親の入院中に家族がやること|キーパーソン・医師との連携・退院準備の3軸
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親の入院中に家族がやること|キーパーソン・医師との連携・退院準備の3軸

親が入院した瞬間から退院まで、家族が担う役割を「キーパーソン」「医師・MSWとの連携」「退院準備」の3軸で整理。身元保証人との違い、介護休業の戦略的取得、せん妄予防、退院前カンファレンスでの発言まで実務目線で解説。

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親が入院したら、家族の役割は大きく3つに分かれます。(1) キーパーソンとして医療意思決定の窓口になる(2) 主治医・退院支援看護師・MSW(医療ソーシャルワーカー)と退院後の生活設計を進める(3) 持ち物管理・介護保険サービスの一時休止・退院準備をするの3軸です。身元保証人とキーパーソンは別の役割で、厚生労働省は2018年に「身元保証人がいないことのみを理由に入院を拒否することは医師法違反」と通知しています。介護休業(最大93日・3分割可)と高額療養費の限度額適用認定証は入院初日から手続きを進めましょう。

目次

親が突然倒れて救急搬送された、あるいは予定入院が決まった——そのとき、子世代の家族が直面するのは「何を、いつ、誰と進めればよいのか」という途方もない情報量の手続きです。多くの家族は「とにかく病室に通うこと」に意識が向いてしまいますが、入院中の家族の本当の仕事は、医療チームと意思決定を共有しながら、退院後の生活設計を並行して進めることにあります。

本記事では、親の入院中に家族が担うべき役割を、現場の医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師の業務指針に沿って 3つの軸 で整理します。具体的には、(1) キーパーソンとしての医療意思決定の窓口役、(2) 主治医・退院支援看護師・MSWとの連携、(3) 退院準備(持ち物・介護保険・住環境)の3軸です。混同されがちな「キーパーソン」と「身元保証人」の違い、介護休業93日の戦略的な分割の仕方、認知症の親に起こりやすい「せん妄」を家族が防ぐ7つの環境調整、退院前カンファレンスで家族が伝えるべきことまで、実務に踏み込んで解説します。

入院中の家族の役割「3軸フレーム」|混乱しないための全体像

入院中の家族が担う役割は、医療現場の実務上、大きく3つの軸に分けて考えると整理しやすくなります。この3軸フレームは、厚生労働省の入退院支援連携ガイドラインや日本医療社会福祉協会の業務指針で示されている家族機能(金銭管理・必要物品調達・身元保証・意思決定)を、家族視点で再整理したものです。

軸1:意思決定の窓口(キーパーソン軸)

本人の判断能力が低下したとき、または医療上の重要な決定(手術・延命治療・身体拘束への同意・退院先の決定など)が必要になったとき、医療チームと話し合う家族側の代表者がキーパーソンです。基本的に1名を立て、他の家族には情報を伝達します。これは医療法上の「身元保証人」とは異なる概念で、後述の比較表で詳しく整理します。

軸2:医療チームとの連携(情報軸)

入院から3日以内に主治医から病状説明があり、7日以内に退院支援スクリーニングが実施されます。家族は、主治医(病状・治療方針)、看護師(日常のケア・症状)、退院支援看護師/MSW(退院後の生活設計)と、職種ごとに役割の違う相手に対して、適切な情報を引き出し・共有する必要があります。

軸3:生活と退院の準備(生活軸)

本人が入院している間、止まっているのは病気の治療だけではありません。介護保険サービスの一時休止手続き、年金・公共料金の管理、ペットや家のこと、そして退院後にどこで・誰と・どんな体制で暮らすかの再設計が必要です。同時に、家族自身の仕事との両立(介護休業・介護休暇)と、自分自身のメンタルケアも準備の一部です。

この3軸を意識するだけで、「キーパーソンを引き受けたものの、何から手をつけてよいか分からない」という混乱を防げます。以下、各軸を時系列とトピック別に詳しく解説していきます。

