
高齢者の体調変化で救急車を呼ぶ判断基準|119番と#7119・かかりつけ医の使い分け
高齢の家族が急変したとき「119を呼ぶべきか迷う」をなくす実用ガイド。即119のサイン、高齢者特有の非典型症状、#7119の使い方とエリア確認、Q助、看取り期のACP合意まで消防庁・厚労省ソースで整理。
この記事のポイント
高齢の家族の体調が急変したら、「意識がない・呼吸がおかしい・半身が動かない・激しい胸や頭の痛み・大量出血・けいれん・大きなやけど」のいずれかがあれば迷わず119番に通報してください。判断に迷うときは、24時間365日無料の救急安心センター事業「#7119」に電話すると、医師や看護師、救急救命士がそのまま119へ取り次いでくれます。「呼んで申し訳ない」と思う必要はありません。高齢者は症状が出にくく、軽く見えても急変するため、迷ったら早めに専門家へつなぐのが本人と家族を守る選択です。
目次
「夜中に高齢の親がうめき声を上げている」「いつもよりぼんやりしていて呼びかけに反応が薄い」「ベッドから落ちて起き上がれない」——在宅介護で家族がもっとも判断に迷う場面のひとつが、救急車を呼ぶかどうかです。総務省消防庁の救急搬送データでは、救急搬送される人のうち高齢者が占める割合は年々増え続けており、高齢者の急病搬送のなかには「軽症」と判定されるケースもあれば、見た目は穏やかでも背後に脳梗塞や心筋梗塞、敗血症が隠れていることも珍しくありません。
高齢者の体調変化は、若い世代に比べて典型的な症状が出にくく、痛みや息苦しさを本人が訴えないまま静かに重症化することがあります。一方で、「迷惑をかけたくない」「タクシー代わりに呼んだと思われたくない」という遠慮から、本来なら呼ぶべき場面で家族がためらってしまうケースも少なくありません。
この記事では、消防庁・厚生労働省・各自治体の救急安心センターの公式情報をもとに、(1) 迷わず119番すべきサイン、(2) 高齢者特有の見落としやすい急変サイン、(3) 「#7119(救急安心センター)」「かかりつけ医」「在宅医・訪問看護」をどう使い分けるか、(4) 救急車が来るまでに家族がやるべきこと、(5) 在宅看取りを希望している場合の事前準備、までを、家族が実際に手を動かせる粒度で整理します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の症状の判断には不確実性が伴うため、少しでも不安があれば自己判断せず、119番または#7119、かかりつけ医に必ず相談してください。
なぜ高齢者の救急要請は判断が難しいのか
救急車を呼ぶ判断が難しいのは、高齢者の急変が「いつもの体調不良」と地続きで現れることが多いからです。判断を難しくしている代表的な理由を整理します。
1. 症状が非典型で軽く見える
日本救急医学会の高齢者救急に関する研究では、高齢者・超高齢者の救急搬送例で「非典型的な主訴」で来院するケースが一定割合あることが報告されています。心筋梗塞でも胸痛を訴えないことがあり、肺炎でも高熱が出ないことがあります。痛みや発熱が抑えられているぶん、「いつもより少しおかしい」程度に見えるのが落とし穴です。
2. 認知症やうつが症状の訴えを覆い隠す
認知症がある方は「どこが痛い」「いつから息苦しい」を言葉で伝えられないことが多く、家族にとって唯一のサインが「いつもと違う表情」「食事に手をつけない」「ぼーっとして反応が薄い」といった行動の変化になります。後述のせん妄(急に注意が散漫になり、つじつまの合わない言動が出る状態)は感染症や脱水のサインであることが多く、見逃すと重症化につながります。
3. 痛みの感じ方が弱くなっている
加齢に伴って痛覚の閾値が上がるとされ、骨折していても「少し痛い」程度の訴えで済むことがあります。転倒後に歩けてしまっても、大腿骨や肋骨が折れていたり、頭蓋内で慢性硬膜下血腫が進行していたりすることがあるため、転倒の事実そのものを軽視できません。
4. 家族側の「迷惑をかけたくない」心理
