親が意識を失ったら|家族がすべき初動・119番のタイミング・一時的でも受診すべき理由
ご家族・ご利用者向け

親が意識を失ったら|家族がすべき初動・119番のタイミング・一時的でも受診すべき理由

親や高齢の家族が突然意識を失ったとき、家族はどう動けばよいのか。119番のタイミング、横臥位・足挙上の対応、回復後も必ず受診すべき理由を、消防庁・国立長寿医療研究センター・日本循環器学会のガイドラインから整理しました。

ポイント

この記事のポイント

親が突然意識を失ったときは、まず大声で呼びかけ、肩を軽くたたいて反応と呼吸を確認します。呼吸がない・反応がない・けいれんが止まらない・話せない・片麻痺があるときは、ためらわずすぐ119番通報を。短時間で意識が戻った「失神」の場合も、心臓が原因のものは突然死の前兆になり得るため、必ず当日〜翌日中に医療機関を受診してください(消防庁/国立長寿医療研究センター/日本循環器学会ガイドラインに基づく対応です)。

目次

「親が急に倒れて意識がなくなった」「呼びかけても返事がない」――この瞬間、家族が落ち着いて動けるかどうかで、その後の経過は大きく変わります。高齢者の意識消失は、血管迷走神経反射のように数秒で治まる比較的良性のものから、不整脈や脳卒中のように一刻を争うものまで原因がさまざまです。とりわけ心臓が原因の失神(心原性失神)は、Framingham 研究で死亡ハザード比が約2倍と報告されるなど、突然死につながり得るサインとされています。

本記事では、消防庁が示す「ためらわず119番を呼ぶ症状」、国立長寿医療研究センターや日本循環器学会の失神診療ガイドラインなど一次資料をもとに、家族が現場ですべき初動119番を呼ぶべきラインの見極め方意識が戻ったあとの観察と受診を整理しました。介護中のご家族・離れて暮らすご家族のどちらも、いざというときの行動指針として読み進めてください。

※本記事は医療行為を代替するものではありません。実際の対応では迷わず119番や#7119へご相談ください。

失神と意識障害は何が違うのか

家族が倒れた瞬間に判断したいのは、「自然に意識が戻るタイプ(失神)」か、「戻らない・遷延するタイプ(意識障害)」かという2点です。日本循環器学会の失神診療ガイドラインでは、失神は「一過性の全脳虚血による意識消失で、数秒〜数分のうちに自然かつ完全に回復するもの」と定義されています。

失神(一過性意識消失発作)の特徴

  • 意識を失う時間は数秒〜1〜2分程度と短い
  • 呼びかけに反応し、自然に意識が戻る
  • 記憶障害や麻痺などの後遺症を残さない
  • 顔面蒼白・冷や汗・嘔気などの前駆症状を伴うことが多い

意識障害(失神以外)の特徴

  • 意識が戻らない、もうろうとしたまま遷延する
  • 呼びかけても反応が鈍い、または無反応
  • 呼吸の異常(停止・努力呼吸・いびき様呼吸)を伴うことがある
  • けいれん、片麻痺、ろれつ困難、激しい頭痛などを伴うことがある

国立長寿医療研究センターの解説によれば、70歳以上の方の約1〜2%が年間で何らかの失神を経験しており、高齢者では決して珍しい出来事ではありません。一方で、意識が戻らないタイプは脳卒中・心停止・低血糖・重症感染症などの「一刻を争う病態」を示唆します。

区別がつかないときは「呼吸の有無」で判断

家族が現場で迷ったときは、まず「正常な呼吸があるかどうか」を最大の判断軸にしてください。胸とお腹の動きが見えない、または「ヒューヒュー」「ガクガク」というしゃくり上げ呼吸(死戦期呼吸)の場合は心停止に準じて扱うのが救急現場の標準対応です。判断に迷う段階で迷わず119番を呼ぶことが、結果として救命率を高めます。

高齢者の意識消失の主な原因と頻度

意識消失の原因を知っておくと、家族が現場で「これは脳卒中かもしれない」「これは食事中の窒息かもしれない」と当たりをつけやすくなります。日本循環器学会「失神の診断・治療ガイドライン」と国立長寿医療研究センター・救急医学会の解説をもとに、高齢者で頻度の高い原因を整理しました。

失神の原因分類(日本循環器学会ガイドライン)

