
圧迫骨折とは
圧迫骨折は背骨(椎体)が縦方向に潰れる骨折で、骨粗鬆症の高齢者に多発。激しい腰背部痛・身長低下・円背を起こします。診断・保存療法・手術・在宅介護で看護師が押さえる観察ポイントを整理しました。
この記事のポイント
圧迫骨折とは、背骨を構成する椎体(円柱状の骨)が縦方向の力で押し潰されて変形する骨折です。骨粗鬆症で骨密度が低下した高齢者では、しりもち・くしゃみ・重い物を持ち上げるなどの軽微な外力でも発症し、第11胸椎〜第2腰椎(胸腰移行部)に好発します。激しい腰背部痛・寝返り困難・身長低下・円背(猫背)が代表的な症状で、保存療法(安静+コルセット)が中心ですが、痛みが遷延する場合は経皮的椎体形成術(BKP)が選択されます。
目次
圧迫骨折の発生機序と疫学
圧迫骨折は脊椎椎体骨折の一形態で、椎体に縦方向の圧迫力が加わったときに前壁・終板が潰れることで生じます。骨粗鬆症性圧迫骨折は世界共通の高齢者疾患で、日本骨粗鬆症学会のガイドラインでは80歳代女性の3〜4割が生涯のうちに椎体骨折を経験すると報告されています。
骨粗鬆症のある高齢者では、椎体海綿骨の骨密度が低下し、骨梁構造が脆弱化しているため、(1)転倒によるしりもち、(2)日常の屈曲動作(くしゃみ・咳・重い物を持つ)、(3)特に外力なく自然発生する「いつのまにか骨折」のいずれでも発症します。第11胸椎〜第2腰椎(胸腰移行部)は脊柱で最も力学的負担が集中する部位で、ここに圧迫骨折が好発します。
椎体が前方で潰れて後方は保たれる「楔状椎」が典型像で、複数椎体で生じると円背(後彎変形)が進行します。1椎体の圧迫骨折は次の椎体骨折リスクを5倍に増やす(連続発生)ため、初発時点で骨粗鬆症治療を開始することが二次骨折予防の核心です。
主な症状と所見
急性期(発症〜2週間)
- 突然の腰背部痛:寝返り・起き上がり・座位保持で増悪する強い痛み。
- 動作時痛:体動で激痛、安静時は軽減する「動作時誘発痛」が典型。
- 叩打痛:患部の棘突起を軽く叩くと激痛が走る(脊椎叩打痛)。
- 体動困難:寝たきりに近い状態となり、ADL低下が急速に進む。
慢性期(数週〜数か月)
- 身長低下:1椎体潰れるごとに2〜4cm低下する。
- 円背(後彎変形):胸椎後彎の進行で背中が丸くなる。
- 慢性腰背部痛:椎体の不安定性や椎間関節炎による持続痛。
- 食欲低下・呼吸機能低下:円背により胸腹腔が圧迫され、消化器症状や呼吸困難を起こす。
合併症(要警戒)
- 遅発性麻痺:椎体偽関節(治癒不全)が進むと、骨片が脊柱管に突出し下肢麻痺・膀胱直腸障害を起こす。発症時は緊急手術の対象。
- 廃用症候群:長期臥床で筋力・心肺機能・認知機能が急速低下し、寝たきりに直結する。
診断と治療の流れ
- 問診と身体診察:転倒の有無・痛みの誘発動作・脊椎叩打痛を確認。
- X線検査:椎体高の低下(前縁高/後縁高比)、楔状変形を確認。新鮮骨折ではX線で見落とされることがある。
- MRI:骨折が新鮮(活動性)か陳旧性かを鑑別する決定的検査。T1低信号・T2/STIR高信号で新鮮骨折と判断。
- CT:椎体後壁の破綻や脊柱管への骨片突出を評価し、手術適応を判断。
- 骨密度測定(DXA):腰椎・大腿骨頸部を測定し、骨粗鬆症の重症度を評価。
保存療法(第一選択)
- 安静(床上安静2週間以内が原則。長期臥床は廃用症候群を招く)
- 体幹装具(ジュエット型・ダーメン型コルセット)で2〜3か月固定
- 疼痛管理(NSAIDs・アセトアミノフェン・神経ブロック)
- 骨粗鬆症治療薬の即時開始(活性型ビタミンD・ビスホスホネート・テリパラチド・ロモソズマブ等)
- 段階的なリハビリテーション(離床→座位→立位→歩行)
