
LIFE関連加算、未算定の50.0%が「算定したいができない」|厚労省調査、実務負担の壁が依然最大
厚労省の昨年度LIFE実態調査で、未算定事業所の50.0%が「算定したいが課題あり算定できていない」と回答。アセスメント・入力負担が壁となる現状、2026年5月のLIFE移管、2027年度改定の再編議論まで整理します。
結論
科学的介護情報システム(LIFE)関連加算を未算定とする事業所・施設の50.0%が「算定したいが課題があり算定できていない」と回答し、26.6%は「算定したいと思わない」、21.5%が「算定する予定」にとどまった。厚生労働省が2025年9月〜11月に実施した調査(算定4,324件・未算定738件)の結果で、LIFEを利用しない理由はアセスメント・システム入力・情報集約の負担が突出。2026年5月11日の国保中央会への運営移管、2027年度介護報酬改定でのLIFE関連加算「2階層化」再編議論を前に、現場の実務負担の重さが改めて浮き彫りになった。
目次
導入
LIFE(科学的介護情報システム)は、2021年度に運用が始まった介護版のデータ収集基盤だ。利用者の状態やケアの計画・内容を所定の様式で提出すると、事業所ごと・利用者ごとにフィードバックが返り、PDCAサイクルでケアの質を高める仕組みが想定されている。2021年度・2024年度の介護報酬改定で関連加算が整備され、算定率は2025年4月時点で施設サービスが約7割、通所・居宅サービスが約5割まで広がってきた。
一方で、「算定はしていないが、本当は算定したい」という事業所が半数にのぼるという現実が、厚労省の最新調査で明らかになった。未算定事業所の過半数が「課題があって踏み出せない」と答え、その多くがアセスメントや入力作業の負担を挙げる。2024年度改定では入力項目の統一など負担軽減策が講じられたが、依然として壁は低くなっていないことになる。
本記事では、Joint介護が2026年4月22日に報じた厚労省の令和6年度改定効果検証・調査研究の結果をベースに、数値の内訳と未算定理由を整理したうえで、2026年5月11日の国保中央会への運営移管、2027年度介護報酬改定に向けた「LIFE関連加算2階層化」議論、そして介護現場で働く職員のキャリアへの影響まで独自の視点で掘り下げる。
調査結果の概要:未算定事業所の50.0%が「算定したいができない」
調査の実施時期と回答数
今回の調査は、厚生労働省が2024年度(令和6年度)介護報酬改定の効果検証・調査研究事業として、2025年9月から11月にかけて実施したもの。LIFE関連加算を算定している事業所・施設から4,324件、未算定の事業所・施設から738件の回答を得た。母集団は算定事業所が約6万4,000、未算定事業所が約5万4,000と推計されており、回収率は算定側が約54%、未算定側が約37%となる。
LIFE関連加算には、科学的介護推進体制加算のほか、個別機能訓練加算、ADL維持等加算、リハビリテーションマネジメント計画書情報加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算、栄養マネジメント強化加算、口腔衛生管理加算などが含まれる。施設サービスから通所・居宅サービスまで幅広いメニューが対象だ。
未算定事業所の算定意向の内訳
未算定事業所・施設に今後の算定意向を尋ねたところ、最多は「算定したいが課題があり算定できていない」で50.0%。次いで「算定したいと思わない」が26.6%、「算定する予定」は21.5%にとどまった。意欲がある層と消極的な層を合わせれば未算定側の8割近くが「算定していない」現状に何らかの理由を抱えていることになる。
潜在的には過半数が「算定したい」と考えており、LIFEそのものへの拒否感は限定的といえる。ただし「したいができない」層が厚いということは、加算の設計や運用面の何かが現場の足を止めている証左でもある。
LIFEを利用しない理由:負担の三重奏
LIFEを利用しない理由を尋ねた設問では、「利用者のアセスメントの負担」「LIFEへのシステム入力の負担」「情報集約の負担」といった実務面の重さを挙げる回答が目立った。データを集め、入力し、整理して提出するという一連のプロセスが、人員体制の厳しい事業所にとっては大きなハードルになっている。
このほかにも「複雑で理解できない」「手順がわからない」「意義を理解できない」といった回答も一定数存在。システムや要件の複雑さに加え、データ提出の先にある改善サイクルやフィードバック活用の意義が現場に十分浸透していない状況がうかがえる。
算定事業所でも個別加算は苦戦:自立支援・排せつ・褥瘡の壁
「アセスメントが負担」がどの加算でも最多
注目すべきは、LIFE関連加算をすでに算定している事業所・施設の内部でも、個別加算レベルでは未算定が目立つ点だ。算定事業所に対して、自立支援促進加算・排せつ支援加算・褥瘡マネジメント加算などを算定していない理由を尋ねたところ、いずれの加算・サービス種別でも「アセスメントが負担」との回答が最も多かった。
