介護現場の多職種連携を読む|医師・看護師・PT/OT・ケアマネとの役割分担と情報共有のコツ

介護現場の多職種連携を読む|医師・看護師・PT/OT・ケアマネとの役割分担と情報共有のコツ

介護職と医師・看護師・PT/OT/ST・栄養士・ケアマネ・相談員の役割分担、カンファレンスの進め方、SBARを活用した情報共有のコツまで。チームケア・リハ職連携・ケアマネ連携の3クラスターへの導線つき。

ポイント

この記事のポイント

介護現場の多職種連携(IPW: Interprofessional Work)とは、医師・看護師・PT/OT/ST・管理栄養士・ケアマネジャー・生活相談員・介護職などが、共通の目標である「利用者のQOL向上」に向けて、それぞれの専門性を持ち寄って協働することです。厚生労働省が地域包括ケアシステムの中核に位置づけており、定期的なカンファレンス・SBAR形式の情報共有・お互いの役割理解の3点が連携を成立させる鍵になります。

目次

「看護師の指示が強すぎて、介護職の意見が言いづらい」「ケアマネと話が噛み合わず、自分の伝え方が悪いのかと一人で抱え込んでしまう」――介護現場で他職種との連携に悩んだ経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。

介護は、医師・看護師・PT/OT/ST・栄養士・ケアマネ・相談員といった立場も視点も異なる専門職が、同じ利用者を支えるチームとして動く仕事です。それぞれが見ている「地図」は微妙に違い、優先順位もずれます。だからこそ、役割を理解し、適切な情報共有のフレームを持ち、カンファレンスを意味のある場にする力が、介護職のキャリアを左右します。

このピラー記事では、介護職が日々関わる主要職種ごとの役割分担、カンファレンスの進め方、SBAR形式での申し送り、現場で起きやすい課題とその乗り越え方を体系的に整理します。さらに具体的な深掘りとして、チームケアPT・OT・STとの連携ケアマネジャーとの連携の3クラスター記事への導線も用意しています。

多職種連携(IPW)とは|チーム医療との違いをやさしく整理

多職種連携(IPW: Interprofessional Work)とは、保健・医療・福祉の複数領域の専門職が、それぞれの技術と役割をもとに、共通の目標を目指して連携・協働する働き方を指します(厚生労働省「IPE/IPW」資料)。

「連携」と「協働」と「チーム医療」の違い

似た言葉が多いので、まず整理します。

  • 連携:互いに連絡を取り、協力して物事を行うこと(点と点を結ぶイメージ)。
  • 協働:同じ目的のために、対等な立場で協力して共に働くこと。
  • チーム医療:医療職が中心となり、目的と情報を共有しつつ業務を分担して提供する医療(厚労省「チーム医療の推進について」2010年)。
  • IPW(多職種協働):医療職に加えて福祉・教育などの職種も参画し、人々の健康や生活の質を共通目標として協働する考え方。

介護現場で目指すのはチーム医療よりさらに広いIPW=チームケアです。利用者の「疾患」「機能・障害」「社会心理面」「生活」という多面性に、それぞれの専門家が関わることで最大のアウトカムが得られると整理されています(日本在宅ケアアライアンス「領域3-2 多職種協働・連携」教材)。

チームの型は4タイプある

多職種チームをスポーツに例えると、関わり方の深さで4タイプに分かれます(阿部能成「チーム再考」緩和ケアチーム分類)。

  1. リレー型:同じフィールドに立たず、申し送りでバトンを渡す。カンファレンスを行わない時代の在宅医療に近い。
  2. テニス型:同じフィールドに立つが、同時にプレーしない。情報のやり取りはあるが協働しない。
  3. ヨット型:同じフィールドで同時にプレーするが、リーダー(医師など)の命令通りに動く。古いチーム医療型。
  4. サッカー型:メンバーがフィールドを共有し、各々の役割を果たしつつ、他職種の動きに合わせて柔軟に動く。現代の在宅・施設ケアが目指す型

介護職に求められているのは、サッカー型のチームで「利用者の生活の最前線にいる目」として動くことです。

主要職種の役割分担|介護職との接点と連携のポイント

介護現場で介護職が日常的に関わる主な職種について、役割・配置されている場所・介護職との接点を整理します。

医師(主治医)

