
看護小規模多機能型居宅介護とは
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは、訪問看護と小規模多機能(通い・訪問・泊まり)を一体的に提供する地域密着型サービスです。2012年創設、医療依存度の高い在宅療養者を24時間365日支える仕組み、訪問看護との違い、看護師・介護職の役割、転職時のポイントを解説します。
この記事のポイント
看護小規模多機能型居宅介護(看多機・かんたき)とは、介護保険法第8条第23項に基づく地域密着型サービスで、「通い」「訪問介護」「訪問看護」「泊まり」の4機能を1つの事業所が一体的に提供する仕組みです。2012年に「複合型サービス」として創設され、2015年に現行名称に改称。医療依存度の高い在宅療養者を24時間365日体制で支え、退院直後・看取り期・難病ケア・認知症の重度化など、訪問看護単独や小規模多機能では対応しきれないケースの受け皿となります。
目次
看多機の制度創設の背景と目的
看多機は2012年(平成24年)の介護保険法改正で創設されたサービスで、当初は「複合型サービス」と呼ばれていました。2015年に「看護小規模多機能型居宅介護」に名称変更され、地域包括ケアシステムを支える中核的な訪問系サービスとして位置づけられています。
創設の背景
厚生労働省と日本看護協会の資料によると、創設の背景には次の課題がありました。
- 医療依存度の高い在宅療養者の増加:胃ろう・吸引・在宅酸素・在宅中心静脈栄養など、医療処置が必要な利用者が在宅で療養するケースが急増。
- 従来の小規模多機能(小多機)の限界:小多機は介護中心で、医療処置の頻度が高い利用者は受け入れが困難だった。
- 訪問看護単独の限界:訪問看護のみでは1日数回程度の訪問が上限で、家族の介護負担を十分に軽減できなかった。
- 退院支援・看取りの場の不足:病院から在宅に戻る際の橋渡しと、人生の最終段階を自宅で過ごす選択肢を支える仕組みが必要だった。
目的
看多機は、訪問看護と小規模多機能を一体運営することで、「医療と介護を切れ目なく、同じスタッフが顔の見える関係で提供する」ことを目的としています。同一事業所内で看護師と介護職が情報を共有し、利用者の状態変化に即応できる点が最大の強みです。
看多機の4つのサービスと事業所数の動向
4つのサービス
- ① 通い(通所):日中、事業所に来て食事・入浴・機能訓練・レクリエーションを受ける。1日定員15人以下、登録定員29人以下。
- ② 訪問介護:自宅へ介護職が訪問し、身体介護・生活援助を提供。利用回数は包括報酬の範囲内で柔軟に設定できる。
- ③ 訪問看護:看護師が自宅へ訪問し、医療処置(褥瘡処置、点滴、吸引、カテーテル管理など)と健康管理を実施。主治医の訪問看護指示書に基づく。
- ④ 泊まり(短期宿泊):通いの利用者がそのまま宿泊できる。家族のレスパイトや夜間の医療処置対応に活用。定員9人以下。
事業所数の推移
厚生労働省「介護給付費等実態統計」によると、看多機の事業所数は次のように推移しています(年度末時点)。
- 2014年:120事業所
- 2018年:500事業所
- 2022年:900事業所超
- 2024年:1,000事業所超
増加傾向は続いていますが、訪問看護ステーション(約16,000事業所)や小規模多機能(約5,500事業所)と比べると依然として少なく、第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)でも整備促進が重点項目となっています。
看多機・訪問看護・小規模多機能の違い
看多機が他の在宅サービスとどう違うかを整理します。
| サービス | 提供機能 | 料金体系 | 主な対象 | 看護師配置 |
|---|---|---|---|---|
| 看多機 | 通い・訪問介護・訪問看護・泊まり(4機能) | 要介護度別の月額包括報酬 | 医療依存度の高い在宅療養者・看取り期 | 常勤換算2.5人以上(うち1人以上常勤) |
| 訪問看護ステーション | 訪問看護のみ | 1回ごとの出来高報酬 | 医療処置が必要な在宅療養者 | 常勤換算2.5人以上(管理者は保健師or看護師) |
| 小規模多機能(小多機) | 通い・訪問介護・泊まり(3機能) | 要介護度別の月額包括報酬 | 認知症・中重度の介護中心の利用者 | 常勤1人以上(看護職員) |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 訪問介護+訪問看護(連携型可) | 月額包括報酬 | 夜間も含む頻回訪問が必要な利用者 | 連携型は別事業所看護師でも可 |
看多機の最大の特徴は、「同じ事業所」「同じ顔ぶれ」のスタッフが、自宅でも事業所でも泊まりでも、看護と介護を一体提供する点です。利用者・家族にとっては1度の契約で4機能を使えるため、状態変化時の迅速な対応や情報共有のロスが少ない仕組みです。
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看多機で働く看護師・介護職にとっての特徴
看多機は転職市場でも近年注目度が上がっています。看護師・介護職それぞれの目線で特徴を整理します。
看護師にとっての特徴
- 医療処置の幅が広い:胃ろう・気管切開・在宅酸素・点滴管理・看取りなど、訪問看護ステーションよりも踏み込んだケアに関わる機会が多い。
- 介護職と密に連携:訪問看護ステーション勤務と異なり、同一事業所の介護職と日常的に情報共有できる。
- 夜勤・オンコール対応あり:泊まりサービス対応のため夜勤が組まれる事業所が多く、オンコール手当が支給される。