総務省消防庁が公表している救急安心センター事業(#7119)の利用者アンケートでは、約9割の利用者が「役に立った」と回答しています。裏を返せば、それだけ多くの家族が「119を呼んでいいのか」と迷っているということです。「タクシー代わりに使うのは申し訳ない」「呼んだのに軽症だったら恥ずかしい」といった心理が、本来必要な要請を遅らせる要因になります。後述するように、判断に迷ったときの正解は「自分で抱え込まずに#7119に電話する」です。
5. 夜間・休日に起きやすい
かかりつけ医が閉まっている時間帯ほど急変は起こりやすく、家族の判断材料が乏しくなります。夜間や休日でも#7119・119・在宅医の24時間連絡先は使えるので、「明日の朝まで様子を見る」を選ぶ前に、必ず専門家へつなぐ習慣をつけておきましょう。
迷わず119番に通報すべき高齢者のサイン
総務省消防庁の「救急車利用リーフレット(高齢者版)」や、東京消防庁・各自治体の救急安心センター事業の公開情報では、次のような症状があればためらわず119番するよう案内されています。一つでも当てはまれば、相談している時間がもったいないので、まず119にかけてください。
意識・反応の異常
- 呼びかけても目を開けない、反応がない
- けいれん(全身がガクガク震える)が止まらない、または直後にぐったりしている
- 急に意味のわからないことを言い始めた、人や場所がわからなくなった
- ろれつが回らない、言葉が出てこない
呼吸の異常
- 呼吸が止まっている、または「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と苦しそう
- 顔色が青白い、唇や指先が紫色(チアノーゼ)
- 横になれないほど息苦しい、ゼロゼロ音が大きい
- パルスオキシメーターが手元にあるならSpO2が普段より明らかに低下している(在宅酸素を使っていない方で90%未満が続く場合はとくに注意)
胸・背中の症状
- 急に強く締めつけられるような胸の痛みが15分以上続く
- 冷や汗を伴う胸の重苦しさ、肩や顎まで響く痛み
- 背中を引き裂かれるような激痛(大動脈解離の可能性)
脳卒中を疑うサイン(FAST)
- F(Face):顔の片側が下がる、笑顔が左右で非対称
- A(Arm):両腕を前に上げると片方だけ下がる
- S(Speech):ろれつが回らない、簡単な言葉が出てこない
- T(Time):上記のいずれかが見られたら、発症時刻をメモしてすぐ119番
お腹・出血・嘔吐
- お腹を抱え込むほどの激しい腹痛が続く
- 真っ赤な吐血、コーヒーかすのような吐物、真っ黒な便(タール便)
- 止まらない大量の鼻血や外傷出血
- 嘔吐を繰り返して水分も取れない
体温・全身状態
- 体温が35度以下(低体温)、または40度以上で意識がもうろうとしている
- 顔色が土気色、皮膚が冷たく汗ばんでいる(ショックの兆候)
- 顔・舌・喉の急な腫れ、全身のじんましん+息苦しさ(アナフィラキシー)
転倒・外傷
- 転倒・転落後に動けない、強い痛みを訴える、頭を打った後にぼんやりしている
- 大やけど(手のひらより広い範囲、または顔・陰部)
- 骨が見えるほどの傷、強い出血が止まらない
これらのサインに迷いがあっても、「呼ぶ判断を間違えたかもしれない」と心配して通報を遅らせるより、結果的に軽症であった方がずっと良い結果です。救急隊は不要だと判断すれば「搬送しない」選択肢も提示します。家族が呼んだ責任で叱られることはありません。
見落としやすい高齢者特有の「隠れた急変サイン」
前のセクションがいわば「誰でも気づく救急サイン」だとすると、ここで紹介するのは家族でないと気づけない、高齢者特有のサインです。これらは単独だと「ちょっと調子が悪いだけかな」と見過ごされがちですが、肺炎・尿路感染症・脳梗塞・心不全・脱水・低血糖などの重症疾患の入り口になっていることがあります。複数当てはまる場合や、いつもと違う印象が強い場合は、迷わず#7119または119、在宅医に相談してください。