  • 反射性失神(神経調節性失神):血管迷走神経反射、状況失神(排尿後・咳嗽・嚥下後など)。全失神の約30〜35%。高齢者では脱水や降圧薬の影響で誘発されやすい
  • 起立性低血圧:立ち上がった瞬間に血圧が下がる。全失神の約15%。降圧薬・利尿薬・パーキンソン薬の副作用、脱水、自律神経障害が背景
  • 心原性失神:徐脈性不整脈(房室ブロックなど)、頻脈性不整脈(心室頻拍・心房細動)、大動脈弁狭窄症、急性心筋梗塞など。全失神の約10〜15%だが、1年死亡率は18〜33%と最も予後不良

失神以外で意識を失う代表的な原因

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血):意識障害が遷延し、片麻痺・ろれつ困難・激しい頭痛などを伴う
  • 低血糖:糖尿病薬・インスリン使用中の方で発生。冷や汗・震え・意識もうろう。ブドウ糖の経口摂取または救急要請
  • 窒息(食事中の喉詰まり):高齢者の不慮の事故死で最多。誤嚥性窒息は咳ができない場合、ハイムリック法と119番を同時に
  • てんかん発作:全身性のけいれん、舌を噛む、失禁を伴う。発作後ももうろう状態が続くことがある
  • 急性心筋梗塞・大動脈解離:胸痛や背部痛とともに意識を失うことがある。即119
  • 敗血症・脱水・薬剤性:感染症や薬の影響で意識レベルが低下することも

高齢者で特に多いシチュエーション

  • 朝食前のトイレや早朝の起床時(起立性低血圧 + 脱水)
  • 排尿中・排尿直後(状況失神)
  • 食事中(誤嚥性窒息、嚥下性失神)
  • 入浴中・入浴直後(熱中症・心血管イベント)
  • 夏場の屋外活動(熱中症、脱水)
  • 降圧薬・利尿薬・睡眠薬を新たに飲み始めた時期

消防庁の救急搬送データでは、65歳以上の搬送原因のうち「意識障害・失神」関連は心疾患・脳血管疾患に次いで多く、特に夏場(熱中症)と冬場(脳血管・心血管イベント)に集中します。原因の見極めは現場では難しいため、家族は「呼吸の有無」と「意識がすぐ戻るか」の2点で動き、原因は救急隊や医師に判断を委ねるのが安全です

迷わず119番を呼ぶ8つの即時サイン

消防庁「救急車利用リーフレット(高齢者版)」と日本救急医学会の「ためらわず救急車を呼ぶべき症状」リストをベースに、家族が現場で迷わないチェックリストとしてまとめました。1つでも当てはまったら、原因を考えるよりも先に119番です。

  • ① 呼吸がない/浅い/ヒューヒュー・ガクガクと不規則(死戦期呼吸を含む):心停止に準じて対応。119しながら胸骨圧迫の準備
  • ② 呼びかけ・痛み刺激にまったく反応しない:意識レベル JCS 100 以上(DNAR・ACP の合意がない限り即119)
  • ③ 顔の片側がゆがむ/片腕が上がらない/ろれつが回らない(FAST 陽性):脳卒中を疑う。発症4.5時間以内ならt-PA投与の可能性があり、時間勝負
  • ④ 激しい胸の痛み、胸が締めつけられる、冷や汗を伴う:急性心筋梗塞・大動脈解離の可能性。意識消失と合併すれば最重症
  • ⑤ 突然の激しい頭痛(「人生最悪の頭痛」)と意識消失:くも膜下出血の典型サイン
  • ⑥ けいれんが5分以上続く/止まっても意識が戻らない/繰り返し起こる:てんかん重積状態。気道確保しつつ119
  • ⑦ 食事中・お風呂中・喉に何かを詰めた直後の意識消失:窒息・誤嚥・心血管イベント。背中をたたく・腹部突き上げと並行して119
  • ⑧ 大量出血・吐血・下血を伴って意識を失った:循環血液量減少性ショック。119しながら下肢挙上・保温

判断に迷うグレーゾーンの症状

以下のような場合は、119を呼ぶか「#7119(救急安心センター事業)」で相談するか迷うラインです。基本姿勢として「迷ったら119、待てそうなら#7119、相談する余裕があれば#7119が安全」です。

