
暫定ケアプランとは
暫定ケアプランは要介護認定の結果が出る前にサービスを開始するためにケアマネが作成する仮のケアプラン。想定介護度の置き方、認定結果が異なった場合の費用負担、本プラン切替時の担当者会議の要否を解説します。
この記事のポイント
暫定ケアプランとは、要介護認定の申請から結果通知(原則30日)までの間にサービス利用が必要な場合、ケアマネジャーが想定要介護度を仮置きして作成する一時的な居宅サービス計画です。認定結果が想定と異なれば自己負担増のリスクがあるため、利用者・家族への事前説明と区分の慎重な見立てが欠かせません。
目次
暫定ケアプランの位置づけと作成が必要になる3つの場面
暫定ケアプランは、介護保険法上の正式な様式ではなく、要介護認定の効力が申請日に遡って発生する仕組み(介護保険法第27条第8項)を前提に、認定結果が出る前にサービス利用を開始する実務上の運用です。ケアマネジャー(介護支援専門員)が、主治医意見書・基本調査票・本人や家族からの聴取をもとに想定要介護度を見立て、その範囲内で居宅サービス計画第1表〜第7表を仮作成します。
暫定ケアプランの作成が想定される代表的な場面は次の3つです。
- 新規申請後、認定結果が出るまでの間にサービスが必要:退院直後でリハビリや訪問介護が即必要、独居で介護なしでは生活困難など、結果通知(申請から原則30日以内)を待てないケース。
- 区分変更申請中:状態悪化で要介護度が上がると想定されるが、現行区分の支給限度額ではサービスが足りない場合に、変更後の区分を仮置きしてプランを作る。
- 更新認定の結果が更新開始日より遅れて出る場合:有効期間切れの隙間を埋めるための暫定プラン。
いずれの場合も、「居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書」を申請月のうちに保険者(市区町村)へ提出していないと、給付対象にならないことがある点に注意が必要です。
暫定ケアプラン作成時に必ず確認する5つの実務ポイント
- 想定要介護度は「低めに」見立てるのが原則:認定結果が想定より低かった場合、超過分は全額自己負担になる。主治医意見書・基本調査結果から堅めに推定する。
- 支給限度額の範囲内に収める:仮置き区分の支給限度基準額を超えるサービス量は、認定後も保険給付の対象外となる。
- 利用者・家族への文書同意を取る:「暫定プランであり、認定結果次第で自己負担が変わる可能性がある」ことを説明し、同意書を残す。後日のトラブル防止のため口頭のみでの同意は避ける。
- 「居宅サービス計画作成依頼届」を申請月内に保険者提出:これを怠ると保険給付の対象にならない自治体が多い。
- 担当者会議は暫定プラン作成時にも開催:参加困難な事業所が多ければ照会(書面紹介)で代替可能。記録は第4表に残す。
認定結果と仮置き区分のズレで起きる費用負担の例
暫定プランの最大のリスクは、認定結果が仮置き区分より低く出た場合に、超過したサービス量が全額自己負担(10割)になることです。要介護度ごとの区分支給限度基準額(2026年5月時点・1単位10円換算の概算)と、想定とズレた場合のイメージを整理します。
| 要介護度 | 支給限度基準額(月額の目安) |
|---|---|
| 要支援1 | 約 50,320円 |
| 要支援2 | 約 105,310円 |
| 要介護1 | 約 167,650円 |
| 要介護2 | 約 197,050円 |
| 要介護3 | 約 270,480円 |
| 要介護4 | 約 309,380円 |
| 要介護5 | 約 362,170円 |
具体例:要介護2を想定して月18万円分のプランを組んだが、認定結果が要支援2(限度額約10.5万円)だった場合、差額の約7.5万円は全額自己負担になる。1割負担を見込んでいた利用者にとっては想定外の出費が大きく、苦情・契約解除につながりやすい。
そのため実務では、「認定結果は1段階下になる前提」でプランを組み、追加サービスは認定後に増やす運用が安全とされています。
費用は10割払い→認定後に償還払い/受領委任払いで精算する
暫定プラン期間中の費用支払い方法は、市区町村の運用により2パターンあります。
パターン1:償還払い(事後払戻し)
- 利用者が事業所にサービス費用を10割(全額)支払い、領収書を受け取る。
- 認定結果が確定後、保険者(市区町村)に「高額介護サービス費等支給申請」または「居宅介護サービス費支給申請」を提出する。
- 後日、保険給付分(7〜9割)が指定口座に払い戻される。
パターン2:受領委任払い(現物給付に近い扱い)
- 事業者が利用者から1〜3割の自己負担分のみを受け取る。
- 残りの保険給付分は、認定結果確定後に事業者がまとめて月遅れで国保連へ請求する。
- 利用者は最初から自己負担分のみの支払いで済む。