1. ぼーっとしている・反応が薄い(せん妄)
急に注意が散漫になる、つじつまの合わない発言が増える、夜中に騒ぎ立てる、人や時間が分からなくなる——これらはせん妄と呼ばれる急性の意識変容で、感染症・脱水・薬の副作用・脳血管障害などが背景にあることが多いとされます。「いつもの認知症が進んだだけ」と片付けず、「数時間〜数日で急に変わった」場合は要注意です。
2. 急な食欲不振・水分を取らなくなった
高齢者では「食べなくなる」「飲まなくなる」がほぼ唯一のサインということがあります。背景には消化器疾患、感染症、口腔内の問題、抑うつ、薬剤性などが隠れています。1日以上続く、明らかにいつもより少ない場合は受診検討を。
3. 転倒の前後の浮動性めまい・ふらつき
「転びそうになった」「ふらついた」を本人が訴える場合、不整脈や起立性低血圧、脳虚血の前触れであることがあります。実際に転倒しなくても、繰り返すなら受診のサインです。
4. いつもと違う「呼吸の浅さ・速さ」
胸痛や明らかな息苦しさを訴えなくても、安静時の呼吸数が普段より明らかに速い(成人で1分間に24回以上が続く)場合は肺炎や心不全のサインのことがあります。胸の上下動を1分数えるだけで分かるので、判断材料として活用できます。
5. 夜間の急なおむつ汚染・失禁の増加
普段はトイレに行けていた方が急に失禁するようになったときは、尿路感染症や脳血管障害が隠れていることがあります。発熱を伴わない尿路感染症(無熱性尿路感染症)は高齢者で珍しくありません。
6. 「いつもと違う」という家族の直感
消防庁や厚生労働省が在宅医療・救急医療連携のセミナー資料で繰り返し触れているのが、「家族の『普段と違う』という気づきが、もっとも信頼できる重症化のサイン」という点です。説明できる根拠がなくても、長く介護してきた家族の違和感は、医療者にとって貴重な判断材料になります。電話相談の最初に「いつもの本人と違うんです」と伝えるだけで、相談員の聞き取りはより慎重になります。
救急安心センター事業「#7119」の使い方とエリア確認の手順
#7119(救急安心センター事業)は、急な病気やケガで「救急車を呼ぶべきか、今すぐ病院に行くべきか」迷ったときに、電話で相談できる総務省消防庁の事業です。医師・看護師・救急救命士などが症状を聞き取り、緊急性が高ければそのまま119番への転送を行います。利用者アンケートでは約9割が「役に立った」と回答しています。
かけ方
- 携帯電話・固定電話のいずれからもダイヤル「#7119」( プッシュ回線対応)
- 地域によっては10桁の代替番号(例:東京都「03-3212-2323」、京都府「0570-00-7119」など)も用意されています
- 多くの地域で24時間365日対応。一部の地域は夜間・休日のみ運用(例:山形県は18時〜翌8時など)。お住まいの自治体の運用時間は事前に確認しておきましょう
注意:#7119は全国どこでも使えるわけではない
令和7年7月時点で、消防庁が公表する#7119の実施地域は全国41地域とされています。北海道の一部、四国・九州の一部など、まだ未導入の自治体があります。「お住まいの市区町村 救急電話相談」で事前に検索し、利用可否を確認してください。未導入地域でも、独自の救急電話相談窓口(〇〇県救急医療情報センター、△△市夜間休日電話相談など)が運用されていることが多いので、家族カレンダーやスマホの連絡先に番号を登録しておくのがおすすめです。
電話で伝えるべき情報
- 相談したい本人の年齢・性別(高齢者であること、要介護度・認知症の有無も伝える)
- 現在の症状(いつから・どこが・どんなふうに)
- 意識・呼吸・顔色・体温・血圧・SpO2など、計測できているバイタル
- 主な持病、服用中の薬、アレルギー
- かかりつけ医・在宅医・訪問看護ステーションの名前と連絡先(分かれば)
判定後の対応
相談員は症状を聞き取り、以下のいずれかを案内します。
- 緊急性が高い→ そのまま119番へ転送、または家族で119にかけ直す
- すぐに病院受診が必要→ 受診可能な医療機関を案内