  • 役割:医学的診断、治療方針の決定、薬の処方、看取り判断。
  • 配置:協力医療機関の主治医(特養・グループホーム)/配置医(老健)/訪問診療医(在宅)。
  • 介護職との接点:往診時の同席、バイタル・食事・排泄状況の報告、急変時の連絡。直接やりとりするより看護師経由になることが多い。介護保険法の指定居宅介護支援事業の取り扱い方針では、医療系サービス(訪問看護・訪問リハ等)の導入には主治医の指示確認が必要と明記されています(厚労省 居宅介護支援基準)。

看護師

  • 役割:医療行為(点滴・吸引・褥瘡処置)、健康管理、医師への報告、介護職への指示。
  • 配置:特養(常勤+オンコール)、老健(常勤多数)、グループホーム(医療連携体制加算)、訪問看護ステーション、デイサービス。
  • 介護職との接点:朝夕の申し送り、バイタル異常時の相談、看取り期の役割分担。介護職と最も距離が近い医療職で、連携の質が現場の安心感を左右する。詳しくは介護現場で働く看護師のリアルへ。

理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)

  • 役割:PTは歩行訓練・関節可動域・転倒予防、OTはADL(着替え・食事・トイレ動作)の自立支援、STは嚥下機能訓練・コミュニケーション支援。
  • 配置:老健(常勤)、デイケア、訪問リハビリ、回復期リハ病棟。
  • 介護職との接点:リハビリで「できるようになった動作」を生活場面で介護職が再現する。例:OTが食事自立を訓練 → 介護職が食事介助で見守りに切り替える。連携不足で「リハビリではできるが普段はやってもらっている」状態に陥るのが典型的な失敗パターン。詳しくは介護職とリハビリ職の連携のコツへ。

管理栄養士

  • 役割:栄養ケア計画の作成、嚥下食・治療食の献立、低栄養・脱水のリスク評価、家族への栄養指導。
  • 配置:特養・老健(栄養ケア・マネジメント加算)、デイサービス、回復期病院。
  • 介護職との接点:食事摂取量・水分量の記録、咀嚼・嚥下の様子の報告。介護職の観察力が、低栄養の早期発見に直結する。

ケアマネジャー(介護支援専門員)

  • 役割:ケアプラン作成、サービス担当者会議の主催、給付管理、家族・関係機関との調整。
  • 配置:居宅介護支援事業所(在宅)、施設ケアマネ(特養・老健)、地域包括支援センター。
  • 介護職との接点:モニタリング訪問時のヒアリング、サービス担当者会議での生活情報の共有。介護職が現場で気づいた「ちょっとした変化」を伝えるか伝えないかで、ケアプランの質が大きく変わる。詳しくはケアマネジャーと介護職の連携コミュニケーション術へ。

生活相談員・支援相談員(社会福祉士・精神保健福祉士)

  • 役割:入退所の調整、家族対応、苦情対応、行政手続き、社会資源との連絡。
  • 配置:特養・老健・デイサービス(生活相談員)、老健(支援相談員)。
  • 介護職との接点:家族からの要望・苦情の橋渡し、新規入所時の情報共有。家族とこじれそうな場面では相談員に早めに振るのがチームを守るコツ。

薬剤師

  • 役割:処方監査、薬剤の一包化、服薬指導、ポリファーマシー(多剤併用)の見直し提案。
  • 配置:協力薬局(特養・グループホーム)、在宅訪問薬剤管理指導(在宅)、病院薬剤部。
  • 介護職との接点:服薬介助時の異変報告、飲み忘れの傾向の共有、副作用の早期発見。「最近ふらつきが増えた」が薬の見直しにつながるのは介護職の観察があってこそ。

歯科医師・歯科衛生士

  • 役割:訪問歯科診療、口腔ケア指導、義歯調整、嚥下評価。
  • 介護職との接点:口腔ケアの方法指導、義歯トラブルの相談。誤嚥性肺炎の予防につながる重要な連携先。

なぜ多職種連携が不可欠なのか|地域包括ケアと医療依存度の上昇

地域包括ケアシステムの中核に位置づけられている

厚生労働省は2025年(令和7年)を目処に「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられる」地域包括ケアシステムの構築を進めてきました(厚労省 地域包括ケアシステムページ)。このシステムの構成要素は「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つで、これらを地域単位で統合的に提供するためには、職種をまたいだ連携が前提になります。

