
特定技能「介護」都道府県別の浸透度ランキング【独自試算】
介護分野の特定技能1号6万7,871人を、都道府県の介護職員数で割って「浸透度」を独自試算。全国平均は介護職員1,000人あたり31.4人。1位の岐阜と47位の岩手では5.8倍の差があり、求人倍率が全国突出の東京は24位にとどまります。受け入れを検討する施設向けに、自県の位置づけと採用競争の読み方を解説。
この記事のポイント
介護分野で働く特定技能1号の外国人は全国で6万7,871人(2025年12月末)。これを各都道府県の介護職員数で割ると、全国平均は介護職員1,000人あたり31.4人です。当サイトの試算では1位が岐阜県(50.5人)、47位が岩手県(8.7人)で、その差は5.8倍。有効求人倍率が7.65倍と全国で突出して高い東京都は、浸透度では24位と全国平均を下回ります。人手不足の深刻さと外国人材の浸透度は、必ずしも一致しません。
目次
外国人介護人材の受け入れを検討するとき、「うちの地域ではまだ珍しいのではないか」「近隣の施設はもう入れているのだろうか」という感覚的な不安が先に立ちます。全国の受け入れ人数は毎年公表されていますが、実数だけを見ても自分の施設が置かれた状況はわかりません。人口も介護職員数も違う都道府県を、人数の多さだけで並べても比較にならないからです。
そこで当サイトでは、出入国在留管理庁が公表する都道府県別・分野別の特定技能1号在留外国人数を、各都道府県の介護職員数で割り、「介護職員1,000人あたり何人が特定技能の外国人材か」という浸透度の指標を47都道府県分算出しました。実数ランキングでは常に上位に並ぶ大都市圏の顔ぶれが、この指標では大きく入れ替わります。
この記事では、浸透度ランキングの全47都道府県を公開したうえで、人手不足の深刻さと浸透度がどこまで連動しているのか、そして自施設の地域がどのタイプに当てはまるのかを整理します。制度そのものの要件や手続きの流れについては、特定技能「介護」受け入れの流れと外国人介護人材の受け入れガイドで解説しています。
全国の前提:介護分野の特定技能は1年で1.5倍になった
まず全体像を押さえます。出入国在留管理庁の公表値によれば、介護分野で働く特定技能1号の在留外国人数は次のように推移しています。
| 時点 | 介護分野の特定技能1号 | 特定技能1号 全分野計 | 介護の構成比 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月末 | 44,367人 | 283,634人 | 15.6% |
| 2025年12月末 | 67,871人 | 382,341人 | 17.8% |
| 増減 | +23,504人(+53.0%) | +98,707人(+34.8%) | +2.2ポイント |
1年で2万3,504人、率にして53.0%増えています。特定技能1号全体の伸び(34.8%増)を大きく上回っており、16の特定産業分野のなかで介護は飲食料品製造業(9万3,393人)に次ぐ第2位の規模です。
この伸びの速さは、受け入れる施設側から見ると2つの意味を持ちます。1つは、制度が例外的な選択肢ではなくなりつつあるということ。もう1つは、外国人材の採用が施設間の競争になりつつあるということです。とくに後者は地域によって様相がまったく異なります。次章の独自試算がその差を示します。
【独自試算】特定技能「介護」浸透度 47都道府県ランキング
出入国在留管理庁が公表する都道府県別・特定産業分野別の特定技能1号在留外国人数(2025年12月末)から介護分野を抜き出し、各都道府県の介護職員数(2022年度実績)で割った「介護職員1,000人あたりの特定技能介護人材数」で並べたものです。全国平均は31.4人(介護職員215万4,538人に対し6万7,746人)。数値は当サイトが公的データから独自に算出しました。
| 順位 | 都道府県 | 浸透度 (職員1,000人あたり) | 特定技能介護 2025年12月末 | 前年 2024年12月末 | 1年の伸び率 | 介護職員数 (2022年度) | 有効求人倍率 (2025年3月) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 岐阜県 | 50.5人 | 1,703人 | 1,070人 | +59.2% | 33,739人 | 4.63倍 |