- 受診は必要だが急がない→ 翌日のかかりつけ医受診を勧める
- 自宅で経過観察可→ 注意すべきサインと再連絡の目安を伝えてくれる
#8000と混同しない
「#8000」は小児救急電話相談(こども医療でんわ相談)で、15歳未満の子どもが対象です。高齢者の相談に#8000をかけても担当外になるので、必ず大人は#7119、小児は#8000を覚えておきましょう。
#7119がつながらないとき
夜間や休日は混雑して保留が続くことがあります。呼吸が苦しい・意識がない・出血が止まらないなど、緊急性が明らかなときは保留を待たずに119を直接かけるのが正解です。判断に迷う相談こそ#7119ですが、明白な緊急時にまで保留待ちは禁物です。
119・#7119・#8000・かかりつけ医・在宅医の使い分け早見表
家族が混乱しないよう、相談先と「使うべき場面」を整理します。冷蔵庫やケアファイルに貼っておくと、いざというときに迷いません。
| 連絡先 | 番号 | 対応者 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| 119(救急車) | 119 | 消防指令員→救急隊 | 意識・呼吸・出血・激痛・FAST陽性など、命に関わるサインがある |
| 救急安心センター #7119 | #7119 | 医師・看護師・救急救命士 | 救急車を呼ぶべきか・受診すべきか迷うとき。緊急時は119へ転送 |
| 小児救急 #8000 | #8000 | 小児科医・看護師 | 15歳未満の子ども専用(高齢者は対象外) |
| かかりつけ医 | 医院の電話 | 主治医・看護師 | 平日日中の慢性疾患の悪化、薬の調整、軽い症状 |
| 在宅医・訪問診療 | クリニックの24時間電話 | 在宅医・夜間担当医 | 在宅療養中の急変。看取り期の対応も含む |
| 訪問看護ステーション | ステーションの24時間電話 | 訪問看護師 | バイタル変化、医療処置トラブル(カテーテル・胃ろう等)、急変時の一次相談 |
| ケアマネジャー | 担当ケアマネ | ケアマネ | サービス調整、入院後の支援検討(緊急対応の窓口ではない) |
| 地域包括支援センター | センター電話 | 保健師・社会福祉士 | 日中の生活相談、虐待・孤立の懸念。緊急医療の窓口ではない |
判断の順番
- 明らかな緊急サインがある→ 119へ直接通報
- 迷う・夜間・休日→ #7119(または地域の救急電話相談)に電話
- 在宅療養中→ 在宅医・訪問看護の24時間連絡先に電話。事前にどのレベルから連絡してよいか取り決めておく
- 日中・症状が安定→ かかりつけ医に電話で相談
消防庁「Q助(きゅーすけ)」アプリも活用
消防庁が無料公開している全国版救急受診アプリ「Q助」は、症状を画面で選んでいくと「今すぐ救急車を呼びましょう」「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」などの判定が表示されます。電話で説明するのが苦手な方や、外国人家族との同居家庭でも使いやすく、Web版もあるのでスマホにブックマークしておきましょう。
救急車が到着するまでに家族ができる応急対応
119番に通報した後、救急車が到着するまでの平均所要時間は全国平均で約10分前後とされています。この間に家族が落ち着いて適切な対応をすることで、本人の予後を大きく改善できることがあります。無理にやろうとせず、できることだけで十分です。119指令員が電話越しに口頭指導してくれるので、指示があれば従いましょう。
1. 安全確保と気道確保
本人が倒れている場所が安全か(家具の角・段差・水回り)を確認し、ぶつかる物があれば離します。意識がなく自力で呼吸している場合は、仰向けにして顎を少し上げ、気道を確保。嘔吐がある場合は誤嚥を防ぐため、体ごと横向き(回復体位)にします。
2. 呼吸と脈の確認
