
厚労省、障害福祉グループホームの運営基準を厳格化へ|管理者に実務3年+研修、職員研修も義務化
厚生労働省は2026年6月5日の社会保障審議会・障害者部会で、障害福祉のグループホーム(共同生活援助)の管理者に3年以上の実務経験と研修修了を求める資格要件を2027年4月から新設し、世話人ら直接処遇職員への基礎研修受講措置も義務化する方針を示した。経過措置と働く人への影響を解説。
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この記事のポイント
厚生労働省は2026年6月5日の社会保障審議会・障害者部会で、障害福祉のグループホーム(共同生活援助)の管理者に「3年以上の実務経験」と「共同生活援助管理者研修(仮称)の修了」を求める資格要件を2027年4月から新設する方針を示し、大筋で了承された。あわせて、世話人や生活支援員など現場の直接処遇職員に基礎的な研修を受講させる措置を事業者に義務付ける運営基準の厳格化も提案され、2028年度の施行を目指す。事業所数が8年間で約2倍に急増した障害福祉グループホームの支援の質を底上げする狙いで、現場で働く人にとっては、積み上げてきた実務経験と研修歴がキャリアの裏付けとして正式に評価される仕組みへの転換点となる。
目次
解説動画
障害のある人が地域で共同生活を送る「共同生活援助」、いわゆる障害福祉のグループホーム。その運営ルールが、2027年度から大きく変わろうとしている。
厚生労働省は6月5日に開かれた社会保障審議会・障害者部会(第156回)で、共同生活援助の管理者に新たな資格要件を設けるとともに、現場職員への研修受講の措置を事業者に義務付ける方針を提案し、委員から大筋で了承を得た。これまで障害福祉サービスの指定基準では、全サービスを通じて管理者に資格要件は設けられておらず、共同生活援助が初めてのケースとなる。
背景には、グループホームの急増がある。共同生活援助の事業所数は2016年度の7,342事業所から2024年度には14,438事業所へと、8年間でほぼ倍増した。営利法人を中心に参入が相次ぐ一方、「実績や経験が乏しい事業者による不十分な支援」への懸念が現場から繰り返し指摘されてきた。
なお、ここで扱うのは障害者総合支援法に基づく障害福祉のグループホーム(共同生活援助)であり、介護保険制度の認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは別の制度だ。本記事では、新しい資格要件と研修義務化の中身、経過措置のスケジュール、そして障害福祉グループホームで働く人や転職を考えている人への影響を整理する。
管理者の資格要件:実務経験3年+管理者研修の修了が必須に
3年以上の実務経験と研修修了が必須に
厚労省が障害者部会に示した案では、共同生活援助の管理者の資格要件は次の2つで構成される。指定基準(指定を受けるうえで満たす必要がある基準)に位置付けられ、2027年4月から適用される。
- 実務経験要件:指定障害福祉サービス事業所、指定相談支援事業所、指定障害者支援施設などの従業者として、3年以上障害者の支援等に従事した経験を有すること
- 研修要件:新設される「共同生活援助管理者研修(仮称)」を修了していること
注意したいのは、実務経験のカウント方法だ。資料では「管理者等のうち、実際に障害者に対する支援業務に従事していない者は含まない」と明記されている。つまり、事業所に在籍していても経営や事務に専念していた期間は実務経験に算入されず、利用者への支援に実際に携わった経験が問われる。
「共同生活援助管理者研修(仮称)」とは
新設される管理者研修は、都道府県等が実施主体となる。研修の具体的な内容は、2025年度の障害者総合福祉推進事業で開発されたカリキュラムや教材をもとに検討が加えられる。受講できるのは「3年以上の障害者の支援等に従事した経験を有する者」とされており、実務経験を積んだうえで研修に進む流れだ。
全国で円滑に研修を実施できるよう、厚労省は2026年度前期に都道府県等の職員を対象とした説明会を開催する予定。さらに、2026年度に先行して管理者研修を試行的に実施する自治体には、補助率10分の10の補助金を交付する。この試行研修の受講者は、2027年度以降「共同生活援助管理者研修(仮称)を修了した者」とみなされる予定だ。意欲のある自治体では、制度の本格適用前から研修受講の機会が生まれることになる。
経過措置:本格施行は2030年度
新たな資格要件は2027年4月から適用されるが、すべての管理者が即座に要件を満たす必要はない。研修の供給体制が整うまでの経過措置として、2027年度から2029年度中(2029年度末まで)に管理者研修を修了すればよいと整理された。そのうえで、2030年度(令和12年度)から本格施行となる。