| 2 | 愛知県 | 45.6人 | 4,780人 | 2,956人 | +61.7% | 104,845人 | 4.68倍 |
| 3 | 埼玉県 | 44.8人 | 4,427人 | 2,786人 | +58.9% | 98,862人 | 4.62倍 |
| 4 | 沖縄県 | 42.8人 | 922人 | 635人 | +45.2% | 21,518人 | 2.82倍 |
| 5 | 佐賀県 | 41.6人 | 654人 | 476人 | +37.4% | 15,717人 | 3.17倍 |
| 6 | 茨城県 | 39.7人 | 1,728人 | 1,160人 | +49.0% | 43,548人 | 4.21倍 |
| 7 | 熊本県 | 39.6人 | 1,279人 | 849人 | +50.6% | 32,297人 | 3.02倍 |
| 8 | 滋賀県 | 37.4人 | 769人 | 455人 | +69.0% | 20,549人 | 3.16倍 |
| 9 | 神奈川県 | 37.0人 | 5,361人 | 3,648人 | +47.0% | 145,016人 | 4.10倍 |
| 10 | 千葉県 | 36.5人 | 3,249人 | 1,990人 | +63.3% | 88,960人 | 4.13倍 |
| 11 | 群馬県 | 36.3人 | 1,396人 | 947人 | +47.4% | 38,481人 | 3.22倍 |
| 12 | 山梨県 | 36.0人 | 506人 | 298人 | +69.8% | 14,072人 | 3.37倍 |
| 13 | 北海道 | 34.7人 | 3,489人 | 2,396人 | +45.6% | 100,523人 | 3.11倍 |
| 14 | 京都府 | 34.4人 | 1,469人 | 1,018人 | +44.3% | 42,668人 | 3.82倍 |
| 15 | 兵庫県 | 34.4人 | 3,327人 | 2,197人 | +51.4% | 96,748人 | 3.95倍 |
| 16 | 奈良県 | 34.3人 | 921人 | 548人 | +68.1% | 26,840人 | 5.25倍 |
| 17 | 三重県 | 34.1人 | 1,112人 | 718人 | +54.9% | 32,584人 | 4.05倍 |
| 18 | 大阪府 | 33.2人 | 6,446人 | 4,385人 | +47.0% | 193,974人 | 4.51倍 |
| 19 | 福岡県 | 31.7人 | 2,728人 | 1,728人 | +57.9% | 86,049人 | 3.54倍 |
| 20 | 香川県 | 31.0人 | 569人 | 373人 | +52.5% | 18,359人 | 3.78倍 |
| 21 | 鹿児島県 | 30.4人 | 1,007人 | 620人 | +62.4% | 33,149人 | 2.71倍 |
| 22 | 静岡県 | 29.5人 | 1,637人 | 1,068人 | +53.3% | 55,567人 | 3.75倍 |
| 23 | 富山県 | 29.2人 | 565人 | 415人 | +36.1% | 19,325人 | 4.13倍 |
| 24 | 東京都 | 29.2人 | 5,312人 | 3,468人 | +53.2% | 181,690人 | 7.65倍 |
| 25 | 石川県 | 28.8人 | 575人 | 335人 | +71.6% | 19,931人 | 4.22倍 |
| 26 | 宮崎県 | 28.7人 | 635人 | 427人 | +48.7% | 22,101人 | 3.09倍 |
| 27 | 栃木県 | 28.2人 | 764人 | 526人 | +45.2% | 27,057人 | 3.92倍 |
| 28 | 広島県 | 28.1人 | 1,495人 | 955人 | +56.5% | 53,239人 | 3.41倍 |
| 29 | 愛媛県 | 27.5人 | 870人 | 643人 | +35.3% | 31,692人 | 4.46倍 |
| 30 | 大分県 | 26.9人 | 624人 | 367人 | +70.0% | 23,194人 | 3.34倍 |