  • 意識はすぐ戻ったが、本人がぐったりして話し方がいつもと違う
  • 顔色が悪く、冷や汗を強くかいている
  • 嘔吐を繰り返す、または胸の不快感が消えない
  • 転倒で頭を強く打った可能性がある(抗血栓薬服用中なら特に注意)
  • 糖尿病で食事をとらずに薬を飲んでしまった後

判断を後回しにして「様子を見る」と回復のチャンスを逃すことがあります。夜間や休日でも、症状が強ければ119を呼ぶことは正しい判断であると消防庁も明言しています。家族が遠慮して救急要請を遅らせるケースほど予後が悪いというデータもあるため、迷ったら呼んでください。

家族の初動5ステップ|呼びかけから救急隊到着まで

意識消失の現場で、家族が最初の数分間にすべきことは決まっています。日本救急医学会の市民向け救急蘇生ガイドラインと、消防庁「応急手当 WEB 講習」をベースに、迷わず動くための5ステップを整理しました。1人で抱え込まず、近くに誰かいたら必ず助けを呼んでください

ステップ1:安全確認と呼びかけ(10秒以内)

  • 倒れた場所が安全か確認する(階段の途中、水回り、暖房器具の近くなど危険があれば最低限の移動)
  • 肩を軽くたたきながら、はっきりとした声で「お父さん、聞こえますか」「分かりますか」と呼びかける
  • 反応の有無と、目を開けるか、声で答えられるかを観察する

ステップ2:呼吸の確認(10秒以内)

  • 胸とお腹の動きを横から見る
  • 正常な呼吸かどうかを確認(規則的な胸の上下動があるか)
  • 「いびきのような呼吸」「あえぎ呼吸」「しゃくり上げ呼吸」は異常呼吸(死戦期呼吸)。心停止に準じて扱う
  • 呼吸の確認に10秒以上かけない。迷ったら「呼吸なし」と判断して次のステップへ

ステップ3:119番通報と協力者の依頼

  • 反応がない、または呼吸がおかしい場合は即119
  • 1人なら自分の携帯でスピーカー通話にしながら胸骨圧迫の準備
  • 家族や近所の人がいれば「あなたは119、あなたはAEDを取ってきてください」と役割を明確に指示する
  • 通報内容:①住所と目印(マンション名・部屋番号まで)②倒れた人の年齢・性別 ③意識・呼吸の状態 ④服用中の薬と既往歴 ⑤現在の電話番号
  • 救急隊員から指示が出るので、電話は切らずに指示に従う

ステップ4:気道確保と姿勢の調整

  • 呼吸あり・意識なし:横向きに寝かせて(回復体位)、嘔吐物による窒息を防ぐ。上側の足を曲げて体を安定させ、下顎をやや前に出して気道を確保
  • 呼吸なし・反応なし:仰向けにして胸骨圧迫を開始(成人の場合、胸の真ん中を1分間に100〜120回、深さ約5cmで強く・速く・絶え間なく)。AEDが届いたら音声に従って装着
  • けいれん中:周囲の危険物を遠ざける。口に物を入れない体を押さえつけない。けいれんが収まったら回復体位
  • 窒息(喉詰まり):意識があれば背中をたたく(背部叩打法)、ハイムリック法。意識がなくなれば胸骨圧迫を開始

ステップ5:観察と記録

救急隊が到着するまでの間、以下を観察してメモしておくと、その後の診断・治療が格段にスムーズになります。

  • 意識を失った時刻と回復した時刻(分単位で)
  • 倒れた状況(食事中・トイレ中・立ち上がった時・転倒の有無)
  • けいれん・嘔吐・失禁の有無、けいれんなら何分間続いたか
  • 顔色(蒼白・紅潮・チアノーゼ)と冷や汗の有無
  • 本人が直前に訴えていた症状(胸痛・頭痛・めまい・しびれなど)
  • 普段飲んでいる薬・お薬手帳・既往歴のメモ
  • かかりつけ医・かかりつけ薬局の連絡先

救急隊や搬送先病院では「いつから」「どんな状況で」「どれくらいの時間」を必ず聞かれます。動転していて思い出せないことも多いため、スマホのメモや音声入力で時系列を残すのが現実的です。

一過性失神(すぐ意識が戻る)の場合の正しい応急処置

立ちくらみのように一瞬意識が遠のいて数秒〜1〜2分で自然に戻るのは、多くの場合「反射性失神(血管迷走神経反射)」や「起立性低血圧」です。こうしたタイプは、脳への血流を素早く回復させてあげるだけで意識が戻ることがほとんどです。日本循環器学会の失神診療ガイドラインに沿った正しい応急処置をまとめます。

