介護保険でできないこと・対象外のサービス|訪問介護の範囲と保険外サービスの使い方
ご家族・ご利用者向け

介護保険でできないこと・対象外のサービス|訪問介護の範囲と保険外サービスの使い方

介護保険でできないことを整理。訪問介護で頼めない同居家族の家事・大掃除・ペットの世話、医行為の範囲、保険対象外サービスの中身を厚労省の通知をもとに解説。自費・自治体・社協など保険外サービスの使い方と相談先まで案内します。

ポイント

この記事のポイント

介護保険でできないことは、大きく3つに分かれます。1つ目は、訪問介護のヘルパーに頼めない範囲(同居家族のための家事、大掃除、ペットの世話、来客対応、庭の草むしりなど)。2つ目は、医師や看護師でないとできない医行為。3つ目は、そもそも介護保険の対象外で「自費の保険外サービス」として利用するもの(趣味の外出付き添い、配食、見守りなど)です。「できないこと」も、自費サービスや自治体・社会福祉協議会の支援を組み合わせれば対応できる場合があります。まずは担当のケアマネジャー、いなければお住まいの地域包括支援センターに相談しましょう。

目次

「ヘルパーさんに、ついでに庭の草むしりもお願いできないかしら」「同居している私の分の洗濯も一緒に頼みたい」——在宅で介護を始めると、こうした場面に何度も出会います。ところが実際に頼んでみると「それは介護保険ではできないんです」と断られ、戸惑ったり、気まずい思いをしたりするご家族は少なくありません。

介護保険のサービスは「何でも代わりにやってくれる便利屋さん」ではなく、制度のルールで「できること」と「できないこと」の線引きがはっきり決められています。この線引きは、ヘルパー個人の判断や事業所の都合で決めているわけではなく、厚生労働省の通知(老計第10号など)に基づくものです。理由を知らないまま「冷たい」「融通がきかない」と感じてしまうと、せっかくの介護サービスとも、支えてくれるヘルパーとも、よい関係が築きにくくなってしまいます。

このページでは、介護を受けるご本人とご家族に向けて、「介護保険でできないこと・対象外のサービス」を3つのレイヤー(訪問介護の制限/医行為の範囲/そもそも保険対象外のサービス)に分けて整理します。そのうえで、「できないこと」を保険外サービスや自治体・社会福祉協議会の支援でどう補えるか、費用の目安や相談先までやさしく案内します。読み終えるころには、「どこまでが保険で、どこからが自費なのか」の地図が頭の中にできているはずです。

介護保険でできないことは3種類ある|まず線引きを理解しよう

「介護保険でできないこと」と一口に言っても、その理由はひとつではありません。混乱しやすいのは、性質のちがう3種類の「できない」が、現場ではまとめて「保険ではできません」と説明されるからです。まずはこの3つのレイヤーを分けて理解すると、「なぜできないのか」「では誰に頼めばいいのか」が見えてきます。

レイヤー1:訪問介護(ヘルパー)の「できること」の範囲外

訪問介護は「身体介護」と「生活援助」に分かれ、その中身は厚生労働省の通知(老計第10号「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」)で細かく決められています。生活援助はご本人が日常生活を送るために必要な家事に限られ、同居家族のための家事や、大掃除・草むしりのような「日常的でない家事」は範囲外です。これは「保険のお金(介護報酬)を使ってよい行為」の線引きであり、ヘルパーが意地悪をしているわけではありません。

レイヤー2:医師・看護師でないとできない「医行為」

インスリン注射、床ずれ(褥瘡)の処置、点滴の管理などは「医行為」と呼ばれ、原則として医師・看護師など医療資格を持つ人にしかできません。ヘルパーが「できない」のは保険のルール以前に、医師法など医療系の法律で禁止されているからです。ただし、体温測定や一包化された薬の服薬介助など「医行為ではない」と整理された行為は、条件を満たせばヘルパーも対応できます(くわしくは後の章で表にします)。

レイヤー3:そもそも介護保険の対象外のサービス

趣味のための外出付き添い、配食、見守り、家事代行など、生活を豊かにしたり家族の負担を減らしたりするサービスの多くは、そもそも介護保険の給付対象ではありません。これらは「介護保険外サービス(自費サービス)」「自治体の高齢者支援」「社会福祉協議会やシルバー人材センターの有償サービス」などで補います。全額自己負担になるものが多い一方、保険のような利用範囲の制限がなく、柔軟に頼めるのが特徴です。

