
おむつ交換とは
おむつ交換とは、自力でトイレ排泄が難しい高齢者の紙おむつを清潔に取り替えるケア。テープ式とパンツ式の選択、尿取りパッドの当て方、体位変換のコツ、IAD(失禁関連皮膚炎)予防と感染対策まで実務目線で解説します。
この記事のポイント
おむつ交換とは、トイレやポータブルトイレで排泄ができない高齢者・要介護者に対し、紙おむつや尿取りパッドを清潔に取り替えるケア技術です。アウター(テープ式・パンツ式紙おむつ)とインナー(尿取りパッド)の2層構造を理解し、体位変換と陰部洗浄、感染対策を組み合わせて実施します。1日4〜6回が目安で、IAD(失禁関連皮膚炎)予防には「汚染後の速やかな交換」と「強くこすらない陰部清拭」が基本です。
目次
おむつ交換の目的と位置づけ
おむつ交換は、要介護者の身体的・精神的尊厳を保ちながら清潔を維持する基本介助です。排泄物を皮膚に長時間付着させない・寝具を汚さない・におい対策で居住環境を整えるという衛生面の目的に加え、肌トラブルや尿路感染症(UTI)の予防、皮膚状態の観察を兼ねる重要なケアです。
一方で、おむつは「使えば便利」ではなく「安易な使用は廃用を進める」二面性を持ちます。本人の残存機能を引き出し、できる限りトイレ・ポータブルトイレでの排泄を続けることが原則で、おむつ交換はあくまで「自立排泄が難しい場面での補助手段」と位置づけます。介護保険のケアプランでは、おむつ使用の前に「排泄誘導」「夜間のみおむつ」など段階的な対応を検討することが推奨されます。
訪問介護でも特養・老健・グループホームでも、おむつ交換は身体介護の代表的業務であり、サービス提供責任者やケアマネジャーは利用者の排泄パターンを把握したうえで、おむつの種類・サイズ・交換回数を介護計画書に明記する必要があります。
紙おむつの種類と尿取りパッドの組み合わせ
大人用紙おむつは大きく「アウター」と「インナー」の2層で構成されます。利用者のADL(活動度)に応じて適切に組み合わせます。
| 分類 | 種類 | 適した利用者像 |
|---|---|---|
| アウター | パンツタイプ | 立位保持可・歩行できる方。リハビリパンツとも呼ぶ |
| アウター | テープタイプ | 寝たきり・座位保持が難しい方。立位介助で交換も可 |
| インナー | 尿取りパッド(昼用・夜用) | アウターに重ねて吸収力を補強。尿量・時間に応じて選択 |
| インナー | 男性用パッド | 陰茎を包む形状。仰臥位での尿漏れ防止に有効 |
| インナー | 軟便パッド | 下痢便を素早く吸収・閉じ込め、皮膚への付着を抑える |
原則は「アウター1枚+尿取りパッド1枚」。パッドの重ね使いはギャザーの密着を妨げて漏れを増やすうえ、皮膚との蒸れ面積を広げてIAD(失禁関連皮膚炎)の原因になるため、看護・介護現場では推奨されません。夜間など長時間カバーしたい場合は、尿取りパッド自体を高吸収タイプに替えるのが正解です。
ベッド上でのおむつ交換 標準手順(テープタイプ)
ベッド上の寝たきり利用者を想定した、感染予防と尊厳に配慮した8ステップです。所要時間は慣れた介護職で5〜10分が目安です。
- 声かけ・物品準備:「お手洗いのお時間です」と説明し同意を得る。手指衛生→使い捨て手袋・エプロン装着。新しいおむつ・尿取りパッド・陰部洗浄ボトル・おしりふき・ビニール袋・タオルを枕元へ。
- カーテン・掛物で羞恥心を遮蔽:カーテンを閉め、上半身は薄手のタオルで覆い、必要部位だけ露出する。
- 仰臥位でテープを外し汚れを観察:テープを内側に折って粘着部を隠す。排尿量・便の性状・皮膚の発赤・浸軟(ふやけ)を確認しケア記録に残す。
- 陰部・臀部清拭:女性は前から後ろへ一方向で拭く(尿路感染予防)。汚れがひどい場合は微温湯(38〜40℃)の陰部洗浄を行い、押し拭き法でしっかり水分を取る。
- 側臥位(横向き)に体位変換:肩と腰に手を添えて手前にゆっくり横向きにする。汚れたおむつを内側に丸めながら抜き取り、ビニール袋へ密閉廃棄。
- 新しいおむつをセット:おむつを縦半分に折ってギャザーを立て、利用者の背中側に深く差し込む。尿取りパッドもギャザーの内側に収める(外に出すと漏れの原因)。
- 仰臥位に戻し、おむつを広げる:左右のテープは「下→上」の順で、斜め上向きに留める(鼠径部に食い込まない角度)。指1〜2本入る余裕を確認。