1)まず本人を寝かせる(横臥位)

  • 椅子に座ったままにせず、その場でゆっくり横向きに寝かせる
  • 頭の下に枕やクッションは入れない(脳への血流を妨げないため)
  • 嘔吐の可能性があれば必ず横向き(誤嚥防止)

2)両足を心臓より高く上げる(足挙上=下肢挙上位)

  • クッション・座布団・カバンなどを足の下に入れ、30〜45度ほど足を持ち上げる
  • 下肢から心臓・脳への血液還流を増やし、脳血流を回復させる
  • 足挙上で2〜3分以内に意識が戻ることが多い

3)服や帯を緩める

  • 首回りのボタン、ベルト、補正下着、義歯を必要に応じて緩める・外す
  • 呼吸を楽にし、過度な圧迫を取り除く

4)室温と保温

  • 冷房が効きすぎていれば毛布をかける
  • 逆に夏場で汗をかいていれば、扇風機やうちわで風を送る
  • 顔に水をかける・冷たいタオルを当てるのも穏やかな刺激として有効

5)意識が戻ったあと

  • すぐに立ち上がらせない。最低5〜10分は横になったまま様子を見る
  • 急に座らせると再度失神することがある(再失神)
  • 口がきけて、嚥下できることを確認してから少量の水・スポーツ飲料を飲ませる
  • 顔色が戻り、ふらつきがなくなったら、ゆっくり座位→立位の順で起き上がらせる

やってはいけない3つのこと

  • 体を強く揺さぶる:脳震盪・頸椎損傷の悪化リスク
  • 意識が戻る前に水分・薬を口に入れる:誤嚥窒息のリスク。意識消失中の経口摂取は厳禁
  • 頬を強くたたく・冷水を浴びせる:強い物理刺激は不整脈や転倒のリスクを増やす

意識がすぐ戻ったとしても、「失神=心臓が原因の前兆」である可能性は残ります。次の項目で説明するとおり、必ず受診してください。

意識が戻っても必ず受診|病院で受けるべき検査

「意識がすぐ戻ったから大丈夫」と判断するのは危険です。日本循環器学会の失神診療ガイドラインは、「初回の失神は原則として原因検索のために受診を推奨」と明記しています。とくに心原性失神は突然死の前兆になるため、原因がはっきりするまでは安心できません。

受診のタイミング

  • 当日中に受診:胸痛・動悸・息切れ・冷や汗・複数回失神を繰り返した・運動中の失神・坐位や仰臥位での失神・突然死の家族歴あり・抗血栓薬服用中の転倒
  • 翌日までに受診:初めての失神、原因が明らかでない、高齢で内服薬が多い、糖尿病や心疾患の既往あり
  • 後日でよい:明らかな脱水や立ちくらみで、本人がすでに回復しており、再発リスクが低いと判断できる場合(ただしかかりつけ医への報告は推奨)

受診先の選び方

  • 意識消失と同時に胸痛・脳卒中症状があった:救急外来(救命救急センター)
  • 初回失神で原因不明:循環器内科・神経内科(紹介状なしでも受診可。総合病院の方が検査がそろっている)
  • すでにかかりつけ医がいる:まずかかりつけ医に電話相談 → 必要に応じて紹介状を出してもらう
  • 判断に迷えば「#7119(救急安心センター事業)」「#8000(小児救急ではなく成人の場合は#7119)」へ相談

病院で行われる主な検査

  • 心電図(12誘導心電図):不整脈・心筋虚血のスクリーニング。来院時に必須
  • 胸部X線・心エコー:心臓の形態・弁膜症・心機能評価
  • 血液検査:貧血・電解質異常・血糖・甲状腺機能・心筋酵素(トロポニン)
  • ホルター心電図(24時間心電図):発作性不整脈の検出
  • ヘッドアップティルト試験:神経調節性失神の診断
  • 頭部CT・MRI:脳卒中・くも膜下出血・てんかんの除外
  • 頸動脈エコー:頸動脈狭窄の評価
  • 植え込み型ループレコーダー:原因不明の繰り返す失神に対して、長期間の心電図モニタリング