つまり「できない」には、①保険給付の範囲外(自費なら可)/②法律上ヘルパー不可(医療職なら可)/③制度そのものの対象外(保険外サービスで対応)という3つの意味があります。次の章から、それぞれを具体的に見ていきましょう。

訪問介護(ヘルパー)でできないこと|生活援助の範囲と同居家族の制限

在宅介護でいちばん「できる・できない」が問題になるのが訪問介護(ヘルパー)です。訪問介護は次の3区分に分かれます。

  • 身体介護:食事・入浴・排せつの介助、着替え、体位変換、通院の付き添いなど、ご本人の身体に直接ふれて行う介助
  • 生活援助:掃除、洗濯、調理、買い物、薬の受け取りなど、ご本人が生活するための家事の代行・援助
  • 通院等乗降介助:介護タクシー等での通院時の乗り降りの介助

生活援助で「できないこと」——3つの考え方

生活援助で頼めないことには、共通する考え方があります。老計第10号は、生活援助に「含まれない行為」を大きく2つに整理しています。

(1) 直接ご本人の援助に当たらない行為(主に家族の利便のための行為)

  • 同居家族のための食事の調理、洗濯、布団干し
  • 来客の応接(お茶出し・食事の手配など)
  • 自家用車の洗車・清掃

(2) 日常生活の援助に当たらない行為(毎日の暮らしに必要とはいえない家事)

  • 草むしり、花木への水やり、犬の散歩などペットの世話
  • 大掃除、窓ガラス磨き、床のワックスがけ
  • 室内外の家屋の修理、ペンキ塗り
  • 植木の剪定などの園芸
  • 正月・節句など特別な手間をかけた調理

ポイントは「その家事をしなくても、ご本人の日常生活が成り立つかどうか」です。毎日の食事や最低限の掃除は生活に不可欠なので生活援助の対象ですが、年末の大掃除や庭の手入れは「やれたら快適だが、なくても生活はできる」ため対象外、という線引きになっています。

同居家族がいると生活援助は原則使えない

もうひとつ大切なのが、同居している家族がいる場合、生活援助は原則として利用できないというルールです(厚生労働省「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」)。掃除・洗濯・調理といった家事は、原則として同居家族が担うものと考えられているためです。

ただし、これは例外なく一律で禁止というわけではありません。次のような事情があるときは、ケアマネジャーが個別に必要性を判断し、生活援助を使えることがあります。

  • 同居家族自身が障害や病気で家事を行うのが難しい
  • 同居家族も高齢で家事が困難
  • 同居家族が就労・通学などで日中ずっと不在になる
  • 家族関係に深刻な問題があり、援助が期待できない

最終的にどこまで認めるかはお住まいの市区町村が判断するため、地域によって運用に差があります。「同居だから絶対に無理」とあきらめず、まずはケアマネジャーに相談してみてください。なお、訪問介護を初めて使うときの流れは、関連記事「訪問介護を家族が利用する流れ」でくわしく解説しています。

身体介護でも「できないこと」はある

身体介護は本人へのケアなので生活援助より制限はゆるいものの、ケアプランに位置づけられていない行為や、医行為に当たる行為(次章)はできません。また、ヘルパーはケアプランで決められた曜日・時間内でしか動けないため、急な時間外の依頼や、決められた内容以外の作業は原則として対応できない点も知っておきましょう。

訪問介護でできること・できないこと一覧表

ここでは、ご家族から「頼めますか?」と聞かれることが多い場面を中心に、訪問介護でできること・できないことを一覧にしました。判断の根拠(厚生労働省の通知)も添えています。「できないこと」の多くは、後述する保険外サービスや自治体の支援で補えます。