- 給与水準:日本看護協会調査によると、看多機所属看護師の平均給与は訪問看護ステーションと同程度〜やや高めの傾向。
介護職にとっての特徴
- 医療依存度の高い利用者を経験できる:医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)研修を受けた介護福祉士は、看護師の指示下で実施できる。
- 同じ利用者を多面的に支援:通いでも訪問でも泊まりでも、同じ利用者と関わるためアセスメント力が育つ。
- 看取りに関わる機会:在宅看取りに同行する経験ができ、ターミナルケアのスキルが磨かれる。
- キャリアパス:実務者研修・介護福祉士・喀痰吸引等研修・認知症介護実践者研修などのステップアップが評価されやすい。
看多機の利用開始までの流れ
- 要介護認定の確認:看多機は要介護1〜5の認定が必要(要支援は対象外)。未認定の場合は市町村窓口で要介護認定を申請する。
- 居住地の確認:地域密着型サービスのため、原則として事業所所在地の市町村に住民票がある人のみ利用可能。
- ケアマネジャーとの相談:従来のケアマネに看多機の利用を相談。看多機を利用する場合は看多機に所属する介護支援専門員(ケアマネ)に変更するのが原則。
- 事業所見学・面談:候補事業所を訪問し、サービス内容・スタッフ・建物の雰囲気を確認。
- 主治医との連携:主治医に看多機利用の旨を伝え、訪問看護指示書を発行してもらう。
- 契約・登録:事業所と利用契約を締結。看多機の登録定員は29人以下のため、空きがない場合は待機となる。
- ケアプラン作成・サービス開始:看多機ケアマネが利用者の状態と希望に応じてケアプランを作成。通い・訪問・泊まりの組み合わせを柔軟に調整しながらサービスを開始する。
利用料は要介護度別の月額包括報酬で、要介護1で約1.3万円〜要介護5で約3.5万円(1割負担の場合)。これに食費・宿泊費・日用品費などの実費が加算されます。
看多機に関するよくある質問
Q1. 看多機と看多機(かんたき)は同じ用語ですか?
はい、同じです。「看護小規模多機能型居宅介護」が正式名称で、「看多機(かんたき)」は読みやすさを重視した略称です。厚生労働省の介護保険最新情報や報酬告示でも「看多機」表記が併用されています。
Q2. 看多機と訪問看護を併用できますか?
原則として併用できません。看多機の月額包括報酬には訪問看護分が含まれているため、別途同一事業者以外の訪問看護ステーションを利用するとサービスが重複します。ただし、専門性の高い訪問看護(緩和ケア・精神科訪問看護など)は例外的に併用可能な場合があるため、ケアマネと主治医に確認してください。
Q3. 看多機は要支援でも使えますか?
使えません。看多機は要介護1〜5の認定者のみが対象で、要支援1・2の方は小規模多機能型居宅介護(介護予防小規模多機能)を利用することになります。
Q4. 看多機の人員基準(看護師・介護職)は?
厚生労働省の運営基準告示により、登録定員29人以下の事業所では次の配置が必要です。
- 看護職員:常勤換算2.5人以上(うち1人は保健師または看護師、1人以上は常勤)
- 介護職員:通い時の利用者対3人に1人以上、訪問時に1人以上
- 介護支援専門員(ケアマネ):1人以上(兼務可)
- 管理者:常勤専従(看護師・保健師または特養等での介護経験3年以上の介護福祉士)
Q5. 看多機の利用者像は?
厚生労働省「介護給付費等実態統計」によると、看多機利用者の平均要介護度は3.5〜3.7で、訪問介護や通所介護に比べて重度の利用者が多いのが特徴です。在宅看取りの場として活用されるケースも増えており、看取り対応加算の算定実績も伸びています。
参考資料・一次ソース
- 厚生労働省「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)について」(制度概要・運営基準告示)
- e-Gov 法令検索「介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第23項」(看多機の法的根拠)
- 公益社団法人 日本看護協会「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」(看護師視点の制度解説と政策提言)
- 公益社団法人 日本看護協会「"看多機"とは -創設の背景、制度の概要、サービスの動向-」(田母神裕美 常任理事資料)
- 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「看護小規模多機能型居宅介護とは」
- 厚生労働省「介護給付費等実態統計」(事業所数・利用者数の推移)
関連する詳しい解説
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まとめ
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、訪問看護と小規模多機能を一体運営することで、医療依存度の高い在宅療養者と看取り期の利用者を24時間365日支える地域密着型サービスです。事業所数はまだ全国で1,000台に過ぎませんが、第9期介護保険事業計画でも整備促進が重点課題に挙げられており、今後さらに増えていく見込みです。看護師・介護職にとっては「医療と介護の境目を越えてケアできる現場」として転職先候補にも入る価値が高く、特にターミナルケアや認知症の重度ケアに関心がある専門職にとってキャリアの選択肢の一つになります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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