入院当日〜3日でやること|時系列タスクリスト

入院初日から3日間は、家族にとっても病院にとっても最も情報量が多い「キックオフ期間」です。この期間に何を聞き、何を提出し、何を予約するかで、その後の退院支援の質が大きく変わります。厚生労働省の入退院支援加算では、入院後3日以内に退院困難な要因を抱えた患者をスクリーニングし、7日以内に退院支援計画を立てることが求められています。家族側もこのタイムラインに合わせて動きましょう。

入院当日(日中の場合)

  1. キーパーソン登録:病棟看護師に「私が連絡窓口になります」と伝え、連絡先(携帯・自宅)を全員に共有する。兄弟姉妹がいる場合も窓口は1名に絞る。
  2. 持ち物の搬入:病院指定の入院セットがあるか確認。なければ後述の持ち物リストを参考に準備。
  3. 本人の状態確認:意識レベル、痛みの有無、内服薬の持参状況を看護師と一緒に確認する。
  4. 主治医名・担当看護師名のメモ:誰に何を聞けばよいかを最初に整理しておく。
  5. 本人のかかりつけ医・他科通院情報を病院に共有(お薬手帳・健康保険証・介護保険証・限度額適用認定証)。

入院2日目(24時間以内)

  1. 主治医からのインフォームドコンセントを受ける。録音の許可を取り、後で他の家族と共有できるようにする。
  2. 会計窓口で「限度額適用認定証」の手続きを相談。未取得なら健康保険者(協会けんぽ・健保組合・市区町村国保)に申請。
  3. 勤務先への報告:自分自身の介護休暇(年5〜10日・時間単位取得可)を入れる準備。長期化が見込まれるなら介護休業の事業主への申出(休業開始予定日の2週間前まで)。
  4. ケアマネジャーへの連絡(在宅サービス利用中の場合)。デイサービスやヘルパーの一時休止手続きを依頼。

入院3日目(退院困難スクリーニング)

  1. 退院支援看護師・MSW(医療ソーシャルワーカー)との初回面談。家族から退院後の希望(自宅・施設・転院)を伝える。判断材料が揃っていない場合は「まだ決められない」と素直に伝えてOK。
  2. 本人の入院前ADL(日常生活動作)を看護師に共有。歩行・排泄・入浴・食事・着替えがどこまで自立していたかが、退院後ケア計画の基礎情報になる。
  3. 同居家族・別居家族の介護可能時間を整理。「平日昼間は誰もいない」など正直に伝える。

この3日間は意思決定よりも、情報を集めて関係を作ることに集中します。すぐに退院先を決めなくても、誰に何を相談すればよいかが見えてくれば十分です。

入院時に家族が準備する持ち物リスト|本人用・家族用に分ける

急な入院は持ち物の準備で家族が消耗しがちです。多くの病院では入院案内に標準リストがありますが、現場の家族からよく挙がる「これがあって助かった」「これは持参禁止だった」を整理しておきます。必ず病院の入院案内を最優先にしつつ、以下を参考にしてください。

本人用(医療系)

  • 健康保険証・介護保険証・後期高齢者医療被保険者証
  • 限度額適用認定証(または「限度額適用・標準負担額減額認定証」)
  • お薬手帳・現在服用中の薬(1週間分目安)
  • 身体障害者手帳・特定疾患受給者証(該当者のみ)
  • かかりつけ医・他科受診先の連絡先メモ
  • 緊急連絡先カード(家族3名分)

本人用(生活系)

  • 下着・寝衣(前開きが便利・大判6〜7セット)
  • タオル(バスタオル2枚・フェイスタオル4〜5枚)
  • 洗面用具(歯ブラシ・コップ・入れ歯ケース・入れ歯洗浄剤)
  • シャンプー・ボディソープ(少量)・くし
  • 箱ティッシュ・ウェットティッシュ
  • 履きやすい靴・滑り止め付き靴下
  • マグカップ(蓋付き)・吸い飲み
  • 耳栓・アイマスク(大部屋の場合)
  • 充電器(ケーブルは余裕のある長さ)