科学的介護推進体制加算までは算定できても、「その先の個別領域の加算はアセスメント項目が多く、リソースを割けない」という事業所が少なくないことがわかる。つまり、LIFE関連加算は「算定している」「していない」の二分法では語れず、事業所内部でも加算ごとに濃淡が大きい。
項目別の入力負担:服薬情報とADLに集中
入力項目別に見ると、負担が大きいと回答した割合が高かったのは、施設系サービスでは「服薬情報」、通所系サービスでは「ADL」だった。服薬情報は医療機関との連携や原本確認に手間がかかり、ADLは評価者によるばらつきを抑える工夫が必要で、いずれも単なる入力作業を超えた業務負荷を伴う。
2024年度改定では、複数のLIFE関連加算で共通する項目を統一するなど、重複入力を減らす改善が行われた。ただし調査では、重複項目の統一による効果を尋ねた設問でも「特に影響はない」との回答が各加算で最多となっており、制度改定の手応えが現場に届いていない実態も示された。
個別加算の算定を阻むのは「人手」と「判断基準」
自立支援促進加算・排せつ支援加算・褥瘡マネジメント加算はいずれも、利用者一人ひとりの状態を詳細に評価し、計画を立て、チームでPDCAを回すアウトカム寄りの加算だ。加算単価は相対的に高いものの、評価項目が多く、多職種連携が欠かせない。人員基準ぎりぎりで稼働する事業所にとっては、「やる意味はわかるが、回す余力がない」という悩みが典型的に表れる加算群といえる。
国の検討会資料でも、LIFE関連加算を算定する事業所の約9割が科学的介護推進体制加算を算定している一方、個別加算の併算定には大きなばらつきがある点が指摘されている。現場の実装力の差が、個別加算の算定率に直結しているのが実情だ。
【独自見解】2026年5月の国保中央会移管と実務負担の見通し
GW明けからのシステム移管で現場は二重の作業へ
今回の調査結果が公表された直後、LIFEはさらに大きな環境変化に直面する。厚労省は2026年5月11日から、LIFEの運営主体を厚労省から国保中央会へ移管する。新たに稼働する「介護情報基盤」の構築に伴う措置で、各事業所・施設は5月11日から7月31日までの移行期間に、電子証明書の取得と新システムでの利用者情報の再登録を済ませる必要がある。
実務面では、既存の利用者情報や様式情報は新システムへ引き継がれないため、基本情報の再入力が発生する。過去のフィードバックも必要があればPDFなどで事前に出力・保存しておかねばならない。通常業務に加えて「移行作業」という一時的なタスクが積み上がる構図だ。今回の調査で「入力負担」「情報集約負担」を理由に算定を見送っている事業所にとっては、算定可否を検討する余力がさらに削られかねない。
未算定事業所が算定判断を先送りしやすい時期
既存の算定事業所にとっても、移行期間は通常よりも慎重な運用が必要になる。移行作業を行った月にデータ提出をまたぐ場合、旧システムで提出した分を新システムで再提出する必要があるケースもあり、「データ提出を途切れさせない」ための事務負担は一時的に重くなる見通しだ。
こうした状況を踏まえると、未算定の事業所が「5〜7月はまず移行作業を乗り切っている近隣事業所の様子を見てから、8月以降に算定を検討する」と判断しても不思議ではない。短期的には、算定率の上昇はいったん鈍化する可能性が高い。結果として「算定したいができない」層の解消は、2026年夏以降の動向を見極める必要がある。
フィードバック活用の浸透が分水嶺
実務負担の軽減と並行して鍵を握るのが、フィードバックの活用実感だ。厚労省は2024年度改定で、フィードバックの層別化やクロス集計など情報の充実を図ってきた。今回の移管でも、ホームページから直接ログイン可能になるなどの利便性向上が盛り込まれている。ただし現状の調査では「意義を理解できない」と答える事業所が依然として存在しており、「データを出す → 何が見えた → ケアが変わった」という一連の体験を現場でどこまで実感できるかが、算定率を底上げするうえでの分水嶺になる。
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【独自見解】2027年度同時改定とLIFE関連加算「2階層化」の影響
科学的介護推進体制加算を土台とする再編案
LIFE関連加算の制度設計そのものも、2027年度の介護報酬改定に向けて大きな見直しが予定されている。厚労省の「科学的介護情報システム(LIFE)のあり方」検討会は、2026年1月に取りまとめを発表し、既存のLIFE関連加算を「2階層」の構造に再編する案を提示した。
具体的には、現行の「科学的介護推進体制加算」を1階層目のベース加算と位置づけ、分野横断的に基礎的な情報を収集する土台と整理。個別機能訓練加算、ADL維持等加算、褥瘡マネジメント加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算といったその他のLIFE関連加算を2階層目に置き、1階層目の算定を前提に算定できる上乗せ加算とする構想だ。提出データのうち基本情報は1階層目に集約し、重複入力を減らす狙いがある。
「未算定事業所の50%」が直面しうるジレンマ
