介護食とは

介護食とは

介護食はかむ力・飲み込む力が弱った方向けの食事の総称。やわらか食・きざみ食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の食形態区分、嚥下調整食学会分類2021、UDF区分、スマイルケア食の3色マーク、低栄養予防のポイントまで一次資料をもとに解説します。

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この記事のポイント

介護食とは、加齢や病気によって「かむ力」「飲み込む力(嚥下機能)」が低下した方が安全に食べられるよう、食材の硬さ・大きさ・粘度を調整した食事の総称です。やわらか食・きざみ食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食といった食形態区分があり、利用者の状態に合わせて選びます。施設では日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食学会分類2021、市販食品ではユニバーサルデザインフード(UDF)や農林水産省のスマイルケア食が指標として広く用いられています。

目次

介護食とは何か

介護食とは、咀嚼機能や嚥下機能が低下した高齢者・療養者でも、安全においしく食事を続けられるように工夫した食事のことです。普通食(常食)をそのまま提供すると、噛みきれずに丸呑みしたり、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしたりする恐れがあるため、食材の大きさ・硬さ・粘度・付着性を本人の機能に合わせて調整します。

介護現場で介護食が必要になる典型的な場面は、(1) 加齢による筋力低下や歯牙欠損で噛む力が落ちたとき、(2) 脳血管疾患・パーキンソン病・認知症などで嚥下機能が障害されたとき、(3) 終末期で食事量が減り誤嚥性肺炎リスクが高まったとき、の3つです。いずれも放置すれば低栄養・脱水・誤嚥性肺炎に直結するため、看護師・管理栄養士・言語聴覚士・介護職が連携して食形態を判定し、提供方法を組み立てます。

介護食という言葉は法令上の正式な用語ではなく、実務では病院・施設・在宅のそれぞれで使い方が少しずつ異なります。病院や介護保険施設では「嚥下調整食」(医学的な嚥下機能評価に基づく治療食)として、家庭・小売市場では「介護食品」(市販のレトルト・冷凍食品)として、在宅介護の文脈ではやわらか食・きざみ食といった日常語として呼ばれます。本ページでは、これらをまとめて「介護食」として整理します。

食形態の種類と違い

食形態の種類と違い(普通食〜ゼリー食)

介護現場で使われる食形態は、噛む力・飲み込む力が下がるにつれて段階的に細かく・やわらかくなります。代表的な区分は以下の6段階です。

普通食(常食)

健常な高齢者が食べる通常の食事。咀嚼・嚥下に問題がない方が対象で、食材の形状や硬さは制限しません。

軟菜食(やわらか食)

普通食の食材を歯や歯ぐきでつぶせる程度までやわらかく煮込んだ食事。噛む力がやや弱った方が対象で、見た目は普通食に近く、献立の楽しみを保ちやすいのが利点です。

きざみ食

食材を5mm〜2cm程度に細かく刻んだ食事。噛む力は残っているが、大きな塊を処理しづらい方向け。細かく刻んだだけでは口の中でまとまりにくく誤嚥リスクが上がるため、近年はとろみあんを併用する「きざみとろみ食」が推奨されます。

ソフト食(ムース食)

食材をミキサーにかけたあと、ゼラチンや増粘剤で再形成し、舌や歯ぐきでつぶせる硬さに整えた食事。見た目を普通食に近づけられるため、食欲を保ちやすく、嚥下機能が低下した方にも比較的安全に提供できます。

ミキサー食(ペースト食)

食材を出汁や水分とともにミキサーにかけ、ポタージュ状になめらかにした食事。咀嚼がほぼできず飲み込む力も弱い方が対象。とろみが弱いと誤嚥しやすいため、増粘剤で粘度を調整します。

ゼリー食

食材をゼリー状に固めた食事。喉ごしがよく口の中でまとまりやすいため、嚥下障害が重度の方や嚥下訓練の導入期に用いられます。学会分類2021でいう「コード0j」に相当する開始食もこのカテゴリです。

これらに加えて、水分にとろみをつけるとろみ調整水分(薄い・中間・濃いの3段階)を組み合わせ、誤嚥を防ぎます。

嚥下調整食学会分類2021とUDF区分

食形態を施設・家庭で共通言語化するために、医療・介護・食品業界それぞれで分類体系が整備されています。実務でよく参照される3つを押さえておきましょう。

嚥下調整食学会分類2021(医療・介護施設の標準)

日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した分類で、食事を5段階・とろみを3段階で示します。病院・施設・在宅で共通指標として使えるよう設計されています。

  • コード0j:均質でなめらかな嚥下訓練用ゼリー(重度嚥下障害の開始食)
  • コード0t:均質でなめらかな嚥下訓練用とろみ水
  • コード1j:均質でなめらかなゼリー・プリン・ムース状(少量をすくって嚥下できる)
  • コード2-1/2-2:ピューレ・ペースト・ミキサー食でなめらか(2-2は不均質も含む)
  • コード3:形はあるが歯や歯ぐきでつぶせる程度、離水が少ないやわらか食
  • コード4:箸・スプーンで切れるやわらかさで、噛みきりやすい軟菜食