家族側で持っておくと便利

  • A4クリアファイル(病院書類用・退院時にも必要)
  • 大学ノート 1冊(家族間共有の引き継ぎノート・症状経過・主治医発言の記録)
  • 家族間グループチャット(情報共有の取りこぼし防止)
  • 本人の判子(書類署名用)
  • キーパーソン控え(家族会議で決めた連絡網のコピー)

原則持参不可(多くの病院で禁止)

  • 高額な現金・貴重品・装飾品
  • 電気ポット・カセットコンロ等火器
  • 大量の生花(感染対策で病棟禁止が増加)
  • 本人の判断で内服薬の調整(必ず病棟看護師経由)

レンタル衣類セット(1日500〜1,500円程度)を導入する病院も増えています。洗濯通いが負担なら入院案内で確認しましょう。

キーパーソン vs 身元保証人 vs 緊急連絡先|混同しがちな3役割の違い

入院手続きの書類には「キーパーソン」「身元保証人(連帯保証人)」「緊急連絡先」「身元引受人」が並ぶことが多く、家族はどれが何かを理解しないまま署名しがちです。この3つは、法的な意味も負う責任も別物です。混同して引き受けると、本来不要なお金の責任まで負わされる可能性があります。

3つの役割の違い

項目キーパーソン身元保証人緊急連絡先
主な役割医療意思決定の窓口・家族代表医療費の支払いの連帯責任・退院時の引き取り容態急変時に連絡を受ける
法的根拠医療現場の慣習(明文化なし)民法上の保証契約(書面)慣習・院内ルール
必須か基本的に必須(家族不在なら成年後見人や本人)2018年厚労省通知により「不在を理由に入院拒否は医師法違反」必須(家族・知人・施設職員でも可)
引き受ける家族の負担説明同席・家族間調整本人未払い時の支払い義務・引き取り義務連絡を受ける義務のみ
署名が必要な場面手術同意・延命治療・身体拘束同意入院申込書(連帯保証欄)入院申込書(連絡先欄)
断れるか断りにくい(家族の事実上の責任)断れる(医師法違反の通知あり)断りにくい
本人の判断能力低下時意思決定の中心になる支払い責任が現実化連絡対応が増える

身元保証人を求められたら確認すべき3点

厚生労働省は2018年4月27日「身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは医師法第19条第1項に違反する」と通知しています(医政医発0427第2号)。それでも病院から強く求められた場合は、以下を確認してください。

  • 連帯保証の範囲と上限額:金額無制限の連帯保証は要注意。書面で上限額を明記してもらえるか確認
  • 身元引受の意味:退院時に引き取り義務まで含むのか、それとも死亡時の遺体引き取りまで含むのかを明確化
  • 本人の判断能力が低下した場合:成年後見制度の利用も並行検討

身元保証人を引き受ける家族がいない・引き受けたくない場合、地域包括支援センターや社会福祉協議会の「身元保証等高齢者サポート事業」相談窓口を通じて、成年後見や日常生活自立支援事業を検討するルートもあります。

病院職員との連携|主治医・退院支援看護師・MSWを役割別に使い分ける

入院中、家族は病院の複数職種と同時並行でやり取りします。職種ごとに得意領域が違うため、「誰に何を聞くか」を最初に整理しておくと、無駄足や情報の取りこぼしを大きく減らせます。日本医療社会福祉協会の業務指針と、医療法施行規則の入退院支援加算要件に基づいて整理します。

主治医(医師)に相談すべきこと

  • 診断名・治療方針・予後(回復見込み・後遺症の可能性)
  • 手術の必要性・代替治療の有無
  • 延命治療の方針(ACP・人生会議の話題化)
  • 退院後の医療管理(投薬・在宅酸素・経管栄養など)
  • 診療情報提供書(紹介状)の依頼