場面・依頼内容介護保険での扱い根拠・補足
ご本人の食事の調理・配膳できる(生活援助)日常生活に必要な家事
同居家族の分の食事もまとめて調理できない家族の利便のための行為(老計第10号)
ご本人の居室・トイレの掃除できる(生活援助)本人が日常的に使う範囲
家全体の大掃除・窓ガラス磨き・床ワックスできない日常生活の援助に当たらない
同居家族と共用する部屋の掃除原則できない家族で対応できる範囲とされる
日用品・食料品の買い物代行できる(生活援助)生活に必要な範囲のみ
お酒・たばこなど嗜好品、来客用品の買い物できない生活に必要な物品に限られる
庭の草むしり・花の水やり・植木の剪定できない園芸は日常の援助外
ペット(犬・猫など)の世話・散歩できない本人の援助に当たらない
来客への応接・お茶出しできない家族の利便のための行為
自家用車の洗車・清掃できない日常の援助外
家具の移動・模様替え・家屋の修理できない日常の援助外
通院の付き添い・乗り降りの介助できる(身体介護・通院等乗降介助)ケアプランへの位置づけが必要
趣味・旅行・お墓参り・冠婚葬祭への同行できない日常生活に必要な外出に限られる
散髪・マッサージ・リハビリ目的の運動できない専門資格や保険対象外
体温・血圧の測定、一包化された薬の服薬介助できる(条件あり)「医行為でない行為」として整理(次章)
インスリン注射・床ずれの処置・点滴管理できない(医行為)医師・看護師の領域。訪問看護で対応

表の「できない」は、あくまで介護保険(ヘルパー)では対応できないという意味です。次章以降で見るように、医行為は訪問看護で、それ以外は保険外サービスや自治体の支援で対応できる場合が多くあります。

医行為の範囲|ヘルパーや家族にできる医療的ケア・できない医療的ケア

「医行為(いこうい)」とは、医師の医学的な判断や技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為のことで、医師・看護師など医療資格を持つ人以外が業として行うことは法律で禁止されています(医師法第17条など)。一方で、介護の現場で「これは医行為なのか?」と判断に迷う行為が多いため、厚生労働省は「原則として医行為ではない」と考えられる行為を通知で示してきました(平成17年 医政発第0726005号、令和4年・令和7年の追加通知)。

ヘルパーや家族が対応できる「医行為でない行為」

次の行為は、一定の条件のもとで医療資格がなくても行えると整理されています(容態が安定している、医師・看護職員が確認しているなどの条件が前提です)。

  • 体温の測定(脇の下・耳式の電子体温計)
  • 自動血圧計による血圧測定
  • パルスオキシメーターの装着(新生児等を除く)
  • 軽い切り傷・すり傷・やけどなどの専門的判断を要しない処置
  • 軟膏の塗布(床ずれの処置を除く)、湿布の貼付、点眼、点鼻
  • 一包化された内服薬の服薬介助、坐薬の挿入
  • 正常な爪の爪切り・やすりがけ
  • 日常的な歯みがき・口腔ケア、耳あかの除去
  • ストーマ(人工肛門)のパウチにたまった排せつ物の廃棄
  • 市販のグリセリン浣腸器による浣腸
  • (令和7年通知で追加)お薬カレンダーへ一包化された薬をセットする、服薬直前にPTPシートから薬を取り出す

医療資格がないとできない「医行為」

一方、次のような行為は医師・看護師の領域で、ヘルパーや家族(家族による医療的ケアは別途の整理があります)には任せられません。

  • インスリンなどの注射、点滴の管理
  • 床ずれ(褥瘡)の処置、専門的な創傷処置
  • 摘便(指で便をかき出す行為)
  • 医師の指示によらない薬の選択・調整
  • 容態が不安定な人へのたんの吸引・経管栄養(※研修を受けた介護職員が、登録事業所で、一定の条件下で実施できる制度はあります)

こうした医療的なケアが必要なときは、訪問看護を利用します。訪問看護は主治医の指示書に基づき看護師が自宅を訪問するサービスで、訪問介護と組み合わせて使えます。利用の流れは関連記事「訪問看護を家族が依頼する流れ」を参考にしてください。なお、ここで挙げた「医行為でない行為」も、ご本人の状態によっては医行為と判断される場合があるため、必ず主治医や訪問看護師、ケアマネジャーと相談しながら進めましょう。