胸の上下動・呼吸音を10秒ほど見て、「普段通りの呼吸でない」と感じたら心肺停止の可能性があります。119指令員から胸骨圧迫(CPR)の指示が出ることが多いので、両手を重ねて胸の中央を強く(5cmほど沈むように)、速く(1分間に100〜120回)押し続けます。途中で疲れても、救急隊到着まで止めないのが原則です。
3. AEDの活用
マンション・施設・駅・コンビニなどにはAED(自動体外式除細動器)が設置されています。家族や近隣に声をかけて取りに行ってもらい、電源を入れて音声指示に従えば、医療資格がなくても使えます。
4. 窒息時のハイムリック法
食事中に急にしゃべれなくなり、顔色が紫色になっている場合は窒息です。本人を後ろから抱え、片方の手を握りこぶしにしてみぞおちの少し下に当て、もう片方の手で覆って、斜め上に向かって素早く押し上げます(腹部突き上げ法/ハイムリック法)。妊婦や乳児には禁忌、高齢者でも肋骨が脆い方は背部叩打法と併用してください。
5. 出血のコントロール
清潔な布やタオルを傷口に当て、強く圧迫し続けます。手足の傷なら心臓より高く挙げると出血が抑えやすくなります。
6. 低血糖が疑われるとき
糖尿病で経口血糖降下薬・インスリンを使っている方が、冷や汗をかいてぼーっとしている、ぐったりしている場合は低血糖の可能性があります。意識があって自分で飲み込めるなら、ブドウ糖(薬局で買えるブドウ糖タブレット、なければ砂糖や甘いジュース)を口にしてもらいます。意識がない方の口に物を入れるのは誤嚥の危険があるため厳禁です。
7. けいれん発作中の対応
体を押さえつけたり、口の中に物を入れたりしないでください。周りの危険物を遠ざけ、頭の下にタオルを敷き、横向きにして嘔吐物の誤嚥を防ぎます。発作が5分以上続く、あるいは繰り返す場合はすぐ119番です。
8. やってはいけないこと
- 意識のない人に水や薬を飲ませる
- 転倒した人を無理に起こす(背骨損傷の可能性)
- 骨折部位を動かす・元に戻そうとする
- 独自の判断で薬を追加投与する
平時に用意しておく「救急情報シート」と伝える情報のテンプレ
急変時に家族がもっとも困るのは、「持病は?」「お薬は?」「アレルギーは?」と聞かれて即答できないことです。総務省消防庁は、救急要請のために「救急情報シート」のテンプレートを高齢者向けに公開しており、自治体や医療機関と連携した活用を勧めています。家族用にカスタマイズして、玄関や冷蔵庫など救急隊が目に付く場所に貼っておきましょう。
救急情報シートに入れる項目
- 本人情報:氏名、生年月日、年齢、性別、血液型、身長・体重
- 住所と緊急連絡先:自宅住所(マンション名・部屋番号、目印になる建物)、家族の名前と続柄・電話番号(複数)
- かかりつけ医・在宅医:医療機関名、医師名、電話番号、診察曜日・時間
- 訪問看護ステーション:名前、24時間連絡先
- ケアマネジャー:所属事業所、氏名、電話番号
- 主な病気(既往歴):例「2年前に脳梗塞、3年前に大腿骨頚部骨折」
- 現在治療中の病気:例「高血圧、糖尿病、心房細動」
- 服用中の薬:お薬手帳のコピー、最新の処方箋を一緒に保管
- アレルギー:薬・食物・造影剤など
- 感染症の有無:B型肝炎、結核既往など(救急隊・医療者の感染対策に必要)
- 要介護度・認知症の有無:例「要介護3、アルツハイマー型認知症、HDS-R 15点」
- ADL:歩行・食事・排泄の自立度
- 意思表示:心肺停止時の心肺蘇生や延命治療についての本人の希望(後述の事前指示・ACPとの整合)
119番でオペレーターに聞かれる順番
- 「救急ですか、火事ですか?」→「救急です」と答える
- 場所はどこですか?→ 住所、マンション名、部屋番号、目印(「〇〇小学校の北側」など)
- 誰が、どうしましたか?→「84歳の母が、20分前から胸を押さえて苦しんでいます」
- 意識・呼吸はありますか?→ あれば「あります」、なければ「ありません」
- 持病・服用薬・かかりつけは?→ 救急情報シートを見ながら答える
- あなたのお名前と連絡先→ 通報者の名前と携帯番号
呼んだあとに家族がやること