| 31 | 福井県 | 25.9人 | 354人 | 250人 | +41.6% | 13,693人 | 3.28倍 |
| 32 | 徳島県 | 25.7人 | 390人 | 265人 | +47.2% | 15,170人 | 3.01倍 |
| 33 | 岡山県 | 25.3人 | 914人 | 611人 | +49.6% | 36,179人 | 4.10倍 |
| 34 | 山口県 | 24.2人 | 680人 | 462人 | +47.2% | 28,124人 | 3.14倍 |
| 35 | 和歌山県 | 20.9人 | 502人 | 254人 | +97.6% | 23,992人 | 3.49倍 |
| 36 | 長野県 | 19.9人 | 758人 | 507人 | +49.5% | 38,095人 | 2.76倍 |
| 37 | 鳥取県 | 19.2人 | 207人 | 101人 | +105.0% | 10,802人 | 2.85倍 |
| 38 | 長崎県 | 18.2人 | 521人 | 321人 | +62.3% | 28,599人 | 2.67倍 |
| 39 | 宮城県 | 18.1人 | 635人 | 430人 | +47.7% | 35,059人 | 3.79倍 |
| 40 | 島根県 | 15.2人 | 259人 | 187人 | +38.5% | 17,077人 | 2.96倍 |
| 41 | 福島県 | 15.1人 | 505人 | 301人 | +67.8% | 33,401人 | 2.96倍 |
| 42 | 高知県 | 15.0人 | 210人 | 143人 | +46.9% | 13,967人 | 2.28倍 |
| 43 | 山形県 | 15.0人 | 313人 | 253人 | +23.7% | 20,856人 | 2.57倍 |
| 44 | 青森県 | 11.9人 | 333人 | 218人 | +52.8% | 28,091人 | 3.34倍 |
| 45 | 秋田県 | 10.3人 | 236人 | 131人 | +80.2% | 22,878人 | 2.27倍 |
| 46 | 新潟県 | 9.5人 | 397人 | 236人 | +68.2% | 41,795人 | 3.35倍 |
| 47 | 岩手県 | 8.7人 | 213人 | 153人 | +39.2% | 24,466人 | 2.14倍 |
浸透度が最も高いのは岐阜県の50.5人、最も低いのは岩手県の8.7人で、その差は5.8倍あります。実数で見た上位は大阪府(6,446人)、神奈川県(5,361人)、東京都(5,312人)と大都市圏が並びますが、介護職員数で割ると岐阜県・佐賀県・沖縄県・熊本県・滋賀県といった県が上位に食い込み、顔ぶれが入れ替わります。
実数ランキングと浸透度ランキングはなぜ食い違うのか
実数は「県の大きさ」をそのまま反映してしまう
特定技能の受け入れ人数を都道府県別に並べると、上位は大阪府・神奈川県・東京都・愛知県・埼玉県となります。しかしこれは、その県に介護職員が何人いるかを無視した数字です。大阪府の介護職員は19万3,974人、岩手県は2万4,466人で8倍近い開きがあります。母数が8倍違うものを実数で比べても、受け入れがどれだけ一般的になっているかはわかりません。
浸透度で見ると「地方の先行県」が現れる
介護職員1,000人あたりに直すと、上位10県のうち岐阜県・沖縄県・佐賀県・熊本県・滋賀県・茨城県の6県は、実数では全国20位以下です。とくに佐賀県は実数654人で全国38位ですが、介護職員が1万5,717人と少ないため浸透度では5位に入ります。佐賀県の介護現場では、職員24人に1人が特定技能の外国人という計算になります。
数値の読み方に関する注意
この試算にはいくつか前提があります。分子の特定技能1号在留外国人数は在留カード上の住居地に基づく集計であり、勤務先の所在地とは必ずしも一致しません。居住地と勤務地が県境をまたぐ都市圏では、実際の就労先の分布とずれが生じます。
また分母の介護職員数は2022年度の実績値で、分子の2025年12月末とは時点が異なります。介護職員数はこの間も緩やかに増えているため、実際の浸透度は本試算よりやや低くなる可能性があります。県ごとの相対的な位置づけを見る指標として使い、絶対値は目安として扱ってください。