主治医面談は事前予約が原則です。質問は3〜5個に絞ってメモ持参。録音許可を取れば後で他家族と共有できます。「次にお話しできるのはいつですか?」と必ず次回の機会を確保しましょう。

病棟看護師に相談すべきこと

  • 日中・夜間の様子(睡眠・食事・痛み・排泄)
  • リハビリの進捗・離床度合い
  • 家族の面会時間・差し入れ可否
  • 持ち物の追加依頼・洗濯のタイミング
  • 本人の不安・不眠の訴え

担当看護師は日替わりですが、同じ「受け持ち看護師」が1人決まっているのが通常です。誰が受け持ちかを最初に確認しましょう。

退院支援看護師に相談すべきこと

  • 退院後のADL予測(歩行・排泄・食事の見込み)
  • 退院に向けたリハビリ計画
  • 退院前指導(吸引・経管栄養・服薬管理など家族が覚えること)
  • 訪問看護・訪問リハビリの導入
  • 退院前カンファレンスの調整

MSW(医療ソーシャルワーカー)に相談すべきこと

  • 退院先の選択肢(自宅・転院・回復期リハ病院・施設)
  • 介護保険の新規申請・区分変更
  • 経済的問題(医療費・生活費・休業中の家計)
  • 高額療養費・限度額認定証・生活福祉資金
  • 身体障害者手帳・特定疾患の申請
  • 家族間調整(兄弟姉妹・別居家族の役割分担)

MSWは社会福祉士・精神保健福祉士が中心の専門職で、医療と生活をつなぐ「翻訳家」です。遠慮せず、お金や家族関係の悩みまで相談してOKです。MSWはあなたの代理人として、医師・看護師にあなたの状況を翻訳して伝えてくれます。

ケアマネジャー(在宅サービス利用中の場合)

  • 入院中のサービス一時休止・再開
  • 退院後のケアプラン見直し
  • 退院前カンファレンスへの同席依頼(介護報酬上の加算対象)
  • 福祉用具レンタルの追加

ケアマネは退院前カンファに参加することで「退院・退所加算」を算定でき、本人の在宅生活にスムーズに引き継げます。必ず連絡して同席を依頼しましょう。

高額療養費・限度額適用認定証の活用|入院初日の事前申請で立替を避ける

親が高齢で入院した場合、医療費は高額療養費制度の対象です。70歳以上の標準的な所得(一般区分)では、入院1か月あたりの自己負担上限は約57,600円(多数該当4回目以降は44,400円)と決められています。住民税非課税世帯はさらに低く、24,600円または15,000円が上限です。ただし、何もしないと窓口でいったん全額支払い、後から差額が戻る「事後申請」になります。

限度額適用認定証は入院前〜入院初日に申請

「限度額適用認定証」を健康保険者に申請して窓口提示すれば、最初から自己負担上限額しか支払わなくて済みます(現物給付)。70歳以上で住民税課税世帯の人は、健康保険証+高齢受給者証で同じ効果になるため認定証は不要ですが、住民税非課税世帯の人は必ず認定証申請が必要です。

申請先(医療保険の種類別)

  • 協会けんぽ加入者:協会けんぽ各都道府県支部
  • 健康保険組合加入者:勤務先の健康保険組合
  • 市区町村国保加入者:市区町村役場の国保窓口
  • 後期高齢者医療制度(75歳以上):市区町村役場の後期高齢者医療窓口

マイナ保険証なら即時適用

マイナンバーカードを健康保険証として登録(マイナ保険証)し、病院窓口で利用同意すれば、限度額認定証なしで自動的に高額療養費の限度額が適用されます。2024年12月以降は紙の健康保険証の新規発行が原則停止されているため、マイナ保険証の活用が標準になりつつあります。