厚労省「在宅医療・介護連携推進事業」は2018年4月に全市区町村で実施が義務化され、医師会と市区町村が中心となって多職種研修・在宅医療相談窓口の整備が進められてきました(厚労省「在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 研修運営ガイド」)。

利用者の医療依存度が上がっている

特養の入所要件が要介護3以上に引き上げられた2015年以降、施設利用者の医療依存度は明確に上昇しています。胃ろう・喀痰吸引・在宅酸素・中心静脈栄養(CVポート)・看取り期の利用者を、介護職と看護師がチームで支える場面が日常になりました。介護福祉士の喀痰吸引等研修が制度化されたのも、この流れの一環です。

「生活の最前線にいる目」は介護職にしかない

医師は数分の往診、看護師は朝夕のラウンド、PT/OTは週1〜2回のリハ、ケアマネは月1回のモニタリングというのが標準的な関わりの量です。それに対して介護職は24時間365日、利用者の生活そのものに伴走しています。

「最近ご飯の食べる量が落ちた」「夜中の咳が増えた」「同じ話を繰り返す回数が増えた」――こうした変化に最初に気づけるのは介護職です。逆に言えば、介護職が観察を言語化して他職種に共有しなければ、変化は無視されたまま進行します。多職種連携は「上から下りてくる指示を受ける」のではなく、「現場の最前線から情報を上げる」役割こそが、介護職の最大の貢献になります。

カンファレンスの種類と進め方|現場で関わる4つの会議

「カンファレンス」とひとくくりに呼ばれますが、実は主催者・目的・参加者が異なる4種類の会議があります。介護職が呼ばれる順番が高いものから整理します。

1. サービス担当者会議(居宅ケアマネ主催)

  • 主催:居宅介護支援事業所のケアマネジャー
  • 頻度:ケアプラン新規作成時・更新時・利用者の状態変化時(介護保険法 居宅介護支援基準)
  • 参加者:本人・家族・主治医(書面参加が多い)・看護師・ヘルパー責任者・デイ責任者・福祉用具貸与事業者など
  • 介護職の役割:本人の最近の生活の様子(睡眠・食事・排泄・気分の波)を具体的なエピソードで共有する。「お元気です」では情報量ゼロ

2. 退院時カンファレンス(病院主催)

  • 主催:病院の地域連携室・退院支援看護師
  • タイミング:入院していた利用者が在宅・施設に戻る前
  • 参加者:病棟看護師・主治医・MSW・ケアマネ・在宅サービス提供者
  • 介護職の役割:施設入所予定者なら、入所後の動線・生活パターンを病院側に伝え、退院前から準備すべき物品・介護用品を確認する。

3. 地域ケア会議(地域包括支援センター主催)

  • 主催:地域包括支援センター(自治体)
  • 目的:個別ケースの困難事例検討、地域課題の抽出、社会資源の開発
  • 参加者:包括職員・主任ケアマネ・医師・行政・民生委員など多様
  • 介護職の役割:施設職員として呼ばれる場合は、施設での対応経過と今後必要な地域資源の意見を出す。

4. リハビリテーション会議(訪問・通所リハ事業所主催)

  • 主催:訪問リハ・通所リハ事業所
  • 頻度:おおむね3か月に1回(リハマネジメント加算の算定要件)
  • 参加者:本人・家族・医師・PT/OT/ST・看護師・ケアマネ・ヘルパー
  • 介護職の役割:自宅・施設での「リハで身についた動作の再現状況」をフィードバックする。OTが食事自立を訓練しても、生活場面で介助が続くなら効果が打ち消されるため。

カンファレンス進行の基本ステップ

主催者でなくても、進行の流れを理解しておくと発言のタイミングを逃さないようになります。一般的な流れは以下です(在宅医療推進のための多職種連携研修会 運営ガイド/日医地域包括ケアと多職種連携 指導者ワークブックを参考に整理)。

  1. 開会・自己紹介と所属確認(5分)
  2. 本人・家族の現状ヒアリング(10〜15分)
  3. 主治医・看護師から医療面の報告
  4. リハ職・栄養士から機能・栄養面の報告
  5. 介護職・ヘルパーから生活面の報告
  6. 相談員から社会面の報告
  7. 論点整理・目標設定
  8. 役割分担・次回までの宿題確認
  9. 閉会