- 玄関の鍵を開けておく、エレベーターまで出迎えに行く
- 救急隊が車両を停められるよう、玄関前の路上を空ける
- お薬手帳、健康保険証、介護保険証、診察券、入れ歯、補聴器、メガネ、財布、携帯電話、現金を一つの袋にまとめる
- 本人の好きな飲み物・タオル・着替え・スリッパも入れておくと入院時に役立つ
- 家を出る前に火の元・施錠を確認
家族の「いつも記録」が一番の武器
普段の血圧・体温・体重・食事量・排泄回数を簡単にメモしておくと、急変時に「いつもとの差」がすぐ伝えられます。スマホのメモやアプリでも構いません。救急隊・救急医にとっては、家族の「普段はこう」が最大の判断材料です。
在宅看取りを希望する場合の「救急車を呼ばない」事前合意
在宅で最期を迎えたいと本人が希望していても、いざ呼吸が止まった瞬間に家族が動揺して119番を呼んでしまい、救急車内で心肺蘇生が始まる——というケースが全国で問題になっています。厚生労働省「在宅医療・救急医療連携セミナー報告書」でも、本人の意思に沿わない救急搬送の増加が課題として挙げられており、各地域で対応ルールづくりが進められています。看取りの局面では、救急要請の判断は事前合意がすべてです。
1. ACP(人生会議)で本人の希望を共有する
ACP(Advance Care Planning/人生会議)とは、本人・家族・医療介護関係者が、将来の医療やケアの希望について繰り返し話し合うプロセスです。終末期に「心肺蘇生をするか」「人工呼吸器を使うか」「経管栄養を始めるか」「救急搬送を希望するか」を、本人が判断できるうちに繰り返し確認しておきます。一度決めたら終わりではなく、体調や気持ちの変化に応じて何度でも更新できるのが特徴です。
2. 在宅医・訪問看護と「呼ぶ/呼ばない」の取り決めを文書化する
在宅医療を受けている場合、在宅医・訪問看護ステーションと事前に次のような取り決めを文書化しておきましょう。
- 呼吸が止まったとき、まず連絡するのは在宅医(または訪問看護)か119かを明確化
- 夜間・休日の24時間連絡先と、つながらないときの代替手順
- 看取り期に入ったら119を呼ばない合意を、本人・家族・在宅医・ケアマネで共有
- 万一動揺して119を呼んでしまった場合、救急隊にDNAR(蘇生不要)の意思を伝える方法
3. DNAR指示書・事前指示書を備える
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation/心肺蘇生を試みない)は、心肺停止時に蘇生処置を行わないという本人の意思を示すものです。在宅医が文書化してくれることが多く、玄関や枕元など救急隊が確認できる場所に保管します。ただし救急隊員はDNAR指示書があっても原則として蘇生処置を行うのが基本であり、地域によって運用が異なります。在宅医・かかりつけ訪問看護とよく相談して、地域ルールに沿った備えをしておきましょう。
4. 在宅医がいない・看取り体制が整っていない場合
在宅医療の体制が整わないまま自宅で看取りを希望していると、亡くなった際に「予期せぬ死亡」として警察検視の対象になることがあります。看取りを希望するなら、平時のうちに在宅医療を導入し、定期的に診察を受けて主治医として登録しておく必要があります。ケアマネジャー・地域包括支援センターに早めに相談しましょう。
5. 看取り期でも「救急要請を選んでよい」場面はある
看取り期だからといって、すべての急変で119を呼ばないというわけではありません。たとえば転倒して骨折した・出血が止まらない・本人が強い痛みを訴える場合は、苦痛の緩和のための搬送が選択肢になります。事前合意があっても、家族が「やはり病院で診てほしい」と判断したらそれを優先してかまいません。正解は一つではなく、その場の本人と家族の意思が尊重されることを覚えておいてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 「軽症だったら救急車を呼んだ家族が叱られる」と聞きますが本当ですか?