食費・部屋代は対象外

注意点として、入院中の食費(標準負担額1食460円・住民税非課税世帯は減額)、差額ベッド代、保険外負担(テレビカード・寝間着レンタルなど)は高額療養費の対象外です。事前に病院の入院案内で総額の見込みを確認しましょう。

介護休業と介護休暇の使い分け|入院期間に合わせた戦略

親の入院は、家族(働く子世代)にとっても仕事との両立が大きな課題です。「育児・介護休業法」では、家族の介護のために2つの異なる制度が用意されています。混同して使うと93日しかない介護休業を浪費したり、給付金を受け取り損ねたりするので、入院パターンに応じて戦略的に使い分けましょう。

介護休業(最大93日・3分割可能・給付金あり)

  • 取得日数:対象家族1人につき通算93日(連続も可、3回まで分割も可)
  • 給付金:雇用保険から休業開始時賃金日額の67%が支給(介護休業給付金)
  • 申請:休業開始予定日の2週間前までに事業主に書面で申出
  • 対象家族:配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫
  • 要介護状態の定義:常時介護を必要とする状態(介護保険の要介護2以上が目安だが、症状や項目別状態の合算でもOK)

介護休暇(年5〜10日・時間単位取得可・無給が多い)

  • 取得日数:対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日
  • 取得単位:時間単位取得可(半日休・午前のみ等)
  • 給付金:原則無給(会社の福利厚生で有給化している例もある)
  • 申請:当日口頭でもOK(書面後追い可)
  • 使い方:通院付き添い・短時間の手続き・退院前カンファ参加など短時間の用途に最適

入院期間別おすすめの使い分け

  • 1週間以内の短期入院:介護休暇(時間単位)を組み合わせる。介護休業は温存
  • 2週間〜1か月の入院:入院初日と退院前カンファ・退院日のみ介護休暇、それ以外は介護休業を分割取得
  • 2か月以上の長期入院+退院後の在宅準備:介護休業の1回目を入院後半〜退院後の在宅立ち上げ期に充てる(給付金最大化)
  • 看取り期:3分割の最後の1回を看取り期に残す戦略も有効

93日は短いようで、分割すれば「入院初動」「退院後の在宅立ち上げ」「危機・看取り期」に3回使えます。最初の入院でいきなり全部使い切るのは避けましょう。詳しい申請手順は介護休業の申請手続き|家族のための93日・3回分割・給付金67%の取り方で解説しています。

認知症の親の入院=せん妄予防が最重要|家族ができる7つの環境調整

認知症や軽度認知障害の高齢者が入院すると、約3〜4割に「せん妄(dilirium)」が発症すると報告されています(日本老年医学会)。せん妄は、急性の意識障害・注意障害・認知機能の変動を特徴とする状態で、入院環境のストレス・痛み・脱水・薬剤・睡眠不足が引き金になります。せん妄が起きると入院期間が延び、退院後の認知機能低下や転倒リスクも上がります。家族が介入できる予防策は非常に多く、看護師・主治医と共有して取り組む価値があります。

家族ができる7つのせん妄予防策

  1. 馴染みのものを持ち込む:家族写真・カレンダー・時計・お気に入りのタオル等で「自分の場所」感を作る(要病院確認)
  2. 面会で見当識を補う:「今日は何月何日、ここは○○病院」と毎回伝える。本人の名前で呼ぶ
  3. めがね・補聴器・入れ歯を必ず使う:感覚遮断はせん妄の最大要因。家族が必ず装着を促す
  4. 離床と日中の活動を促進:日中はカーテンを開けて自然光、リハビリ・散歩への同行
  5. 夜は静かで暗い環境に:耳栓・アイマスクを準備、夜間の不要な照明オフを看護師に依頼
  6. 水分・栄養の見守り:脱水・低栄養はせん妄を悪化。面会時に水分摂取を促す
  7. 薬剤の見直しを医師に相談:抗コリン薬・睡眠薬・オピオイドはせん妄誘発リスク。「過去にせん妄歴あり」は必ず申告