なお本試算は特定技能1号のみを対象としています。技能実習・育成就労・EPA・在留資格「介護」で働く外国人材は含みません。在留資格ごとの違いは特定技能(介護分野)とはで整理しています。
人手不足が深刻な県ほど外国人材が浸透しているのか
相関はあるが、それほど強くない
「人手が足りない地域ほど外国人材に頼っているはずだ」という予想は、部分的にしか当たりません。当サイトが47都道府県の浸透度と各指標の相関係数を算出したところ、次の結果になりました。
| 組み合わせ | 相関係数 | 解釈 |
|---|---|---|
| 浸透度 × 有効求人倍率(2025年3月) | +0.45 | 中程度の正の相関 |
| 浸透度 × 2026年度の介護職員不足率 | +0.42 | 中程度の正の相関 |
| 浸透度 × 直近1年の伸び率 | -0.08 | ほぼ無相関 |
求人倍率との相関は+0.45で、たしかに人手不足が厳しい県ほど浸透度は高い傾向があります。ただし相関係数0.45は「傾向としては言えるが、例外が相当数ある」水準です。人手不足だけで浸透度は決まりません。
最大の例外は東京都
東京都の介護職の有効求人倍率は7.65倍で、2位の奈良県(5.25倍)を大きく引き離す全国最高値です。求職者1人に対して7件以上の求人があり、人材確保の難しさは全国で最も深刻といえます。ところが浸透度は29.2人で全国24位、全国平均の31.4人をわずかに下回ります。
背景として考えられるのは住居費の負担です。特定技能では受け入れ機関に住居確保の支援が義務づけられており、家賃相場の高い東京都では1人あたりの受け入れコストが地方より重くなります。人手不足が最も深刻な地域が、必ずしも外国人材の受け入れで先行しているわけではないという点は、採用戦略を考えるうえで重要です。
逆方向の例外もある
沖縄県は有効求人倍率2.82倍と全国平均を下回りますが、浸透度は42.8人で4位です。佐賀県(求人倍率3.17倍で浸透度5位)、熊本県(3.02倍で7位)も同様の傾向を示します。求人倍率だけでは説明できないこれらの県には、送り出し国との地理的・歴史的なつながりや、地域の法人が組合を組んで受け入れを主導してきた経緯といった、統計に表れにくい要因が働いていると考えられます。
どの国から来ているか:介護は「ベトナム頼み」ではない
受け入れを検討するとき、どの国の人材を想定するかで、提携する送り出し機関も採用ルートも変わります。出入国在留管理庁の国籍・地域別データから介護分野を抜き出し、当サイトで2つの指標を算出しました。1つは介護分野に占めるシェア、もう1つは「その国の特定技能1号のうち何割が介護分野で働いているか」を示す介護特化度です。
| 国籍・地域 | 介護分野 2025年12月末 | 介護分野内 シェア | 介護特化度 (同国の全分野に占める介護の割合) | 前年 | 1年の伸び率 |
|---|---|---|---|---|---|
| インドネシア | 21,139人 | 31.1% | 24.4% | 12,242人 | +72.7% |
| ミャンマー | 19,803人 | 29.2% | 44.7% | 11,717人 | +69.0% |
| ベトナム | 10,401人 | 15.3% | 6.6% | 8,910人 | +16.7% |
| ネパール | 6,013人 | 8.9% | 49.0% | 3,602人 | +66.9% |
| フィリピン | 5,704人 | 8.4% | 16.1% | 4,538人 | +25.7% |
| 中国 | 1,340人 | 2.0% | 6.3% | 1,103人 | +21.5% |
| スリランカ | 1,321人 | 1.9% | 33.2% | 638人 | +107.1% |
| モンゴル | 440人 | 0.6% | 35.5% | 442人 | -0.5% |
ベトナムは特定技能全体の最大勢力だが、介護では3位
特定技能1号を全16分野の合計で見ると、ベトナムが最大の送り出し国です。ところが介護分野に限ると1万401人で3位にとどまり、介護特化度はわずか6.6%です。日本にいるベトナム人特定技能者の9割以上は、製造業をはじめとする介護以外の分野で働いています。外国人材といえばベトナムという先入観で採用計画を立てると、実際の人材プールとずれます。
介護の主力はインドネシアとミャンマー