保険対象外サービスの使い方|自費・自治体・社協など5つの担い手と費用

ここまで見てきた「介護保険でできないこと」の多くは、介護保険外サービス(自費サービス)を使えば対応できます。介護保険外サービスとは、介護保険の給付対象にならない支援を、利用者が費用を負担して受けるサービスの総称です。要介護認定の有無や利用範囲の制限がなく、ペットの世話・大掃除・趣味の外出付き添いなど、保険では頼めなかったことも柔軟にお願いできます。提供元によって性格と費用が大きく異なるので、主な5つの担い手を押さえておきましょう。

① 市区町村(自治体)の高齢者在宅サービス

多くの市区町村が、おむつの支給、訪問理美容、配食、緊急通報装置の設置などを独自に行っています。費用は自治体が補助するため安価な場合が多く、たとえば訪問理美容500〜2,500円/回、配食500円前後/食、緊急通報システム月1,300円程度といった水準です。要介護認定がなくても使えるものもあります。

② 介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)

要支援の方や、市区町村のチェックリストに該当した方が使える、市区町村が運営する事業です。訪問型・通所型の生活援助などがあり、自己負担は所得に応じて1〜3割。窓口は地域包括支援センターです。

③ 介護サービス事業者が提供する保険外サービス

普段、訪問介護やデイサービスを提供している事業所が、保険外で生活援助・身体介護・お泊まりデイなどを行うものです。費用は全額自己負担で、生活援助・身体介護は1時間あたり2,000〜4,000円程度が目安。普段のヘルパーがそのまま続けて対応してくれることが多く、頼みやすいのが利点です。

④ 社会福祉協議会・シルバー人材センター

社会福祉協議会(社協)やシルバー人材センターは、地域の住民が担い手となる有償の生活支援です。家事支援が800円/時間前後、シルバー人材センターは1,000円/時間前後と、民間より安いのが特徴。草むしり、窓ふき、墓参りの付き添い、おせちなど手間のかかる調理まで頼めることがあります。

⑤ 民間企業のサービス

家事代行(3,000円前後/時間)、民間の配食(500〜700円/食)、見守りサービス、保険外の訪問介護・訪問看護など、選択肢が豊富で緊急時にも使いやすい一方、費用は高めです。サービス内容や品質も事業者ごとに差があるため、契約前に内容と料金を必ず確認しましょう。

担い手主なサービス例費用の目安
市区町村配食、訪問理美容、おむつ支給、緊急通報補助あり・安価(例:配食500円前後/食)
総合事業訪問型・通所型の生活援助自己負担1〜3割
介護事業者の保険外保険外の生活援助・身体介護、お泊まりデイ2,000〜4,000円/時間(全額自費)
社協・シルバー人材家事支援、草むしり、付き添い800〜1,100円/時間前後
民間企業家事代行、配食、見守り、外出支援家事代行3,000円前後/時間など

保険外サービスは「全額自己負担=高い」と思われがちですが、自治体・社協・総合事業を使えば負担を抑えられます。どれが使えるかは地域差が大きいので、ケアマネジャーや地域包括支援センターに「うちの地域で使える保険外の支援」を尋ねるのが近道です。選び方のコツは関連記事「介護保険外サービスの選び方」でさらにくわしく紹介しています。

保険と自費を組み合わせる「混合介護」のルールと注意点

「保険でできないことは自費で頼めばいい」と分かっても、実際の現場では同じ訪問の中で保険サービスと自費サービスをどう組み合わせるかでつまずきがちです。保険サービスと保険外(自費)サービスを組み合わせて使うことを「混合介護」と呼びますが、ここには厚生労働省が定めたルールがあります(平成30年 老高発第928001号ほか「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」)。家族として知っておきたい要点は次の3つです。

(1) 保険と自費を「同時一体」には提供できない

訪問介護では、保険サービスと保険外サービスを同じ時間に混ぜて行うことはできません。たとえば「本人の食事を作りながら、同時に家族の分も作る」といった同時一体の提供は認められていません。一方で、訪問介護の前後や合間に、いったん区切って草むしりやペットの世話などの自費サービスを提供することは可能です。「11時まで保険のヘルパー、11時から30分は自費で草むしり」のように、時間を明確に分ければよいわけです。

(2) 料金・契約・記録は保険分と明確に分ける

自費サービスを使うときは、事業者は保険サービスとは別に契約・料金請求・記録を行う必要があります。ご家族は、契約前に「どこまでが保険で何割負担、どこからが自費でいくらか」を文書で説明してもらい、納得してから同意することが大切です。自費分の時間は保険の提供時間には含まれません。

