ただちに119番

この表から見えてくる、当サイトとしての視点を一つお伝えします。高齢者の吐き気・嘔吐で本当に注意すべきなのは、「吐き気の強さ」よりも「一緒に出ているサイン」だ、ということです。激しく吐いていても胃腸炎で数日で治ることもあれば、吐き気は軽くても、その裏に心筋梗塞や脳卒中が隠れていることもあります。MSDマニュアルが「警戒すべき徴候」として挙げているのは、嘔吐の回数ではなく、頭痛・項部硬直・意識の変化・持続する腹痛・脱水の徴候といった「随伴症状」です。

さらに高齢者では、これらの危険な病気が「典型的な形で出にくい」という落とし穴があります。心筋梗塞でも胸が痛まずに吐き気だけ、肺炎や尿路感染でも高熱が出ずに食欲低下と吐き気だけ、ということが起こります。だからこそ、ご家族は「いつもと比べてどうか」という変化に注目してください。普段は受け答えがしっかりしているのにぼんやりしている、いつもなら飲める水が飲めない、といった「いつもとの違い」は、検査の数値より早く異変を教えてくれる大切なサインです。判断に迷ったら、それ自体が相談する理由になります。

受診・救急の目安と相談先(かかりつけ医・消化器内科・#7119)

吐き気・嘔吐があっても、すぐに受診が必要とは限りません。一方で、高齢者は「様子見」が長引くほど、脱水や肺炎などのリスクが上がります。ここでは、緊急度に応じた目安を整理します。MSDマニュアル家庭版や消防庁の情報を参考にしていますが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。迷ったら相談する、を基本にしてください。

ただちに119番(救急車)を呼ぶ

  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、いつもと明らかに様子が違う
  • 突然の激しい頭痛、手足のまひ、ろれつが回らない、けいれん
  • 強い胸の痛みや圧迫感、冷や汗、唇が紫っぽい
  • 呼吸が苦しそう、息ができない
  • 吐いたものが大量の血液、または止まらない出血の印象
  • 動けないほどの激しい腹痛・おなかの張り

その日のうち〜できるだけ早く受診する

  • 水分がほとんどとれない、飲んでもすぐ吐いてしまう
  • 尿がほとんど出ない、ぐったりしている(脱水のサイン)
  • 強い腹痛・背中の痛み、血便・黒い便がある
  • 高熱を伴う、強い頭痛がある
  • 嘔吐が止まらない、これまで経験したことのない吐き方
  • 糖尿病・心臓・腎臓などの持病があり、症状が強い

翌日など、通常の診療時間に受診を考える

  • 嘔吐は数回でおさまり、少しずつなら水分がとれている
  • 下痢を伴うが、脱水のサインはなく落ち着いている
  • 吐き気が1か月以上だらだら続いている(一度は医師の診察を)

どこに相談すればよいか

受診先に迷ったときは、まずかかりつけ医に相談するのが基本です。普段の体調や飲んでいる薬を把握しているため、適切な助言が得られます。胃腸の症状が中心であれば消化器内科が専門です。在宅で訪問診療や訪問看護を利用している場合は、まず担当の事業所に電話で相談すると、往診や受診の調整をしてもらえることがあります。

「救急車を呼ぶべきか、今すぐ病院に行くべきか」で判断に迷うときは、救急安心センター事業(#7119)が役立ちます。看護師などの相談員が電話で症状を聞き、緊急度や受診の必要性を助言してくれる窓口です。総務省消防庁によると、#7119は全国の多くの地域で実施が広がっており、導入地域のアンケートでは利用者の約9割が「役に立った」と回答しています。ただし、まだ全国すべての地域で使えるわけではないため、お住まいの地域が対象かどうかは消防庁のサイトで確認できます。地域で#7119が使えない場合は、消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」で緊急度の目安を確認したり、お住まいの自治体の相談窓口を利用したりできます。緊急・重症と感じたときは、迷わず119番に電話してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 吐いた直後に水を飲ませてもいいですか?