実務経験についても、既存事業者に配慮した扱いが示された。2027年度より前に開設された共同生活援助で、施行時点で現に勤務している管理者については、3年以上の実務経験を求めない。一方、2027年度以降に新規開設されるグループホームの管理者には実務経験の経過措置はなく、開設時点で3年以上の実務経験が必要になる。新規参入する事業者ほど厳しい入口チェックを受ける設計で、「経験の乏しい事業者の安易な参入」を抑える意図が明確に表れている。
職員の研修受講も義務化:世話人・生活支援員ら直接処遇職員が対象
対象は世話人・生活支援員・夜間支援従事者ら「直接処遇職員」
管理者の資格要件とあわせて提案されたのが、現場職員への研修受講の義務化だ。共同生活援助の運営基準を改正し、世話人、生活支援員、夜間支援従事者など、障害者の支援に直接携わる職員(直接処遇職員)に対して、障害福祉に係る基礎的な研修を受講させるために必要な措置を講じることを、事業者に義務付ける。
現行制度では、共同生活援助の世話人や生活支援員に資格要件はなく、「障害者の福祉の増進に熱意があり、障害者の日常生活を適切に支援する能力を有する者」という抽象的な定めがあるのみだった。無資格・未経験でも働ける間口の広さはグループホームの人材確保を支えてきた一方、障害特性の理解や支援技術が職員任せ・事業所任せになっているという課題が指摘されてきた。
義務を負うのは事業者。職員個人ではない
今回の仕組みで義務を負うのは、職員個人ではなく事業者である点を押さえておきたい。事業者には「研修を受講させるために必要な措置を講じる」ことが求められる。シフト調整や受講時間の確保、受講機会の案内といった環境整備が事業者の責任となる構図で、介護保険の認知症グループホームにすでに設けられている同様の義務規定(指定基準で介護従業者への認知症介護基礎研修の受講措置を義務化)を参考にしたものだ。
受講者や自治体の負担が過度にならないよう、基礎研修はeラーニング方式での実施などが検討されていく。資料でも「受講対象となる人数が多いことを勘案し、なるべく自治体・受講者の負担にならない方法を検討してはどうか」と明記された。夜勤を含む変則勤務が多いグループホームの現場実態を踏まえると、時間や場所を選ばない受講方法の整備は、制度の実効性を左右するポイントになる。
参考とされた認知症グループホームの規定(指定地域密着型サービス基準省令第103条第3項)では、事業者は「介護従業者の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない」とされ、看護師・介護福祉士など医療・福祉関係の資格を持たない全ての介護従業者に認知症介護基礎研修を受講させる措置が義務付けられている。共同生活援助でも同じ発想で、資格の有無にかかわらず支援の最低限の知識基盤をそろえることが目指される。
施行スケジュールは2028年度を想定
厚労省が示した今後のスケジュールは次のとおりだ。
- 2026年度:研修教材、カリキュラムの開発
- 2027年度:運営基準の改正
- 2028年度:施行、研修開始(一定の経過措置期間を設ける)
管理者の資格要件(2027年4月適用・2030年度本格施行)とは1年ずれたスケジュールで進む。事業所としてはまず管理者要件への対応が先に来て、続いて全職員の研修体制の整備が求められる二段構えとなる。
背景:8年で倍増したグループホームと「質」の課題
事業所数は8年でほぼ倍増、営利法人がけん引
今回の運営基準厳格化の背景には、共同生活援助の急拡大がある。障害者部会の資料(国保連データ)によると、共同生活援助の事業所数は2016年度の7,342事業所から2024年度には14,438事業所へと、8年間でほぼ2倍に増えた。増加分の多くを営利法人の参入が占めており、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービスと並んで「営利法人が運営する事業所数が急増しているサービス類型」と位置付けられている。
選択肢の拡大という意味では歓迎すべき動きだが、質の面では危うさも露呈した。2022年6月の障害者部会報告書(障害者総合支援法改正法施行後3年の見直し)は、「障害福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の参入が多く見受けられ、障害特性や障害程度を踏まえた支援が適切に提供されないといった支援の質の低下が懸念される」と明記している。
行政処分は営利法人に集中