せん妄サインに気づいたら

「夜になると別人のようになる」「点滴を抜こうとする」「ありもしないものが見える」と言う、「ここはどこ?」と繰り返す——これらはせん妄のサインです。看護師にすぐ伝えて、認知症ケア加算チームや精神科リエゾンチームの介入を依頼してもらいましょう。身体拘束を安易に同意しないことも重要です。拘束はせん妄を悪化させるため、別の対応がないか必ず質問してください。

退院前カンファレンスで家族が伝えるべき5つのポイント

退院が見えてきた段階で、病院は「退院前カンファレンス(退院前合同会議)」を開催します。主治医・退院支援看護師・MSW・病棟看護師・リハビリ職、そして地域側のケアマネジャー・訪問看護師・介護サービス事業者が同席する重要な会議で、家族も参加するのが原則です。ここでの家族の発言は、退院後の在宅生活の設計図に直接反映されます。

家族が必ず伝えるべき5つのポイント

  1. 住環境の現実:自宅は何階建てか、トイレ・浴室の段差・手すりの有無、寝室と水回りの位置関係。可能ならスマホで動画を撮って当日見せると伝わりやすい
  2. 家族の介護可能時間と限界:「平日は私が朝晩30分のみ」「日中は誰もいない」など、できることとできないことを正直に。無理を引き受けると本人が事故に遭うため、限界の明示は本人を守ること
  3. 本人の生活リズムと好み:起床時間・食事の好み・入浴の頻度・趣味。退院後のサービス選びの判断材料
  4. 不安・心配なこと:「夜の急変が怖い」「服薬を忘れそう」「転倒したら起こせない」など。具体的な不安が訪問看護の頻度や緊急時対応に反映される
  5. 退院後の医療継続先:かかりつけ医・往診医・在宅医のどこにつなぐか。未定なら病院から紹介可能

カンファレンス当日の準備

  • 事前に病院から議題のシートが渡されるので、家族で話し合って回答を持参
  • 主な家族メンバー(キーパーソン以外も)に都合をつけて同席を呼びかける
  • 30分〜1時間が目安。質問はメモして当日漏れなく聞く
  • その場で決められないことは「持ち帰り検討」でOK。即決は不要

カンファで決まることの例

退院日、退院後の医療管理(投薬・処置)、介護サービスの種類・頻度(訪問看護・訪問介護・通所リハ・福祉用具レンタル・住宅改修)、24時間連絡体制、緊急時の入院ベッド確保、家族への手技指導(吸引・経管栄養など)、再診のスケジュール。退院後30日以内に病院による電話フォローや訪問が入る加算もあります。

退院後の在宅復帰の段取り全体は親の入院から在宅復帰までの段取り|退院支援看護師の活用と介護体制の作り方で詳しく解説しています。

親の入院中に家族がやることに関するよくある質問

Q1. キーパーソンは必ず長男・長女が引き受けないといけませんか?

いいえ、キーパーソンは「血縁の順序」ではなく「本人の状況をよく知り、医療チームと連絡を取れる人」が引き受けるのが現実的です。同居していて医療機関にすぐ駆けつけられる家族、休暇を取りやすい家族、本人の意思をよく知っている家族が向いています。家族会議で役割分担を決め、決まった内容を医療チームに伝えれば誰がキーパーソンでも問題ありません。1人に集中させず、サブキーパーソン(副担当)を立てて補佐する家族も増えています。

Q2. 仕事を休めません。毎日面会に行けない場合はどうすればよいですか?

毎日の面会は必須ではありません。重要なのは、(1) 主治医面談(週1回程度)、(2) 退院支援看護師・MSWとの面談、(3) 退院前カンファレンス、の3つに参加することです。日常の様子は病棟看護師に電話で確認できます。多くの病院は家族とビデオ通話や電話面談に対応しており、遠距離家族でも参加できます。介護休暇(時間単位)を主治医面談やカンファのタイミングに合わせて使うと効率的です。

Q3. 兄弟姉妹で介護の負担が偏ります。どう調整すればよいですか?