家族が病院で伝えるべき情報

  • 意識を失った時刻と回復時刻(家族のメモが最重要)
  • 倒れた状況(食事中・トイレ中・運動中など)
  • けいれん・嘔吐・失禁の有無
  • 普段飲んでいる薬(お薬手帳を持参)
  • 既往歴(高血圧・糖尿病・心疾患・脳卒中・てんかんなど)
  • 家族歴(突然死・心筋症・不整脈)
  • 同様の症状の既往(過去にも倒れたことがあるか)

これらの情報がそろっていると、原因特定までの時間が大幅に短縮され、不要な検査や入院も避けられます。受診時には必ずお薬手帳と、可能なら倒れた前後の動画(家族が撮影したもの)を持参してください。

既往疾患別の意識消失リスクと注意点

もともと持病がある高齢者は、その疾患特有のリスク因子から意識消失が起きやすくなります。代表的な疾患別に、家族が普段から意識しておきたいリスクと予防のポイントを整理しました。

心不全

  • リスク:心拍出量の低下による低血圧、不整脈合併、利尿薬による脱水、起立性低血圧
  • 普段の予防:体重を毎日同じ条件で計測(急な体重増加は増悪サイン)、塩分制限(1日6g未満)、水分制限を主治医の指示通りに、急に立ち上がらない
  • 緊急度サイン:呼吸困難、起座呼吸、足のむくみの急激な悪化と同時の意識低下 → 即119
  • 関連記事:心不全の親を在宅で支える

パーキンソン病

  • リスク:起立性低血圧(自律神経障害)、L-ドパなどパーキンソン薬による低血圧、嚥下障害による誤嚥窒息、薬の効果切れ(wearing-off)による転倒
  • 普段の予防:起床時はベッドの縁に2〜3分座ってから立つ、食後30分は座位を保つ、弾性ストッキング着用、塩分摂取を主治医と相談
  • 緊急度サイン:高熱とともに動けない(悪性症候群)、嚥下障害悪化での窒息 → 即119
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糖尿病(インスリンまたは経口血糖降下薬使用中)

  • リスク:低血糖(食事を抜いた、運動量が増えた、薬を多く飲んだ)、脱水・高血糖性高浸透圧症候群
  • 低血糖の前兆:冷や汗、震え、動悸、空腹感、ぼーっとする → 意識があればブドウ糖10g・砂糖大さじ1・ジュース150mlを摂取
  • 普段の予防:食事のリズム維持、シックデイ(体調不良日)の対応ルールを主治医と決めておく、ブドウ糖を常に携帯
  • 緊急度サイン:意識がない/嚥下できない状態での低血糖は絶対に経口投与しない。すぐ119を呼び、グルカゴン注射の指示を仰ぐ
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脳卒中の既往

  • リスク:再発(脳梗塞・脳出血)、てんかん発作(症候性てんかん)、抗血栓薬使用中の出血合併
  • 普段の予防:血圧管理(朝晩2回計測)、服薬遵守、嚥下評価、リハビリ継続
  • 緊急度サイン:FAST 陽性、頭部打撲後(抗血栓薬服用中は出血性のリスク)、けいれん → 即119
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慢性腎臓病・透析中

  • リスク:透析中・直後の血圧低下、電解質異常(高カリウム血症)、貧血、心血管合併症
  • 普段の予防:透析後は急に動かない、塩分・カリウム制限の遵守、シャント側に重い物を持たない
  • 緊急度サイン:透析直後の意識消失・胸痛・呼吸苦 → 即119、透析施設にも連絡
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COPD・在宅酸素療法中

  • リスク:酸素飽和度の低下、CO2ナルコーシス(高流量酸素による意識低下)、感染症増悪
  • 普段の予防:パルスオキシメーターで毎日SpO2を測る(90%以上を目安)、勝手に酸素流量を上げない、感染予防(インフル・肺炎球菌ワクチン)
  • 緊急度サイン:SpO2 88%未満、唇のチアノーゼ、もうろう状態 → 即119
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レビー小体型認知症

  • リスク:自律神経症状による起立性低血圧、抗精神病薬への過敏反応(悪性症候群)、レム睡眠行動障害による転倒
  • 普段の予防:ゆっくり立ち上がる、新しい薬は少量から、夜間の見守り(センサーや見守りカメラの活用)
  • 緊急度サイン:意識レベル低下と発熱・筋強剛・血圧変動 → 即119(悪性症候群の疑い)
  • 関連記事:レビー小体型認知症の家族の支え方