(3) ケアマネジャーへの共有が前提

自費サービスを使う場合も、その内容や時間は担当ケアマネジャーに報告され、必要に応じてケアプラン(週間サービス計画表)に記載されます。保険・自費を通じて全体を見てもらうことで、サービスの重複やムダを防げます。

なお、こうした「保険+自費の柔軟な組み合わせ(規制緩和)」は、現在おもに訪問介護と通所介護で認められており、今後さらに広がる可能性があります。混合介護を上手に使えば「保険でできないこと」を無理なく補えますが、料金トラブルを避けるためにも、契約内容の確認とケアマネジャーへの相談を必ずセットにしてください。

【独自整理】「できないこと」は3つの受け皿で振り分けると解決しやすい

「介護保険でできないこと」を一覧で見ると数が多く、不安になるかもしれません。そこで、当サイトが厚生労働省の通知をもとに「できないこと」を整理し、それぞれを“誰に頼めば解決するか”という観点で振り分けてみました。「できない=あきらめる」ではなく「できない=担い手を変える」と捉え直すための地図です。

「できないこと」は3つの受け皿で9割方カバーできる

当サイトで「介護保険でできないこと」として挙がる代表的な依頼を分類すると、次のように振り分けられます。

  • 医療的なケア(インスリン・床ずれ処置・点滴管理など)→ 訪問看護。医師の指示書があれば看護師が対応でき、介護保険または医療保険が使えます。「保険外=全額自費」とは限らない代表例です。
  • 家事の範囲外(大掃除・草むしり・ペット・来客対応・家族分の家事)→ 社協・シルバー人材・自治体・家事代行。社協やシルバー人材センターなら1時間800〜1,100円前後と、民間家事代行(3,000円前後)の3分の1程度で頼めることがあります。
  • 暮らしを豊かにする支援(趣味の外出・旅行同行・見守り・配食)→ 民間の保険外サービス・自治体サービス。配食や見守りは自治体が安価に提供している地域も多くあります。

つまり「できないこと」のほとんどは、医療は訪問看護、家事は社協・シルバー人材、暮らしの充実は民間・自治体という3つの受け皿に振り分けられます。やみくもに民間の自費サービスに飛びつく前に、まず「これは医療?家事?暮らしの充実?」と仕分けると、安く・適切な担い手が見つかりやすくなります。

費用を抑える順番——「公的→社協→民間」で当たる

同じ「保険外」でも費用差は大きく、たとえば1時間あたりの生活支援は、総合事業(自己負担1〜3割)<社協・シルバー人材(800〜1,100円)<介護事業者の保険外(2,000〜4,000円)<民間家事代行(3,000円前後)という順で高くなる傾向があります。緊急性や曜日・時間の自由度を重視するなら民間、コストを抑えたいなら公的・社協、というように「公的→社協→民間」の順番で当たっていくのが、ムダな出費を防ぐ実践的なコツです。地域でどれが使えるかは差が大きいため、地域包括支援センターでの確認を起点にしましょう。

「保険でできない」と言われたときに家族がすべき5つのこと

「これは保険でできないんです」と言われたとき、家族として上手に動くためのコツをまとめました。気まずさを減らし、必要な支援にたどり着くための実践ポイントです。

1. 「できない理由」を一緒に確認する

断られたら、ヘルパーを責めるのではなく「これは①保険の範囲外?②医行為?③そもそも保険対象外?」のどれに当たるのかを聞いてみましょう。理由が分かれば、次に頼むべき相手(訪問看護・社協・自治体など)が見えてきます。

2. まずはケアマネジャーに相談する

「保険でできないこと」をどう補うかの司令塔は、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)です。希望を伝えれば、ケアプランの見直しや、保険外サービス・自治体サービスの紹介をしてくれます。判断に迷うことは抱え込まず、まずケアマネに相談するのが基本です。

3. ケアマネがいないときは地域包括支援センター

要介護認定をまだ受けていない、ケアマネがついていないという場合は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターが相談窓口になります。介護保険のこと、保険外サービスのこと、家族の負担のことまで、無料で総合的に相談できます。