懸念は数字にも表れている。2024年度に行政処分を受けた障害福祉サービス等事業所は262件で、うち202件が営利法人だった。共同生活援助に限っても2024年度の処分数は61件にのぼり、うち59件が営利法人運営の事業所だ。障害者グループホーム大手による大規模な経済的虐待・不正請求事案(株式会社恵の事案)が広範囲の利用者に影響を及ぼしたことも、規制強化の流れを決定づけた。
一方で、都道府県等による運営指導(実地指導)の実施率は全国平均16.5%、共同生活援助では18.6%(2024年度)にとどまる。指針ではおおむね3年に1回の実施が求められており、チェック体制そのものの強化も急務とされてきた。今回の障害者部会では、営利法人の事業所が急増しているサービス類型(共同生活援助、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービス)について、運営指導を3年に1回(実施率約33%)以上の頻度で重点的に行う方針も示されている。
ガイドライン策定から総量規制まで、連続する質確保策
今回の管理者要件・研修義務化は、単発の施策ではない。布石は数年前から打たれてきた。2023年12月の障害福祉サービス等報酬改定検討チームがまとめた「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性」では、グループホームの支援に関するガイドラインの策定や、管理者・従業者等に対する資格要件や研修の導入を検討することがすでに明記されていた。これを受けて厚労省は2026年2月、共同生活援助で守られるべき最低限の基準を示した「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」を策定し、自治体に通知した。今回の障害者部会では、営利法人急増類型への運営指導を3年に1回以上に重点化する方針や、障害福祉分野初となる運営指導・監査マニュアルの整備も示されている。
さらに2027年4月からは、共同生活援助がいわゆる総量規制(障害福祉計画のサービス見込量を超える場合に自治体が指定を拒否できる仕組み)の対象に新たに加わる。「入口(指定・参入)」「中身(人材の質)」「チェック(指導・監査)」の三方向から、グループホームの質を立て直す政策パッケージが出そろった形だ。
障害福祉GHで働く人・転職者への影響を読み解く
管理者を目指す人:「実務3年+研修」が標準キャリアパスになる
障害福祉グループホームで働く人にとって、今回の改正は「管理者への道筋が制度として明文化される」という意味を持つ。これまで共同生活援助の管理者は資格要件がなく、極端に言えば業界未経験者でも就任できた。2027年4月以降は、障害福祉の現場で3年以上支援に従事し、都道府県等の管理者研修を修了するという明確なステップが標準になる。
これは現場で経験を積んできた世話人や生活支援員にとって追い風だ。新規開設のグループホームは開設時点で実務経験3年以上の管理者を確保しなければならず、要件を満たす人材の希少価値は確実に上がる。管理者候補としての採用や登用の場面で、「支援業務に実際に従事した3年」という経歴が交渉材料になる。管理者研修が2026年度から一部自治体で試行される点も見逃せない。早期に受講すれば2027年度以降の修了者とみなされるため、キャリアアップを考えている人は自分の自治体の動向を確認しておきたい。
現場職員:基礎研修の受講が「当たり前」になる
直接処遇職員への研修義務化は、無資格・未経験で入職した職員にとって学びの機会が制度的に保障されることを意味する。これまで研修体制は事業所の姿勢次第で大きな差があったが、2028年度以降は研修機会の提供が事業者の義務になる。受講は業務の一環として扱われるべきもので、シフトの確保や受講環境の整備を事業者に求めやすくなる。
介護保険分野では、認知症介護基礎研修の義務化が無資格者の学習機会を広げた実績がある。障害福祉でも同様に、基礎研修が「障害特性の理解」という共通言語を現場にもたらせば、経験の浅い職員ほど恩恵は大きい。研修修了歴は転職時にも持ち運べる客観的な実績になる。
転職者:事業所選びの新しいモノサシができる
障害福祉グループホームへの転職を考えている人にとって、今回の改正は事業所の質を見極めるモノサシにもなる。面接や見学の際に「管理者はどんな実務経験を持っているか」「職員研修の体制はどうなっているか」を尋ねれば、新基準への対応状況から事業所の本気度が透けて見える。2027年度以降に開設される事業所は経験3年以上の管理者が必ずいる一方、駆け込みで開設された事業所には経過措置で実務経験を問われない管理者が残る可能性もある。求人票の開設年度にも注目したい。