この2か国で介護分野の60.3%を占めます。とくにミャンマーは介護特化度44.7%、ネパールは49.0%で、来日者のおよそ半数が介護分野で働いています。これらの国は日本の介護分野への送り出しに軸足を置いており、介護人材を確保するうえでの中心的な供給元になっています。
伸び率の差は今後の構成を変える
インドネシア(+72.7%)とミャンマー(+69.0%)が高い伸びを示す一方、ベトナムは+16.7%と鈍化しています。スリランカは+107.1%と倍増しましたが、実数は1,321人と限られます。モンゴルは唯一の減少(-0.5%)でした。国籍構成はこの1年で明確に動いており、数年前の情報をもとにした採用計画は前提が変わっている可能性があります。
伸び率で見る「これから動く県」
浸透度が現在の到達点を示すのに対し、直近1年の伸び率は勢いを示します。両者の相関はほぼゼロ(-0.08)で、浸透度の高い県が引き続き速く伸びているわけでも、低い県が一律に追い上げているわけでもありません。伸び率の上位と下位は次のとおりです。
| 区分 | 都道府県 | 1年の伸び率 | 2025年12月末 | 2024年12月末 | 浸透度順位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 伸び率 上位 | 鳥取県 | +105.0% | 207人 | 101人 | 37位 |
| 和歌山県 | +97.6% | 502人 | 254人 | 35位 | |
| 秋田県 | +80.2% | 236人 | 131人 | 45位 | |
| 石川県 | +71.6% | 575人 | 335人 | 25位 | |
| 大分県 | +70.0% | 624人 | 367人 | 30位 | |
| 伸び率 下位 | 山形県 | +23.7% | 313人 | 253人 | 43位 |
| 愛媛県 | +35.3% | 870人 | 643人 | 29位 | |
| 富山県 | +36.1% | 565人 | 415人 | 23位 | |
| 佐賀県 | +37.4% | 654人 | 476人 | 5位 | |
| 島根県 | +38.5% | 259人 | 187人 | 40位 |
伸び率の上位には、鳥取県・秋田県のように母数が小さい県が入ります。100人が200人になれば+100%になるため、率だけを見て「急拡大している市場」と解釈するのは危険です。ただし絶対数が小さい県で伸び率が跳ねているという事実は、その地域で受け入れを始める法人が実際に増え始めたことを意味します。
注目すべきは佐賀県です。浸透度は全国5位と高い水準にありながら、伸び率は+37.4%で全国下位です。先行して受け入れてきた地域が一巡し、増加ペースが落ち着き始めた可能性があります。反対に秋田県は浸透度45位・伸び率3位で、これから立ち上がる局面にあると読めます。
人ベースと事業所ベースのずれ:受け入れは「一部の施設」に集中している
ここまでは人数を基準にした話でした。しかし施設側から見て本当に知りたいのは「近隣の何割の事業所が受け入れているか」です。この2つは同じではありません。
介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査(有効回答8,978事業所)によれば、介護の仕事を業務とする外国籍労働者の受け入れ状況は次のとおりです。
| 受け入れている在留資格等(複数回答) | 令和6年度 | 令和5年度 |
|---|---|---|
| 在留資格「介護」 | 7.6% | 6.9% |
| 在留資格「特定技能1号」 | 7.6% | 6.0% |
| 技能実習生 | 5.2% | 4.8% |
| 留学生 | 2.0% | 1.4% |
| EPA(経済連携協定)による受け入れ | 1.0% | 1.0% |
| いずれかを受け入れている事業所 | 15.8% | 13.4% |
| いずれも受け入れていない | 78.8% | 82.5% |
受け入れ施設は「まとめて雇っている」
ここに重要な含意があります。人ベースで見ると、介護職員1,000人あたり31.4人、つまり介護職員のおよそ3.1%が特定技能1号の外国人です。ところが事業所ベースでは、特定技能1号を受け入れている事業所は7.6%にすぎません。受け入れている事業所の割合のほうが、職員に占める比率より高いという関係になっています。