とろみ3段階は、薄いとろみ(ストローで吸える程度)、中間のとろみ(スプーンを傾けるとゆっくり流れる)、濃いとろみ(スプーンですくえてほぼ流れない)に区分されます。

ユニバーサルデザインフード(UDF)4区分(市販食品)

日本介護食品協議会が定める市販介護食品の自主規格で、パッケージに「区分1〜4」が表示されます。

  • 区分1:容易にかめる(硬さ5×10⁵ N/㎡以下)— かたいもの・大きいものが食べづらい方向け
  • 区分2:歯ぐきでつぶせる(硬さ5×10⁴ N/㎡以下、粘度1500 mPa・s以上)
  • 区分3:舌でつぶせる(硬さゾル1×10⁴・ゲル2×10⁴ N/㎡以下)— 細かくやわらかければ食べられる方向け
  • 区分4:かまなくてよい(硬さゾル3×10³・ゲル5×10³ N/㎡以下)— 固形物が小さくても食べづらい方向け

スマイルケア食(農林水産省・3色マーク)

農林水産省が2014年から推進する識別制度で、商品選びを支援します。青マークは栄養補給が必要な方向け、黄マークは噛むことが難しい方向け(4段階)、赤マークは飲み込むことが難しい方向け(3段階)の食品に表示されます。

介護食を選ぶときの実務ポイント

看護師や介護職、家族介護者が現場で介護食を選定・提供する際は、次の5点を押さえると安全と栄養の両立がしやすくなります。

  • 食形態は本人の能力でなく観察で決める:年齢や見た目で判断せず、ムセ・残菜・嚥下時の喉の動きを観察し、必要なら言語聴覚士に嚥下評価を依頼します。
  • きざみ食単独はリスク:刻むだけだと口腔内でまとまらず誤嚥が起きやすいため、とろみあんかゲル化剤を併用します。
  • 低栄養を防ぐ:介護食はかさが減ってエネルギー・たんぱく質が不足しがちです。栄養補助食品(ゼリー・ドリンク)や中鎖脂肪酸(MCT)を活用し、必要量を確保します。通所サービスでは栄養改善加算の対象になるかも確認します。
  • 市販品の活用:UDFやスマイルケア食マーク付きのレトルト・冷凍食品を組み合わせると、家族介護者の負担が大きく下がります。
  • 姿勢と環境を整える:30度ギャッジアップ・顎引き嚥下など、食形態と同じくらい姿勢調整が誤嚥防止に効きます。

よくある質問

Q. やわらか食とソフト食はどう違いますか?

「やわらか食」は普通食をやわらかく煮た軟菜食を指す広い言葉で、ソフト食はミキサーにかけてゼラチン等で再形成した、見た目のある柔らかい食事を指すのが一般的です。施設によって呼称が揺れるため、嚥下調整食学会分類2021のコードで確認するのが確実です。

Q. きざみ食は危ないと聞きましたが、なぜですか?

食材を細かく刻むだけでは口の中でばらけてまとまらず、咽頭に流れ込んだときに気管へ入りやすくなるためです。きざみ食を提供する場合はとろみあんやゲル化剤を併用し、口の中で食塊を形成しやすくします。

Q. 在宅介護で介護食を毎食手作りするのは大変です。どうすれば?

UDFマーク・スマイルケア食マーク付きの市販レトルト・冷凍商品を活用するのが現実的です。スーパーやドラッグストア、ECサイトで広く流通しており、栄養成分表示も整っています。栄養面が不安な場合は地域包括支援センターや管理栄養士に相談してください。

Q. 介護食でも経管栄養の代わりになりますか?

嚥下機能が一定以上残っていれば、ゼリー食やミキサー食で経口摂取を続けることは可能です。ただし誤嚥性肺炎の繰り返しや極度の低栄養がある場合は、胃ろう等の経管栄養が選択肢になります。判断は医師・歯科医師・言語聴覚士の評価に基づきます。

Q. 介護保険サービスで介護食に関する加算はありますか?

通所介護・通所リハでは管理栄養士が低栄養リスク者へ栄養ケア計画を実施した場合に「栄養改善加算」が算定できます。また施設系では「経口移行加算」「経口維持加算」など経口摂取を支える加算も整備されています。

参考資料

まとめ

介護食は、噛む力・飲み込む力が低下した方の経口摂取を支えるために、食材の硬さ・大きさ・粘度を調整した食事の総称です。やわらか食・きざみ食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食といった食形態を、利用者の機能に応じて使い分け、嚥下調整食学会分類2021・UDF・スマイルケア食という3つの分類体系を共通言語にすることで、医療・施設・在宅で連続したケアが可能になります。低栄養と誤嚥を同時に防ぐ介護食の知識は、看護師・介護職・家族介護者すべてに役立つ実務スキルです。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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