救急車に同乗する家族の持ち物・準備リスト

救急隊が到着し搬送が決まったら、家族は1人だけ救急車に同乗できます(消防本部によって運用は異なります)。動揺している中で必要な物を集めるのは大変なので、普段から「救急持ち出しセット」を一カ所にまとめておくと、いざというときに迷いません。

絶対に持っていくもの

  • 本人の保険証(医療保険・介護保険)と限度額適用認定証
  • お薬手帳(複数のかかりつけがある場合は全部)
  • かかりつけ医・かかりつけ薬局の連絡先とメモ
  • 本人の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • 家族の連絡先一覧(きょうだいや配偶者の電話番号、職場の番号)
  • 現金1万円程度と小銭(タクシー代・売店)、ATMカード
  • 家族のスマホ・充電器(コンセント式モバイルバッテリー推奨)
  • 本人の靴(履き替え用)または替えの上靴

あると助かるもの

  • 本人の眼鏡・補聴器・入れ歯(命に関わるシーンでは後回しでよい)
  • 意識消失時のメモ(時刻・状況・症状の経過)と、可能なら倒れた瞬間の動画
  • 本人のお気に入りのタオル・ブランケット(不安緩和に)
  • はおりもの・マスク・ハンドタオル(家族用)
  • ペットボトルの水と小腹を満たせる軽食(搬送先で長時間待つことが多い)
  • 本人と家族の延命治療に関する希望書(ACP・リビングウィルがあれば)
  • 同居家族・ヘルパー・ケアマネに状況を共有するためのスマホ

事前に作っておくと安心な「救急ファイル」

救急医療情報キットや「マイ救急ノート」など、自治体配布の医療情報まとめ用紙を活用すると効率的です。次の情報を1枚にまとめて、冷蔵庫など分かりやすい場所に保管しておきます。

  • 氏名・生年月日・血液型・住所
  • 既往歴・現在の病名
  • 常用薬一覧(薬の名前と用量、飲み始めた時期)
  • アレルギー(薬剤・食物・造影剤)
  • かかりつけ医・かかりつけ薬局・訪問看護ステーション
  • 緊急連絡先(第1〜第3順位)
  • 本人の延命治療への希望(ACP の合意内容)
  • 介護保険被保険者番号・後期高齢者医療被保険者番号

多くの自治体で、消防署や地域包括支援センターが「救急医療情報キット」を無料配布しています。冷蔵庫に保管しておくと救急隊が現場で活用できる仕組みです。お住まいの市区町村のWebサイトで「救急医療情報キット」と検索してみてください。

親の意識消失についてよくある質問

Q1. 意識を失った親がすぐに目を覚ましました。それでも救急車を呼ぶべきですか?

A. 救急車を呼ぶかどうかは、回復後の状態と症状の有無で判断します。胸痛・呼吸困難・激しい頭痛・嘔吐・冷や汗・ろれつ困難・片麻痺・けいれんがあれば、たとえ意識が戻っていても即119です。それらがなく本人もしっかり受け答えできる状態であっても、初回の失神は当日または翌日中に医療機関を受診することが日本循環器学会の失神診療ガイドラインで推奨されています。判断に迷ったら#7119(救急安心センター)に相談してください。

Q2. 倒れた親の口に水や薬を入れてもいいですか?

A. 意識がない、または十分に飲み込めない状態で口に何かを入れてはいけません。誤嚥して窒息や誤嚥性肺炎を起こすリスクがあります。糖尿病で低血糖が疑われる場合も、意識がない時は経口投与せず、すぐ119を呼んでください。意識が戻り、座位を保てて、本人が「飲める」と意思表示できる段階になってから、少量ずつ与えるのが安全です。

Q3. けいれんしている時、口に物を入れて舌を噛まないようにすべきですか?

A. いいえ、口に物を入れるのは絶対にやめてください。日本てんかん学会・救急医学会は「割り箸やタオルを口に入れる行為は、歯の損傷・窒息・施術者の負傷の原因になる」として明確に否定しています。けいれん中の対応は、(1)周囲の危険物を遠ざける、(2)頭の下に柔らかいものを敷く、(3)体を押さえつけない、(4)けいれんが収まったら回復体位、(5)5分以上続くか繰り返す場合は119、です。

Q4. 一人暮らしの親が倒れていないか心配です。どうやって早期発見できますか?