これは、受け入れが薄く広がっているのではなく、受け入れを始めた施設が複数人をまとめて雇用する形で進んでいることを示します。特定技能では常勤介護職員の総数を超えない範囲で受け入れられるため、体制を一度整えた施設が継続的に人数を増やしていく構造になりやすいのです。
「まだ2割弱」なのか「もう2割弱」なのか
受け入れている事業所は15.8%で、8割近くはまだ受け入れていません。この数字は「まだ一般的ではない」とも「6事業所に1つは既に始めている」とも読めます。前年からの上昇幅が2.4ポイントである点を踏まえると、後者の解釈のほうが実態に近いと考えられます。
受け入れている施設が挙げる課題
同調査では、受け入れの課題として「利用者や他の従業員との意思疎通(日本語能力及びコミュニケーション)が難しい」が36.5%で最も高く、次いで「受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難」が23.6%、「外国籍労働者の仕事上のサポート役の負担が大きい」が22.4%となっています。
2位の住宅確保は、浸透度ランキングで東京都が24位にとどまる背景とも符合します。制度上の要件を満たすことと、住居と教育とサポート体制を実際に用意できることは別の問題であり、後者の負担は地域によって大きく変わります。
自施設の地域はどのタイプか:浸透度×伸び率の4分類
浸透度(現在の到達点)と伸び率(勢い)を組み合わせると、都道府県は4つのタイプに分かれます。自県がどこに当てはまるかで、受け入れ判断の論点が変わります。
タイプA:浸透度が高く、伸びも速い(例:愛知県・埼玉県・滋賀県・千葉県)
受け入れが一般化しており、なお加速している地域です。ここでは「受け入れるかどうか」よりも「他施設に競り負けないか」が論点になります。近隣施設が既に体制を整えているため、給与水準だけでなく住居支援の内容、日本語学習の機会、キャリアの見通しといった条件で比較されます。着手が遅れるほど条件面での上積みが必要になります。
タイプB:浸透度が高く、伸びは落ち着いた(例:佐賀県・沖縄県・富山県)
先行して受け入れが進み、市場が成熟しつつある地域です。地域内に受け入れ実績のある法人が多く、支援体制のノウハウや通訳のネットワークが蓄積されています。後発でも学べる相手が近くにいる点は有利ですが、条件の相場が既に形成されているため、それを下回る提示は通用しにくくなります。
タイプC:浸透度が低く、伸びが速い(例:秋田県・和歌山県・鳥取県・福島県)
これから立ち上がる地域です。現時点では受け入れ施設が少なく、地域内での人材の奪い合いはまだ起きていません。先行者として動けば、送り出し機関や登録支援機関との関係を有利な条件で築ける可能性があります。一方で、地域内に相談できる先行事例が乏しく、支援体制をゼロから設計する負担は大きくなります。
タイプD:浸透度が低く、伸びも遅い(例:山形県・島根県・岩手県)
受け入れが本格化していない地域です。ここで検討する場合は、まず自県で受け入れが進んでいない理由を確かめることが先決になります。住居の確保が難しい、生活圏に母国語コミュニティがない、通院や行政手続きの多言語対応が乏しいといった生活基盤の要因が背景にあると、採用できても定着しません。制度上の要件を満たすことと、実際に働き続けられる環境があることは別の問題です。
浸透度データを自施設の判断にどう使うか
1. 採用競争の激しさを見積もる
浸透度が全国平均の31.4人を大きく上回る県では、外国人材にとって選択肢が複数ある状態です。求人を出せば応募が来るという前提は成り立ちません。自施設が近隣と比べて何を提示できるかを、住居・日本語学習・資格取得支援の3点で整理してから動くのが現実的です。
2. 受け入れコストの地域差を織り込む
特定技能では受け入れ機関に住居確保の支援が義務づけられています。家賃相場が高い地域では、この負担が受け入れ判断を左右します。東京都が求人倍率7.65倍でありながら浸透度24位にとどまる背景にも、この構造があると考えられます。費用の内訳は特定技能「介護」受け入れ費用で試算しています。
3. 5年後を見据えて設計する