入院は家族会議の絶好のタイミングです。MSW(医療ソーシャルワーカー)に依頼すれば、家族間調整の場を設定してもらえます。「面会担当」「医療費負担」「退院後の住まい確保」「平日/休日の対応」など、役割を金銭・時間・労力に分けて見える化することが効果的です。「平等」は難しいので「役割分担」を目指しましょう。

Q4. 入院費が払えそうにありません。どこに相談すればよいですか?

まずMSWに相談してください。高額療養費・限度額認定証の手続き、生活福祉資金貸付、無料低額診療事業、生活保護の申請相談、医療費分割払いの調整など、状況に応じた選択肢を提示してくれます。「払えない」を恥ずかしがらず早めに相談することが重要で、滞納が始まる前のほうが選択肢が多く残ります。

Q5. 退院後すぐ自宅は無理そうです。どんな選択肢がありますか?

主に4つの選択肢があります。(1) 回復期リハビリ病棟への転院(最大150〜180日リハビリ集中)、(2) 介護老人保健施設(老健)への入所(在宅復帰目的・3〜6か月)、(3) 一時的なショートステイで体制を整える、(4) 訪問看護・訪問リハビリ+ヘルパーで在宅復帰。家族の介護力・本人のADL・経済状況によって最適解が変わるので、MSWと退院支援看護師に複数案を出してもらい比較しましょう。

Q6. 親の判断能力が落ちていて、本人が手術同意できません。どうすれば?

本人が判断能力を欠く場合、医療同意は家族が事実上行うのが日本の慣習です。ただし、家族間で意見が割れる場合や、家族がいない場合は、成年後見人を立てるルートになります。緊急性が高い手術は医師の判断で実施されることもあります。事前に「ACP(人生会議・アドバンス・ケア・プランニング)」として家族で本人の意向を話し合っておくと、いざという時に迷わず決断できます。

Q7. 入院が長引いて、自宅の介護保険サービスを止めないといけません。手続きは?

ケアマネジャーに連絡してサービスの一時休止を依頼します。デイサービス・ヘルパー・福祉用具レンタルそれぞれに連絡しなくても、ケアマネが一括で調整してくれます。福祉用具レンタル(ベッド・車椅子など)は1か月以上の入院が見込まれる場合、いったん返却して医療費を圧縮するケースが多いです。退院後の再開もケアマネ経由で。

まとめ|入院は家族にとって退院後の在宅生活の準備期間

親の入院中、家族の役割は3つの軸で整理できます。(1) キーパーソンとして医療意思決定の窓口になる、(2) 主治医・退院支援看護師・MSWと連携して退院後の生活を設計する、(3) 持ち物や介護保険・働き方の準備を進める。この3軸を意識すれば、目の前のタスクに振り回されず、見通しを持って動けます。

身元保証人とキーパーソンは別の役割で、厚生労働省は2018年に「身元保証人不在を理由とした入院拒否は医師法違反」と明記しています。家族は身元保証人を引き受けるかどうか、連帯保証の範囲を冷静に判断する権利があります。

入院は家族にとって、退院後の在宅生活を設計する貴重な準備期間でもあります。介護休業93日は分割可能で、給付金67%が出ます。高額療養費・限度額認定証で経済負担を抑え、退院前カンファレンスで「家族の限界」を伝えることが、本人を守ることにつながります。認知症の親では、せん妄予防への家族の関わりが回復スピードを大きく左右します。

1人で抱え込まないでください。MSW(医療ソーシャルワーカー)、退院支援看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センター——あなたを支える専門職は必ずいます。「分からない」「困っている」を早めに口に出すことが、結果的に親と家族の両方を守ります。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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