- 後始末・記録:使用済みおむつは密閉処理し、手袋・エプロンを外して手指衛生。排尿量・便性状・皮膚状態をケア記録に記入。
尿取りパッドの当て方とIAD(失禁関連皮膚炎)予防
尿取りパッドの当て方のコツ
- 男性:陰茎を下向きにしてパッドで包むようにあてる。仰臥位での背側漏れを防ぐため、男性用専用パッドの使用が有効。
- 女性:股の中央を尿の出口にしっかり当て、前後はおむつのギャザー内側に収める。
- 共通:パッドはアウターのギャザーの内側に必ず入れる。外側にはみ出すと毛細管現象でアウターの吸収体が機能せず、寝具まで漏れる原因になる。
IAD(失禁関連皮膚炎)を防ぐ4原則
- 排泄後は速やかに交換:排泄物中のアンモニア・消化酵素が皮膚バリアを破壊する。長時間放置しない。
- 強くこすらない清拭:「拭く」より「押さえて移す」イメージ。皮膚バリアの角質層を物理的に剥がさない。
- 洗浄後は完全に乾燥:水分が残ると蒸れと真菌感染の原因に。押し拭きで水分を移したあと数秒待つ。
- 撥水クリームの活用:かかりつけ医・看護師と相談のうえ、ジメチコン配合などの皮膚保護剤を使用すると尿便の刺激から皮膚を守れる。
感染予防の基本
「1ケア1手袋」「処置前後の手指衛生」「使用済みおむつの密閉廃棄」が標準予防策です。MRSAやノロウイルス保菌者の介助では、エプロン・マスクも追加しガウンテクニックで処理します。
おむつ交換のよくある質問
- Q1. おむつ交換は1日何回が適切ですか?
- A. 1日4〜6回が目安です。ただし排泄パターンによって変動し、夜間は本人の睡眠を妨げないよう高吸収パッドで交換回数を抑える運用が一般的です。便失禁があれば検出後すぐに交換します。
- Q2. 尿取りパッドを2枚重ねてもいい?
- A. 原則NGです。重ねた下のパッドは吸収できず、ギャザーが密着しないことで横漏れと皮膚の蒸れを増やします。長時間カバーしたい場合は1枚あたり吸収量の多い夜用パッド(500cc・900ccタイプ等)に交換しましょう。
- Q3. テープの留め方を間違えるとどうなる?
- A. テープを水平・斜め下向きに留めると鼠径部に食い込みやすく、皮膚剥離・血行不良の原因になります。下のテープから上向き、上のテープから下向きにクロスする角度で留め、指1〜2本入る余裕を持たせるのが正解です。
- Q4. 在宅介護で家族がやる場合、特に難しいポイントは?
- A. 体位変換と腰痛予防です。介護ベッドを腰の高さまで上げる、肘を軸にてこの原理で動かす、スライディングシートを使うなどの工夫で腰の負担を減らせます。訪問介護・看護を併用し、技術指導を受けるのが安全です。
- Q5. おむつ代は介護保険で出る?
- A. 介護保険給付の対象外ですが、市町村独自の「紙おむつ支給事業(給付・現金支給)」を実施している自治体が多くあります。住民税非課税世帯や要介護4以上などの条件付きで月額3,000〜6,000円相当が一般的。お住まいの地域包括支援センターで確認しましょう。
出典・参考資料
- 厚生労働省「介護保険最新情報・排泄支援加算の運用」 — 排泄ケアの記録様式と国の方針
- 厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」 — 標準予防策・手指衛生・PPEの実務指針
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(WOCM) — IAD(失禁関連皮膚炎)の診断・予防ガイドライン
- ユニ・チャーム「排泄ケアナビ・テープタイプの交換方法」 — メーカー公式の標準手順
- 日本看護協会 — 排泄ケアの看護実践基準
- 介護サービス情報公表システム — おむつ支給事業の自治体別検索
まとめ
おむつ交換は単なる「おむつの取り替え」ではなく、清潔保持・皮膚保護・尊厳の3点を同時に達成する基本介助技術です。アウター×尿取りパッドの正しい組み合わせ、体位変換と陰部清拭の手順、IAD予防の4原則を押さえれば、漏れと皮膚トラブルは大きく減らせます。在宅介護でも訪問介護・看護を併用し、技術指導を受けながら腰痛と感染リスクを抑える運用を心がけましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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