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。浸透度が高い県では、既に最初の受け入れ層が期限に近づいている施設が出てきます。介護福祉士の国家資格を取得して在留資格「介護」へ移行できれば期限の制約はなくなるため、採用時点から資格取得の支援を設計に含めるかどうかが、5年後の職員構成を左右します。移行の進め方は特定技能「介護」5年の壁を超えるで解説しています。
4. 制度の切り替えを前提に置く
技能実習制度は育成就労制度へ移行し、2027年4月に施行される予定です。特定技能との接続関係も変わるため、いま技能実習で受け入れている施設は移行準備が必要になります。詳細は育成就労(介護)への移行準備にまとめています。
よくある質問
Q. 浸透度が高い県のほうが受け入れやすいのですか
受け入れやすさとは別の指標です。浸透度が高い県は地域内に支援のノウハウが蓄積されており、登録支援機関や通訳の選択肢も多いという利点があります。一方で、外国人材から見れば就職先の選択肢が多い地域でもあるため、採用競争は激しくなります。受け入れの容易さと採用競争の激しさは同時に上がります。
Q. なぜ在留者数を勤務先ではなく住居地で数えているのですか
出入国在留管理庁の統計が在留カードの住居地に基づいて集計されているためです。したがって東京都に勤務しながら埼玉県や千葉県に住んでいる場合、居住地の県に計上されます。都市圏では実際の就労先の分布と数字がずれる可能性があり、この記事の数値も同じ制約を受けます。
Q. 技能実習やEPAの外国人材は含まれていますか
含まれていません。この試算の対象は特定技能1号のみです。技能実習・育成就労・EPA・在留資格「介護」で働く外国人材を加えると、実際に現場にいる外国人職員の数はさらに多くなります。在留資格ごとの違いは外国人介護人材の受け入れガイドで整理しています。
Q. データはどのくらいの頻度で更新されますか
出入国在留管理庁の特定技能在留外国人数は半年ごと(6月末時点・12月末時点)に公表されます。この記事は2025年12月末時点の公表値に基づいており、次回の公表で数値は更新されます。
Q. 介護職員数の分母はいつ時点のものですか
2022年度の実績値です。分子の2025年12月末とは時点が異なるため、絶対値ではなく都道府県間の相対比較の指標として扱ってください。介護職員数はこの期間も緩やかに増加しているため、実際の浸透度は本試算の数値よりやや低くなる可能性があります。
参考資料・出典
- [1]特定技能在留外国人数の公表等(第2表・第4表・第5表)
2025年12月末・2024年12月末。都道府県別および国籍別の介護分野データ。本記事の分子
- [2]特定技能制度
制度概要・受け入れ機関の義務
- [3]外国人介護人材の受入れについて
介護分野の受け入れ要件・事業者向けガイドブック
- [4]介護保険事業計画
第9期計画に基づく都道府県別介護職員数。本記事の分母
- [5]一般職業紹介状況(職業安定業務統計)
介護関係職種の都道府県別有効求人倍率(2025年3月)
- [6]令和6年度 介護労働実態調査
事業所調査 問18①・問19(有効回答8,978事業所)。外国籍労働者の受け入れ状況と課題
まとめ
介護分野の特定技能1号は2025年12月末で6万7,871人となり、1年で53.0%増えました。ただし全国の数字だけでは、自施設が置かれた状況はわかりません。各都道府県の介護職員数で割った浸透度で見ると、1位の岐阜県(介護職員1,000人あたり50.5人)と47位の岩手県(8.7人)で5.8倍の差があります。
人手不足の深刻さと浸透度の相関は+0.45で、傾向としては言えるものの例外が少なくありません。有効求人倍率7.65倍と全国で最も人材確保が厳しい東京都が浸透度24位にとどまる一方、求人倍率が全国平均を下回る沖縄県・佐賀県・熊本県が上位に入ります。「人手が足りないから外国人材が増える」という単純な図式では説明できません。
受け入れを検討する際は、まず自県の浸透度と伸び率を確認し、採用競争が既に始まっている地域なのか、これから立ち上がる地域なのかを見極めることが出発点になります。そのうえで、住居支援・日本語学習・資格取得支援という条件面をどう設計するかが、採用できるかどうかと5年後も残ってもらえるかどうかを決めます。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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