多くの自治体・事業所はパターン2(月遅れ請求)を採用しています。ただし非該当・想定区分より低い結果の場合は超過分が自己負担となるため、契約時の説明と同意取得が必須です。
退院直後など緊急時に暫定プランでサービスを開始する流れ
退院日が決まっているのに認定結果が間に合わない、独居高齢者が急に要介護状態になった——こうした緊急時に、暫定プランは現場の最後のセーフティネットとして機能します。標準的な流れは以下の通りです。
- 申請日の確定:本人・家族または地域包括支援センター・病院の医療ソーシャルワーカーが市区町村に要介護認定申請を行う。申請日が遡及効の起算日になるため最重要。
- 居宅介護支援事業所の選定とケアマネ決定:「居宅サービス計画作成依頼届出書」を保険者に提出。
- アセスメント実施:主治医意見書・退院前カンファレンス記録・本人や家族の聴取をもとに課題分析。退院前カンファレンスに参加できれば情報収集が円滑になる。
- 想定要介護度の仮置き:基本調査の一次判定結果(出ていれば)や類似事例から堅めに推定。
- サービス担当者会議の開催:訪問介護・福祉用具貸与・通所介護など導入予定事業所と方針共有。緊急時は照会(書面)で代替可。
- 暫定プラン交付・サービス開始:第1表〜第7表を作成し、利用者・家族・事業所に交付。同意書を取得。
- 認定結果通知後の本プラン切替:原則として担当者会議を再開催。ただし暫定プランと内容が大きく変わらない場合は、説明同意日を「結果通知後の実施日」にして照会で代替可能。
ケアマネが暫定プランで失敗しないための実務Tips
- 主治医意見書を早めに取り寄せる:認定調査と並行して主治医意見書の写しを取得できると、想定区分の精度が上がる。
- 区分変更申請の暫定プランは特に慎重に:現区分よりも軽くなる可能性は小さいが、想定よりさらに重い結果が出ると支給限度超過のリスクがある。
- 同意書は「最悪のケース」を明記:「非該当となった場合は全額自己負担」「想定より低く出た場合は差額自己負担」を文書で同意取得。
- 福祉用具貸与は計画的に:要介護2以上が対象の特殊寝台などは、要介護1以下になると例外給付申請が必要。暫定で貸与する場合は事業所と連携。
- 本プラン切替時の担当者会議は省略可否を保険者に確認:自治体によって運用が異なる。原則は再開催だが、内容に変更がない場合は照会で代替できる地域もある。
暫定ケアプランに関するよくある質問
Q1. 暫定ケアプランは正式な様式ですか?
厚生労働省が定める専用様式はなく、通常の居宅サービス計画(第1表〜第7表)を「暫定」と明記して使うのが一般的です。第1表のタイトル欄や備考に「暫定」と記載し、認定結果確定後に本プランに差し替えます。
Q2. 認定結果が「非該当(自立)」だった場合はどうなりますか?
暫定期間中に利用したサービス費用は全額自己負担になります。介護保険からの給付は一切受けられません。家族の介護力や自費サービス・地域支援事業(総合事業)への移行を、暫定段階から想定しておくことが望まれます。
Q3. 暫定プラン期間中の給付管理票はどうしますか?
認定結果が確定するまで国保連への請求はできないため、月遅れ請求として扱うのが一般的です。確定後に正しい区分で給付管理票を作成し、まとめて請求します。
Q4. 暫定プランから本プランへの切替時に担当者会議は必要ですか?
原則として必要です。ただし暫定プランと本プランの内容が大きく変わらない場合、参加困難な事業所には照会(書面)で意見聴取し、第4表に記録を残せば代替可能とする運用が一般的です。区分変更で介護度が大きく変わったときは必ず再開催してください。
Q5. 区分変更申請中に暫定プランを作る場合の注意点は?
現区分の支給限度額を超えるサービスを暫定で組む場合、変更後の区分の限度額を仮置きします。ただし変更申請が認められず現区分のままだった場合、超過分は全額自己負担になります。区分変更が見込み通りに通る確証があるか、主治医意見書や状態変化の記録で裏付けてから組みましょう。
まとめ
暫定ケアプランは、要介護認定の結果待ちで生活が成り立たない利用者に対する、現場の実務的な解決策です。一方で、認定結果が想定より低く出ると差額が全額自己負担になるリスクを抱えるため、(1)想定区分は堅めに見立てる、(2)支給限度額の範囲内に収める、(3)利用者・家族から書面同意を取得する、(4)「居宅サービス計画作成依頼届」を申請月内に保険者へ提出する、の4点を押さえることが安全運用の核心です。本プランへの切替時は、原則として担当者会議を再開催し、第4表に経緯を残すことを忘れないでください。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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