初参加で緊張するときは「介護職としての観察情報」を箇条書きにしたメモを持参すると、発言を求められたときに迷いません。

情報共有のコツ|SBARで伝える・専門用語を翻訳する・記録を一元化する

SBAR形式で伝えると医療職に通じやすい

SBAR(エスバー)は、米国の医療現場で開発された情報伝達フレームワークで、日本でも院内急変時の報告手順として広く採用されています。介護現場で看護師・医師に状況を報告するときも、この4要素を意識すると伝達ミスが激減します。

  • S(Situation:状況):誰の・何が・いつから起きているか。「303号室の山田さん、午後3時から発熱しています」
  • B(Background:背景):関連する既往歴・服薬・最近の変化。「2日前から食事量が普段の半分です。慢性心不全あり」
  • A(Assessment:評価):自分はどう思っているか。「脱水か、もしくは肺炎の初期症状を疑います」
  • R(Recommendation:提案):相手に何をしてほしいか。「往診をご検討いただけますか」

「今日山田さんちょっと熱っぽくて……どうしましょう」と相談すると、看護師は状況把握から始めなければならず、判断が遅れる。SBARを使えば、看護師は最初の10秒で全体像をつかみ、すぐ判断モードに入れます。

専門用語は「翻訳」の習慣を持つ

多職種連携で頻発するトラブルが「専門用語のすれ違い」です。医師・看護師・リハ職は、無意識に医療用語を使います。一方、介護職や家族には伝わらない言葉があります。

  • 「ADLが落ちている」→「自分でトイレに行けなくなってきた」
  • 「BPSDが顕在化」→「夜中に大声を出すようになった」
  • 「経口摂取量が減」→「ご飯を食べる量が減った」

逆に、介護職側も「最近怒りっぽい」ではなく「過去2週間で攻撃的な言動が3回観察された。トリガーは入浴拒否」のように事実ベース+頻度+トリガーで言語化すると、医療職に伝わりやすくなります。

記録は1か所に集約する

口頭での申し送りだけでは伝達漏れが起こります。介護記録ソフト・LIFE(科学的介護情報システム)・電子カルテのいずれかを軸に、「ここを見れば全部書いてある」状態を作ることが、夜勤・日勤を超えた連携の基礎です。詳しくは介護ICTとはもあわせて確認してください。

顔を合わせる機会を意識的に作る

同じテキストでも、対面で話すのとチャットだけのやりとりでは伝わり方が異なります。多職種連携の調査では「顔を合わせて話す機会の創出が円滑な連携の条件」と繰り返し指摘されています(コメディカル「多職種連携って何?」記事内の現場調査引用ほか)。看護師の朝のラウンド時に1分立ち話する、デイの送迎時にPTと立ち話する――この日常の積み重ねがカンファレンスでの発言のしやすさを生みます。

困難ケースのカンファレンス例|「同じ家族なのに見え方が違う」を共有する

たとえば、認知症の進行で帰宅願望が強くなり、家族が「自宅で看たい」と希望し続けている独居高齢者のケース。訪問看護師は「服薬管理が破綻しつつあり医療リスクが高い」と判断し、ケアマネは「家族の意向を優先したい」と動き、介護職は「夜間の徘徊で本人の安全が崩れている」と感じている――三者三様の現状認識が並走したまま会議が始まると、議論は誰の現実が正しいかに終始してしまいます。

困難ケースほど、冒頭で「全員の見え方を5分ずつ並べる時間」を意図的に取るのが有効です。ホワイトボードに「医療面/生活面/家族関係/本人の意向」の4象限を書き、それぞれの職種が観察した事実だけを書き出します。意見・解釈は分けて後半に回す。これだけで、「どの象限の情報が不足しているか」が可視化され、次の宿題が明確になります。

ICTで情報共有するときの3つのコツ

介護記録ソフト・チャットツール・在宅医療連携システムを使う場面が増えています。ICTを使いこなすコツは3つです。

  • 主語と時刻を必ず書く:「Aさん、5/2 7:30、朝食5割摂取」のように、主語・日時・事実を冒頭に。後から検索したときに役立ちます。
  • 解釈と事実を分ける:「ぐったりしている」ではなく「呼びかけに対して反応が遅い/普段は即答」と書く。読み手が判断しやすくなります。
  • 緊急度を明示する:チャットなら【至急】【相談】【共有のみ】のラベルを冒頭に付ける。看護師が朝一でログインしたとき、優先順位を即決できます。