手術療法(保存療法で改善しない場合)
- BKP(経皮的椎体形成術/バルーン椎体形成術):潰れた椎体にバルーンで空間を作り、骨セメントを注入して安定化。低侵襲で翌日から離床可能。
- 後方固定術:神経症状を伴う遅発性麻痺・椎体偽関節で行う。
在宅介護で看護師・介護職が押さえる観察ポイント
- 動作時痛の悪化を見逃さない:保存療法中に痛みが急増した場合、椎体偽関節や次の椎体骨折を疑う。整形外科への速やかな受診調整が必要。
- 下肢のしびれ・脱力・排尿障害は緊急サイン:遅発性麻痺の前兆で、24時間以内の救急受診が望ましい。
- コルセット装着の指導:起床時から装着・就寝時に外す。皮膚障害(圧迫部の発赤・水疱)を毎日確認。
- 体位変換とADL援助:寝返り時は丸太状(ログロール)に体を一塊で動かす。座位・立位は本人主導でゆっくり、装具をつけた状態で行う。
- 転倒予防環境を再点検:浴室の手すり・ベッド柵・段差解消を介護保険の住宅改修や福祉用具で整備。次の骨折を防ぐ最重要対策。
- 栄養と日光:たんぱく質・カルシウム・ビタミンD(魚・きのこ)を意識した食事と1日15分程度の日光暴露で骨形成を支援。
- 多職種連携:訪問診療医・整形外科医・理学療法士・ケアマネで情報共有し、骨粗鬆症治療と廃用予防を並行。看護師は服薬管理(特にビスホスホネート系の起床直後内服)の確認役を担う。
よくある質問
Q. 圧迫骨折の安静期間はどのくらいですか?
A. 床上安静は原則2週間以内、その後コルセット固定下で離床・歩行を開始します。コルセット装着期間は通常2〜3か月。長期臥床は廃用症候群を招くため、痛みが許す範囲で早期離床が原則です。
Q. 保存療法で完治しますか?
A. 60〜70%は保存療法で骨癒合が得られますが、20〜30%は椎体偽関節(治癒不全)となり持続痛・遅発性麻痺を起こします。痛みが3か月以上続く場合や、MRIで偽関節が確認されたらBKPなどの手術を検討します。
Q. 在宅介護で必要な福祉用具は?
A. 介護用ベッド(背上げ機能で起き上がり負担を軽減)、立ち上がり手すり、ポータブルトイレ、シャワーチェア、歩行器・歩行補助つえなど。要介護認定が出れば、これらは介護保険の福祉用具貸与・購入や住宅改修で整備できます。
Q. 骨粗鬆症治療薬は必須ですか?
A. 必須です。圧迫骨折は次の椎体骨折を5倍、大腿骨近位部骨折リスクを2〜3倍に増やすため、骨粗鬆症の薬物治療を開始しないと連続骨折を招きます。日本骨粗鬆症学会ガイドラインでは、椎体骨折の既往があれば即治療開始を推奨しています。
Q. 圧迫骨折のリハビリで気をつけることは?
A. 体幹屈曲(前かがみ)動作は次の骨折を誘発するため避けます。代わりに体幹伸展筋(脊柱起立筋)を鍛える背筋訓練、バランス訓練、軽いウォーキングを段階的に取り入れます。理学療法士の指導のもと、痛みのない範囲で行うのが基本です。
まとめ
圧迫骨折は骨粗鬆症の高齢者に多発する椎体骨折で、軽微な外力でも発症し、激しい腰背部痛・身長低下・円背を起こします。保存療法(コルセット+安静)が中心ですが、痛みの遷延や偽関節ではBKPなどの手術が選択されます。次の椎体骨折リスクを下げるため、初発時点で骨粗鬆症治療薬を開始することが核心です。在宅介護では転倒予防環境の整備と廃用症候群の予防が最優先課題で、介護保険の福祉用具・住宅改修を組み合わせ、看護師・理学療法士・ケアマネが多職種で支える体制を作りましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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