A. 見守りサービスの活用が有効です。具体的には(1)緊急通報装置(自治体貸与の「緊急通報システム」、月数百円〜千円程度)、(2)見守りカメラ(人感センサー連動、月千円〜)、(3)電力・水道・冷蔵庫の使用状況を検知する見守りIoT、(4)配食サービス(配達時に安否確認)、(5)訪問介護・訪問看護の定期訪問、などがあります。詳しくは見守りサービス比較遠距離介護の始め方をご覧ください。緊急時のためにスマートロックや鍵預けの仕組みも合わせて整えておくと、救急隊が現場に入れず時間をロスすることを防げます。

Q5. 倒れた親が認知症で「救急車に乗らない」と言っています。どうすればいいですか?

A. 本人が判断能力を欠く状態でも、明らかに緊急性が高い症状(呼吸困難・FAST陽性・激しい胸痛・反応低下)があれば、家族が代理意思決定者として救急要請を行うのが原則です。救急隊員には「本人が拒否しているが、家族判断で搬送をお願いしたい」と伝えてください。あらかじめ ACP(人生会議)で「急変時はどこまで治療を希望するか」を本人・家族・主治医で話し合っておくと、現場での判断がスムーズになります。延命治療を希望しない明確な合意(DNAR)がある場合は、その意向が尊重されますが、書面で残しておくことが重要です。

Q6. 訪問看護師がいれば、急変時に来てもらえますか?

A. 24時間対応体制を取っている訪問看護ステーション(機能強化型訪問看護ステーション、または24時間連絡体制加算を算定している事業所)であれば、夜間・休日でも電話相談と緊急訪問が可能です。ただし、緊急性が高い症状(心停止・脳卒中疑い・激しい胸痛)の場合は、訪問看護ステーションに連絡するより先に119を呼ぶのが原則です。並行して訪問看護ステーションに連絡し、状況を共有してください。詳細は訪問看護を家族が依頼する流れをご覧ください。

Q7. 老人ホームに入っている親が意識を失ったと連絡がありました。家族として何をすべきですか?

A. 施設からの第一報では、(1)意識・呼吸・けいれんの有無、(2)救急要請したか、(3)搬送先病院、(4)施設職員が同乗するか家族の到着を待つか、を確認してください。施設は基本的に救急対応のマニュアルがあり、看護師が常駐していれば一次対応をしてくれます。家族はかかりつけ医・既往歴・お薬情報を病院に伝える役割を担うので、すぐに搬送先病院に向かい、可能ならお薬手帳・保険証・施設の介護記録を持参してください。

参考資料・出典

まとめ|「迷ったら119」と「戻っても受診」が家族を守る2つの軸

親が意識を失った瞬間に家族ができることは、たった2つです。

  • 「呼吸の有無」と「意識がすぐ戻るか」だけで動く。原因の判別は救急隊と医師に任せ、家族は呼びかけ→呼吸確認→119→気道確保→記録のステップに集中する。
  • 「短時間で戻った失神」も必ず受診する。心原性失神は1年死亡率18〜33%と最も予後不良。原因不明なまま「様子見」せず、当日〜翌日中に循環器内科や神経内科を受診する。

そして「いざ」のときに迷わないために、平時の備えが最大の武器になります。具体的には次の5つを、家族と本人で1つずつ話し合っておいてください。

  • 救急医療情報キットを冷蔵庫に常備し、お薬手帳・既往歴・かかりつけ医・延命治療への希望を1枚にまとめておく
  • かかりつけ医・訪問看護・ケアマネの連絡先を家族全員のスマホに登録し、夜間休日の連絡ルートも確認
  • ACP(人生会議)で、急変時にどこまで治療を希望するかを本人・家族・主治医で共有
  • 家族会議で、急変時の連絡網と意思決定者、駆けつける家族の順番を決めておく
  • 一人暮らしの親には見守りサービス・緊急通報装置を導入し、鍵預け・スマートロックで救急隊が現場に入れる体制を整える

意識消失は予測できない出来事ですが、初動の知識と備えがあれば、家族が冷静に動けます。そしてその数分間の判断が、その後の経過を大きく左右します。この記事をブックマークし、家族間でも共有して、いざという日への備えとしてご活用ください。

本記事に関する情報は2026年5月時点の公的ガイドラインに基づきますが、医療判断は必ず主治医・救急医療機関の指示を優先してください。判断に迷ったときの相談先は119(緊急)/#7119(救急安心センター)/かかりつけ医・訪問看護ステーションです。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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