研修義務化は短期的には事業所のコスト・シフト負担を増やすが、研修体制を整えられない事業者は淘汰の対象になっていく。質の確保策と総量規制が同時に進む今後数年は、「数の拡大」から「質の競争」へ業界の重心が移る転換期だ。働く側は、その変化を味方につけるポジションを取れる。
介護保険の認知症グループホームとの違いと共通点
「グループホーム」でも制度はまったく別
同じ「グループホーム」という呼び名でも、今回の対象である共同生活援助と、介護保険の認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は根拠法も対象者も異なる別制度だ。共同生活援助は障害者総合支援法に基づき障害のある人が対象、認知症グループホームは介護保険法に基づき認知症の高齢者が対象となる。転職市場でも両者は求人カテゴリーが分かれており、混同しないよう注意が必要だ。
認知症グループホームのスキームを参考に設計
今回の管理者要件は、すでに資格要件が存在する認知症グループホームの仕組みを参考に設計された。認知症グループホームの管理者は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、指定認知症対応型共同生活介護事業所等の従業者または訪問介護員等として「3年以上認知症である者の介護に従事した経験」を持ち、かつ「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了していることが求められる。
共同生活援助の新要件は、この「実務経験3年+指定研修修了」という骨格をそのまま踏襲している。職員研修の義務化も同様で、認知症グループホームでは介護に直接携わる無資格の職員に認知症介護基礎研修を受講させる措置が運営基準で義務付けられており、今回の直接処遇職員向け基礎研修はその障害福祉版といえる。
制度の横並びが進む意味
介護保険と障害福祉は、処遇改善加算の仕組みなどでも相互参照しながら制度設計が進んできた。今回の横並びで注目したいのは、人材要件の互換性だ。共同生活援助の管理者要件の実務経験は「障害者の支援等への従事」が対象であり、介護保険側の経験がそのまま算入されるわけではない。介護分野から障害福祉グループホームの管理者を目指す場合は、障害福祉サービス事業所等での実務経験を3年積む必要がある点に留意したい。
逆に言えば、障害福祉の現場経験は今後、管理者要件という形で制度上の価値を持つ。介護と障害福祉の両分野を経験してきた人材にとっては、どちらの分野でどのキャリアを伸ばすかを考えるうえで、要件の中身を正確に知っておくことが武器になる。
参考文献・出典
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まとめ
厚生労働省は2026年6月5日の社会保障審議会・障害者部会で、障害福祉のグループホーム(共同生活援助)の運営基準を厳格化する方針を示し、大筋で了承された。柱は2つ。管理者には2027年4月から「障害福祉サービス事業所等での3年以上の実務経験」と「共同生活援助管理者研修(仮称)の修了」が資格要件として課され、経過措置を経て2030年度に本格施行される。世話人・生活支援員・夜間支援従事者ら直接処遇職員には、基礎的な研修を受講させる措置が事業者の義務となり、2028年度の施行が目指される。
今後のスケジュールを改めて整理すると、2026年度に一部自治体での管理者研修の試行と職員向け基礎研修の教材・カリキュラム開発、2027年4月に管理者の資格要件の適用開始(既存事業所の現任管理者には経過措置あり)と共同生活援助の総量規制の対象化、2027年度中に職員研修に関する運営基準の改正、2028年度に職員研修義務の施行・研修開始、そして2030年度に管理者要件の本格施行という流れになる。研修の実施方法や受講手続きの詳細は、今後の告示・通知や各都道府県の実施要綱で具体化されていくため、勤務先・居住地の自治体が出す研修案内も定期的に確認しておきたい。制度の節目ごとに、本サイトでも続報を取り上げていく。
事業所数が8年で約2倍に膨らみ、行政処分が営利法人に集中する中で打ち出された今回の改正は、グループホーム業界が「数の拡大」から「質の競争」へ移る転換点だ。現場で支援経験を積んできた人にとっては、その経験が管理者要件という制度上の価値を持つようになり、研修受講の機会も保障されていく。障害福祉グループホームで働く人、これから飛び込もうとする人は、自分のキャリアの棚卸しと自治体の研修動向のチェックを始めておきたい。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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