吐いた直後の胃は刺激にとても敏感で、すぐに飲むと再び吐いてしまいます。まずは口をゆすぐ程度にとどめ、30分ほど安静にしてから、スプーン1杯〜一口程度の少量を、こまめに与えてください。一気飲みは避けます。

Q. 市販の吐き気止めを飲ませても大丈夫ですか?

自己判断での市販薬の使用はおすすめしません。吐き気止めで一時的に症状が隠れても、その裏にある心臓や脳、腸閉塞などの病気の発見が遅れる恐れがあります。高齢者は薬の影響も受けやすいため、薬を使うかどうかは医師・薬剤師に相談してください。

Q. 寝たきりの家族が吐いたとき、まず何をすればいいですか?

すぐに体を横向きにして、吐いたものがのどに流れ込まないようにします。次に、使い捨て手袋とマスクを着けて、口の中の吐物をやさしく取り除きます。指を入れるときは、手袋の上からガーゼやハンカチを巻き、かまれないよう注意します。呼吸が苦しそう、顔色が悪い、反応が鈍いといったときは、ためらわず119番してください。

Q. 経口補水液とスポーツドリンク、どちらがよいですか?

脱水が心配な場面では、電解質をバランスよく補える経口補水液が向いています。スポーツドリンクは糖分が多く、吐き気が強いときには適さないことがあります。ただし、心臓や腎臓の病気で水分・塩分の制限がある方は、事前に主治医に確認してください。

Q. 熱もなく下痢もないのに吐くのは、胃腸炎ではないのですか?

下痢や発熱を伴わない嘔吐は、胃腸炎以外の原因も考える必要があります。特に、むかつきを伴わず突然激しく吐く場合は脳の病気、みぞおちの不快感や冷や汗を伴う場合は心臓の病気が隠れていることがあります。いつもと違う様子があれば、早めに相談してください。

Q. 何回吐いたら病院に行くべきですか?

回数だけで判断するのは難しく、大切なのは「一緒に出ているサイン」です。たとえ数回でも、水分がとれない・ぐったりしている・強い頭痛や胸痛・血を吐く・意識がもうろうとするなどがあれば、回数に関係なくすぐ受診や119番を検討してください。逆に、少しずつ水分がとれて落ち着いているなら、様子をみながら通常の診療時間の受診でよいこともあります。

参考文献・出典

まとめ|迷ったら早めに相談を

高齢者の吐き気・嘔吐は、胃腸炎のような身近なものから、薬の副作用、便秘やイレウス、めまい、そして心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気まで、原因が幅広いのが特徴です。家庭でまずできるのは、横向きにして誤嚥・窒息を防ぎ、口の中をきれいにし、落ち着いてから少量ずつ水分をとること。そして、脱水や危険なサインがないかを「いつもと比べて」観察することです。

大切なのは、吐き気の強さや回数だけで判断せず、一緒に出ているサインに目を向けることです。水分がとれない、ぐったりしている、強い頭痛・胸痛・激しい腹痛、血を吐く、意識がもうろうとする、といったときは、原因を決めつけずに医療につなげてください。

受診や相談に迷ったときの窓口を、最後にまとめます。普段の体調を知っているかかりつけ医がいちばんの相談相手です。胃腸の症状が中心なら消化器内科へ。在宅で訪問診療・訪問看護を利用している方は、まず担当事業所に電話を。「救急車を呼ぶべきか」で迷うときは、看護師などが電話で助言してくれる救急安心センター事業(#7119)や、消防庁のアプリ「Q助」を活用してください。地域で#7119が使えない場合は、お住まいの自治体の相談窓口を確認しておくと安心です。そして、緊急・重症と感じたら、ためらわず119番に電話してください。早めの相談が、高齢のご家族を守る確かな一歩になります。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

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