家族が真剣に判断して呼んだ場合、叱られることはありません。総務省消防庁も「ためらわず救急要請を」と呼びかけており、緊急性が低くても「結果的に軽症で安心しました」が望ましい結果です。タクシー代わりの利用や明らかな乱用には注意喚起がありますが、家族が高齢者の急変を心配して呼ぶケースが該当することは通常ありません。
Q. 救急車は有料化されると聞きました。呼ぶのを控えるべきでしょうか?
一部の自治体や病院で「緊急性のない救急搬送」に費用負担を求める制度が議論・試行されていますが、命に関わる急変での要請は対象外です。費用を心配して通報を控えるのは本末転倒です。迷ったら#7119で相談しましょう。
Q. 認知症で本人が「呼ばないで」と言います。家族の判断で呼んでいいですか?
本人の判断能力が低下している場合、家族が代わって救急要請を判断することになります。意識障害や呼吸困難など客観的に重症のサインがあれば、本人の言葉に関わらず119が必要です。事前にACPで「こうなったら呼ぶ/呼ばない」を本人・家族・主治医で確認しておくと、いざというとき迷いません。
Q. 介護施設に入所中の家族が急変したときも家族が呼ぶ必要がありますか?
施設に入所中の場合、まず施設の看護職員・介護職員が判断・連絡するのが原則です。家族が呼び出された段階では、すでに施設から119が要請されていることがほとんどです。事前に「急変時はどこまでの処置を希望するか」を施設と書面で共有しておきましょう。
Q. 救急車を呼んだのに搬送先が決まらないことがあるのはなぜ?
救急医療体制の逼迫により、受け入れ病院がすぐ決まらない「搬送困難事案」が全国的に問題になっています。地域や時間帯、本人の持病・感染症の有無で受け入れ先が限られることがあります。救急情報シートが整っていると判断がスムーズになるため、平時の準備が結果的に搬送時間の短縮につながります。
Q. 救急車を呼んでも結局家に戻ることはありますか?
救急隊が現場で観察し、本人・家族と相談したうえで「搬送が必要ない」と判断するケース(不搬送)はあります。バイタルが安定し、本人がかかりつけ医での受診を希望すれば、無理に搬送はされません。「呼んでしまった以上、必ず入院になる」というわけではないので、必要なときはためらわず呼んでください。
Q. 一人暮らしの親を心配しています。離れて住む家族が事前にできることは?
救急情報シートを冷蔵庫など分かりやすい場所に貼っておく、地域の#7119番号と在宅医・ケアマネの連絡先を共有する、見守りサービス・緊急通報装置を導入する、近所のキーパーソン(民生委員・近隣住民)に事情を共有する——などが具体策です。地域包括支援センターに相談すると、地域の見守り体制や事前登録制度を案内してもらえます。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
- [7]
まとめ:迷ったら一人で抱え込まず、専門家にバトンを渡す
高齢の家族の体調変化で救急車を呼ぶかどうかは、家族にとっていつも重い決断です。しかしこの記事で見てきたように、判断を一人で背負う必要はありません。
- 意識・呼吸・FAST・激痛・大量出血・けいれんのサインがあれば、迷わず119番
- 少しでも迷うときは、24時間365日対応の#7119(救急安心センター)に電話。医師・看護師がそのまま119へ取り次いでくれる
- お住まいの地域で#7119が使えるかを事前確認し、未導入地域は自治体独自の救急電話相談窓口を登録
- 在宅医療を受けている場合は、在宅医・訪問看護の24時間連絡先を一次相談に
- 「ぼーっとしている」「食べない」「いつもと違う」など高齢者特有の隠れたサインを見逃さない
- 平時に救急情報シートとお薬手帳を玄関や冷蔵庫に貼っておく
- 看取りを希望する場合は、ACP(人生会議)と在宅医との取り決めを文書化しておく
本記事の情報は一般的な目安です。実際の判断には不確実性が伴い、症状の組み合わせや本人の持病によって対応は変わります。少しでも不安があれば自己判断せず、119番、#7119、かかりつけ医・在宅医に必ず相談してください。家族が躊躇なく専門家にバトンを渡せること、それが本人を守る一番の備えです。
在宅介護で備えておきたい関連知識は、当サイトの「訪問診療を家族が依頼する方法」「看取り期に家族がすべき準備」「地域包括支援センターの活用法」もあわせてご覧ください。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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