この再編は、データの一貫性と研究活用の観点からは合理的だが、今回の調査で明らかになった「算定したいができない」50.0%の事業所には影響が及ぶ可能性がある。1階層目の科学的介護推進体制加算を前提に2階層目を算定する仕組みに改めると、「機能訓練や栄養・口腔の加算だけを算定している事業所」が一度は1階層目の要件クリアを迫られる格好になる。
検討会報告を議論した社会保障審議会・介護給付費分科会でも、一部の委員から「1階層目の必須化が新たな壁となり、既存の取り組みからの撤退を招きかねない」との懸念が示された。厚労省は2026年秋以降、2027年度改定に向けた具体的な要件設計の議論を本格化させる方針で、未算定層の底上げと既存算定事業所の運用安定をどう両立させるかが論点となる。
訪問系・通所系への新規対象拡大は慎重路線
検討会の取りまとめは、訪問系・通所系サービスにおけるLIFE関連加算の新たな導入について、「1人の利用者に複数事業所が介入すること」「小規模事業所が多いこと」などを理由に慎重に検討すべきとしている。入力負担が大きい小規模事業所にLIFE関連加算を広げれば、かえって撤退を招きかねないという現場感覚を踏まえた判断だ。
言い換えれば、2027年度改定では「数を広げる」より「今算定している事業所の質を上げる」方向にシフトする可能性が高い。未算定事業所の50.0%を算定側へ引き上げる施策は、加算構造の改革だけでなく、人員基準・DX支援・ICT補助といった別軸の政策とセットで議論されることになるだろう。
【独自見解】介護現場で働く職員への影響とキャリアの観点
LIFE対応力は「隠れた評価軸」になりつつある
LIFE関連加算の算定率は、事業所の収益構造だけでなく、働く職員の業務設計にも直結する。算定している事業所では、利用者のアセスメント、計画書の作成、データ入力、フィードバックを踏まえたケアの見直しといった業務が介護・看護・リハ・栄養・口腔の多職種で回る。ケアプラン作成や計画更新のタイミングでLIFE関連の帳票を扱うため、ケアマネジャーや介護福祉士、介護職員にとってLIFEに対する理解は避けて通れないスキルとなりつつある。
今回の調査では、算定事業所でも個別加算の未算定理由として「アセスメントが負担」が最多となった。言い換えれば、アセスメントや入力を標準化できる人材・仕組みを持つ事業所は、個別加算を積み上げる余地が大きい。LIFEの算定範囲が広い事業所は、加算収入を処遇改善や人員配置の厚みに回しやすく、結果として職場の働きやすさや賃金水準にも反映されやすい。
転職先選びの視点:加算の「深さ」を見る
介護職・看護職・ケアマネジャーが転職先を検討する際、求人票に並ぶ給与や手当・夜勤回数などの条件に加えて、「どのLIFE関連加算を算定しているか」まで視野に入れる価値が出てきた。科学的介護推進体制加算だけを算定している事業所と、自立支援促進加算・排せつ支援加算・褥瘡マネジメント加算まで算定している事業所では、ケアの考え方や記録・カンファレンスの運用に差が出やすい。
特に、自立支援促進加算や排せつ支援加算を算定している事業所は、多職種連携の密度が高く、エビデンスベースでケアを語る文化が根付いている傾向がある。アウトカムを言語化できる職場で働いた経験は、その後のキャリアで管理職・教育担当・独立などへ進む際の説得材料となる。
負担感が強い職場との見極め方
一方で、LIFE関連加算を無理に積み増した結果、現場職員に「二重入力」や「サービス残業」が常態化しているケースもある。今回の調査で「アセスメントの負担」「入力の負担」「情報集約の負担」が上位に並んだことは、そうした職場が少なくない現実を裏付ける。
転職を検討する際は、「LIFE関連加算を何種類算定しているか」だけでなく、「入力や記録の負担をどう軽減しているか(ICT活用・事務補助の配置・ペーパーレス化の進捗など)」を面接や職場見学で確認したい。加算の種類の多さは必ずしも働きやすさに直結しない。DXとケアの質の両立に取り組む事業所を選ぶことが、自分のキャリアと心身の健康を守ることにつながる。
まとめ
厚生労働省が2025年9〜11月に実施したLIFE関連加算の実態調査では、未算定事業所・施設の50.0%が「算定したいが課題があり算定できていない」と答え、「算定する予定」の21.5%を大きく上回った。算定事業所でも、自立支援促進加算・排せつ支援加算・褥瘡マネジメント加算などの個別加算では「アセスメントが負担」が未算定理由の最多となり、2024年度改定で手当された入力負担軽減策の手応えも限定的だった。
2026年5月11日にはLIFEの運営主体が国保中央会へ移管され、事業所は電子証明書取得や利用者情報の再登録に追われる。加えて、2027年度介護報酬改定に向けてはLIFE関連加算を「2階層」に再編する構想が具体化しており、未算定事業所・既存算定事業所ともに設計変更の影響を受ける見通しだ。働く職員の視点では、LIFEへの対応力が事業所の収益・文化・働きやすさを映す隠れた評価軸になりつつある。転職を考える際には、加算の種類に加えて、入力・記録の負担をどう軽減しているかを確認することが、自分に合う職場選びの分かれ道となる。
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