新人介護職向け|多職種コミュニケーションで最初に意識する3つ

連携の場で「何を言えばいいかわからない」と固まってしまう新人は多いものです。最初は次の3つだけで十分です。

  1. 事実を1つだけ持参する:「昨日から〇〇さんが朝食を残しています」のように、観察した事実を1件用意する。意見はベテランが拾ってくれます。
  2. わからない言葉は必ずその場で聞く:医療用語が出たら「すみません、ADLというのは……?」と聞く。後で調べるより、その場で聞くほうがチームに歓迎されます。
  3. 「自分の主観」と「観察事実」を分けて話す:「私はこう思いました」と「実際にはこう見えました」を別の文で言う癖をつけると、ベテランが意思決定に使いやすい情報になります。

現場で起こりがちな課題と乗り越え方|板挟み・医療職優位・時間不足

多職種連携が「うまくいかない」と感じる理由は、職場ごとに違うようでいて、実は共通する3パターンに整理できます。介護福祉士会の調査や複数の現場記事から、頻出する課題を抜き出しました。

課題1:介護職が「板挟み」になりやすい

看護師は医療的安全を、ケアマネは生活全体の調整を、家族は本人の意向を主張する――その間に立つのが介護職です。「看護師には医療面で言いにくい」「ケアマネには家族側の本音が言えない」「家族には他職種の方針を説明しきれない」と三方向に気を遣ってしまう場面が日常的に起こります。

乗り越え方:板挟みは「自分が悪い」のではなく構造的に発生します。介護職一人で抱え込まず、主任・リーダー・施設ケアマネに「翻訳役」として入ってもらうのが基本です。記録に「家族の意向/看護師の方針/介護職の観察」を並列で書いておくと、後の会議で論点が見えやすくなります。

課題2:医療職優位で意見が言いにくい

日本介護福祉士会の調査(口村ら)では、介護福祉士の8割以上が看護師と日常的に連携している一方、「看護師の意見が強く介護職が発言しにくい」「視点の違いから意見が合わず不快」という自由記述が多く寄せられています。X(旧Twitter)の介護職投稿でも「医療職優位で発言しにくい」という声は頻繁に見られます。

乗り越え方:意見が言えないのは知識量の差ではなく、「事実情報の蓄積」が不足している場合が多いです。SBAR形式で「日付・回数・トリガー・本人の様子」を具体的に持参すれば、医療職も無視できません。意見が通らないときは「私はこう感じた」ではなく「2週間で〇回観察された事実から判断すると」と主語を「観察」にするのが有効です。

課題3:カンファレンスの時間が取れない/形骸化する

人手不足が深刻化する中、複数の事業所をまたぐカンファレンスはスケジュール調整自体が難しくなっています。集まれても「結局、進行が形式的で具体策が出なかった」という声も多い。

乗り越え方:(1)事前資料を共有しておく(フォーマットを揃えると会議時間を半分にできる)、(2)論点を3つまでに絞る、(3)終了時に「誰が・いつまでに・何をする」を必ず確認する、の3点を主催者に提案しましょう。介護職側からも「次回までに食事量の記録方法を統一しませんか」と具体的な宿題を出すと、会議が動き始めます。

課題4:システム・記録の分断

介護記録ソフト・電子カルテ・連絡ノート・LINEグループ――情報源が分散しているとどこを見ても全体像がつかめません。情報セキュリティの観点で他事業所のシステムにアクセスできない、という制約もあります。

乗り越え方:自施設・自事業所内では「主軸となる記録媒体を1つに決める」ことが第一歩。それ以外(LINE等)はあくまで補助として使い、決定事項は必ず主軸に転記する運用にする。地域連携では、自治体が導入している在宅医療・介護連携ICT基盤(地域ごとの名称あり)を確認し、参加事業所を増やす提案も検討に値します。

さらに深掘りしたい人へ|配下クラスター3記事と関連ガイド

このピラー記事は「介護現場の多職種連携」全体の地図です。それぞれの職種・テーマをさらに深掘りしたい方は、以下の記事を続けてご覧ください。

配下クラスター(このピラーの中核3記事)

看護師との連携を深く知りたい人

連携の制度的背景

参考資料・出典

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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