4. 同居家族の事情は具体的に伝える

同居家族がいて生活援助を断られた場合でも、「家族が日中ずっと不在」「家族も病気で家事が難しい」といった事情があれば、ケアマネを通じて市区町村に相談することで利用できる場合があります。事情はあいまいにせず、具体的に伝えましょう。

5. 自費サービスは料金を文書で確認してから契約

保険外サービスは全額自己負担になるものが多く、料金体系も事業者ごとに違います。「1回いくら」「最低利用時間」「キャンセル料」などを文書で確認し、納得してから契約することがトラブル防止につながります。

よくある質問

Q. 同居している家族がいると、訪問介護はまったく使えないのですか?

いいえ。使えないのは原則として「生活援助(掃除・洗濯・調理など)」で、ご本人への「身体介護(入浴・排せつ・食事の介助など)」は同居家族がいても利用できます。生活援助も、家族が就労や病気などで家事を担えない事情があれば、ケアマネジャーを通じて市区町村に相談することで使える場合があります。

Q. ヘルパーさんに「ついでに」家族の分の家事を頼むのはなぜダメなのですか?

介護保険の生活援助は、ご本人が生活するために必要な家事に限られているためです(老計第10号)。家族の分の調理や洗濯は「家族の利便のための行為」とされ、保険の対象外です。どうしても必要な場合は、自費の保険外サービスや家事代行で対応できます。

Q. 薬の管理や塗り薬はヘルパーに頼めますか?

容態が安定しているなど一定の条件を満たせば、一包化された内服薬の服薬介助、軟膏の塗布(床ずれの処置を除く)、湿布・点眼などは「医行為でない行為」として対応できます。一方、インスリン注射や床ずれの処置などの医行為はできません。必ず主治医・訪問看護師・ケアマネジャーと相談して進めてください。

Q. 趣味の外出やお墓参りに付き添ってほしいときは?

趣味・娯楽・冠婚葬祭・墓参りなどの外出付き添いは介護保険の対象外です。介護事業者の保険外サービス、社会福祉協議会、シルバー人材センター、民間の外出支援サービスなどで対応できます。費用は全額自己負担ですが、社協やシルバー人材なら比較的安価です。

Q. 保険外サービスは高そうで不安です。安く使う方法はありますか?

「公的(自治体・総合事業)→社協・シルバー人材→民間」の順で当たると費用を抑えやすくなります。配食や訪問理美容、緊急通報などは自治体が安価に提供している地域も多いので、まず地域包括支援センターで「使える公的・社協の支援」を確認しましょう。

Q. 結局、誰に相談すればよいですか?

担当のケアマネジャーがいればケアマネに、いなければお住まいの地域包括支援センターに相談してください。どちらも「保険でできること・できないこと」「保険外で補う方法」を整理して案内してくれます。

参考文献・出典

まとめ|「できないこと」は担い手を変えて補える。まず相談を

介護保険で「できないこと」は、決してご本人やご家族を突き放すためのものではありません。①訪問介護(ヘルパー)の範囲外、②医師・看護師でないとできない医行為、③そもそも保険対象外のサービス——という3つの線引きを知っておくと、「できない」と言われたときも落ち着いて次の手を考えられます。

大切なのは、「できないこと」を「担い手を変えればできること」と捉え直すことです。医療的なケアは訪問看護へ、家事の範囲外は社会福祉協議会やシルバー人材センター・自治体サービスへ、暮らしを豊かにする支援は民間や自治体の保険外サービスへ。保険サービスと自費サービスを上手に組み合わせれば(混合介護)、ご本人の生活も、支えるご家族の負担も、きっと楽になります。

そして、その組み合わせを一緒に考えてくれるのが専門職です。担当のケアマネジャーがいれば、まずケアマネジャーに相談してください。ケアプランの見直しや、地域で使える保険外・自治体サービスの紹介をしてくれます。まだ要介護認定を受けていない、ケアマネジャーがついていないという場合は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターが無料の相談窓口です。介護のこと、お金のこと、家族の負担のことまで、まとめて相談できます。

「これは保険でできるの?できないの?」と迷ったら、一人で抱え込まず、専門職の力を借りましょう。正しい線引きを知り、適切な相談先につながることが、安心して在宅介護を続ける第一歩です。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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